見出し画像

星を買う_10🌏【バッケン】【シロクマ文芸部】

( 前 話 / 登場人物と目次 )


星を買うくらいの気持ちで惑星探索員たちは惑星ガイアにやってきた。

もしかすると将来、自分自身が、そして子供たちがこのガイアで生活するかもしれない。そう考えると、このガイアが惑星としてどれくらいの価値があるのか査定する目線で調査する必要があった。

シオンのミッションは核融合発電の原料となる水素を保管するための水素吸蔵合金の性能を向上させる新たな元素を探すことだった。

だから、サイエンス大学に潜入できることは都合がよかった。元素資源に関する情報が得られやすいからだ。また初日に知り合った、寮の隣部屋のユースケに誘われて、好きに化学実験ができる化学研究部、通称『バッケン』に入部できたことも好都合だった。

「シオン、今日は何食べる?」
「えっ?ごめん。考えごとしてた」

シオンとユースケの二人はバッケンの活動場所である基礎化学実験室で青い炎のロウソク作りに取り組んでいたのだが、行き詰ってしまい、とりあえずお腹が空いたので食堂へ向かっていた。

「俺はカツ丼にしようかな」
「いいね。僕も同じにしようかな」

食券を買うと丼物のコーナーに並んだ。

「おばちゃーん、カツドーン」
「僕も、カツ丼」
「わたしはカツ丼じゃないわよ」

いつもと変わらない会話を交わす。

「それと、サラダ」
「僕も」
「あら、珍しい」

トレイにカツ丼とサラダをのせて、テーブルに運んだ。

「どうやったら、ダウニウム水溶液を均一にロウソクに混ぜられるんだ?」
「水と油だから、そう簡単に混ざらないよね」

シオンは基礎化学実験室でショーヤ部長から受け取ったドレッシングを勢いよく振ってサラダにかけた。

「それだ!」
「なにが?」

「ドレッシングだよ」
「ドレッシングがどうしたの?」

「水と油が混ざってる」
「ほんとだ」

ドレッシングを振ると水分と油分が混ざった状態になる。

「でも、置いておくとまた分離しちゃうんだよな…」
「ずっと混ざったままにならないかな」

「乳化だ!」
「そうか、乳化か!」

「界面活性剤を使えばいいんだ」
「いけるかもしれない」

界面活性剤とは、水になじむ親水基と油になじむ親油基を両方持つ物質で、本来混ざり合わない水と油を均一に混ぜ合わせて安定させる作用を持っている。

急いでカツ丼とサラダを食べ終えると、基礎化学実験室に向かった。

ダウニウム水溶液に界面活性剤を入れたあと、溶かしたロウを混ぜてみた。結果、均一に混ぜることができた。あとは芯を入れてロウソクの型にはめて完成だ。

「じゃあ、火を点けるぞ」
「ドキドキする」

「よし。うわー、やったー!」
「きれいな青い炎だ!」

「すげー、達成感があるなー」
「ダウニウムってすごいね」

「ああ、水素吸蔵合金にも使われる元素だからな」

(つづく)



(ひとつ前の話はこちらをクリック)

それっぽいフィクション(SF)のショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。

(【登場人物と目次】はこちらをクリック)

小牧幸助さんの企画に参加しています。
毎週ありがとうございます。

#シロクマ文芸部
#ショートショート
#連載
#バッケン

いいなと思ったら応援しよう!

ひろいてん サポートして頂いたら有料記事を購入します!