空の旅_07🌏【バッケン】【シロクマ文芸部】
空の旅といえば飛行機だが、ユースケは飛行機の窓から打ち上げ花火を見下ろしたことがあるとシオンに得意げに話していた。
「花火ってさ、上から見ても丸いんだな」
「球体なんだから当たり前でしょ」
「小さい頃さ、田舎のじいちゃん家から打ち上げ花火が見えたんだ」
「へえ、いいな」
「『ここは角度が悪いから、花火が歪んで見える』って、じいちゃんがよく言ってた」
「そうなんだ」
「だからさ、花火って横から見ると平べったいって、ずっと思ってたんだ」
シオンとユースケはバッケン(化学研究部)が活動している基礎化学実験室にいた。暗幕で閉ざされた実験室のなかで、ロウソクの上で幻想的に揺れている青い炎を見つめながら話していた。
「諸君。どうだ、美しいだろ」
背後から現れた部長のショーヤに、シオンはこめかみを人差し指でさすりながら尋ねてみた。
「この青い炎のロウソクはどうやって作ったんですか?」
「バカ者ッ!聞いてどうする。それを考えるのがバッケンだ!」
ぐうの音も出ない。まさしくその通りだ。答えを教えてもらっては、バッケンの面白さがなくなってしまう。
「ユースケ、わかる?」
「とりあえず、花火と同じで炎色反応を利用していることはわかる」
「青色ということは…」
「ダウニウム、だな」
「ダウニウム?」
「そうだ」
「ああ、ダウニウムね」
「きっと、ロウソクに混ぜているんだ」
早速、実験室の照明をつけて青い炎のロウソクを作ってみることにした。薬品棚からダウニウムを取り出し、ダウニウムの粉をビーカーに入れて溶かしたロウに混ぜてみた。ロウが固まる前に芯を入れてロウソクの型にはめると、見た目は普通のロウソクが完成した。しっかりと固まったところで火を点けてみた。
「うーん、オレンジの炎のままだ」
「たまに、青くなるけどな」
「粉のままだと、均一に混ざらないんじゃないかな」
「水溶液にして混ぜたらどうだ」
今度はダウニウムの粉を水に溶かして水溶液にし、そこへ溶かしたロウを入れてみた。
「うーん。うまく混ざらない…」
「ロウが固まるときに分離しちゃうな」
その様子をニコニコと眺めながら、ショーヤがまた近づいてきた。
「諸君。悪戦苦闘しているようだな」
「ロウソクにダウニウムを混ぜたいんですが…」
「うまく混ざらないんです」
「諸君らは、肉ばっかり食べていて野菜不足じゃないのか?」
「なんのはなしですか?」
「部長、ヒントくださいよ」
ショーヤはサラダ用のドレッシングを机に置いて、去ってしまった。
それっぽいフィクション(SF)のショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
毎週ありがとうございます。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートして頂いたら有料記事を購入します!