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「コベナントの愛」とは? 最近のアメリカ政治を動かすキリスト教英語の解説

最近、アメリカ政治の英語ニュースを読んでると、キリスト教関係の英単語がよく出てきます。

英語ができる人や、クリスチャンにはわかるんだろうけど、わしにはさっぱりわからないから、いくつか調べました。

調べた結果を、ご参考まで、ここにまとめておきます。



<例文1>

アメリカ合衆国で2番目に高い地位にある公人が、数百万人に Nicene Creed を宣べ伝えた。

The second highest office in the United States just proclaimed the Nicene Creed to millions (2025/9/16)


Nicene Creedとは?

答え:ニカイア信条
(英語の発音はナイシーン・クリード)


9月10日に、トランプの側近とも言われた保守活動家、チャーリー・カークが暗殺され、15日、ヴァンス副大統領が、ホワイトハウスからカーク追悼番組を配信しました。

ヴァンスは追悼の中で、この「ニカイア信条」を引用し、話題になりました。


亡くなったチャーリー・カークはプロテスタントの福音派でしたが、J・D・ヴァンスはカトリックです。もともとはプロテスタントだったけど、わりあい最近、2019年にカトリックに改宗しました。

「ニカイア信条」とは325年、小アジアのニカイア(現・トルコのイズニク)で開かれた公会議で決まった、キリスト教の基本信条です。いわゆる「三位一体」を定めたもので、カトリック、プロテスタントに共通らしい。


9月15日にヴァンスが実際に語ったのは、以下のような言葉です。


さて、チャーリー(カーク)が語った最も重要な真実は、昔、造られたのではなく生まれた男が、天から降りてきて、聖霊によって聖母マリアから受肉し、人間になったということです。

私たちのために、イエスはポンティウス・ピラトのもとで十字架につけられ、死の苦しみを受け、埋葬され、そして三日目によみがえられたのです。

チャーリーも私と同じように、自分が語ったすべての真実はこの根本原則から生まれたものだと信じていました。

Now, the most important truth Charlie told is this, that long ago a man, begotten, not made, came down from heaven and by the Holy Spirit was incarnate of the Virgin Mary and became man,
For our sake, he was crucified under Pontius Pilate and suffered death and was buried and rose again on the third day.
Charlie believed, as I do, that all the truth he told flowed from that fundamental principle.


この「造られたのではなく、生まれた begotten not made」という独特の表現が、ニカイア信条の核心だそうです。

「造られたのではなく、生まれた」とは、ニカイア信条に出てくる重要な神学的表現であり、神の子であるイエス・キリストを他のすべての被造物と区別するものです。この信条は、御子は永遠に「生まれた」、つまり父と同じ神性を共有しており、特定の時点で「造られた」あるいは創造されたのではないと主張しています。この教義は西暦325年のニカイア公会議に端を発し、御子は被造物ではなく神自身であることを明確にしています。これは、キリストの神性と三位一体の本質を保つための重要な区別です。

"Begotten not made" is a key theological phrase from the Nicene Creed that distinguishes Jesus Christ as the Son of God from all other created beings. It asserts that the Son was eternally "begotten," meaning he shares the same divine essence as the Father, rather than being "made" or created at a specific point in time. This doctrine, originating from the Council of Nicaea in 325 AD, clarifies that the Son is not a creature but God himself, an important distinction to preserve the divinity of Christ and the nature of the Trinity.
(グーグルのAI)


意味わかりますか? 私はわかりません。

でも、もしかしたら将来、アメリカ大統領になる男が、この「三位一体」を世界観の根本原則にしているのです。日本のリーダーになるかもしれない人は勉強しておきましょう。


そういえば、クリスチャンの石破茂首相も、「三位一体」って言葉をよく使っています。

比較的最近(5月16日)も、こんなふうに使っていました。


「地方創生は『やりっぱなしの行政』『頼りっぱなしの民間』『無関心の市民』が三位一体になると絶対に失敗する。
(後略)

(NHK 2025/5/16)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250516/k10014808081000.html


ググってみると、他にも「三位一体」をよく使っているのがわかりますが、あまりいい意味に使ってない。クリスチャンとしてどうなんでしょう。

以前書いたように、石破首相は、いわゆる熊本バンドにつながる、日本でも最も古いキリスト教の家系です。でも、高原剛一郎氏は、石破首相は本当のクリスチャンじゃない、と言ってました・・・。まあ、もう辞める人だから、どうでもいいですね。


<例文2>

J・D・ヴァンス副大統領とウーシャ・ヴァンス夫人は犠牲者に敬意を表すために Annunciation 教会を訪問した。

Vice President JD Vance and Second Lady Usha Vance visited Annunciation Church to pay their respect to the victims.(FOX 2025/9/4)


Annunciation Churchとは?

答え:受胎告知教会

チャーリー・カーク暗殺事件で忘れられてしまったようですが、8月27日に、ミネソタ州・ミネアポリスの教会で、衝撃的な銃乱射事件が起きました。

米ミネソタ州ミネアポリスのキリスト教カトリック教会で27日、襲撃者が建物の外から窓越しにミサの参加者らに向けて発砲し、8歳と10歳の子ども2人が殺害され、17人が負傷した。
(BBC 2025/8/28)


教会に来て祈っている子供を殺すなんて。ひどい事件です。

犯人の男はその場で自殺し、動機はよくわかっていませんが、カトリックへのヘイトクライムだと言われました。


同じカトリックということもあるのか、ヴァンス副大統領夫妻が、事件があった「受胎告知教会」を弔問しました。カトリック系の幼小中一貫校「アナンシエーション(受胎告知)・カトリック・スクール」の中にあった教会でした。

「アナンシエーション annunciation」は、一般的な「告知」という意味にもなりますが、第一義的に、処女マリアが、精霊によりイエス・キリストをみごもったと天使ガブリエルから伝えられたことを指します。


受胎告知教会のオリジナルは、イスラエル北部・ガリラヤ地方の町ナザレの、カトリック教会の伝承で受胎告知が行われたとされる、マリアの少女時代の家があったと伝わる場所に建てられています。


他にも、世界中に「受胎告知」の名のついたカトリック教会があるわけです。

日本にもあるはずですが、グーグル検索ではひっかかりませんでした。



<例文3>

彼は究極の、真実の、covenantalな愛を示してくれました。

He showed the ultimate, and true, covenantal love.(2025/9/13 動画6:20あたり)


covenantal loveとは?

答え:神聖な契約による愛(試訳)


チャーリー・カーク暗殺の3日後、未亡人になったエリカ・カークさんが、亡き夫への感動的な弔辞を述べました。

その中に出てきたのが、「コベナンタル・ラブ(covenantal love)」。

上記のとおりチャーリー・カークはプロテスタントでしたが、エリカさんはカトリックです。


コベナントという言葉は、最近映画やゲームでよく使われるので、なんとなく気になっていました。

ガイ・リッチー監督の「コヴェナント/約束の救出」(2023)とか、リドリー・スコット監督の「エイリアン:コヴェナント」(2017)とか、ゲームの「フォールアウト:コベナント」とか。


「covenantal love」を普通にグーグル翻訳すると、「契約の愛」となります。

たしかに、「コベナント covenant」には、法律上の「契約」の意味があります。

しかし、キリスト教の文脈では、特に「神との契約」を指し、一般的な契約である「コントラクト contract」との違いが重要になるようです。

だから、「covenantal love」を「契約の愛」とすると、誤訳になるかもしれません。


少し長いですが、「コベナント」と「コントラクト」の違いをキリスト教の文脈で説明する文章がネットにありました。


コベナントVSコントラクト

私たちが結婚へのコミットメントに苦労する主な理由の一つは、私たちが「コベナントの契約」ではなく、「コントラクトの契約」の考え方を持つ世界に生きているからです。神は結婚を、コベナントの契約関係として設計されました。マラキ書2章14節には、「主はあなたとあなたの若い時の妻との間の証人となった。彼女はあなたの伴侶であり、コベナントの契約による妻であったのに、あなたは彼女を裏切った」とあります。また、箴言2章17節では、神は結婚を「コベナント」と呼んでいます。16-17節では、コベナントの契約を重んじない外国人女性との結婚について警告しています。「異国の女から、言葉巧みに語る外国人の女から、若い時の伴侶を捨て、神とのコベナントを忘れる外国人の女から、あなたを救い出すためである」

なぜコベナントとコントラクトのこの区別がそれほど重要なのでしょうか。コントラクトは不信に基づいています。コントラクトは「もし…ならば」という文に基づいています。コントラクトは基本的に、「もしあなたがこの合意のあなたの部分をするなら、私も自分の部分をする義務がある」と定めています。しかし、「もしあなたが合意のあなたの部分をしないなら、私は責任を免れ、自分の部分をする必要はない」のです。コントラクトによれば、私の義務はあなたが何をするか、しないかによって決まります。結婚生活において、このような契約の考え方はよく見られます。もし私の配偶者が私をあるべきように扱ってくれないなら、私はこの結婚生活から抜け出して、私を正しく扱ってくれる人を見つける自由がある、と。つまり、コントラクトは不信に基づいており、終了日があり、予期せぬ状況によって無効になり、履行に基づき、得るものを与えるのです。

コベナントは、全く異なる種類の合意です。コベナントは当事者双方のコミットメントに基づくものであり、一方の感情や、相手方の行動、不作為とは無関係です。コベナントとは、「あなたが何をしようと、私は約束を守る」というものです。私はあなたを知り、信頼しているので、あなたが約束を果たしてくれることを期待しています。たとえあなたが約束を果たしてくれなくても、私は自分の役割を果たし、約束したことは必ず果たします。コベナントは信仰と信頼に基づき、永続的で、状況によって破られることはなく、無条件の愛と献身に基づき、相手を喜ばせるために存在します。



私は経験ありませんが、教会で結婚式をあげる人は、こういう説教を神父なり牧師なりからされるのでしょうか。

カトリックが離婚を許さないのも、結婚をこういう「コベナント」の契約だと考えるからでしょう。

(もう少し詳しく言うと、カトリック教会は、カトリック信徒の離婚を原則認めない。カトリック教徒以外の離婚は赦す。らしい)


男女は、愛し合っているから結婚する。愛がなくなったら離婚していい。というのが、現代的な考え方ですが、「結婚から愛が始まる」という考え方も宗教にはあります。

キリスト教に限りませんが、一部の宗教での「強制結婚」は、現代では非難の的になります。でも、「結婚から愛が始まる」という考え方に基づくものもあるのでしょう。


まあ、そういう宗教的な考えを踏まえ、エリカ未亡人の「covenantal love」を「神聖な契約による愛」と訳してみましたが、どうでしょう。

実質的には、それは、カトリックの考え方による「結婚」のことですね。「無条件の愛」「神聖な愛」とかでもいいでしょうが、いずれにせよ、コベナントという言葉の意味がわからないと、伝わらないでしょう。


ちなみに、エリカ未亡人は、元ミス・アリゾナ。上記のとおりカトリックで、政治的意見は夫のチャーリー・カークよりさらに保守的だと言われます。

チャーリーは、夫人の影響でひそかにカトリックに改宗していた、という噂もありました(たぶんデマですが)。


エリカさんが、チャーリーの遺産である学生を中心とした保守団体「ターニング・ポイントUSA」を引き継ぎます。

もしかしたら、今後のアメリカ政治に影響を与える人物になるかもしれません。



ここに紹介したような用語は、一般の日本人にはいかにも古臭い死語に思えるかもしれません。あるいは、宗教右派の用語だ、と。

でも、前に書いたように、英米のZ世代でキリスト教が流行し始めており、伝統的な教派ほど好まれていると言われます。

だから、こうした言葉が、「若者用語」として登場する時代が来るかもしれません。


(英語もキリスト教も素人の私が書いているので、上の解説に間違いがあれば、コメント欄でご教示いただけると助かります。間違いは訂正します)


<参考>


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