砂浜で_04⭐【バッケン】【シロクマ文芸部】
砂浜で無邪気にはしゃぐ子どもたち、日焼け止めをお互いに塗っている水着の女性たち、砂に埋められて顔だけ出している男性が、テレビに映っている。
カイトはバッケン(総合化学研究所)の食堂でカレーライスを食べながら、大型テレビを見ていた。
ここには海がないので、多くの人が憧れる人工ビーチの様子が中継されていた。異なる宗教も人種も関係なく、みんな楽しそうだ。
移民受け入れ政策によって、年々人口は増加の一途をたどっていた。それに比例してエネルギー消費量も増え続け、エネルギー不足が深刻な問題となっていた。
核融合発電によって膨大なエネルギーを賄えるようになり、貴重な水も再利用することで人工ビーチの運営は可能になっている。しかし、エネルギー不足が深刻化すれば、レジャー施設から閉鎖されていくことになるだろう。
エネルギー不足を解消するためには、核融合発電の燃料となる水素をいかに効率よく運搬・保管することがカギとなっている。
そのためには、現状以上に水素を吸蔵する合金の開発が必要不可欠だ。しかし、吸蔵できる水素量は合金を組成する元素に依存するため、ブレイクスルーするためには代替えとなる元素を探す必要があった。
「カイトさん、ここの席は空いてますか?」
「マリウス所長。空いてますよ。どうぞ、お座りください」
「水素吸蔵合金の開発は進んでますか?」
「鋭意検討中です」
「それはつまり、うまくいっていない、ということですね」
「はぁ、正直あまり芳しくないですね…」
バッケンのマリウス所長がしぶい表情を浮かべる。このままでは近い将来エネルギー需要量を賄えることができなくなる可能性がある。
「いまある合金の量で現状のエネルギー需要量をあとどれくらい維持できそうですか?」
「そうですね、10年は持つと思いますが…」
「たった10年ですか。このまま人口が増え続けたら、もっと短くなりますね」
「後ほど正式に依頼しようと考えていたのですが、早急にアースへ合金の資源を取りにいく必要があります」
「そうですね。まずはそれで延命して、その間に開発を進めましょう」
「はい」
「資源省にはそのように伝えておきます」
「お願いします」
アースは放射能で汚染されていた。とくに合金の資源が埋まっている場所は高濃度放射性物質で汚染されていて、近づくこと自体が危険な行為であった。
スペースコロニー内の資源は全てアースから持ち運んできていて、放射性物質を除染して活用している。
それっぽいフィクション(SF)のショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
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