【褥瘡が苦手な薬剤師へ】ユーパスタかカデックスか?現場で困らない処方提案術
「褥瘡が苦手」
そんな薬剤師の方、多いんじゃないでしょうか。
わたしもそうでした。
認定褥瘡薬剤師の資格を取ったあと、
褥瘡治療薬に関する提案や、他の職種との連携がスムーズにいったか…
答えは「NO」です。
──そんな失敗続きだった私が、認定取得から1年かけてようやくたどり着いた「現場で困らない外用薬の選び方」。
この記事は、私のnote褥瘡シリーズ全6本の完結編です。
📚 この記事を読む前に、無料の3記事から読むと理解が立体的になります
【ステップ1:基剤の罠を知る】
【ステップ2:選び方の地図】
【ステップ3:他職種との連携】
これらを読んだ上で、本記事ではいよいよ「ユーパスタかカデックスか」という現場で最も悩む二択に、認定褥瘡薬剤師としての判断軸とテンプレをお届けします。
せっかく頑張って勉強しても、実務で使えなければもったいない。
そう思って、この記事では実際にわたしが現場で使っている
コミュニケーション術も含めてお伝えします。
1章.成分より先に確認すべき3つのこと
「ユーパスタの処方が出たんですが、
ガーゼからドロドロに溶け出してパジャマが汚れちゃって……。
ご家族が『もう限界。なんとかならないの?』って言ってます」
訪問看護師からのこんな電話で、冷や汗をかいた経験はありませんか?
薬局で処方箋を見たときは
「滲出液が多いから、吸水性の高いユーパスタで合っている」
と判断したはず。
成分としては間違っていないのに、
なぜか現場で「実際の処置」が破綻してしまう。
褥瘡外用薬において「成分」だけで薬を選ぶと、
私たちは必ずこの罠にハマります。
うまくいかない原因は、成分の知識不足ではありません。
次の3つのどれかを見落としているからです。
1. 吸水(滲出液=e/E)が追いついていない
2. 洗浄(残存リスク)が処置体制として機能していない
3. 処置体制(交換頻度・訪問回数・夜間体制)が破綻している
薬局は創を直接見られないことが多い。
だからこそ、
「情報を集めて、医師・看護師に判断しやすい形で渡す」
これがセオリーです。
成分の話は、この3つの軸を整理してから始めます。
2章.共通言語:e/E×Mを「現場の言葉」に翻訳する
「DESIGN-R?TIME?なにそれ?
そんな評価スケール、薬局で使えるの?」
そう思った方、安心してください。
ここで使うのはスケールの点数ではなく、考え方の軸だけです。
覚えるのは2つだけ。
■ e/E(DESIGN-R®2020の滲出液評価)
「吸水が必要かどうか」を確認する軸
・ 滲出液が多い?少ない?性状は?
■ M(TIMEの湿潤バランス評価)
「処置トラブルが出ていないか」を確認する軸
・ 湿潤が保てている?崩れている?(浸軟・漏れ・固着など)
大事なのは「採点」ではありません。
使える言葉に落とすことです。
たとえば、患者さんやご家族からこんな言葉が出てきたとします。
「ガーゼがすぐ湿る」
「交換前に漏れる」
「周りの皮膚がふやけて白くなる」
これは全部、M(湿潤環境)の破綻(=処置トラブルのサイン)です。
難しい評価ツールは不要です。
日常会話の中にすでに「答え」は隠れています。
3章.同じ「水を吸う薬」なのに、なぜ使い分ける?ユーパスタ vs カデックス 3つの違い
「カデックスって吸水性が高いって聞いたんですが、
在宅でも使えますか?」
この質問、答えるのが難しいと感じませんか?
「使えます」でも「使えません」でも、どちらも正解になり得るからです。
理由はいたってシンプル。
使えるかどうかは、薬の性質だけでなく「現場の処置体制」で決まるから。
成分の比較ではなく、現場の状況をもとに比較をしましょう。
▶ A|吸水:まず「追いついているか」を確認する
「滲出液が多いから吸水性の高い薬を」
—という発想自体は正しいです。
ただし、どのくらい吸水できるかと、どのくらいの頻度で交換できるかは
セットで考えないと意味がありません。
吸水の議論は、交換頻度の確認が終わってから始めましょう。
▶ B|残存:「洗浄できる処置体制か」が分岐点
カデックスは交換時に「生理食塩液等で十分に洗浄除去」するということが添付文書に明記されています。
つまりカデックスは、洗浄できる体制があって初めて成立する薬です。
吸水性の高さだけを見て選ぶと、
「洗浄が難しい現場」では洗い残しが積み重なり、
別の問題が生まれてしまいます。
一方、ユーパスタ系(白糖・ポビドンヨード)は
水溶性の性状として整理されていて、
比較的簡単に洗浄しやすいという違いがあります。
「カデックスのほうが吸収力が高いから良い」ではなく、
「その現場で洗浄ができるかどうか」が先に来る。
ここを逆にすると、冒頭の電話のような事態が起きます。
▶ C|処置体制:「誰が何回できるか」が最後の決め手
薬が合っていても、処置体制が機能しなければ意味がありません。
在宅なら、「毎日訪問できない」
施設なら、「洗浄に十分な時間を確保するのが難しい」
こうした現場の制約を無視した処方設計は、
どんなに薬を選び抜いても現場では成果がでません。
カデックスは吸水性も高く、非常に優秀な薬剤です。
しかし、「交換時に生理食塩液等で十分に洗浄除去する」
という必須条件 があります。
もし、老老介護の現場で、目も耳も遠いご家族に
「毎日、シャワーボトルでお湯をかけて、
古い薬をキレイに洗い流してから新しい薬を入れてくださいね」
と指導したらどうなるでしょうか?
古い薬と滲出液が混ざったものが創部にこびりつき、
最悪の場合、それが原因で感染を引き起こすリスクすらあります。
「誰が、どうやって洗うのか」
この体制が担保されない環境でカデックスを提案することは、
患者を危険に晒すことと同じ意味なのです。
薬剤師として処方に関わるとき、
最初に確認すべきは「処置体制の上限」です。
現場での処置体制が先、薬剤選択は後。
この順番を守るだけで、連携の質がぐっと変わります。
先発・後発の注意
もう一つ、見落としがちな落とし穴があります。
「ユーパスタがジェネリックに変わっただけで、
最近なんか漏れが増えた気がする」
という声が現場から上がることがあります。
同じ成分でも、製剤の違いによって吸水性が異なる可能性があります。
「同じ成分だから同じ」で決めつけずに、
銘柄が変更された後に、実際の処置が崩れていないかを
確認する習慣を持ってください。

4章.「最短質問セット」で情報をまとめよう
ここまでの話を、質問でまとめましょう。
まずはこの5問だけ。
Q1.「ガーゼは何時間で湿りますか?」
e/Eの推理:吸水が追いついているかの確認
Q2.「交換前に漏れや臭いはありますか?」
M(湿潤環境)破綻の早期サイン
Q3.「周りの皮膚がふやけて白くなりますか?」
浸軟=M(湿潤環境)が破綻しているサイン
Q4.「交換のたびに“洗って落とす”という処置はできていますか?」
洗浄=残存リスクの確認
Q5.「剥がすときに、痛みや出血はありますか?」
乾燥・固着・組織損傷のサインとして観察
この5問で「湿りすぎ・適正・乾きすぎ」の方向性が見えてきます。
5章.Yes/No分岐フロー:3つの軸で考えよう
5問の答えを「吸水→交換頻度→洗浄」の順に並べると、
判断の道筋が一本になります。
吸水が追いついているか?
↓ No(不足)
交換頻度を上げられるか?
↓ No(不可)
洗浄(残存除去)は十分にできる体制か?
↓ ここで薬剤・被覆材・処置体制の相談方向が決まります
ここまで「3軸の考え方」と「最短5問」をお渡ししました。
ここからはわたしが実際に行っている、
具体的コミュニケーション術のお話です。
🌱 まずシリーズ全体像を知りたい方へ
この記事から読み始めると、
私が褥瘡認定薬剤師として何を考えているかの全体像が見えます。
これより先の有料部分では、
それをすぐに実践できる形にしてお届けします。
✅ 質問の使い方・深掘りガイド
5問の「なぜ聞くか」と追加確認の判断基準を解説
✅ Yes/No分岐フロー(ケース別)
湿りすぎ/乾きすぎ/洗浄問題を、典型3ケースで通し確認
✅ 医師・看護師メッセージ集
【現状の課題】【ご相談】形式でコピペ可
✅ 典型3症例の通し稽古
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