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ソフトバンクとドコモが「Starlink Direct」を開始🛰

2025年4月にKDDIが「au Starlink Direct」を始めて早1年。ソフトバンクとNTTドコモが2026年4月に相次いで「Starlink Direct」を始めます。残る楽天モバイルも、AST社の衛星を使った人工衛星との直接通信サービスを年内に始めるべく準備中です。

ここにきて衛星通信界隈が賑やかですが、ドコモの発表から間髪を入れずに詳細未定のプレスリリースを出したソフトバンクの慌てぶりにも表れているように、通信キャリアから見ると、「ユーザーにサービスの差分があってはいけない」からやる、言い替えると、やらないと取り残されるという存在になってしまったようです。

でも、ユーザー目線に立つと、衛星通信ってどこで使えるの?どのくらい使えるの?本当にどこででも使えるの?今でも困ってないよ?などと不思議に思っている人もいると思います。

かたや、ドコモとソフトバンクが追従して「Starlink Direct」を始めることを受けて、マスコミなどには、先行するKDDIと横並びになってしまったという論調もあるようです。本当にそうなのでしょうか?

今回は、そのあたりの謎を少し解いてみたいと思います。

なお、「Starlink Direct」の使い勝手については、以前の記事をご覧ください。


ソフトバンクとNTTドコモが相次いで参入

NTTドコモは2026年 4月27日に「docomo Starlink Direct」を始める旨、4月2日に発表しました。

その直後、ソフトバンクも追いかける旨を発表しました。でも(マスコミに)聞かれる前に発表だけしたのかもしれませんが、詳細は不明でした。

年度替わりの4月は携帯電話の契約を取りやすい時期と言われます。ドコモは衛星通信を全プランに当面無料で提供することで、獲得に役立てたいという営業的な判断かもしれません。

そして、ソフトバンクは「SoftBank Starlink Direct」という名称で、ドコモよりも早く4月10日にサービス開始しました。こちらは「当面」ではなく、“ソフトバンク”と“ワイモバイル”の「シンプル」「シンプル2」「シンプル3」を契約しているユーザーは申込不要・追加料金無しで利用できます(ただし対応料金プランは値上げされることが同時発表されました(;_;))。

また、出先で使いたいであろう「PayPay」や「LINE」などのアプリは順次対応予定となっており、周辺準備が整う前に急いで始めた様子がうかがえます。

そして、「SoftBank Starlink Direct」開始に合わせて「LINE」とYahoo!系アプリが順次、各社「Starlink Direct」で使えるようになります。2025年は「au Starlink Direct」を使っていてLINEが使えず不便していた人もいたと思いますが、au・ドコモ系ユーザーにも恩恵になりそうです。

「docomo Starlink Direct」が始まる4月27日は大型連休直前。と言ってもドコモが圏外になるような観光地はほとんどありませんし、東日本の山域では5月まで雪が残っているところも多いですが、西日本では早速登山に使い始める人もいるかもしれません。各社の「Starlink Direct」を使うのを楽しみにしている人もいることと思います。

ドコモとソフトバンクの料金施策

ドコモの「当面無料」がどれくらいの期間かは公表されていませんが、昨年始めたKDDIもキャンペーンで6ヶ月間は実質無料で提供していました(2026年4月現在は3ヶ月無料)。お試し期間という位置づけなのだと思いますが、ソフトバンクが無料で追従したので、対抗上、ドコモの「当面無料」も長くなるでしょうか…?

ソフトバンク系は、“ソフトバンク”と“ワイモバイル”の「シンプル」「シンプル2」「シンプル3」は申込不要・追加料金無しで利用できます。

“ワイモバイル”の旧プランと“LINEMO”のユーザーは、2026年6月末まで申込不要・追加料金無しで使えますが、7月以降(予定)は月額1,650円のオプションサービスになります。LINEMOユーザーには、オプションサービスを始める準備が整うまでは無料で提供するのでしょう。

ドコモは3G停波による空き帯域を活用

もうひとつ、2026年4月に始める理由を推測すると、ドコモは2026年3月に3Gを停波し、2GHz帯と800MHz帯に空きがでました。そのうち800MHz帯は混雑する4Gに転用されると公表されています。衛星通信は2GHz帯を使って提供されることになりそうです。

もっとも、衛星通信は地上の電波(4G・5G)が届かない場所に限って提供されますし、山域では2GHz帯よりも800MHz帯の方が届きやすいので、必ずしも衛星通信専用の帯域を用意する必要はないのですが、限られた公共の電波を各社とも目一杯使っていますから、3Gを止めて帯域に余裕ができたことは運用上のメリットになりそうです。

現実的に使える場所は意外と少ない

エリアマップを見ると今まで空いていた場所にも色が付いて、使える場所は多そうだなーと思うかもしれません。でも冷静に考えると、現実的に使える場所はあまりないと思います(^^;。

いま使っているスマートフォンが屋外で圏外になる場所、ありましたか?あったよーという人は、登山や釣りに行く人が多いと思います。山間地に住んでいて、あるいは農林業をしていて、日頃から圏外に出ている人もいると思います。でも市街地に住んでいると、一般にはあまり想像できないと思います。

地下やホールなどの建物内で圏外になることはままありますが、こういう場所には衛星の電波も届きません。

日本の通信キャリアは高品質なサービスを提供していますが、大手3キャリアはエリアも広くて、人が住んでいる場所で圏外になる場所を探す方が大変です(^^;。

登山で「Starlink Direct」を体験する

大手3キャリアで使えるようになった「Starlink Direct」は、地上の電波が完全圏外になる場所でしか体験できませんが、どんな場所へ行けば「Starlink Direct」を体験できるでしょうか?

想像しやすいのは、登山だと思います。

筆者も2025年に「au Starlink Direct」を半年使わせてもらったことは以前書きましたが、auのエリアはとても広いので、人が住んでいる場所ではほぼ圏外になりません。そして衛星の電波を安定して使うには空が開けている必要もあります。この条件に合致して実際に衛星通信が使えたのは、住む人のいない山域か廃村でした。

ただし、日本は国土面積の2/3が森林になっているそうですが、低山は森林になっていることが多く、また山があれば谷もあるわけですから、空が大きく開けた場所というのは意外とありません。釣りやキャンプ場などにしても、地上の電波がぎりぎり入るとか、山や森林に囲まれているなどして、衛星の電波を掴みにくい場所が多そうです。

ある程度高い山に登ると空が開けますが、森林限界を越えるような登山には本格的な装備や経験が必要になることもあって、誰でも行けるわけではありません。

(入念な準備は要りますが)比較的行きやすい場所には、奥日光尾瀬立山黒部アルペンルート(※)などのよく整備された山岳観光地があります。

※尾瀬は登山道を歩きます。奥日光やアルペンルートはバス停付近では衛星通信を使えないので、湿原の歩道ないし登山道をしばらく歩く必要があります。

筆者も尾瀬には毎年出かけていますが、2025年シーズンには尾瀬などで「au Starlink Direct」を使っていそうな人を時折見かけました。2025年は6月と10月に出かけましたが、6月に衛星通信していそうな人はほぼ見られず、10月には何人かいたので、少しずつユーザーが増えていったのでしょう。

尾瀬沼(大江湿原)で「au Starlink Direct」の電波を掴んだ様子

2024年度末時点のMNO4社のシェアは91.2%、KDDIのシェアは27.2%(※)。2025年はMNO契約者の3割以下しか使えなかったわけですが、2026年はドコモ(38.9%)とソフトバンク(25.1%)が加わって、単純計算で2025年比3倍以上の人が使えることになりそうです(シェアの変動や専用プラン利用者、対応機種などは考慮していません)。2026年シーズンは尾瀬などで「Starlink Direct」していそうな人を3倍多く見かけることになるでしょうか。

総務省資料「通信市場・端末市場の動向について」(2025年6月16日)より。このうちau以外(UQ・povo)は対象外だったので、実際に使えた人はさらに少なかったと思われます。

登山せずに「全キャリア圏外」を体験する

せっかく始まった衛星通信を試してみたいけれど、登山はちょっと…という人には、首都圏から比較的気軽に訪ねやすい場所があります。ただし最寄駅から片道6kmほど歩くので、ハイキングがてら出かけてみましょう。
(冬は積雪するので春~秋に行きましょう。)

奥日光中禅寺湖から山ひとつ隔てた場所にある栃木県日光市の旧松木村は、足尾銅山の鉱害で廃村になった場所です。しかも鉱毒により森林が失われてしまって、植樹による回復の最中。標高750mほど(※)でありながら空が開けた場所になっています。

※ちなみに奥日光戦場ヶ原や尾瀬ヶ原は標高1400mほどです。

まずは、わたらせ渓谷鐵道の終点・間藤駅から歩いて30分弱、またはJR・東武日光駅から日光市営バス足尾線に乗って「赤倉」に行きます。

赤倉バス停で降りると、川の対岸に精錬所跡が保存されていて、環境学習の場になっています(中に入ることはできません)。足尾銅山の痕跡を対岸に見ながら歩くこと30分弱で「銅(あかがね)親水公園」に到着。ここはもう無住地帯ですが、ドコモソフトバンクのエリアマップには色が付いています。auのエリアマップには色は付いていないものの、ぎりぎり拾うことが多く、3キャリアの地上の電波をぎりぎり拾う場所です。足尾銅山の歴史を学べる足尾環境学習センターがありますし、トイレもこの先には無いので、立ち寄って行きましょう。

この先さらに松木川沿いに歩くこと30分ほど、旧松木村跡に建つ「遊働楽舎みちくさ」のある辺りまで行くと、ついに衛星の電波を拾うようになります。

ここまで行くと、3大キャリアの地上エリアの広さと、衛星通信がどの程度使えるものなのかを、実体験できると思います。

なお、旧松木村は一般車両侵入禁止ですが、砂防や植樹などの工事車両が入ってきます。足元はほぼ舗装道路(一部ダート)の緩やかな坂道ですが、歩きやすい靴で出かけましょう。

銅親水公園のさらに先にある旧松木村

帰りは銅親水公園入口から間藤駅方面へ行くバスが14時台にあって(冬期運休)、このバスに乗ると歩く距離を3kmほど減らせます。

東京方面から行く場合は、浅草・北千住から東武日光線特急で東武日光駅へ行き、日光市営バスで赤倉へ。帰りはわたらせ渓谷鐵道と東武桐生線・伊勢崎線特急「りょうもう」号に乗って北千住・浅草方面へ帰る周回コースがおすすめ。新緑の車窓水沼駅前温泉なども楽しめます。NIKKO MaaS「デジタル日光・足尾ルートパス」(発売日注意)を使うと市営バスに乗り放題、わ鐵は途中下車できて便利です。

日光市営バス「銅親水公園入口」バス停
NIKKO MaaS「デジタル日光・足尾ルートパス」が便利

3キャリアのエリアはけっこう広い

日本のモバイル通信は高品質で、しかも楽天モバイルを除く3キャリアはエリアも広く提供されていて、集落がある場所はほぼ地上の電波が行き届いています。

ただし例外はあって、この場所ではこのキャリアが使いにくい、という場所は存在します。例えば筆者が時々出かける東海自然歩道・石老山と石砂山の間にあって両方の登山口がある神奈川県相模原市篠原地区は典型的な山間地ですが、ここではソフトバンクが完全圏外になります(ドコモとKDDIは使えます、楽天はパートナー回線)。

JR中央本線の藤野駅から乗合タクシーが出ていて、新宿駅から1時間半ほど。乗合タクシーは電話すると30分から1時間ほどで来てくれます。今までは篠原の里公衆電話があったのでソフトバンクユーザーも辛うじてタクシーを呼ぶことができたのですが、2026年内に撤去されてしまうようなので、ソフトバンクしか持っていない人は下山して乗合タクシーを呼ぶこともできなくなってしまいそうです(;_;)。

一方、石砂山に登ると今度はドコモが弱くなって、ソフトバンクや楽天モバイルの方が使いやすくなります。ソフトバンクと楽天モバイルはエリアの穴が多い傾向はありますが、どのキャリアにもエリアの穴はあって、エリアマップを見ているだけでは判らないことも多いです。

山間地へ行くと、3大キャリアでも圏外になってしまう場所はある

また、エリアマップに色が付いていても電波が弱かったりして使えない場所も少なくありません。前述の「銅親水公園」はその例で、ドコモとソフトバンクのエリアマップには色が付いていますが、実際にはなかなかデータが流れません。

このように地上の電波が届きにくい場所は少なくないのですが、「Starlink Direct」は地上の電波が完全圏外にならないと使えないので、地上の電波が微かに入るような場所では、地上の通信もままならず、衛星通信も使えない…となりがち。

また、山間地とは読んで字のごとく山の間にありますが、山に囲まれている地形では衛星の電波を掴みにくくなります。無人や廃村ならともかく、上記の篠原のように集落があって人が住んでいる場所には基地局を建てるべきでしょう。

このように、エリアマップに色が付いていても、地上の電波も衛星通信もどちらも使えない場所がけっこうあるんです。

一方、農地が広がるような場所は完全圏外になることも多いですが、こういう場所で仕事している人は、出たら帰るまで連絡がつかないのが当たり前だったと思います。これからは出先でもメールやメッセージで連絡を取れるようになりそうです。

対応機種

とはいえ、全ての機種で使えるわけではありません。「Starlink Direct」は 4G LTE Band 1 という地上の電波と同じ周波数帯を使って提供されるので、理論上ハードウェアはそのまま使えるのですが、ソフトウェアの対応が必要になるため、対応機種は限られています

でもiPhoneは4年半前の13シリーズ以降が対応しています(ただし iPhone SE シリーズは非対応)。日本では平均4.3年で買い替えられているようなので(内閣府「消費動向調査」2025年3月分より)、iPhoneは大半が対応機種になっていそうです。

一方、Androidはここ数年の機種しか使えませんし、家電量販店などで購入できるいわゆるSIMフリー機種も多くが未対応。筆者もAndroidユーザーで、しかも複数台持っていますが、Starlink Direct 対応は1台しかありません(^^;。

SIMフリー機種では、Google Pixel シリーズは9以降が対応(9aと7,8シリーズはメッセージのみ対応)しています。

また、KDDIのIOT(接続性試験)を通過した機種を見ることができ、SHARP AQUOS シリーズと Samsung Galaxy シリーズが順次対応しつつあります。でもAQUOSはハイエンドのR10が未対応ですし、人気のXperiaXiaomiなども未対応(キャリア版のみ対応)です…

そして、KDDIはIOT(接続性試験)をするなどSIMフリー機種も積極的に受け入れていますが、ドコモとソフトバンクは今のところ(2026年4月現在)自社が販売した機種以外はほぼ対象外としています(例外はiPhoneとPixel)。

ドコモとソフトバンクが追従したことで、SIMフリー機種(メーカー販売モデル)にも対応機種が増えてくれると嬉しいですが、どうなるでしょうか。

iPhoneはApple独自の衛星通信も使える(条件あり)

余談になりますが、iPhone 14 シリーズ以降では、Appleが出資しているGlobalstarの通信衛星を使う衛星ダイレクト通信サービスも利用できます。

ただし利用できるのは緊急SOS発信と、iMessage・SMSメッセージに限られます。Starlinkではありませんし、使い勝手もだいぶ異なりますが、衛星通信を使いたい理由が緊急時の連絡用、またはiPhoneユーザー同士のメッセージであれば、Appleのサービスも検討すると良いでしょう。

Apple独自の衛星通信は、対応するiPhoneを最初にアクティベートしてから2年間は無料で使えるそうです(2年以上経った端末の扱いは不明)。

使い勝手はStarlinkと異なりますが、Appleの衛星通信にはデモ機能があって、空が開けた場所であればどこでも試せるので、興味がある人は試してみてください。

【設定 > アプリ > メッセージ > 衛星通信接続デモ > 衛星通信接続デモ】

iPhone 16 でGlobalstarの通信衛星を探している様子(緊急SOSデモ)

auは「山小屋Wi-Fi」「フェリーWi-Fi」が使える

話を「Starlink Direct」に戻します。KDDIが頑張って用意した枠組みに、ドコモとソフトバンクがそのまま乗っかって、一見すると3社横並びのサービスになってしまいました(^^;。Starlinkを提供しているSpaceXは笑いが止まらなさそうですが、KDDIはさぞ悔しがっている…のでしょうか?

いや、よく見ると、KDDIは2025年までに入念に地上のエリアを整備してきた様子がうかがえます。KDDIは2018年に尾瀬をエリア化したことが知られていますが(ドコモは2022年に整備、ソフトバンクと楽天回線は未整備)、衛星通信で先行するのみならず、地上のエリア拡充にも積極的に取り組んできました。

現地で使ってみてもらえれば解ると思いますが、人工衛星との直接通信は必ずしも使い勝手の良いものではありません。(2026年4月現在)Webブラウザが使えないのでデジタルチケット類が使えず、旅先で気になる時刻表なども確認できません。通話ができないので、緊急通報や山小屋への連絡、タクシーを呼ぶこともできません。実機レビュー動画でも触れましたが、空が開けた場所にいても衛星の電波が入るまで待たされますし、森林や谷あいでは電波が届きにくくなり、通信できる時間が減ります。山小屋内やバスなどに乗車中もほぼ使えません。

登山中は両手を空けて歩くのが基本。「歩きスマホ」をするような余裕はありませんし、リュックなどに仕舞っていたらおそらく衛星の電波は掴まないでしょう。山頂などで休憩中に使うには良さそうですが、せっかく登頂して景色も見ずに画面を見ているのもどうかという気がします。
(筆者もこんな動画を作りましたし、こういう物好きな人が皆無とは言いませんが…)

非常時を除くと、個人が通信を使いたい場面は山小屋に着いてくつろいでいる時や、帰りのバスに乗った後などが多いでしょう。でも、そういう一般ユーザーが使いたい場所で使いにくいのが衛星通信なんです(;_;)。

空が見える場所であっても、バスに乗ると衛星通信は困難(立山高原バス車内)

「Starlink Direct」で先行したKDDIはその辺りもよく解っているようで、尾瀬や山奥の温泉宿などには宿泊施設付近に限って地上の中継局を設置していますし、北アルプスなどの一部の山小屋には「山小屋Wi-Fi」を整備していて、「au Starlink Direct」が使える人(専用プランを含む)は「山小屋Wi-Fi」を追加料金無しで使えるようになっています。

また、衛星通信が使い物にならない黒部峡谷鉄道を全線エリア化するなど、山岳観光地には地上のネットワークも整備しているんです。

このようにKDDIは山岳エリアでも地道に差別化しているのですが、「横並び」と評するマスコミもあります。各社が飛び道具(通信衛星)を使ってエリアマップ全体に色を付けてしまうと、現場を見ずエリアマップだけを見て記事を書いている人には、現地での「使いやすさ」を判断できなくなると思います。

でも、今でもソフトバンクは尾瀬に行くと完全圏外になります。楽天モバイルはKDDIのパートナー回線を借りていますが、いつまでも借りていられるわけではありません(原則2026年秋までで終了)。衛星通信が始まった後、地上のエリア整備の手を抜くのか、または地上のエリア整備にも一層注力するのかが、岐れ路になりそうです。

山小屋内などの使いたい場所で通信を使うには地上設備が不可欠

3キャリアの「Starlink Direct」の違い

ここまで読んでいただいた方には、3キャリアの違いも解っていただけたかと思います。

衛星ダイレクト通信に限ると横並びですが、au系には「山小屋Wi-Fi」「フェリーWi-Fi」が付いてくる半面、UQ・povoでは別料金・別SIMが必要になってしまいます。
⇒2026年5月利用分より対抗措置が取られました(後述)。

対して、ドコモとソフトバンクは山小屋内などで使えませんが、「ahamo」「mini」や“ワイモバイル”などの比較的廉価なプランでも同じSIMが使えて(※)、当面無料で提供されます。

※古いSIMは交換が必要になります。

そして何より、地上のエリアの違いがあります。いくら「Starlink Direct」が使えるようになっても、山小屋等に入ると使えません。山などへよく行く人は、衛星頼みではなく地上のエリアもしっかり見る必要があります。

他社の動静

ここまで、KDDIが1年先行し、ドコモとソフトバンクが今年後追いで「Starlink Direct」を始めた話をしました。そして、キャリア目線では「やらないと取り残される」という話もしました。

そこで、格安料金で人気の楽天モバイルや各MVNOの動静にも触れておきましょう。

楽天モバイルは異なる通信衛星を採用

楽天モバイルは後発になりますが準備をしていて、ASTという異なる衛星会社を使います。個人的には(※)こちらの方が楽しみなのですが、2026年第4四半期(10~12月)に開始を目指すとしているので、2026年のグリーンシーズンには間に合わないでしょう。

※個人的には「Starlink Direct」は昨年たくさん試させてもらい、それから大きく変わってはいませんが、楽天モバイルはASTの通信衛星を使うので、使い勝手が多少変わると思います。

MVNOは対応しなさそう

MVNO各社は、おそらく(個人向けには)衛星通信に追従してこないだろうと思います。

au系はSIMが違う(※)ので、au系MVNOのSIMでは衛星の電波を掴みません。ドコモ系とソフトバンク系は未確認ですが、もし掴んだとしても、MVNOが対応しない限り、データは流れないと思います。

※「au Starlink Direct」の電波を掴むには、衛星ダイレクト通信用のIMSI(先頭5桁のMCC-MNCが440-55)を持っているマルチIMSI対応のSIMが必要です。

ドコモは個人ユーザーに「当面無料」で提供しているとはいえ、実際には「Starlink」を運営する米国SpaceX社にそれなりの費用を支払っていることと思います。ドコモは(MVNOと比べて)割高な月額料金をユーザーから取っているから出来るのであって、「格安SIM」とも呼ばれる個人向けMVNOが追従することはなさそうに思います。

au Starlink Direct 専用プラン+

KDDIは、他社ユーザー向けの「au Starlink Direct 専用プラン+」を用意しています。これを契約すれば、MVNOユーザーも「Starlink Direct」を使うことができます。ただしSIMが別個になるので切り替える手間がかかりますし、料金も月額1,650円と、決してお安くはありません。

とはいえ、地上の電波も月々1GBまで使えるので、MVNOの弱点である平日昼休みなどの混雑時に使うこともできます。「山小屋Wi-Fi」も込みなので、対応の山小屋によく泊まる人はお得でしょう。山へよく行く人は契約しておくと良いと思います。

なお、ソフトバンク系の“LINEMO”も月額1,650円のオプションサービスを始める予定ですが、ソフトバンク系は「山小屋Wi-Fi」「フェリーWi-Fi」を提供していないので、同じ額を払うのなら「au Starlink Direct 専用プラン+」の方が良いと思います。

このように、山などへ頻繁に行くMVNOユーザーには安いくらいだと思いますが、povoでガッツリ課金している人や、めったに山などへ行かない人にとっては、ちょっとハードルが高そうです。

「Starlink Direct」を必要とする人はごく一部?

もっとも、山へあまり行かない人は、そもそも衛星通信を使う必要性がないと思います。ここまでで触れたように、日本ではすでに地上のネットワークがよく整備されていますし、「Starlink Direct」は通信できるアプリが限られ、屋内や列車バス等に乗車中にも使えないので、農林業や土木関係の仕事をしている人でもなければ、衛星通信が活躍できる場面は少ないでしょう。

「空が見えれば、どこでもつながる」体験は楽しいですが、実用面では山などで仕事している人や頻繁に登山等をする人を除き、必要のないものだと思います。MVNOは余計なコストを削ぎ落として安く提供している業態ですから、必要性の低い衛星通信が付かなくて当然だと言えます。

以前「ライトMVNOとフルMVNO」という話もしましたが、MVNOとしては、どこで使うかもわからない衛星通信に追加コストをかけるくらいなら、通話などの基本的な通信サービスを拡充する方に使うのが賢明でしょう。

差別化や値上げに利用される衛星通信

そんなわけで、実際には出番が限られそうな衛星通信ですが(^^;、山などの圏外になる場所へ行く人にとっては、「空が見えれば、どこでもつながる」体験が楽しいのも事実。

しかし、衛星ダイレクト通信サービスは(楽天以外)各社「Starlink」で横並び。では通信キャリアはなぜ衛星通信に追加コストをかけているのでしょうか。

よく言われるのは、災害時に役立つから。災害大国・日本においてとても重要な視点ですね。実際、大規模災害が発生すると通信キャリアは被災した地上の基地局の応急処置に奔走し、並行して被災者支援にも取り組んでいます。そこに衛星通信が加わったと考えれば筋が通ります。

でも、通信キャリアも商売ですから、儲からない災害対策だけで終わるつもりはなさそうです。

「Starlink」が3大キャリアで横並びになってしまったとはいえ、各キャリア内を見ると温度差があります。

KDDIでは、「au」の料金プランを契約している人には「Starlink Direct」が標準で提供されていますが、同じKDDIの「UQモバイル」を契約している人は追加料金が必要。さらに、同じKDDIの「povo 2.0」を契約している人は他社ユーザー扱いです(;_;)。

「au」の割高プランを使っている人には標準提供するが、格安プランを使っている人からはきっちり追加料金を取り、料金プラン間の差別化に利用しているわけです。

ソフトバンクは、“ソフトバンク”と“ワイモバイル”の値上げと同時に「Starlink Direct」を標準提供としました。実はKDDIも2025年に同様の手法で値上げしています。ソフトバンク系は月額110円~550円の値上げをしますが、衛星ダイレクト通信を使う人は限定的なので、充分お釣りがくるのでしょうね。

そしてソフトバンクは格安ブランドの“LINEMO”ではオプションサービス(別料金)とし、ブランド間の差別化にも利用しています。

ところが、NTTドコモは格安プランの「ahamo」や「mini」を含めた全料金プランの利用者に当面無料で提供します。「ahamo」は月額2,970円で月々30GBまで使え、月々4GBで足りるなら「mini」は月額2,750円で使えて店頭サポートも付きます。MVNOよりは高いですが、UQやYMよりも安い料金です(※)。

UQモバイル「コミコミプランバリュー」は月々35GBで月額3,828円、「トクトクプラン2」は5GB未満ならば月額2,948円。「ahamo」や「mini」よりも高めです。

当面」とはいえドコモが大盤振る舞い(?)する背景には、ドコモの通信品質が劣化してユーザー離れが起きている側面がありそうです。KDDIソフトバンクがMNP獲得競争(販促金の積み増し)に一線を引く中で、ドコモは新規ユーザーの獲得に多額の販促金を積まざるを得ない状況のようです。

ドコモは新規獲得に役立つと期待して、「docomo Starlink Direct」を全プランに当面無料で提供する大盤振る舞いに出たのでしょう。

先行するKDDIは、毎月割高なプラン料金を支払っている「au」契約者のみ無料付帯し、廉価ブランドの「UQ」「povo」では別料金として差別化してきました。

「au Starlink Direct」には「山小屋Wi-Fi」や「フェリーWi-Fi」を使える追加特典もありますので、このままで行きそうな気もしますが、ドコモのように衛星通信が営業面で活きると考えるのであれば、または冒頭で紹介したソフトバンクのように「ユーザーにサービスの差分があってはいけない」と考えるのであれば、対抗策を打ってくるかもしれません。

個人的には、「UQ」や「povo」に課金している人の追加負担をもう少し抑えてくれたら嬉しいな、と思いますが、はてさて、どうなるでしょうか。

【2026年 4月23日追記】UQモバイルのユーザーも無料に

UQモバイルの「コミコミプランバリュー」「トクトクプラン2」に加入している人は、5月利用分から「au Starlink Direct専用プラン+」の月額料金が無料になるようです。

また、(時間がかかると思われますが)今後、UQ mobileの対象料金プランを利用していれば、専用プラン不要で「au Starlink Direct」を使えるようにするそうです。

ただし、povoユーザーは相変わらず蚊帳の外(他社ユーザー扱い)です(;_;)。

従来通り「山小屋Wi-Fi」も使えるのであれば、山ではUQが使いやすくなりそうですね。

衛星通信時代にこそ試される地上エリアの実力

衛星通信時代になると、一見するとエリアマップはほぼ同じに見え、一般ユーザーにはどこでも使えるのが当たり前と認識されるでしょう。しかし、地上の基地局と衛星ダイレクト通信では通信品質が違うことを、高品質な通信サービスに慣れ親しんだ日本のユーザーが、どれほど認識して使うでしょうか?

衛星通信に切り替わると使えるアプリが限定され、警告表示が出るアプリもあるが…

各地を旅していると、モバイルネットワークが圏外になる場所は意外とあります。でも個人ユーザーが旅先でデータ通信を使いたい場所の多くは、飛び道具(通信衛星)ではカバーできない列車・バス乗車中や建物内でしょう。

しかし地上の基地局整備の手を抜いた通信キャリアは、建物に入ると使えない、バスや列車に乗ると使えない…このキャリア通信品質が悪いのでは?と捉えられてしまったら逆効果になりかねません。

今はドコモが通信品質問題で苦労していますが、先行しているKDDIにもエリアの穴は散見されますし、ソフトバンクや楽天モバイルの地上のエリアが今後どう整備されるのか。各社に衛星通信が入ってエリアマップに色が付いた後こそ、各キャリアの通信品質の実力が試されることになりそうです。

願わくば、衛星ダイレクト通信によってユーザーの行動範囲が広がることを見越して、各キャリアには地上のエリア整備を一層頑張ってほしいと期待しています。


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