雲を売る_09(00)🌏【バッケン】【シロクマ文芸部】
雲を売るおじさんのことを思い出していた。
シオンが幼い頃、父のカイトに綿菓子を買ってもらったのだが、その綿菓子の名前が『雲』だった。「くもってなあに?」とシオンはカイトに尋ねたことを覚えている。スペースコロニー生まれのシオンは本物の雲を見たことがないのだ。
スペースコロニーでは、水は特殊なフィルターでろ過して再利用している。だから、水循環は起こらないので、雲も発生しない。
シオンは『ガイア』と呼ばれる惑星を探索する任務についた。ガイアには本物の雲がある。綿菓子みたいな雲を想像しながら、宇宙船に一緒に乗り込んだ他の探索員たちとガイアについて談笑していた。
宇宙船がスペースコロニーから宇宙空間に出ると超重力装置を使って空間を歪めてガイアの近くまでワープした。ワープを簡単に説明すると『一』を『Ω』にするのだ。
『一』の左端をアース、右端をガイアとしよう。超重力装置で『一』を『Ω』のよう空間を歪ませて『Ω』の下の棒をくっつける。そうして上の曲線に行かずに左端のアースから右端のガイアまで下の棒一直線でショートカットすることが、ワープなのだ。
宇宙船がガイアに接近したところで手動操縦に切り替えて、大気圏に突入すると指定された場所に無事に着陸することができた。
既にガイアには別の探索員が潜入していて、シオンを迎え入れる準備をしていた。
「長旅、お疲れさまでした」
「いえ、あっという間でした」
「ガイアでの生活の準備は全て整っています」
「ありがとうございます」
「ガイアでは『シオン』になってもらいます」
「はい、父から伺っています。早く慣れるようにスペースコロニーでもシオンと呼んでもらっていました」
ガイアのシオンは幼い頃に事故で家族を亡くして身寄りがなかったので、身代わりになるターゲットとして選ばれたようだ。サイエンス大学に入学することも決め手のひとつだったようだ。
ガイアのシオンは大学の寮に移るため児童養護施設を出る日に、待ち伏せしていた探索員に特殊な光線銃で気絶させられ、身柄を拘束されたという。現在、彼は宇宙船の中でコールドスリープされている。
「それでは、いまからサイエンス大学の寮に行ってもらいます」
「わかりました」
探索員から体内に埋め込んでいるICチップにガイアの情報をインストールしてもらうと、こめかみを人差し指でさすって、シオンに関する情報を読み込んだ。
それっぽいフィクション(SF)のショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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