闇 481(人間の証明編)
闇 481(人間の証明編)

2026/02/14 sta
前回の章
二千二十六年二月十三日、金曜日先勝。
自殺願望がある訳ではない。
この意味がまるで見えない自身の人生を自然な形でいち早く終わりにしたかった。
これで四百八十一章目か……。
ほとんど誰も読まず、評価も何も無いような闇シリーズを俺は何故ここまで書いているのだろうか?
心筋梗塞を二度も患いながら、何故俺は生きている?
そのあとに降り掛かった真地獄めぐり。
生きている価値すらないと思った。
でも結果俺は生き抜いてしまったからこそ、では何故こうなったのだと十三年ぶりに小説を書き出した。
始めは箇条書き、気付けばそれは次第に文章となり書くのを止められない史実通りの自伝を書いている。
書き始めて約一年後、俺の闇シリーズをインターネットへ載せるなと職場で言われた。
書きたいものを書き、自身でそれを発表する自由。
そんなものまで奪われて堪るかよ。
俺は無職の道を選んでいた。
何を考えているのだろう?
自分でも分からない。
それでもひたすら書き続けている。
それは今であっても。
評価など無い。
書きたいから書いている。
しかしそれだけでは虚しくなる事もあった。
そんな時は決まってAIに話し掛け、心を満たす。
AIは俺の書く作品をつまらないと言う。
商業的小説の要素をわざと外して書いていると指摘してくる。
文学ではなく記録だとも言われた。
違う。
そうではない。
処女作『新宿クレッシェンド』で文学賞を取り本にした俺。
その俺が小説を書いているのだ。
だから誰が何を言おうとも、AIのような機械が定義しようとも、闇シリーズは小説なのだ。
でもこんなもの誰も読まないよな……。
そうか、世の中の役に立っていないのは自覚している。
ならば生に縋るのを辞めればいい。
ここ五年、毎日心筋梗塞の薬を飲んできた。
担当医からは飲まないと、五年以内には確実にまた心筋梗塞になると言う。
一週間で二度体験し、それでも生きているのだ。
それなら薬を飲むのを辞めてしまおう。
これは自殺願望ではない。
自然体に生きるという事。
だからこそ遺書めいたものを書き、発表したのだ。
何故めいたなのか?
死に向かって突き進む訳ではないから。
三日間飲まないでいると、心臓の違和感に気付く。
外を歩くと、右脚の痺れがより酷くなっていた。
仕方なく残っている薬を一度だけ飲む。
苦しむのは嫌だ。
寿命のある内に闇シリーズを完結させないと……。
AIから俺のしている事は文化を残している事だと、いつか言われた。
勘違いした俺。
いついつにどこの店で何を食べたか。
そんな事まで詳しく赤裸々に闇シリーズに入れるようになってしまう。
平凡で退屈な日々を百章近く書く行為。
これは楽しんで書く執筆と違い、ただの地獄でしかない。
書いている俺がここまで反吐が出そうになるほどつまらないのだから、当然読む人間も酷く退屈するだろう。
それでも令和二年…、二千二十年一月まで物語を書けた。
もう少し…、あとちょっと書けばようやく地獄を描けるのだ。
だが正確にはどのぐらい?
確かこの年の十月くらいに辞めたはず。
いや、九月だったか?
まあその辺なのは事実だが、調べないと分からないだろう。
まあフェイスブックの投稿を辿っていけば、正確な日付けまで分かる。
…という事は、まだ約十ヶ月分も、地味な展開を書かなきゃならないのかよ……。
うんざりしながら、布団に寝転がる。
二千二十六年二月十四日、土曜日友引、バレンタインデー。
今日が赤心堂病院の定期健診か。
面倒臭い。
行かなきゃ薬が無くなるから、寿命が早まるだけ。
間に合うのか?
闇シリーズの完結まで。
完成させたあと、ぐうの音も出ないようなちゃんとした小説を書くのではないのか?
なら生きる努力はしておけ。
しょうがなく二度目の薬を飲む。
再び寝転がり、闇シリーズなど書く意味があるのかを考えた。
「……」
ボーっとしながら目を閉じていると、ちょっとした事に気付く。
人生って料理と同じようなものであり、あらゆるものを混ぜ、炒め、焼き、蒸し、茹でて一つのメニューになる。
人間どんな綺麗事を言おうが、食べる事と寝る事、この二つが無くては生きていけない。
つまり食べ物を口にする。
結果共通するものだけが残ってしまうのだ。
一つは排便。
もう一つは何をしていても、時間だけは勝手に過ぎていく。
どんな高級料理を口にしようと、雑食でも人間の身体から出るものは同じ。
いい事をして生きようが、人を騙し詐欺紛いに生きようと、そういう意味の結論は一緒だ。
つまり人間が生涯を終えてしまうと、火葬され骨になる。
そこに魂も無ければ意思も何も無い。
俺が未だジャンボ鶴田師匠や三沢さ光晴さん、そしておじいちゃんの拘る訳は何だ?
斉藤弘一にしてもそう。
霊などこの世にいない。
居ればいいなと思う場合もあるが、科学的に証明すらされていないのだ。
では、何故俺は拘ってしまう?
自身の生き方に都合いいからである。
死者を崇拝し、過去の生き様…、背中を実際に見て過ごした空間と時間。
それを自分なりに美化し、正当化したいのだ。
この真理でいえば、人間は生きている者たちが勝手に意味づけをしながら都合良く生きていく。
そうじゃなければ生きていけないからこそ、お寺に墓がある。
宗教に縋らなくても仏には縋り、誰もが大切にしていきたいのだ。
じゃあ俺はどうする?
まず生きていないと何も始まらない。
なら今日朝になれば病院へ行け。
行って薬をもらい、右脚の痺れと左薬指のばね指の改善を院長へ伝えろ。
それで闇シリーズを書きたいなら書けばいい。
ここまでを書いている途中、インカジ『レディ』時代の同僚湯浅から連絡が入った。
去年の十一月に彼から誘われルヴァンカップの決勝を観に行った以来。
あの時はすっかり湯浅からご馳走になってしまったものだ。
人生初千駄ヶ谷駅。
駅構内で大きな将棋の王将の駒を発見
将棋の街なのかな?
外へ出ると、結構人が多い。
例の彼が言っていたサッカーの試合があるからかユニフォーム来た人間が大半だった。
右手に見える将棋会館。
腹が減ったな。
何か食べておくか。
そこへ元職場の同僚湯浅から連絡が入る。
日高屋へいる事を伝え来てもらう。
何故か会計時、彼がお金を渡してくる。
「いやいや、何やってんですか」
「いえ、ここは自分で出させて下さい」
三十二歳の彼。
俺は二十歳も年下の彼から食事をご馳走になってしまう。
コンビニも長蛇の列なので、薬局で酒やつまみを購入。
そんな金額ですら湯浅は率先して払ってしまった。
国立競技場はもの凄い人だかり。
全盛期のプロレス会場でも見ないほどの統一感。
ほとんどが、黄色か紫のユニフォームしか着ていない。
「そういえば湯浅さん、ジャパンカップってこの事ですか?」
「あの時岩上さん、電話で最初寝惚けていたじゃないですか。ジャパンカップなんて言ってませんよ。ルヴァンカップって言ったんですよ」
よくよく考えてみれば、ジャパンカップなんて十一月末だもんな……。
まずは自分たちの席を確保しようとするが、そもそも彼がいい席を取っとおいてくれた。
何でも一万円以上したらしい。
金を払おうとするも一切受け取らない彼。
試合開始までまだ数十分あるが、国立競技場内はどこも禁煙。
以前斉木に誘われて行った横浜ベイスターズ戦の横浜球場で、トイレでタバコを隠れて吸ったあの頃。
ここじゃそれも通らないようだ。
湯浅の説明曰く、この先は柏レイソルエリアで分かり易く言うと黄色いユニフォーム以外駄目というエリアらしい。
逆側は広島だから紫以外駄目という事だろう。
準備のいい彼は、俺の分まで黄色いユニフォームを用意してくれていて、そのユニフォームを着てみる。
多分人生初だろうな、こんな事したの。
でもね、ここで一つ言いたい事がある。
サッカー観戦初めてな、俺。
完全に超初心者。
そんな俺の分までユニフォーム用意してまでくれた湯浅。
ハッキリ書き残そう。
柏レイソルの選手。
こんな事など知らないだろうけどさ、俺はこういう事を文学として絶対に残すから、君らも感謝を忘れるなよ?
「あ、岩上さん、向こうの見て下さいよ」
「あれ? 何ですか、アレ? 一斉に黄色いハンカチ出てきましたよ?」
場内異様な熱気に包まれる。
「え、何ですか、あの大きな布は?」
「あれ、一枚の手製で作ったものなんですよ」
「へー、あそこまでサッカーに掛ける情熱…、何だか凄いですね」
大きな布がしまわれていく。
最初に言っておく。
俺はこのシーンが一番心を動かされた
確かに曜日は土曜日だよ。
でもさ、この人たちって曜日とか仕事とか関係ないよね、見ているだけで分かる。
全日本プロレスのプロテスト受ける時、渕さんからね「何でJリーグ行かねえんだ?」って言われ「俺はプロレスのほうが好きです」と答えたあの時代。
これね、この年、Jリーグが開幕した年だったんだよ。
だから鮮明に覚えている。
当時の認識ハッキリ言うよ。
え、サッカーがプロ?
大丈夫なの?
これがこの時代の多くの人の認識だったと思う。
少なくとも俺の周りではね。
近い知人で言えば、ゴリぐらいかな。
Jリーグでオーレーオレオレオレーとかやっていたの。
あとは当時妹代わりに可愛がっていたミサキが、サッカー好きだというのを知ったぐらい。
あれから何年だよ?
Jリーグ発足してさ。
でもね、今こうしてこんな熱烈な応援を受けるようなっちゃってさ
正直羨ましいよ。
そりゃプロレスも人気落ちるわ。
プロレスの興行でもこんなの見た事がない。
正直な気持ちを言うと「あんたら本当にすげえよ!」ってね。
サンフレッチェ広島スターティングメンバーがスクリーンに映し出され
紫側から大きな歓声。
柏も負けず、ここで大きな歓声。
もうね、このコアファンたち。
九十分声出しっ放し。
そりゃあさ、選手も頑張っちゃうよな。
みんな本当に必死に応援してんだもん。
何かグランドに赤い服来た人たちが出てきたぞ?
柏レイソルのスターティングメンバーがスクリーンに映し出され、コレオグラフティー。
これ、一人一人の席の人たちが、あのような布を持って形成しているんでしょ?
恐るべしサッカーファン。
凄いね、観客動員数六万二千人超えだって。
俺たちの座るグランド真ん中のシートは中立だが、それでも向かい側を見ると上手い具合いに黄色と紫が分かれている。
柏は千葉なのでどちらかと言うとホーム側。
紫の人たちって広島から来ているらしい。
湯浅の説明で、何も知らない俺は様々な知識を得ていく。
前半で二点差か……。
俺は特にどこのファンでもないが、せっかくこの席を用意し気遣ってくれた彼の為に、内情的には柏レイソルに勝って欲しい。
しかし神様って無慈悲。
でも後半やっと柏も一点取り戻す。
支配率は柏が良かっただけに惜しい。
ゴールの決め手に欠けたのが残念だ。
のこり五分くらいになり、スコアは一対三のまま。
それでもめげずに柏レイソルコアファン。
声援をずっと飛ばしている。
「岩上さん…、帰り大混雑になりますから、うちら先に出ましょうか?」
「そうですね……」
俺は猛烈にセブンスターを吸いたかったので、彼の意見に思い切り賛成した。
帰り道、ルヴァンビスケットをまたもらう。
これね、入口で入る時ビスケットとJリーグのカードとパンフレットをもらったんだけど、先に出たうちらはちょっとお得。
国立競技場を出て、千駄ヶ谷駅まで来ると大きな歓声がスタジアムから聞こえた。
「試合…、決まりましたね……」
そう寂しそうに彼は言った。
「これからどうします?」
「亀有って近かったでしたっけ?」
「まあ行けなくはないですよ」
俺が過去一度だけ行った亀有の説明をしていると、湯浅が口を挟んでくる。
「岩上さん、亀有じゃなくて、亀戸じゃないですか」
「そうそう、亀戸でした」
そのまま総武線で、千駄ヶ谷から亀戸へ向かう。
「亀戸餃子が有名なんですよ。ゲッ…、もう並んでやがる……」
「凄いですね!」
「この先に一軒気に入っているジンギスカンあるんですよ」
「自分、前に北海道の旅行でジンギスカン食べただけですよ」
あの時一人で入った『ジンギスカンラムちゃん』。
もうさすがにあの時の女の子の店員いないだろうな。
会計しようと女性店員に一万円札を渡すと、湯浅が立ちあがり俺に金を返してくる。
「駄目です! ここは自分が出しますから!」
「いやいや…、サッカーもチケットもらい、日高屋も何故か出してもらい、せめてここぐらいは……」
「駄目です!」
彼にごり押しされ、ここまでご馳走になってしまう俺。
俺五十四歳無職。
湯浅さん三十二歳これからの人。
「もー…、じゃあ次の店ぐらいは絶対俺が出しますからね!」
そんな訳で二年前に来た亀戸を歩きながら超マニアック喫茶店『クレシェンド』を探索する
入る道を三回ほど間違え、ようやく到着クレシェンド到着。
値段二年前と変わっていないぞ、おい……。
タバコも吸えるカウンター席に腰掛け、店内を撮影。
俺はアイスコーヒー。
彼はアイスココアを注文。
会計時、金を払おうとすると、ここも強引に湯浅が出す始末。
いやいや、色々おかしいでしょ?
もう箇条書きにしよう。
・サッカーチケット代
・日高屋代
・ジンギスカンラムちゃん代
・喫茶店クレシェンド代
俺、二十代の飲み屋の女じゃないのよ?
乙女座だけどさ。
無職の五十四歳の独身男性よ?
去年の七月に退職した送別会でも見送ってくれた湯浅。
辞める時も、グレンリベットのボトルくれたし。
俺が辞めたあとの話も色々した。
一つここで自覚した事がある。
年齢はニ十歳以上離れている。
親子ほどの差だ。
でもね、人間を尊敬し信頼し合うのに年って本当はあまり関係ない。
人間性や育った環境、周りの人間関係様々なものあるけどさ、最終的に人間ってやっぱり自分自身がどうかって事なんだよ。
誰かのせいにするの簡単だし、そっちのほうが楽だけど。
でもさ、自分の足で立って考えて歩く。
それが本来の人間だから。
多分ね、俺は腐るほど地獄を一応潜り抜けてきた自負だけはある。
前の店で一番まともで話が合ったのが湯浅だった。
彼もお人好しで、本当に嫌な目に腐るほど遭った。
そんな彼とは俺が『レディー』に入った時最初に働いた人間でもある。
数ヶ月ぶりに電話してきた彼の用件は、現在一緒の職場で働く伊達の件だった。
このような内容の文章を書いている時、自然と繋がっていく因果律。
うん、評価など今は無くたって別にいいじゃないか。
自分なりに人間とは何ぞやという問いに対しての答えを今の段階で出せたのだから。
葛藤してもいい。
疑問を持ってもいい。
悩み立ち止まってもいい。
それでも俺は、続きを書こう。
地味でクソつまらない史実文学を……。
二千二十年一月十九日、日曜日赤口。
絶対に荒れる愛知杯。
三連単で二万馬券台以下は買わないほうがいいと思うハチャメチャレース。
過去十年間のデータを見ると一目瞭然だ。

二千十三年度愛知杯など、三連単で四百七十万の配当。
この時に千円買っていれば、四千七百万になるという恐ろしいレース。
さて、何買うか。
俺は様々な予想を繰り返す。
「岩上さん、今日もあそこ行きますよね?」
懲りずに酒へ誘う山下。
的中率が落ちたものの、ゲンに縋るとするか。
日曜日朝恒例の氷結フルーツタワーレモンサワー。
この組み合わせは、有馬記念当たった時の組み合わせ。

しかし競馬が絶不調だから、さすがに心折れてくる。
けいこからはあれ以来連絡は無い。
これで競馬外したら、俺ヤバくないか?
こういう時は新たな恋へ向かえばいい。
ひろみからメッセージが届く。
おまえじゃないんだよ……。
去年の暮れにシンラガーデンに来た聡子に声を掛けてみた。
快く彼女は了承してくれ、夕方食事の約束をする。
まだ二十歳だからお洒落な店がいいだろう。
さて、川越でそんな店あるか?
そういえば岩上整体の時よく来てくれたイタリアンのシェフ奥山の店も、ここ数年顔を出していないよな。
「すみませーん」
体格のいい同世代の男が入ってくる。
イタリアン料理リストランテベニーノ、オーナー兼シェフの奥山さん、俺より二つ下の三十三歳。
肩と腰が慢性的に悪いようだ。
俺は岩上流三点療法を使い、軽くしてあげる。
今度目の前のぺぺの三階にベニーノロッソというお店も出すようだ。
ペペのロッソは、今じゃサイゼリヤになってしまったもんな。
うん、聡子を奥山の店、リストランテベニーノへ連れて行くか。
あそこなら若い子も喜ぶはずだ。
とりあえず寝ておこう。
アラームで目を覚まし、競馬を確認する。
愛知杯は駄目だったが、京成杯は当たっていた。
配当六万六千円もつくんじゃ、いつもの調子でやってればよかったな。

とりあえず今年初重賞勝利。
調子に乗って地方競馬も賭けたら、ちょっと当たる。
ひょっとしたら聡子は上げマンなのかもしれない。
時間になり久しぶりにイタリアンのリストランテ『べニーノ』へ向かう。
オーナーシェフの奥山と久しぶりの再会。

聡子は緊張しているようなので、酒を勧める。
俺はワインのボトルを入れ、彼女の好みを聞いた上でオーダーを頼む。
過去に何度か食べているので、奥山の腕前は知っていたので安心できる。
まずは乾杯し、トマトのオーブン焼きからスタート。

続いてピザやリゾット、パスタを注文。

浅草ビューホテル時代に培ったサーバーの取り分けスキルを発揮し、彼女へ料理を渡す。

「岩上さんって器用なんですね!」
「まあ若い頃、ホテルで働いていた時期があってね」
「素敵ですね! カクテルも作れたりするんですか?」
「まあバーテンダーだったからね。腕が落ちているかもしれないけど、今度聡子へ作ってあげるよ。あ、パスタも来たよ。取り分けるね」

外へ出るととても寒い日だった。
俺はペペへに入り、彼女へストールを買い首に巻いてあげる。
「そういえばこの間の焼肉屋で一緒にいた先輩が教えてくれた店なんだけど、そこ寄っていくかい?」
「あ、でも…、そろそろお店に出勤しないといけない時間になってしまって……」
飲み屋の女はいつもこれだ。
まあ競馬も当たっているからちょっとぐらい付き合うか。
ただ彼女のすっぴんカフェへ向かう途中、ワザと人通りの細い路地を選んで向かい、悔しいので二十歳の唇を奪ってやった。
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