看護師さんが密かに困ってる『褥瘡ケアあるある』。薬剤師が見つけたNG組み合わせワースト3
「せっかく貼ったパッドが、もうズレてる…」
「テープの中がドロドロで、逆に皮膚がふやけてるんだけど…」
「軟膏をきちんと塗ってるのに、フィルムがすぐ剥がれる…」
褥瘡ケアの現場で、
こんな"報われない瞬間"に出会ったことはありませんか?
きちんと時間をかけて処置しているのに、なぜかうまくいかない。
むしろ前より状態が悪くなっている気さえする。
私は認定褥瘡薬剤師として、
回復期リハ病棟で毎週この景色を見てきました。
そして気づいたんです。
原因の多くは
─「ドレッシング材」と「外用薬」の組み合わせにあるということ。
どちらも「創を良くするため」に使っているのに、
組み合わせ次第でお互いの効果を打ち消し合ってしまう。
これは意外と見落とされがちな、
褥瘡ケアの落とし穴。
今回は、現場で本当によく見かける
「やってはいけない組み合わせ」ワースト3を、
薬剤師の視点から解説します。
第1章:なぜ「組み合わせ」で結果が変わるのか
外用薬には3種類の「基剤」があります。
吸水性基剤(例:ユーパスタ、カデックス)── 創から水分を引き出す
保湿性基剤(例:アクトシン)── 適度な湿潤環境を保つ
油脂性基剤(例:プロスタンディン、ゲーベン)── 創面にフタをして油分で守る
ドレッシング材にも、似た役割があります。
吸水系(パッド、ガーゼ)── 滲出液を吸い取る
保湿系(ハイドロジェル)── 適度な湿潤を保つ
密閉系(ハイドロコロイド、フィルム)── 創を閉じて守る
つまり「何を使うか」より、
「方向性(ベクトル)を揃えるか」が結果を決めるんです。
ここがズレると、
お互いに引っ張り合い、創がぐちゃぐちゃになる。
具体例を見ていきましょう。
第2章:現場でよく見る「やってはいけない」組み合わせワースト3
NG①:吸水パッド × 油脂性基剤(例:プロスタンディン軟膏など)
「滲出液が多いから、しっかり吸わせよう」
「肉芽形成のためにプロスタンディンを塗って、上から吸水パッドで…」
このパターン、すごくよく見ます。
★何が起きているか
油脂性基剤は、創面に「油のフタ」を作ります。
これは創を保護するために重要な働きですが、
水分を通しにくい性質も同時に持っています。
つまり、滲出液の"出口"が塞がれた状態。
その上に吸水パッドを重ねても、水分はパッドまで届きません。
結果として、滲出液は創部に閉じ込められ、
周囲皮膚がふやけて(浸軟)、感染リスクも上がる。
「吸わせているつもりが、実は閉じ込めている」状態です。
★ワンポイント対策
ベクトルを「吸う×吸う」で揃える。
滲出液が多い創 → 吸水性基剤(ユーパスタなど)+吸水パッド
肉芽形成期で滲出液が少なめ → 保湿性基剤+ハイドロジェルなど
「とりあえずパッドで吸わせよう」の前に、
基剤の性質を一度確認してみてください。
NG②:密閉系ドレッシング材(ハイドロコロイド等) × 吸水性基剤(例:ユーパスタ)
「ユーパスタで創をきれいにしたいから、上からハイドロコロイドで密閉しておこう」
一見、合理的に見えますよね。
でも、これが最悪のコンビなんです。
★何が起きているか
ユーパスタ(吸水性)が、創からガンガン水分を引き出す
ハイドロコロイド(密閉系)が、その水分を逃さず閉じ込める
→ ドレッシング内が水浸しになります。
その結果:
大量の滲出液と溶けた軟膏でドレッシング内がベタベタ
健常皮膚までふやけて(浸軟)、二次的な皮膚障害発生
ハイドロコロイドの粘着力が水で失われ、ズレ・漏れが起きる
在宅・施設では、ゲル状になった薬剤の洗浄が困難で家族の負担増
★ワンポイント対策
ユーパスタはガーゼ・吸水パッドと組み合わせる
ハイドロコロイドは軟膏と併用せず、単独使用が基本
もしどうしても両方使いたい場面では、
水分のベクトルが揃っているかを必ず確認してください。
ここで、もう1つ大事な視点があります。
病院なら、シャワー設備や十分な温水、複数のスタッフがいて、
「たっぷりの流水+物理的な洗浄」で
ゲル化した薬剤をしっかり落とすことができます。
でも、在宅や施設ではどうでしょうか。
「ベッドサイドで、ペットボトルの微温湯とシリンジ1本だけ」
——この条件で、あの強固に貼り付いたゲル状の薬を
“完全に洗い流す”のは、ほとんど不可能です。
それでも多くの看護師さんは、
「私の洗い方が悪いのかな」と自分を責めてしまいがちです。
本当は、
環境(在宅・施設)と
薬の基剤(洗いにくいゲル・ポリマー)が根本的にミスマッチ
であることが多く、技術の問題ではありません。
だからこそ、在宅や施設の現場では、
「洗い流しやすい基剤(水溶性・マクロゴール系など)を選ぶ」
という視点が、とても大事になってきます。
NG③:フィルム材 × 軟膏のベタ塗り
「軟膏を塗って、上から固定でフィルムを貼っておこう」
「周りの皮膚も保護したいから、軟膏を広めに塗ろう」
これも本当によくあるパターン。
★何が起きているか
フィルム材は、皮膚にしっかり密着して固定力を発揮します。
ところが、皮膚表面に油分(軟膏)が残っていると、
粘着力が著しく低下する。
結果:
「貼っても貼ってもすぐ剥がれる」
頻繁な貼り直しで物理的な皮膚刺激が増える
保護も固定も中途半端というダブルの不利益
★ワンポイント対策
軟膏は「創の範囲だけにピンポイント」で使用
周囲皮膚は清潔・乾燥を保つ
必要なら皮膚保護クリームやバリアフィルムで「軟膏エリア」と「粘着エリア」を分ける
第3章:迷ったときの「正しい組み合わせ」の基本ルール
3つのNGに共通するのは、「方向性のズレ」でした。
逆に言うと、ベクトルを揃えれば失敗はぐっと減ります。

鉄則は「吸う×吸う」「守る×守る」。
そしてもう一つ、
ポケット創では「入口だけ密閉される」落とし穴にも
注意してください。
創の奥は滲出液が出続けているのに、
入口が閉じられると逃げ場がなくなります。
「出口(開口部)を確保できているか」も、
必ず確認したいポイントです。
最後に──看護師さんに伝えたいこと
ドレッシング材を毎日触っているのは、看護師さんです。
外用薬の処方提案を医師に伝えやすいのは、薬剤師です。
つまりここは、
看護師さんと薬剤師の連携が一番効くポイントだと思っています。
「このテープに、この軟膏を合わせて大丈夫?」
「この滲出量で、この基剤は適切?」
「在宅では洗浄が難しそうだけど、別の選択肢ある?」
──そんな一言を、ぜひ病棟や
訪問先にいる薬剤師に投げかけてみてください。
「こんなこと聞いていいのかな…」なんて遠慮はいりません。
むしろ、聞いてもらえるのが一番うれしいんです。
そして、読んでくださったみなさんへ──
みなさんの病棟では、どの組み合わせで一番困っていますか?
「うちはこんなNG事例があった」
「これも追加してほしい」
など、コメントで教えてもらえると嬉しいです。
毎日褥瘡治療と向き合っている看護師さんの背中を、
この記事ですこしでも推せたら嬉しいです。
🔗 褥瘡ケアをもっと深く知りたい方へ
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