今あるものだけで実験をくふうして光熱水以上の費用をほとんどかけないようにしながら
はじめに
なぜか「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される」と「草枕」の冒頭が思い起こされた。
このクニが「費用をかけないで業績をあげてほしい。」との方針をうちたて四半世紀近く。そのままのようだから、なるべくその方向で大学でのボランティアサポートをおこなうつもり。
きょうはそんな話。
八方ふさがり?
もちろんクニのお役所の、「競争的資金が必要ならば業績をあげて審査を受けてください。」をそのままやろうとする方もいらっしゃる。こちらはなかなかの倍率。ほとんど「申請のための研究」になりかねない。嵐の予想されるなかに船を出すかのよう。先行きが案じられる。
そこで、当方は「ほんとうにやりたい研究」でいこうと心に決めた。とりあえずきもちだけは青空のなかの船出。
そこで必要な試薬を取次業者さんに価格をたずねたところ1gで13万円。元職の頃、ふんだんに使っていた。当時の10倍!とても手が出ない。
ない袖は振れない。回避して残っている資材でべつの方法をとるしかない。
再出発
いったん下船し、積荷を詰め替える。つまり時間とわたしの小さな頭を使い、4つほど新たなテーマの研究をこれからはじめる。
きょうはここからが本題。
テーマは
わりと手もとに古くからストックしている各試薬や資材が残っている。いまやこれも資産といっていい。それらをうまく活用してできるテーマをここ数年でおぼろげながらかたちにしてきた。この11月末から幾人かのこの講座に興味をもってくれた学生さん(なんと1年生)の協力をもらいながらはじめる。
学生さんたちにここは基礎基本を学べる場として利用してほしい。ここで得た知識と技能がどの方面にむかっても役立つようにと話した。今週から説明や実習をはじめる。おもなテーマは4つ。いずれもここ数年で着手し、その過程で得られた。
費用は
そんな方針で着手したテーマから得た「実績」のひとつをとりあげよう。すでにはじめて2年だが、かかった総費用は数百円に過ぎない。名づけて”One Dollar Research”その数百円すらわたしが自前でもちこんだ資材。
それを活用して1人分の卒論にしあげた。そこからさらに1年がすぎ、もうすこし進展。そのあいだは時間はかかったがまったくあらたな費用をかけていない。わずかな光熱水だけ。これがひとつ、いわば継続テーマ。
貢献度は
こうしたテーマは世のなかに何も貢献しないだろう、浮き世離れしたことをできていいなと思われるかもしれない。そんな大方の予想に反して、「今日的テーマに直結するかもしれない。」⋯と昨日、学生さんたちに得たばかりの「新素材の卵」ともいうべき医療工学に結びつくかもしれないモノを手にしつつ話したばかり。
生命科学はすさまじい勢いで進展するが、意外とやり残したことをあちらこちらに散らばせたまま。それを丹念にひろい集め、息を吹きかけて、こちらで新規な部分をくわえてそれらしいかたちに仕上げていく。
新規性は
理系において卒論にするからには世のなかにこれまでないことを確認済み。いずれ学術論文にするうえで必須事項。それだけに学生さんが予備実験をくりかえし、熟練度あげるのを見極めてから本実験にとりかかる。
そこではもはや新しい情報ばかり。特許の請求項を増やすべくノートへの記入も慎重にボールペンで日付入り。実用分野を内包する特許になる可能性をかなりの確率でもつ。ここではとりあげることはできないものばかり。
それをここに顔を出す学生さんたちには得られたいっさいの情報に関して一定期間の新規性を確保する目的で「守秘義務を守ってください。」と説明しつつと事前に一筆書いてもらう。その作業を通じてそんな場に居合わせていることを自覚してもらう。
研究テーマ
こうして費用をかけないで考えられたテーマの多くはほかの研究室では予想しづらいものが多い。とくに大きな研究室では着手が逆に難しいかもしれない。そういう研究室はすでに動かしがたい大石のごときテーマに追われているのでその余裕がなかなかないのでは。
一方で悠然と手がけられる。しかもまだ科学が生まれる場の経験のうすいまっさらな学生さんたちとそれができる。なんとも自由な空間。
おわりに
はたして4つのテーマのうちどれが実を結ぶだろう。わたしとしてはどれもせめて卒論や修論のかたちにしていきたい。それぐらいのかたちになったらすでにわたしの手を離れてあらたなヒトへと託していけるのだが。以前のいくつかのものもそうやってわたしのところから巣立ち、世界各地の研究者によって手がけられ、ひろがっていった。今回もそんなふうにひろげていきたい。
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