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なぜMAGAはトランプの戦争を支持するのか? (今のところは)

──America Firstと「短期戦争」の奇妙な整合性


トランプ政権がイランを攻撃した。普通に考えれば、これは奇妙だ。なぜならMAGA運動は長年、中東での戦争に反対してきたからだ。しかし実際には、トランプ大統領のイラン攻撃はMAGAから強い支持を受けている。最新の世論調査 (YouGov)では、自己認識としての共和党員のMAGAの 85%が攻撃を支持している。なぜそんなことが起きるのか?これは単なる世論の話で終わらない。トランプ外交の構造を理解するヒントになる得る。


https://economist.com/united-states/2026/03/08/why-maga-backs-donald-trumps-war-for-now



■戦争はしばしばアメリカの大統領を人気にする


アメリカ政治には有名な現象がある。

“rally around the flag effect”

戦争が始まると、アメリカ国民は大統領をWar-time presidentとして支持する傾向がある。例を挙げると、

  • George H. W. Bush
    湾岸戦争前:支持率64%
    砂漠の嵐作戦後:82%

  • George W. Bush
    9.11直前:51%
    対テロ戦争開始後:90%

ところが今回の戦争では、この効果は弱い。トランプの支持率は 38%。イラン攻撃の支持率も ほぼ同じ水準だ。つまり今回は国全体が団結した訳ではない。しかし共和党内では支持が増えている。

■MAGAは孤立主義ではないようだ


MAGAはしばしば「孤立主義」と認識されてきた。実際、イラク戦争を「大きな間違い」と批判し、中東での戦争は必ず「終わりなき戦争」となると批判。foreign entanglements (外国のもつれ) も嫌ってきた。だが、なぜか今回のイラン攻撃では、MAGAのトランプ政権への支持は崩れていない。

なぜか?

その理由の1つは単純だ。MAGAは理念ではなく、トランプ本人を中心に組織された運動だからだ。トランプ自身もこう言っている。

MAGAは私だ。MAGAは私がやることを全部支持する」と。実際、彼の支持層は彼の外交判断をかなり全面的に信頼している。

■トランプ流「戦争のスタイル」


しかし、人格崇拝だけでは説明できない。もう1つ理由がある。それはトランプの戦争スタイルがMAGAの感覚に合っていることだ。特徴は3つある。

① 派手で劇的な軍事行動

トランプは映画のような軍事作戦を好む。例えば2026年1月のベネズエラの作戦では、デルタフォースがマドゥロ大統領を拘束した。トランプはその様子を「まるでテレビ番組を見ているようだった」と語っている。今回のイランでの戦争でも、「イランは地獄のように叩かれている」や「核施設は完全に破壊された」など、非常に演出的な言葉をトランプ大統領は使う傾向にある。このスペクタクル的な軍事行動はMAGA支持層には魅力的に映るのだ。

② 国際ルールを気にしない

基本的に、トランプ政権は、国際法・外交慣例・同盟国との関係調整などを余り気にしない。大統領補佐官のステファンミラーが、「政治的に正しい戦争をするつもりはない」と言い、へグセス国防長官も「馬鹿げた交戦規則は尊重しない」と語る。これらの発言はMAGAのAmerica Firstの世界観と完全に一致する。

③ 戦争は短く終わらせる

トランプの戦争の特徴はもう1つある。とにかく短い。第2次トランプ政権だけでも、イラン・イラク・ナイジェリア・シリア・ソマリア・ベネズエライエメンと広範な地域で軍事行動をしている。共通点は長期占領をしないことだ。

■MAGAが嫌う戦争

MAGA支持者が嫌うのは戦争そのものではない。嫌うのは、歴代のアメリカの政権 (特にブッシュJr大統領) が行ってきた、nation building、民主化ミッション、長期占領などだ。例えば今回のイランでの戦争について、ヘグセス国防長官は、「民主主義を作るための戦争ではない」と説明している。トランプ政権にとって重要なのは、敵を倒すことであり、その国を民主国家に変えることではないのだ。


■それでもMAGA内部には反対がある

とはいえ反対も存在する。例えば、タッカーカールソンは、イラン戦争を「完全に邪悪で狂った戦争」と批判した。またMegyn Kellyは、アメリカ兵が「イスラエルのために死ぬべきではない」と主張している。特に問題になっているのは、イスラエルの影響力だ。もしイスラエルのネタニヤフ首相の判断で戦争が始まったなら、それはもうAmerica Firstではないのだ。

■本当の試練はこれから


今のところは、トランプ大統領はMAGAからの支持を維持している。彼の支持層の支持率は依然として約90%だ。しかし問題はここからだ。もし、戦争が長期化したり、地上軍が投入される事態になったり、イランが内戦状態に陥り混迷を深めたりしたら、MAGAの支持が揺らぐ可能性がある。トランプ自身もイランの 「無条件降伏」 を求めている。それは非常に野心的な戦争目標だ。

■私の考察

この記事を読んで改めて思うのは、「MAGAは孤立主義でも平和主義でもない」ということだ。MAGAが望んでいるのは「短く、派手で、アメリカが得をする戦争」である。しかし問題は、対テロ戦争やイラク戦争を含めて歴史上の殆どの戦争がそうならなかったことだ。もしこの戦争が長引けば、それはトランプ外交とMAGA運動の最大の矛盾を露わにするだろう。

特にトランプ政権には対テロ戦争やイラク戦争での従軍経験者が多い(JD ヴァンス副大統領やヘグセス国防長官など)。彼らは自らの経験から、中東での戦争やnattion building、そして民主主義の普及に反対してきた。彼らの従軍経験が政治家になった大きな理由のはずだ。そんな彼らが権力を握ってから実際にやっていることは、ブッシュ大統領とそれほど変わらないのが最大の皮肉だ。

私は、ブッシュ政権の後処理でオバマ大統領やバイデン大統領がイラクやアフガニスタンで苦労してきたのを長く見てきた。イラク戦争は2003年に始まったが、オバマ大統領がアメリカ軍の撤退を宣言したのは2011年。つまり、アメリカは8年間もイラクのnation buildingをする羽目になった。この間、アメリカの莫大な国富が失われた。対テロ戦争は2001年に始まった。バイデン大統領による強行的なアメリカ軍のアフガニスタンからの撤退(2021年)は記憶に新しい。アメリカは20年間もアフガニスタンの統治に付き合わされた。ここでもアメリカの国力が大きく削ぎ落された。正に帝国の墓場だった。

このように、戦争を始めたことで、アメリカの国力を無駄にしてしまった苦い経験があり、それを肌で実感した従軍経験のある閣僚が複数いるにも関わらず、トランプ政権はイランで戦争を始めた。結局、得をするのはまたしても中国だ。

先述した通り、事態が泥沼化すれば、地上軍が派遣される可能性もある。MAGAはマッチョイムズを強調することが多々あるが、地上軍の派遣が決まると、彼らがLove & Peaceのヒッピー的な反戦活動をする姿を私は想像出来る。人間というのは、離れたところでは威勢が良いものだ。自分に実際に火の粉が降りかかってきたら、やっと事態の深刻さを理解し、理性的になるものだ。



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