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社長一人では見えないものがある―外部の視点が必要になる瞬間

「熊谷さんほど、同じ視点で考えてくれる人はいないんですよ。」

ある後継者が、面談の帰り際に言った言葉です。

私はその時、少し意外でした。
なぜなら、その日も特別なアドバイスをしたわけではなかったからです。

答えを教えたわけでもありません。
経営戦略を作ったわけでもありません。

ただ一緒に考えていただけでした。

しかし、その後継者にとっては大きな意味があったようです。


事業承継後の後継者や第二創業の経営者と話していると、
ある共通点があります。

それは、
考えていないわけではない
ということです。

むしろ逆です。
考え過ぎています。


社員のこと
先代との関係
古参幹部との調整
銀行対応
資金繰り
投資案件
採用
新規事業
取引先との関係


常に複数の論点を抱えています。
だから決められないのです。

知識が足りないからではありません。
経験が足りないからでもありません。
情報が不足しているからとも限りません。


問題は、
考え続けることで視野が狭くなること
です。


第5回で、
社長の孤独は、一人で考え続けることから生まれる
という話をしました。

第7回では、
正解がないから決められない
という話もしました。

実は、この二つはつながっています。


人は一人で考え続けると、
同じ場所を何周も回るようになります。


投資した方がいいのか。
やめた方がいいのか。
採用した方がいいのか。
今は待つべきなのか。


考えているつもりでも、
実際には同じ論点を繰り返していることがあります。

すると、
だんだん判断に自信が持てなくなります。


ある後継者もそうでした。

新しい投資案件がありました。

将来性もあります。
数字も悪くありません。

しかし決められません。


本人は言いました。
「失敗したらどうしようと思うんです。」
最初は投資の話だと思いました。

しかし話を整理していくと違いました。


本当に怖かったのは、
投資ではありませんでした。


社員に説明できなくなること。
銀行に説明できなくなること。
先代に否定されること
自分の判断が間違っていると証明されること。


そちらの方が怖かったのです。


問題は投資案件ではありませんでした。

問題は、
本人も気づいていない不安
だったのです。


経営相談の現場で感じることがあります。

経営者は、
答えを持っている人
を求めているわけではありません。


本当に求めているのは、
自分の思考を整理できる相手
です。


心理学では、
自分自身を客観視することを
メタ認知
と呼びます。


経営者が苦しくなるのは、
能力不足だからではありません。

自分が今、
何に悩み
何を恐れ
何を優先したいのか

見えなくなっている状態だからです。


だから外部の視点が必要になります。

ただし、
ここで誤解してほしくないことがあります。


外部の人間が経営を代わりに決める必要はありません。
むしろ危険です。


経営の責任は、
最後は経営者自身が背負うからです。


大事なのは、
答えを渡すことではなく、
見えていない論点を見えるようにすること
です。


何が事実なのか。
何が不安なのか。
何が思い込みなのか。
何が本当に優先順位の高い課題なのか。


それを整理するだけで、
経営者は驚くほど判断できるようになります。


その後継者も、
最終的に投資を実行しました。

重要なのは、
私が賛成したからではありません。


本人が、
自分で判断できる状態になったからです。


経営者は孤独です。

しかし、
孤独と孤立は違います。


一人で決める必要はあります。

しかし、
一人で考え続ける必要はありません。


年間400件を超える経営相談に関わる中で感じることがあります。

経営者に必要なのは、
答えではないことが多い。


本当に必要なのは、

自分の頭の中を整理し、
自分の判断軸を確認できる環境

です。


もし今、

「この判断でいいのか分からない」
「誰に相談しても答えがしっくりこない」
「考えているのに前に進まない」

そう感じているなら、
不足しているのは知識ではないかもしれません。


社長一人では見えなくなっている論点を、
一緒に整理する相手
なのかもしれません。


次回は、
「経営チームはどうすれば機能するのか」
― 社長が頑張る会社から脱却する方法
についてお話しします。


はじめての方へ

私は主に、
事業承継後の後継者、
第二創業フェーズの経営者、
新規事業責任者の伴走支援を行っています。

経営の正解を提示するのではなく、
頭の中を整理し、
判断基準を明確にし、
経営チームが機能する状態をつくることを重視しています。

売上は伸びている。
利益も出ている。
それなのに不安が消えない。

そんな時ほど必要なのは、
気合いや精神論ではなく、
お金の流れを構造的に整理することです。

もし今、
「投資判断に迷っている」
「資金繰りに不安がある」
「自分の判断基準を持ちたい」
そんな状況であれば、お気軽にご相談ください。

※事例は一部加工しています。実在の企業・人物とは関係ありません。

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熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

承継・第二創業・新規事業の現場で、経営者が判断できる状態をつくる伴走支援を行っています。

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