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【チーム医療】「薬局にいてもいいよ」と言われた私が、褥瘡ケアで真っ先に相談されるようになった"魔法の一言"

褥瘡回診について行くだけの時期があった。
「ついて行く」というより、
正確には「後ろをうろうろしていた」時期。

創を見ようと近づくと、
看護師さんがスッと前に入る。

「処置やるからちょっとごめんねー」
また次の部屋でも、「ちょっとごめんねー」。

毎回毎回、ごめんねごめんねの嵐。
「U字工事か!」と思いながら、
笑えないなと思った。

意見を言おうとしても、
わたしは何かピントがずれているらしい。

「……あー、うん」

それだけ言われて、話題が変わる。
私はそこにいるのに、いないみたいだった。
ある看護師さんには、こう言われたこともある。

「薬局にいてもいいよ」と。


カメラマン作戦

だから私は、作戦を変えた。
創の写真を撮ることに徹した。

看護師さんは処置で手一杯だから、
撮る余裕がない。

「じゃあ私がカメラマンをやります」
という名目で、回診に参加し続けた。
パシリじゃん、と思いながら。
『薬剤師の職能なんて、誰も私に求めてないじゃん!』と一人で拗ねながら…。

そのカメラマン生活は、
気づけば2〜3年になっていた。

ある日、その「カメラマン業務」が
看護部の新人教育に組み込まれた。
つまり、正式に新人さんの仕事になった。

……やばい。仕事がない。

やることなくなってしまった…

そこで初めて、片っ端からビジネス書を読んだ。
褥瘡の本じゃなくて、ビジネス書。

看護師に勝てなかった薬剤師が
最後に頼ったのはドラッカーだった。


ビジネス書から学んだこと

ビジネス書を読んで、気づいたことがあった。
私はずっと、正しいことを言おうとしていた。

「滲出液が多いので、マクロゴール基剤に変えませんか」
「エビデンスでは、この成分が有効とされていて」

たぶん、間違ってない。

でも医師には
「理屈はわかるけど、エビデンスと臨床は違うからなー」と言われた。

看護師には
「先生も考えてやってるんだから、否定しちゃだめだよ」と笑いながら言われた。

……否定した覚えはない。
でも、そう聞こえていたらしい。


医師が考えているのは「どうやって治すか」だ。
看護師が悩んでいるのは「今日の処置をどう乗り越えるか」だ。

ガーゼが漏れる。
シーツが汚れる。
患者さんが痛がる。
腰が痛い。

その泥臭い困りごとを横に置いて、
「エビデンスでは〜」と話し始めても、
誰の心にも、何も届かない。

誰かが悪いわけじゃない。
ただ私は、相手の困りごとではなく、
自分の知識を話していた。

・・・と言うようなことが、
当時読んだビジネス書に書いてあった。
褥瘡の本じゃなくて。

ほんと、なんで誰も教えてくれなかったんだ。


苦手だった看護師を味方につけた日

ある日の回診で、お局看護師さんがぼやいた。

「もー大変。1日2回も処置してると腰痛いわー」

……このひと、苦手だ。
以前「薬局にいてもいいよ」と言ったひと。
どうせ何を言っても、突っぱねられる。

でも、口が動いた。

……処置、1日1回にできるかもしれないです。
先生に相談してみましょうか?

恐る恐る、小声で。
0.5秒くらい、沈黙があった。

「処置1回にできるかもしれないの? 
いますぐ提案して!」

お局看護師さんが、
鬼の形相で前のめりになっていた。
別の意味で、『こわい…』と思った。


その後、彼女は医師にごり押ししてくれた。
医師は圧に負けたのか、しぶしぶ変更してくれた。

結果は、改善傾向。

「処置が楽になったよ!」とは言われなかった。
でも…

「この処置、もっと楽にならないかな?」
「HONOさん、ちょっと創みて!」

そう声をかけてもらえる機会が、一気に増えた。


私がやったことは、薬の提案じゃなかった。
「腰が痛い」に、気づいた。
それだけだった。

向けるべき視点が変わった

本当の意味で「チーム医療」がわかった日

資格を取った。
勉強もした。
知識はある。

それでも、チームに届かない時期があった。

知識は正しかった。
でも使い方を間違えていた。

知識は、自分の正しさを証明する鎧じゃない。
チームの困りごとを解決する道具だ。

たくさんのビジネス書を読んで、
やっとそれがわかった。


「最近、処置が大変そうですね」
2〜3年かかったけど、この一言に行き着いた。
薬の話は、その後でいい。

相手の困りごとに気づくこと。
それが、チームの中に「自分の居場所」を作る、
最初の一歩だと思っている。


現場で「透明人間」になっている薬剤師さんへ。
カメラマンを2〜3年やっていた私が言うので、たぶん合っていると思います。


▼チームから「この傷、どうしたらいい?」と相談されたとき、自信を持って答えるための「武器(知識)」も必要です。 相談された後、薬剤師がどうやって「創の水分量」を推理し、基剤を選んでいるのか。教科書には載っていない「5つの質問」とアセスメントの裏側を、こちらの記事で詳しく公開しています。


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