超回復論の実態
理想論:「ダイエット・筋トレで体型が変わらない理由と対策」:目次
実戦編:発症一年後のトレーニング記録
※記載の運動を推奨している訳ではなく、単なる実体験なので、ご自身の病状・体調に合わせ、医師の指導を受けて運動をしてください
※文中で省いた用語説明
以前、筋肥大が実現しない理由として、筋トレ10回3セット神話の起源を調べたところ、筋肥大に短期しか効かない理由が判明した。
それでは、その根本となる「超回復論」も、同様に筋肥大しにくい原因ではないか?
その実態を調べてみよう。

起源:Yakovlev が超回復を提唱
(1945年:アメリカ陸軍の軍医デローム博士が、負傷兵のリハビリとして、筋力を最短で実用レベルまで戻すプロトコールを開発した。この中で、「10回前後が筋力・筋肥大に最適」と表現)
1955年:ソビエトの運動生理学者 Nikolai Yakovlev が グリコーゲン代謝の研究から「運動後に基質が元より上回る」現象をモデル化、supercompensation(超回復)と名付けた
1956年:Hans Selyeの一般適応症候群(GAS)と結びつき、 トレーニング理論として広く普及する
2002年:尾縣 貢(筑波大学教授)が「超回復の原理とトレーニングへの応用」と題して、日本語で「超回復」を体系的に解説した代表的レビュー論文を体育の科学(52巻3号)に掲載
2009–2011年:科研費プロジェクト(基盤研究B)「トレーニング疲労の回復促進を目的に使用されている手段が超回復の過程に及ぼす影響」研究代表者:尾縣 貢(筑波大学)
約70年前の研究
最も驚くのが、「筋トレは10回」の方が、先ということだ。
つまり、現象として筋肥大することはわかっていても、その原理は、不明だった訳だ。
さて、また70年前の研究は、どこまで現代に通用するか?という話になる。
運動後に基質が元より上回る?
超回復論の原点が、「運動後に基質が元より上回る」だが、どういう意味だろう?
簡単に解説すれば、
運動前の筋グルコースを測定
運動後は筋グルコースが減少
元の量まで筋グルコースが回復
1)よりも多く筋グルコースが蓄えられる現象を発見
4)をsupercompensation(超回復)と名付けた。
つまり、そもそも原点は、筋肥大ではなく、筋グルコースの蓄積量だった。
さて、では筋グルコース量は「=」筋肉量なのだろうか?
NO.
高強度運動の後、完全回復すれば筋グルコースの蓄積量は増えるが、筋肉量とは関係しない(パンプアップのような見た目の量には影響するが)
完全回復まで待たずに運動しても筋肥大は発生し、筋グルコース量と筋肥大の関連と矛盾する
着眼点は良かったが、原点は間違っていた、と言える。
GAS(General Adaptation Syndrome:一般適応症候群)
では、原点と結びついて超回復論の背景となったGASとは、何だろう?
ストレス適応の3段階を提唱した。
Alarm(警告反応):運動によるストレス(刺激)で身体にダメージ
Resistance(抵抗期):身体がストレスに対応し、パフォーマンス向上
Exhaustion(疲弊期):過度のストレスで適応が破綻(オーバートレーニング)
つまり、運動でダメージ=>回復=>超回復(=>疲労)と整理された。
では、GASは、正しかったのだろうか?
ストレスは一様ではない
どんなストレスでも同じく反応と定義していたが、実際のストレスは様々
メカニカルテンション
代謝ストレス
神経疲労
低酸素
単一ストレス=単一適応「ではない」
上記の様々なストレスに対して、タンパク合成・乳酸適応・心肺機能向上など、複数の適応によって、身体能力向上は構成されている
回復曲線は単純ではない
完全回復まで待たなければ筋肥大しない「ではなく」、即オーバートレーニングにもならない
つまり、背景もモデル化の意味はあったが、非現実的に単純化しすぎて、現実のケースには当てはまらない。
そのため、筋肥大のためには回復が重要で、完全回復するまで運動しない、といった誤解が生じる。
日本での発信が比較的新しい
このように、古い理論なのだが、日本語で発信されたのが、約20年前だ。
つまり、日本人にとっては、比較的新しい理論として捉えられてもおかしくない。
超回復論の正体
約70年前の間違った理論だが、日本には約20年前に発信されたため、新しい理論と勘違いされている。
そもそも、着眼点は良かったが、原点は筋肥大=筋グルコース量ではなく、背景(GAS)も刺激と結果を単純化しすぎて、現実に追いついていない。
つまり、超回復論は、理論として、正しくない。
ただ、概念として、「トレーニングを続けなければ能力向上はない」し、「適度な回復が必要」は正しい。
これが、信仰される所以だろう。
現代科学では、複数のストレスと回復など、多層での進行が基本理論となっている。
筋肉に刺激を入れなければならないが、回復させるのは筋繊維だけではない。
単純モデルと現実の多層の齟齬が、実際のトレーニングでは噛み合わず、筋肥大は難しい、という結果になってしまっているのだろう。
では、どうするか?
メカニカルテンションと代謝ストレスを別途管理した多層トレーニングをお勧めしたい。
