闇 448(クマさん出禁の真相編)
闇 448(クマさん出禁の真相編)

2026/01/11 sun
前回の章
二千十八年八月四日、土曜日仏滅。
馬投資佐藤充の競馬論はいつだって止まらない。
今日も昼からラッキーハウスへ来て喋り続ける。
またいつものように負ける俺。
この数ヶ月同じような流れて疲労困憊だった。
「岩ちゃんはさー、いつも俺の言う事を聞かないから駄目なんだよ」
「佐藤さん…、もう俺、競馬は辞めますから……」
「だから俺が言っているのはそういう事じゃなくてね?」
「いやいや、もう本当に勘弁して下さい。これじゃ何の為に働いているのか意味が無くなりますから」
「俺の言った通り賭ければいいだけじゃん」
「だってそれで外れたら、保証してくれんですか? 無理ですよね? 失うのは俺の金なんです。もう本当に競馬の話はいいですから」
感情的になった俺は、フェイスブックへ投稿した。
充は納得いかない様子でゲームの席へ戻る。
五万ぐらい入ると、責任者の橋本へ怒鳴りつけていた。
自分で勝手にINして負けただけの話だろうが、あのひねたチビめ。
俺はそのやり取りを無視して業務へ撤した。
二千十八年八月五日、日曜日大安。
競馬をまるでせず、仕事を終えて川越へ戻る。
ニャーニャーたちのお出迎え。

すっかり俺に懐いた野良猫たち。
しばらくは競馬で負けて失った金を地味に過ごして貯めればいい。
二千十八年八月六日、月曜日赤口。
フェイスブックの過去の思い出を見て、横浜時代ベンチプレスを買い、毎日大通り公園を走りトレーニングしていた頃の写真が出てくる。
もうあれから五年も経つのかよ。
またトレーニングしようかな。
いつから俺はこんなにも怠けるようになったんだ?
二千十八年八月十三日、月曜先負。
意志の弱い俺。
また競馬をしてしまい惨敗。

フランスの海外競馬と合わせて七万三千円負け。
意気消沈気味の休み。
せめて美味いものでも食べて過ごそう。
中央通りのピザ屋ロッコへ行き、ワイン飲みながらピザを食べる。

帰り道、近所の小江戸っ子うどんにも寄り、冷たいうどんを食べ、あとは家で大人しく過ごす。
ピザやうどんの写真を取り忘れた。
教訓、賭け事は良くない。
金を失うだけだ。
二千十八年八月十四日、火曜日仏滅。
世の中はお盆。
裏稼業の俺には無関係。
仕事帰り、いつものように野良猫ニャーニャーたちと戯れる。

世間一般の人間が休暇で腑抜けている間、俺はこうしてこの子たちとの親密な時間を過ごすのだ。
どんどん猫たちとの距離感が縮まっていくのを日々感じる。
家に帰ると居間に明かりがついているので、そのまま階段を上り自分の部屋へ行く。
叔母さんであるピーちゃんとは顔を合わせたくない。
これは二俣川から帰ってきて出した自身の決断だった。
階段を上る音が聞こえ三階へ行ったのを確認すると、俺は一階まで降りて電気をつける。
仏壇の前に行き、おじいちゃんとおばあちゃん、そして戦時中に亡くなったと説明されたおじいちゃんの兄へ三本の線香をあげた。
これは欠かさず行う自分の日課でもある。
たまには新宿と川越の往復だけでなく、横浜にも顔を出そうかな。
俺は今度の休みの予定を見てから、石川雅之へ連絡をした。
二千十八年八月十六日、木曜日赤口。
ラッキーハウスでの仕事を終えると、今日は西武新宿駅でなく新宿駅へ向かう。
湘南新宿ラインで横浜駅へ。
京急線で黄金町駅で降りて、石川雅之と合流した。
目的はいくどんの白コロ。
しかし何故か閉店していたので、彼にどこかいい店がないか聞いてみる。
「岩上さん、ジンギスカンなんてどうです?」
「え、今から大船のですか?」
「いえいえ、真金町近辺にあるんですよ。あ、岩上さんの好きな楽から近めの場所ですよ」
「いいですね、行ってみましょうよ。帰りに楽も寄って」
「あ、今日は自分まだ仕事がちょっと残っているんで、ジンギスカンだけの付き合いになってしまうんですが……」
「全然構わないですよ。こんな夜に付き合わせてしまい申し訳なかったですね」
「いえいえ、何を言ってんですか。明日ならちゃんと時間作れるんで、蒲田の井戸屋でも行きますか?」
「いいですね! じゃあとりあえず今日はそのジンギスカンへ向かいますか」
彼が案内した先は、中郵便局近くにあるジンギスカン『羊の大群』。
以前俺が住んでいた横浜橋商店街からも近くの場所だ。
バーのボロチャリの近隣にこんな店があったのか。

注文は彼に任せ、ひたすら羊肉を焼く。

野菜からサラダから色々とダイナミックな店だなと思った。
会計も奢ると言うのに折半でと割り勘を希望する石川。
仕方なく折れて半分ずつ出し合う。
彼が仕事へ戻ると、俺は一人で大通り公園を通過し、激安居酒屋『楽』へ向かう。
横浜へ来ると、必ずと言っていいほど俺はこの店へ寄っているな。
気付けば二度目の横浜時代から、ここが俺の居場所にもなっていたのだろう。
気さくなマスターに二百五十円のナポリタン。
いくら飲んだところで数千円で済むリーズナブルさ。
周りでギャーギャー騒ぐヨゴレ客たち。
何だかすべてがホッとできる空間。
常連のケンさんと幸代がいるが、クマさんの姿が見えないのでマスターに聞いてみる。
「あー、あの人は出入禁止にしたんですよねー」
この人柄のいいマスターが出禁?
何をしてそうなったのか酒を振る舞いながら事情聴取してみた。
激安値段設定でおそらく何か持ち込をしても、この人は怒らないだろう。
何故なら過去俺がどこどこ行った帰りに弁当のお土産を渡した事もあるが、その時大いに喜びその場で食べ始め、俺にも一緒にどうですかと勧めてきたほどだ。
食べてきたから大丈夫と丁重に断ると、気を遣うマスターは奥からちょっとした小皿の料理や乾きものをサービスでお返しに出してくる。
そんな人柄のマスターが常連客を出入禁止にするなんて、余程の事がない限りあり得ない。
最初は中々口を開かないマスターへ酒をどんどん飲ませる。
ここでは一杯飲ませたところで二百五十円。
バンバン飲ませ、貝のようにその話題だけ閉じた口を開かせていく。
「クマさんがいい肉を持ってきたと、うちに来たんですよ」
「差し入れですか?」
「いえ…、私がトイレに行っている間、戻ると勝手に厨房へ入り、その肉を焼いていたんです…。さすがにそこまでされちゃうと、私もねー……」
「いやいや、マスターの感覚全然おかしくないですから」
「いやー、岩上さんにそう言って頂けると私も……」
「ほら、マスター、グラス空ですよ? もう一杯どうぞ」
「いつも本当にすみません。へへ…、では二百五十円頂きまーす」
「ブッ…、マスター、ちょっと外の空気吸ってきますね」
吹き出しそうになるのを我慢しながら表へ出てから吹き出す。
マスターはいつも感謝してくれるが、俺はまだ楽に来て二千円も使っていないのだ。
本当に良心的で激安な店である。
それにしてもクマさんも随分無茶な真似をしたものだ。
人の店に来て、店主がトイレに行った隙に厨房へ入り勝手に調理を始めるなんて聞いた事もない。
あの温厚なマスターがキレた姿を想像し、俺はまた吹き出した。
セブンスターを一本吸い終わってから店へ戻る。
「そういえば先日大変だったんですよ」
「何かあったんですか?」
「うちの店の前で、常連客と揉めた近所の酔っ払いが、チェーンソーを振り回して警察官に囲まれましてね」
「はあ? どうやったらそんな状況になるんですか?」
「前にケンちゃん、クマさん、ワンさんの三人で投資したこの先にあった焼鳥屋はもう潰れたんですが、そこの客で金払い悪いのがいたらしいんですね。それとうちの常連客が多分金の揉め事なんでしょうね。言い合いになっていたら、激高して自分の家にあったチェーンソーと取りに戻り、振り回して大騒ぎになったんですよ」
「……」
ある意味歌舞伎町よりも物騒な場所の横浜市南区真金町。
楽しい時間を過ごし、俺は近所のラブホテルへ入る。
寝る前にデリヘル嬢を呼び、久しぶりに女を抱いてから寝た。
二千十八年八月十七日、金曜日先勝。
快適な目覚め。
俺はバスタブに熱いお湯を張り、ジャグジーを楽しむ。
昨夜の風俗嬢は中々いい女だった。
しかもどさくさに紛れてやらせてくれたのは大きい。
石川雅之との約束は昼からなので、部屋でのんびり寛いだ。
時間になり、日ノ出町駅から京急蒲田駅まで向かう。
おそらくこのルートが一番早いだろう。
久しぶりの蒲田。
駅を出ると見えるアーケード商店街。
中へ入ればすぐ井戸屋がある。
一年ぶり以上?
どれだけここの井戸屋に来たかった事か!
石川と落ち合い、アーケード商店街へ向かう。
すぐ右手に見えてくる井戸屋。

数あるメニューの中でも俺の頼むものははなっから決まっている。
ハンバーグ、そして茄子……。
素晴らしきお店。
店内にいる客すべてが微笑みを浮かべ、誰が見ても幸せなんだなあと分かる雰囲気を醸し出す。
ただ、混み具合により席に座れず、入り口で待っている客の表情は修羅または悪鬼羅刹そのもの。
腹が減ると、人は皆根底に眠る般若をつい出してしまう。
しかも目の前で美味そうななもの喰らう姿を見ながらの待ちでは、通常なら表へ出さない般若がつい出てきてしまうのは当然だ。
誰もがみな未熟な人間なのだから。
俺と暴れん坊将軍石川っちの四名席へ乱入…、いや言葉がさすがに乱暴か。
店の指図により同席してきた若き男もまた、一人の修羅を飼う人間。
若い彼は、何度も外から店内の混み具合を覗きつつ、席がないのを自覚しながらも中へ我慢できずに入ってきた。
可哀想だったのでこちらも相席を了承したが若き益荒男は失礼のない程度の角度で短いお辞儀をすると、すぐさま「ハ、ハンバーグ」と蚊の泣くようなか細い消え入りそうな声で必死に口を開く。
俺はそんな瞬間も見逃さなかった。

自分らのあとから運ばれて来たハンバーグを胃袋へ押し込む若き益荒男の目には、薄っすらと光るものが見える。
彼もここのハンバーグを心底楽しみに来ていた証明。
こういった美しい光景を目にしつつ、井戸屋をあとにした。
「ほんと良いお店ですよね」
「このお店の横に住みたいです」
冗談ではなく本心から出た言葉。
腹が減ってここの料理を食べられるなら、毎日でも通うだろう。
そのぐらいお気に入りの店だった。
石川へ昨日の楽でのクマさん出禁とチェーンソー騒動の話をすると、大笑いしている。
俺が勝手に想像でマスターが怒り「うぉー!」と声を張り上げたとでっち上げたのがツボだったらしい。
できれば激旨ローストビーフの店ホージーホージにも行きたかったが、開店時間は夕方。
昨日俺も猫たちへ餌をあげられなかったので、早めに川越へ戻る事にした。
電車で帰りながら、いい休日を過ごせたものだと思う。
夜になり部屋でのんびり過ごしていると、店から電話が入る。
明日からまた遅番シフトへ切り替わるという連絡だった。
また丸メガネ香川と同じ時間なのかよ……。
最後の最後で憂鬱になる。
まあ仕事だから文句は言えないし、仕方がない。
新宿歌舞伎町の裏稼業で生計を立てている以上、俺には選択権などないのだ。
しかし意味不明なシフトチェンジは本当にやめてほしいものである。
二千十八年八月二十日、月曜日仏滅。
遅番シフトになって数日。
じわりじわり溜まっていくストレス。
土日は充が競馬の話を振ってきても、辞めたの一言で追い払えるようになった。
時間帯的なもので猫たちとの遭遇率の悪さが出てきたのは悪い面。
いい面を取り上げるなら仕事帰りに川越へ到着する時間が昼前なので、今まで行けなかった飲食店も帰り道に行ける部分だろう。
今日はピザ屋のロッコへより、ピザとボロネーゼのパスタを食べる。
昼からピザをつまみに赤ワインを飲む幸せ。

「岩上さん、いつもいつもありがとうございます」
「え、何がですか?」
「うちの店を贔屓にして頂いて」
「何を言ってんですか。純粋にここのピザ食いたいから、勝手に来ているだけですよ」
「お陰様で徐々にお客様も増えてきまして」
「だってここのピザ美味しいんだから、当たり前の話ですよ」

ボロネーゼを食べながら、地域での繋がりってこういう事の連続なんだろうなと思った。
お互いがちょっとずつの気遣いと歩み寄りをすれば、気持ちいい関係になれる。
「あ、マスター。持ち帰りで一枚焼いてもらってもいいですか?」
「そんな気を遣わないで下さいよ」
「いえいえ、俺が美味いピザを持ってって自慢したいだけですから」
「岩上さん…、いつも本当にありがとうございます」
歌舞伎町という街で心を汚し、地元川越でその汚れを浄化していく。
何だかこの心境を文字で残しておきたい気分だったが、今の俺は小説を書かなくなってしまったしなあ……。
いつかは書くのだろうけど、一体いつになる事やら。
店を出ると親父へ電話をする。
ピザのお土産があるよと伝える為に。
「あー、もう飯食っちゃったよ」
「じゃあ、あとでピザ食えばいいじゃん」
「ん-、最近よ、胃もたれとかしちゃうから、ピザはいいよ」
「何だよ、せっかく焼きたてなのに」
まあ無理強いしてもしょうがないが、このピザどうするか……。
歩きながら始さんの伊勢屋は休みでシャッターが開いていない。
それなら櫻井さんのところはどうだろうと行ってみた。
櫻井商店のドアを開け「櫻井さん、焼きたてピザのお土産です」と渡すと喜んでもらってくれる。
フェイスブックへロッコへ行った投稿をすると、律義な櫻井さんはコメント欄に『お土産ありがとう』と早速書き込んでくれた。
『とんでもないです、次は二枚持っていきます』とお返しすると『そんなには食べれない』と返ってくる。
こういうのもひっくるめて俺は今、川越にいるんだなあと再認識した。
二千十八年八月二十二日、水曜日赤口。
今日のお昼はレストランシブヤ。
頼むのはお決まりのランチとナポリタン。

こうして好きな時に好きな店へ行き、好きなものを食べられる幸せ。
これは遅番の時間帯じゃないと不可能な事だ。

ナポリタンを食べながら、ちょっとした幸せを噛み締める。
唯一気になるのが、今日も帰り道猫たちと出会えなかった事。
ちゃんと餌にはありつけているのだろうか?
二千十八年八月二十八日、火曜日赤口。
基本的に俺はいつも三十分前には職場へ着くよう心掛けている。
これは遅刻するのが嫌だからという理由。
夜十時までに出勤すればいいところをいつも八時半前の電車へ乗っていた。
新宿には九時半に到着するので、どうしても早めの出勤となる。
これは俺の心掛けの問題なので、その分金が発生しないとか些細な事はどうでもいい。
この日途中で突然電車が停まる。
少しして人身事故が発生し為と車内アナウンスが流れ、電車の中へ閉じ込められたままになってしまう。
これ、下手したら十時過ぎるだろうな……。
俺はラッキーハウスへ電話を掛け、人身事故で電車が停まっている状況を伝えた。
早番の橋本もまだ九時台なので、遅れても大丈夫なよう香川へ伝えると言ってくれる。
携帯電話があるので時間を潰すのは退屈せずに済むが、こんな時間帯を狙って電車へ飛び込んだ馬鹿にはイライラしてくるものだ。
横浜のイワカミ工業時代の嫌な思い出をどうしても蘇ってしまう。
翌日二十四日の朝、またしても電車が止まり川崎駅へ迎えに来る志村へ迷惑を掛ける形になる。
駅員に聞くとたった今人身事故があったらしい。
駅構内は人でごった返し。
志村との待ち合わせ時刻がどんどん過ぎていく。
あとでタクシーで行くから済むような場所に職場は無い。
仕方なく電話をして状況を説明した。
「あとどのぐらい掛かるんすか?」
明らかに不機嫌さを隠そうとしない志村。
「人身事故なので、何とも言えないんですよね……」
「だいたいどれぐらい時間掛かるんすか? それぐらい言って下さいよ!」
「いや、駅の都合や処理にもよると思うんで……」
「岩上さん! いい年してんだからさー。そのぐらいすぐ答えてよ!」
「すみません……」
もの凄い屈辱感。
何で飛び込み自殺した馬鹿のせいで、俺が二十代半ばのガキにこんな説教されなきゃいけないんだ。
それでも自分のせいではないが非礼を詫びる。
彼が送り迎えをしてくれなきゃ、イワカミ工業が成り立たない図式。
その為なら十六歳年下相手でも謝る時は頭を下げる。
それが高橋俊の顔を立てる事にもなり、自身の生活の基盤を守る事にもなるのだ。
長い時間待たされようやく動き出す電車。
結局西武新宿駅へ到着したのは夜の十一時を過ぎていた。
一時間半近くも事故のせいで掛かってしまったのである。

駅構内は人でごった返していた。

いつもの十倍以上いつ人たちを見て、本当に傍迷惑な行為だと思う。
俺はフェイスブックへこの心境をそのまま書いた。
どこの馬鹿だよ!
こんな時間に飛び込みするなんて。
死んでからまで迷惑掛けるな。
非人道的なと思う人もいるだろう。
しかし、間違った事は言っていないつもりだ。
自殺をするほど弱っているのはいい。
それでも死ぬ時まで大勢に迷惑を掛けるなと言いたいだけ。
何でこんな事が分からず、繰り返し電車での人身事故は絶えないのだろうか?
ラッキーハウスへ遅れて出勤すると、予め連絡はしていたのに香川からネチネチ嫌味を言われた。
二千十八年八月二十九日、水曜日先勝。
そういえば毎日のように来ていた常連客の丸の姿をここ数ヶ月見ていない。
前に中年女性を一度だけ連れて来た事があったが、その人は一切ゲームを打たずムスッとしたままポーカーの画面を見ているだけだったのを覚えている。
その前だと橋本と早番のまだ寒かった時期が最後だったんじゃないだろうか。
いや、五月の頭ぐらいまでは来ていたよな?
ダラダラ長時間ポーカーを打つ客の高山。
ちょっと打っては台の移動を何度も繰り返す丸。
一人でもいる限り、ホールに立って業務をするようなのが面倒だった。
必然的に店内に設置しているテレビ画面へ目が行く。
嫌でも目に入る話題。
ジャニーズ事務所『TOKIO』のメンバーである山口達也という芸能人が、泥酔した状態の女子高校生へ強制わいせつ容疑で書類送検され、芸能活動を無期限謹慎処分と何度も報道している。
こんな奴いたのかという認識だが、これだけ売れて満足できる地位まで行ったのに馬鹿な奴だなあと思う程度だった。
まあテレビでこれだけ騒がれているのだから、芸能界ではそこそこの人気者なのだろう。
そうだ、芸能人の山口達也が強制わいせつ容疑で書類送検とテレビで毎日放送していた頃、確かに丸は来ていた。
金でも尽きたのかな?
まあちょっと薄気味悪いところがあったので、来ないならそれでも問題はない。
ただあれだけポーカー中毒だった人間が、これだけの期間来ないというのは珍しい事だ。
朝方になりオーナーである酒井さんの側近の金太郎が来店。
妙にニヤニヤしているので何がおかしいのか聞いてみる。
「丸さんいるじゃない」
「ええ、彼がどうかしたんですか?」
金太郎は携帯電話を操作し、画面を見せてくる。
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