夕焼けは_05🌏【バッケン】【シロクマ文芸部】
「夕焼けはなんで赤いか知ってるか?」
「えーっと、チンダル現象が影響しているんだよね」
「シオンってさ、考えるときにこめかみを人差し指でさする癖があるよな」
「ああ、これね。そう、癖なんだ」
「チンダル現象もそうだけど、レイリー散乱の方が影響は大きんだ」
「ああ、レイリー散乱ね。えーっと、光の波長よりもはるかに小さい粒子が光を散乱する現象だね」
こめかみを人差し指でさすりながらシオンが答えた。夕方になって太陽が沈む頃には光が大気を通過する距離が長くなる。大気中の塵や埃が光を拡散するのがチンダル現象だ。塵や埃よりもはるかに小さい粒子によって光が散乱されるのがレイリー散乱。
波長の短い青い光はすぐに散乱されてしまい、波長の長い赤い光が残って夕焼けは赤く染まるのだ。
お互い、夕焼けに関するうんちくを垂れながら歩いていると、いつの間にかバッケン(化学研究部)が活動している基礎化学実験室に着いた。
なかに入ると多くの学生で賑わっていた。実験室の中央で20人ほどの学生がテーブルを囲むように円になって手を繋いでいた。皆、一様に緊張している。
「諸君。そろそろ、いくぞ。心の準備は…」
『ドンッ』
と聞こえたような気がした。一斉に学生たちが悲鳴をあげて手を振りほどいていた。銀色のコップに指で触れた白衣を着た人は、その様子を見てニヤニヤしている。
「諸君。安心したまえ。この実験で命を落としたものはいない」
「フライングはないっすよ」
「そうよ、心の準備が必要だわ」
「なにを言っているんだ。心の準備を待っていたら手を離すだろうが」
「だからって」
「あー、びっくりした」
白衣を着た人の前には細長い風船が置かれていた。なるほど、静電気の実験だったのか。シオンと目があうと話しかけてきた。
「やあ、諸君たちも入部希望か?」
「あ、はい」
「歓迎するぞ。そこのジュースでも飲みたまえ」
「ありがとうございます、イタッ」
コップに手を触れたらバチッとした。コップに静電気を帯電させていたらしい。
「バッケンの洗礼だ。すまん、ゆるしてくれ」
「はぁ」
ムッとはしたが、遊び心があって面白そうな部活のようだ。
「ワシは部長のショーヤだ」
「シオンです」
「ユースケです。よろしくおねがいします」
翌日、正式にバッケンへ入部届を提出した。
それっぽいフィクション(SF)のショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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