間に合った晴れ姿
結婚式が2ヶ月後に迫った頃。
送った招待状も少しずつ返ってきていた。
「おじいさんがね、具合が悪くて」
祖母からそんな連絡がきた。
「おじいちゃん、大丈夫?」
私が言うと祖母の声は
少し暗くなったように感じた。
「あまり良くなくて。
だから、おばあちゃんも
おじいちゃんといたいから、
結婚式には行けない。」
「本当にごめんね」
祖父は、自宅で療養していた。
「ううん、分かった」
それしか言えなかった。
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「私、ドレスが着られれば他はどうでもいいよ」
そう言っていた。
けれど祖父のことを聞いた時、
考えが変わった。
少しでもいいから、
おじいちゃんとおばあちゃんに、
晴れ姿を見てもらいたい。
おじいちゃん、
おばあちゃん。
ふたりの喜ぶ顔を見たかった。
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「和装がいいかな」
基くんに言うと、基くんは頷いた。
「後悔のないようにね」
私は、赤い色打掛を選んだ。
いちばん安いものだった。
でも、祖父母に晴れ姿を見てもらえるなら、
それで十分だった。
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前撮りの日。
色打掛を身にまとう。
そして、袴姿の基くんとふたり、
祖父母の家へ向かった。
玄関に入る。
奥の部屋から祖母が出てきた。
そして、私と基くん、プランナーさんは
奥の座敷へ歩く。
そこには、ひと回り小さく座った祖父の姿。
「おじいちゃん、来たよ」
私が言うと、祖父はゆっくりとこちらを見た。
「ああ、みのりさん」
手を握る。
祖父の手は、一緒に過ごしたあの頃と変わらず、
温かかった。
けれど、少しだけ小さく感じた。
「本当にきれいだ」
祖父の目が潤むのが見えた。
そして、祖母の目も赤くなっていた。
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祖母、基くん、私、祖父。
座敷のいちばん日当たりのいい場所に座る。
「とても素敵です。撮りますよ」
プランナーさんはそう言って、
写真を撮ってくれた。
ほんの短い時間だった。
それで十分だった。
色打掛の費用も、
クリーニング代も、後悔はなかった。
後日、その写真を祖父母の家へ持って行った。
祖父は、その写真を大事そうに手に取っていた。
「本当にきれいだ」
祖父は何度も繰り返した。
「じいちゃんは、みのりさんが大好きだよ」
そう言って、祖父はいつものように笑った。
そして、家を後にする私と基くんに、
見えなくなるまで
ヒラヒラと手を振ってくれた。
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🫧この形の私

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幼少期の、祖父母との思い出
▷ 金柑を食べながら、私は自由だった
▷ 私があげた花を、ちゃんと喜んでくれた
▷ 「すごいね」って言われるのが、うれしかった
▷ 褒められるのがうれしくて、やりたくなった
▷ どっちを選んでも、うれしそうにしてくれた
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