山の向こうの小さな駅
― 朝を集めるヤマネ シリーズ③ ―
ある朝。
ヤマネは遠くの山を見ていました。
山の向こうには、
どんな景色があるんだろう。
どんな町があるんだろう。
そう考えているうちに、
少しだけ行ってみたくなりました。

小さなリュックを背負い、
ヤマネは歩き始めます。
見慣れた道を抜けると、
少しずつ山道になっていきました。
鳥の声。
木々を揺らす風。
足元で揺れる草花。
知らない景色が少しずつ増えていきます。

登って。
また登って。
ときどき立ち止まりながら。
それでもヤマネは歩き続けました。
山の向こうを見てみたかったからです。

山を越えると、
今まで見たことのない景色が広がっていました。
小さな町。
細い川。
遠くまで続く線路。
そして。
線路の先に、
小さな駅が見えました。

駅はとても静かでした。
ホームには誰もいません。
古い木のベンチ。
小さな時計。
風に揺れる草。
時間まで、
ゆっくり流れているようでした。

ヤマネはベンチに座りました。
遠くから、
かすかに音が聞こえます。
ガタン。
ゴトン。
ガタン。
ゴトン。

やがて列車がやってきました。
列車は静かに停まり、
また静かに走り出します。
ヤマネは乗りませんでした。
ただ、
遠ざかる列車を見送ります。
知らない町へ向かう列車。
知らない景色へ向かう列車。
それを見ているだけで、
少しわくわくしました。

ヤマネは手帳を開きました。
そして今日見つけたことを書きます
「知らない景色は、
世界を少し広くしてくれる。」
書き終えると、
少しだけ笑顔になりました。

帰るころには、
夕方の風が吹いていました。
列車には乗らなかったけれど。
遠くへ行ったわけでもないけれど。
山の向こうには、
まだ知らない景色があることを知りました。

家へ帰ったヤマネは、
手帳をそっと閉じます。
知らない景色は、
世界を少し広くしてくれる。
そう思いながら、
ヤマネはもう一度、
山の向こうを見つめました。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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【朝を集めるヤマネシリーズ】
①【朝を集めるヤマネ】
②【雨の日の喫茶店】
④夜明け前の展望台
【「朝を集めるヤマネ」を作るきっかけになった話】
【「朝を集めるヤマネ」を曲にしてみました】
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