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ahamoだけ遅い?NTTドコモの通信品質にまつわる噂の背景は

2026年5月8日、NTTドコモは2025年度の通期決算を発表しました。増収減益で、コンシューマ通信(一般向けモバイル通信)事業の販促費用が負担となって減益、それをスマートライフ事業と法人事業で補う構図が続いています。

ちなみに増分の大きいスマートライフ事業ですが、住信SBIネット銀行の子会社化による貢献が大きいようで、他にdカードやdポイントなどの収益が拡大しているようです。

本業のコンシューマ通信事業では、2025年度は「ドコモMAX」による実質値上げをしてARPU(ユーザーあたりの売上)が増加したにもかかわらず、コンシューマ通信事業の総収入は減少しており、(おそらく通信品質問題に端を発する)ユーザー離れが深刻化している様子がうかがえます。

NTTドコモ 2025年度決算および2026年度業績予想の説明会資料より引用

その決算発表記者会見の際、「ahamoだけ(「ドコモMAX」などと比べて)通信品質が悪い」という噂について質問されたNTTドコモの前田義晃社長が「それはない」「あの噂だけはどうにかならないかと思っている」と応じたようです。

その噂とは、旧Twitter(X)などで一部のユーザーが漏らした感想が拡散されたものを指しているようです。

(参考)X(旧Twitter)の最近のポストを検索できるYahoo!リアルタイム検索で「ahamo 遅い」と検索してみた例

で、噂の真相はどうなのでしょうか?

結論から言うと、ドコモが意図してahamoだけ遅くしていることはないとのこと。でも、火の無い所に煙は立たぬとも言います。

と言っても、当事者であり基礎データを最も多く持つ立場のドコモの社長にすらどうにもならない噂なので、確たる根拠は誰も持ち得ないでしょう。

そこで今回は、こんな噂がまかり通るまでに劣化してしまった昨今のドコモの通信品質の構造問題を少し深堀りすることで、真相に迫ってみたいと思います📶


噂の背景にあるahamoの3つの構造

NTTドコモにはahamo以外にも「ドコモ MAX」「ドコモ mini」があります(「eximo」「irumo」などの旧プランもあります)が、噂の主はおそらく、日時場所や機種を揃えてドコモの他のプランと実際に使い比べたわけではないのだと思います。

ドコモ回線全体が鈍重なのであって、ahamoだけが(「ドコモ MAX」などと比べて)遅いわけではなさそうですが、なぜ「ahamoが遅い」と言われてしまうのでしょうか?

その背景にある可能性として考えられるのは、3つ。いずれも推測にはなりますが、ある程度の根拠を示してみたいと思います。

  • ahamoユーザーの存在感(ユーザー数、データ通信量ともに多い)

  • ahamoには他社を使った経験があるユーザーが多い

  • ahamoユーザーには(他のプランと比べて)5G n79 非対応の(SIMフリー機種や他社から持ち込んだ)Android機種を使っている人が多い

ahamoユーザーの存在感

まず1つめに、ahamoの契約数は800万超になった(2025年度末)そうです。対して現在のドコモの主力プラン「ドコモ MAX」は300万契約を突破したそうです。

ドコモのハンドセット契約数 5,300万のうちahamo契約者は15%になりますが、そもそも通話とメールくらいしか使わないような少容量ユーザーは、あまり「遅い」などと気にしない傾向はあるでしょう。データ通信を多く使う人は「ahamo」か「MAX」「eximo」などの大容量プランを契約していると思いますが、その中においてahamoユーザーの存在感は大きいと言えそうです。

また、ahamoは2021年の開始当時に「デジタルネイティブ世代のニーズに特化し、スマホファーストのシンプルなサービスをオンライン限定で提供するプラン」として登場した経緯があります。そのユーザー層がSNSとの親和性が高いという可能性もあるかもしれません。

他社を使った経験があるユーザーが多い

2番目は、ドコモショップで契約している人に比べて、オンライン契約&自分で設定が原則のahamoユーザーには詳しい人が多く、モバイル通信への関心が高い人も多そうです。

モバイル通信への関心が高く、設定を自分でできる人は乗り換え抵抗が低いでしょうから、他社から乗り換え(MNP)で移ってきた人も多そうです。すると、(他社と比べて)ahamoの通信品質は…といった感想が増えるのも肯けます。

一方、「eximo」や「ドコモ MAX」などのドコモショップで契約できるプランは縛り前提。以前の「eximoでは、半数のユーザーに割引がすべて適用されて」いたという話もありましたが、この傾向は「ドコモ MAX」でも大差ないでしょう。ドコモにガッチガチに縛られ済みのユーザーは、他社をあまり使っていないでしょう。他社の使用感を知らない、ドコモだけを使い続けてきたユーザーであれば、遅いのが当たり前だと思っているかもしれません。

5G n79 非対応の機種を使っている人が多い

そして、3番目はこれ。筆者はこれがいちばんあり得そうだと思っています。

iPhoneには(5Gに対応している iPhone 12 シリーズ以降であれば)この心配はないのですが、国内で半分くらいはAndroidユーザーです(2025年9月時点でiPhoneが48.3%、Androidが51.4%だったとか)。

もちろん、ドコモが販売している機種は全て 5G n79 に対応しています。ドコモショップで「ドコモ MAX」などを契約した人は、ドコモが販売している機種を使っている人が多そうですが、そういう人はドコモ回線の通信品質低下の影響を受けにくいのです。

一方、ahamoでも一応端末を販売してはいますが、ラインアップは限定的ですし、キャリアショップと違って通販型のahamoではSIMのみ契約が一般的ですから、他社から乗り換えで、機種はそのまま持ち込んで使っている人も多いでしょう。

しかしAndroidには販路毎にカスタマイズされている機種が多く、UQYM楽天が販売しているAndroid機種には、ドコモの 5G n79 に非対応の機種が多くあります。家電量販店や中古店などで購入した場合も同様です。

これは他社が意地悪をしているのではなく、ドコモが世界でもほとんど使われていない 5G n79 に依存するネットワークを構築してきたことが背景にあります。

ドコモが主力としている周波数帯(4.5GHz帯)の 5G n79 は、日本ではドコモしか使っておらず(2030年頃よりソフトバンクも利用開始予定)、世界的に見ても中国などで使われてはいるものの、採用国の少ないローカルバンドです。

ほぼ日本でしか販売していない SONY Xperia や SHARP AQUOS などは 5G n79 にしっかり対応している機種も多いのですが、海外メーカーから見ると超ローカルバンドであり、しかも国際バンドの 5G n77・n78(3.7GHz帯)と離れているため、対応するにはアンテナなどの追加コストがかかります。ドコモが積極的に採用しているSamsungならばいざ知らず、ドコモが採用すらしていない海外メーカーが対応を見送るのは致し方ない面があります。

言い替えると、欧州などでも使われている国際バンドの 5G n78 にはSIMフリー機種や他社販売端末も対応していることが多く、そしてドコモは 5G n78(3.7GHz帯)も保有しているので、ドコモが 5G n78 をまともに整備していればここまで酷いことにならなかったでしょうが、残念なことにドコモは 5G n78 の整備をサボってきました。干渉問題が解消し、通信品質問題への関心が高まった2024年以降ようやく、都市部の繁華街や駅などで 5G n78 を整備し始めるようになりましたが、住宅地などでは今でも 5G n79 しか使えない場所が多くあります。

5G n79 非対応の機種でドコモ回線を使うと、アンテナピクトに5Gと表示されていても、実際には4Gを使います。5G n79 非対応の機種が総数としては多くなくても、4Gの混雑による通信品質の劣化は他のユーザーにも波及することになります。特にドコモ回線はMVNOユーザーも多いですが、MVNOでは 5G n79 非対応の機種とドコモ回線をセットで販売している所も多いですから、ドコモで4Gの混雑が酷い大きな要因は 5G n78 の未整備だと思います。

ahamoは原則オンライン契約で、設定も自分でする必要があるので、比較的詳しい人が使っているとは思いますが、機種の対応バンドまで意識して使っている人は多くないのかもしれません。(または、対応バンド構成まで意識しているほど詳しい人は、今の通信品質が劣化したドコモ系からすでに脱出しているのかもしれませんが(^^;。)でも、機種の対応バンド構成は必ず確認しましょう。

筆者もドコモ回線と様々なSIMフリー機種の組み合わせを実地で試していますが、ドコモ回線の 5G n79 対応可否による使用感は段違いです。ahamoを使い続けたい人は、5G n79 に対応した機種を使うことを強くお勧めします。

逆に、機種にこだわりがあって回線にこだわらない人は、povo 2.0LINEMO楽天モバイルなどに乗り換える方が幸せになれそうです。

なお、通話用や登山用などのサブ回線については、5G n79 非対応の機種でもほぼ問題なく使えます。

VoLTE通話はQoSが働いて優先接続されるため、混雑の影響を受けにくくなっています。山間地では混雑することが稀ですし、それ以前に5Gがほとんど整備されていません。なので 4G Band 19(いわゆるプラチナバンド)に対応していれば、ドコモ系のMVNOを通話用や登山用などに使うのは差し支えありません。

契約プランによる通信品質の制御は可能なのか

ここまで、ドコモの通信品質問題の背景を垣間見てきましたが、今回のはもうひとつあります。ドコモの他のプランと比べて「ahamoだけが遅い」というものです。

しかし、そもそも契約プランによる通信品質の制御は可能なのでしょうか?

現行の4G・5G(NSA)モバイル通信では(※)、主にSIMカードに記録されている加入者認証番号「IMSI」と、ユーザーが設定する「アクセスポイント名(APN)」を使って接続制御されます。

※5G SA になると、ネットワークスライシング機能による「個別SLA (Service Level Agreement)」ができるようになります。この仕組みを使ったのが「au 5G Fast Lane」や“ソフトバンク”の「Fast Access」です。

IMSIは電話番号とは異なり、一般ユーザーに馴染みが無いものですが、先頭5桁に国番号(MCC)とネットワーク番号(MNC)があって、ドコモ回線に接続するには、MCC-MNC(PLMN-ID)が440-10のIMSIを持つSIMが必要です。

IMSIは通信キャリアが書き込み、SIMカードやeSIMがユーザーの手に渡った後で書き換わることはありません。「ドコモ MAX」「ドコモ mini」などから「ahamo」へプラン変更する場合にSIMカードの再発行は不要で、そのまま使うことができます。つまりSIMカードの中身は共通です。

もうひとつのAPNは、(キャリアショップではなく)家電量販店や中古店などでSIMフリー機種を買ってきて設定したことのある人には馴染みがあると思います。NTTドコモが提供する「ドコモ MAX」「ドコモ mini」「eximo」「irumo」などのAPNは「spmode.ne.jp」ですが、これはahamoでも同じです。

このようにSIMもAPNも同じなので、ネットワーク機器から見ると「ドコモMAX」と「ahamo」のユーザーを区別するのは難しそうです。

ただし、ドコモがかつて提供していた「irumo」では、「当社設備内でネットワークの混雑時に「eximo」「ahamo」等の他の料金プランよりも先に通信速度の制限(通信制御)を実施するため、通信速度が遅くなる場合(例えば動画視聴ではご利用の通信環境により画質が低下する場合)があります。」と但し書きされていました。

これが実際に実施されたことがあるかは不明ですが、わざわざこのような但し書きを設けているからには、上記のSIMカードやAPNによるユーザー識別とはまた別に、ドコモのネットワークには契約料金プランによる差をつけることが可能な仕組みが存在していると推測できます。

例えばIMSIの下10桁を見ればユーザーを識別できるので、ネットワーク機器が都度IMSIを見て優先・非優先を判断することは理論上可能です。ただし加入者DBやそのキャッシュへ問い合わせを要するなど、ネットワーク機器の負荷が高まりそうです。

機器の性能も上がっているので一概には言えませんが、ネットワークの混雑時にネットワーク機器の負荷を増大させることが合理的かは疑問ですし、少容量プランである「irumo」ユーザーのデータ通信量はたかが知れています。混雑時にデータをたくさん使う人を制限しなかったら混雑緩和にならないでしょう。「irumo」よりも「eximo」を契約してほしいという内心から出てきたブラフなのかもしれませんが、なんでこんな不合理な但し書きを入れたのか疑問です。

そして、「ahamo」にはこうした差別的にも見える但し書きは無いのですが、かつて存在した「irumo」が受けていた扱いから、ユーザーに類推させた可能性もありそうです。

いずれにせよ、ドコモの身から出た錆ですから、当のドコモにもどうにもならないのかもしれません。

ドコモも重い腰を上げて、鉄道沿線などの混雑エリアでは 5G の整備を積極化している

ドコモ失敗の本質

最後に、まとめます。

ドコモが通信品質問題で躓いた原因はいくつかあると思いますが、やはり 5G n78 の整備に後ろ向きだったことが大きいのではと思っています。

実際、5G n79 非対応の機種は多く流通しています。ドコモは他社から乗り換えで入ってくるユーザーに多額の販促金を積んでいますが、それらのユーザーが持ち込む端末は少なからず 5G n79 非対応。でも 5G n78 にはほぼ対応しています。ドコモが 5G n78 をしっかり整備していれば、他社から乗り換えで移ってきてくれたユーザーにも快適な通信サービスを提供できたことでしょう。

ドコモが 5G n78 を整備していれば、端末持込が多そうなahamoのユーザーにも快適な通信サービスを提供できたことでしょう…(5G n79 非対応の Xperia 5 IV SB版+ドコモ回線 5G n78、2024年1月)

または、ドコモがどうしても 5G n79 を主軸にしたいのであれば、海外メーカーにも 5G n79 に対応するインセンティヴを与えるべきだったと思います。

ドコモはかつてHuaweiなども採用していたのですが、米国トランプ政権の制裁を受けて以降は海外メーカーとの取引を厭うようになりました(例外は Samsung Galaxy、Apple iPhone と Google Pixel)。OPPOやXiaomiなどの中国メーカーのみならず、米国に拠点があるmotorolaや、英国に拠点があるNothingなども採用していませんが、これらはSIMフリー市場やMVNOなどの格安スマホで人気のメーカーです。

これらのSIMフリー市場で人気の機種を、必ずしもドコモが自ら販売する必要はないでしょうが、5G n79 はドコモ回線に対応するための追加コストなのですから、せめて 5G n79 に対応するメーカーには接続性試験を無料で提供し、通過したSIMフリー機種をahamoやMVNOのユーザーに案内するといった取り組みはあっても良さそうなものです。

とはいえ、(ドコモの他のプランと比べて)ahamoだけが遅いということは考えづらいのですが、ahamoには 5G n79 非対応の機種を使っている人が多い傾向はありそうです。

一方、「ドコモ MAX」はドコモショップで契約する人が多いことや、端末購入時の値引きが手厚いこともあり、「ドコモ MAX」ユーザーの機種はドコモ版(5G n79 対応)が多いと推察されます。

そうなると、例えばコミケ会場やレジャー施設などの混雑する場所に友達と出かけた際に、「ドコモ MAX」を使っているアイツはサクサクなのに、「ahamo」のオレはこんなに遅い…あれ、もしかしてドコモは料金プランで差別してる?といった誤解が生じた可能性はありそうに思えます。

さらにドコモは通信品質問題が顕在化したここ数年、多くの人が集まるイベント会場等で 5G n79 を増強してきたので、彼我の差が尚更拡がってしまった面もありそうです。

そして、ドコモではかつて「irumo」にて不合理で差別的な但し書きを入れてしまったことが、プランによる格差が存在するのでは?といった誤解を後押しした可能性もありそうです。

とはいえ、過ぎたことだけを言っていても仕方ないのですが、気になるのは、当のドコモが反省しているように見えないこと。反省していれば、5G n78 の積極整備や、端末メーカーに 5G n79 対応を促す取り組みをしている、といった話が出てきても良さそうなものですが、寡聞にもそうした話は聞こえてきません。

もちろんドコモでも通信品質問題は認識しており、その対策として2025年度には前年度比15%多い約6800局の5G基地局が新築されたそうです。そして引き続き2026年度も設備投資や販売促進のための費用が膨らむことを予想しています。

NTTドコモ 2025年度決算および2026年度業績予想の説明会資料より引用

3G停波により800MHz帯を4Gに転用して増強し、これを受けて従来の 4G Band 28 を 5G n28 に転用できた効果も大きいのではと思います。

しかし、こうした取り組みにより一旦は改善しても、トラフィック増に耐えきれなかったのか、再び悪化してしまった場所も散見されます。従来の延長で 5G n79 を整備するだけでは非対応ユーザーは置いてけぼりになります。失敗の本質を反省をせずに対症療法だけを続けていても効果的な対策は難しいでしょう。

ぜひドコモには本業の通信品質をしっかり立て直してほしいと願っています。

(2026年 7月28日追記)2026年7月時点の、都市部でのドコモの通信品質に関する記事を書きました。


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