Red Hot Chili Peppersは「ロックバンド」を超えて、金融資産になった
―― レッチリ、3億ドル超で音源カタログ売却の意味
Rolling Stone誌によると、アメリカのロックバンド、私の大好きなRed Hot Chili Peppers (レッド ホット チリ ペッパーズ)が、自らの録音済み音源カタログを3億ドル (約450億円超) で売却した。
記事によれば、買い手はレッチリも所属するWarner Music Group。しかも単独案件ではなく、投資会社 Bain Capital との共同事業の一環だという。これは単なる「バンドの資産売却」ではない。音楽そのものが、完全に「金融資産化」された瞬間でもあるのではないだろうか?
■レッチリは何を売ったのか?
今回売却されたのは、「楽曲そのもの (publishing rights) 」ではなく、「録音済み音源の権利」だ。つまり、Spotify・Apple Music・YouTube・映画・CM使用・将来の配信収益などから発生するキャッシュフローを生む資産である。記事によれば、レッチリの録音カタログは年間で2600万ドル (約40億円) を生み出しているという。そして市場では約3.5億ドル規模で評価された。
■5年前にも「別の権利」を売っていた
私も明確に記憶しているが、実はレッチリは、2021年にも出版権 (publishing rights) を約1.5億ドルで売却している。つまり、レッチリは「曲を書く権利」と「録音物の権利」を別々に金融商品として売却したことになる。これはもう、レッチリの動きは「ロックバンド」というよりも、超高収益IP(知的財産)保有企業のそれに近い。
■なぜ今、音楽カタログが異常に高騰しているのか?
ここ数年、Bob Dylan, Bruce Springsteen, Pink Floyd, Queenなど、巨大アーティスト達が次々に権利を売却している。なぜか? 理由は極めてシンプルだ。音楽が「永続課金モデル」になったからだ。昔のCD時代は、ミュージシャンやレコード会社の主な収益は、発売される新アルバム・ツアー・グッズなどが主たる収益だった。しかし、ストリーミング時代は違うのだ。1991年の"Blood Sugar Sex Magik"も、1999年の"Californication"も、2002年の"By the Way"も、毎日、世界中で再生され続けているのだ。つまり、「過去の作品が永久に現金を生み続ける」時代になったのだ。これは投資ファンドからすると、理想的なビジネスに見えるのだ。
■レッチリは「懐メロ化」していない
しかも、レッチリは「レジエンド」ではあるが、完全なnostalgia business にはなっていない。結成から40年以上も経過しているが、現役バリバリなのだ。2022年には、"Unlimited Love"と"Return of the Dream Canteen"を立て続けにリリースした。しかもワールドツアーを2024年まで回っていた。つまり、「過去作品が再生される、新作も売れる、スタジアムツアーも巨大、若い世代も聴く」という、「永続循環型IP(知的財産)」ビジネスになっているのだ。実際に、以前、私がロサンゼルスで観た時も、親子(子はヤングアダルト)で見に来ているファンが多かった。親から子へ消費が継承されているのだ。
■私にとってのレッチリ
私は13歳からレッチリを聴いてきた。彼らのライブには合計で11回も行っている。ベースを始めた理由もFleaだった。Fleaとチャドから直接サインも貰ったことがある。ジョンには話掛けたが無視された笑。そのJohn Fruscianteの性格は、私の思考OSそのものにかなり近い。だから今回の記事を読んで、不思議な感覚になった。自分を救ってきてくれた音楽が、今では数百億円規模の金融商品になっている。でも、それでも私はそこに「魂」を感じる。なぜなら、レッチリは単なる商業音楽ではなく、vulnerability, chaos, addiction, recovery, friendship, そしてLos Angelesという都市の空気 そのものを音楽化してきたバンドだからだ。
■「音楽」と「PEファンド」が交差する時代
今回の記事は、私が最近ずっと興味を持っているPEファンド・IPビジネス・サブスク経済・永続キャッシュフローの世界と、私の人生を作ったレッチリが、完全に繋がった記事だった。そして面白いのは、レッチリが売ったのは単に「音楽」ではないということだ。彼らが売ったのは、「未来永劫、人間が感情を動かされ続ける権利」なのだ。それをWall Streetは理解している。だから300億円でも450億円でも払う。今や、音楽産業は「感情のインフラ産業」なのかもしれない。AIで音楽さえも作れる時代。Fleaとジョンとチャドとアンソニーの4人が集まって、ジャムりながら作るorganicでgenuineな感動の音楽は、AIが学習しても出来ない、正に"Organic Anti-Beat Box Band"にしか作れない音楽なのだ。
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