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不人気なバイデン大統領の株を持ち上げる

――ジョー・バイデンが引き受けた、最も割に合わない仕事

ジョー・バイデンは、決して人気のある大統領ではない。カリスマもない。演説が歴史に残るタイプでもない。支持率は低迷し、「弱い」「高齢」「決断力がない」といった評価が溢れている。

だが私は、この不人気な大統領の“株”を、ひとつだけ明確な理由で持ち上げたい。それは、彼が「終わらせなければならない戦争」を、自分の政権で終わらせたからだ。

■終わらない戦争の異常さ

アフガニスタン戦争を含む対テロ戦争は、20年以上続いた。これはもはや「長期戦」ではない。制度として惰性化した戦争だった。

「20年前に出征した兵士がいた。その兵士の息子が、再び同じ戦争に送られる。」バイデンが語ったこの事実は、感情的なレトリックではない。民主主義国家としての持続可能性が壊れているという指摘だ。

■数字で見る「終わらない戦争」のコスト

この戦争がもたらしたのは、抽象的な理念ではない。天文学的なコストだ。Costs of War Projectなどの推計によれば、対テロ戦争に費やされた総コストは約8兆ドル規模に上る。戦争・関連作戦による直接・間接の死傷者は数万人規模に達する。帰還兵の医療・障害補償は
今後数十年に渡って続く財政的な負担となる。

重要なのは、これが「過去の支出」では終わらないという点だ。戦争は終わっても、例えば、PTSD治療、その他の医療費、障害年金、そして家族への補償といったコストは、未来に請求され続ける。

■何故それでも続けられてきたのか?

皮肉なことに、戦争は「続いている限り」見えにくい。予算は国防費に埋もれる。死者は統計になる。負担は特定の地域・階層に集中する。一方で、撤退は一気に可視化される。カブール空港の混乱、難民の映像、同盟国の怒り等がその典型例だ。結果として、「続けるコストは不可視化され、終わらせるコストだけが叩かれる」という歪んだ構造が出来上がる。

■それを分かっていて、バイデンは引き受けた

バイデンは若い改革者ではない。上院歴は異様に長く、外交・軍事・財政の現実を知り尽くした政治家だ。ワシントンの政治家で最古参のベテランだったのだ。つまり彼は、こう理解していたはずだ。撤退すれば支持率は下がるし、醜い映像が出る。そして、何よりも自分の政権の「失敗」として記憶される。それでも彼は「この戦争は私の政権で終わらせる」と言った。これは英雄的な選択ではないかもしれない。国家と国民を思っての「これ以上コストを積み上げない」という、極めて会計的で冷酷な判断だったのだろう。

■不人気という“支払われたコスト”

結果として、案の定バイデンの政治的評価は下がった。だが、それは偶然ではない。彼は、政治的支持率を使って戦争という制度を清算したのだ。撤退しなければ、戦費は増え続け、貴重な人的犠牲は続き、財政負担は次世代に回されたはずだ。歴代の次の政権への足枷になっただろう。その「見えない請求書」を、彼は自分の政権で止めた

■好かれる政治家と必要な政治家

ジョー・バイデンは好かれる政治家ではない。だが、国家として必要な判断を引き受けた政治家ではあった。戦争を始める政治家は英雄になれる。戦争を終わらせる政治家は嫌われる。それでも、誰かがやらなければならない。

■株を持ち上げる理由

私はバイデンを英雄だとは思わない。撤退が美しかったとも思わない。それでも、こう言いたい。ジョー・バイデンという大統領は、これ以上“対テロ戦争の請求書を未来に回さない”という決断をした。彼の不人気とは、そのコストを実際に支払った証拠だ。だから私は、この不人気な大統領の株を、もう一度、評価し直したい。


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