見出し画像

【保存版】回復期薬剤師が現場で見ている「6つのリハ阻害薬」リスト ─FIMが伸びない患者さんの裏に薬がいる

「最近〇〇さん、リハの時間にぼーっとしてて」
「午後は決まって眠そうなんだよね」
「下痢が続いて、今日もトイレでリハ中断…」

回復期リハ病棟で、こんな会話を聞いたことはありませんか?

毎日リハをしている。
栄養もそこそこ入っている。
それなのに、FIMが動かない。

──そんなとき私が必ず確認するのが、
「薬がリハの邪魔をしていないか」という視点です。

この記事は、回復期リハ病棟で薬剤師が現場で見ている「6つのリハ阻害薬」を一覧でまとめた保存版です。
若手のPT・OT・STさんに「気になる症状があったら、薬剤師に声をかけてみよう」と思ってもらえるよう、現場のサイン × 該当する薬 × 薬剤師への相談テンプレをセットで載せました。

📑 こんな方に届けたい
・受け持ちの患者さんでFIMが伸び悩んでいる PT・OT・ST(1〜5年目)
・後輩から薬のことを聞かれて即答できなかった ベテランリハスタッフ
・リハ職にどう薬の話を伝えればいいか迷っている 若手薬剤師(病棟2〜5年目)

🔗 各薬剤の詳しい解説は、シリーズ記事へのリンクから飛べます

睡眠薬の話 → ②その傾眠、睡眠薬のせいかも
抗コリン薬の話 →
③「最近ボーっとしている」は薬のせい?
PPI・下痢の話 →
④リハビリを止める「下痢」の正体
抑肝散・低Kの話 →
⑤「足に力が入らない」は歳のせい?
2026年改定の話 →
⑥2026年診療報酬改定とリハ薬剤のこれから


「高齢だから仕方ない」
「脳梗塞の影響かな」
「もう伸びしろがないのかも」

──そう片付けてしまう前に、
一度だけ薬に目を向けて見てほしいんです。

FIMが伸びない患者さんの背後に、
薬が原因の"リハ阻害"が隠れているケースが、
現場には驚くほど多い。

私は回復期リハ病棟の薬剤師として、
毎日そんな患者さんに出会ってきました。

今日は、私が病棟で実際に見つけてきた 6つのリハ阻害薬 を、
まずは全体像としてお伝えします。

各薬剤の詳細は個別記事にまとめてあるので、
気になるものから読んでください。



■ なぜ今、「薬がリハの邪魔をしていないか」を確認すべきなのか

2026年度の診療報酬改定で、
回復期リハ病棟には3つの大きな変化が起きました。

  • FIM実績指数の基準値引き上げ(入院料1は42以上)

  • 除外患者割合の縮小(3割→2割)

  • 歩行・トイレ動作のFIM改善への加算新設

つまり、これまで以上に
「FIM利得を出す」ことが
経営的にも臨床的にも求められる時代
になっています。

その中で薬剤師ができる最大の貢献が、
「薬がリハの邪魔をしていないか」を点検すること

これを私は 「リハ薬剤」 という考え方で実践しています。


■ エビデンスが示すこと──薬とFIM利得の関係

「リハが進まないのは薬のせい」というのは、
感覚論ではありません。
データが示している事実です。

  • 廃用症候群264名の研究:ポリファーマシーとFIM利得に有意な負の関連(β=−5.462)

  • 脳血管疾患患者でも同様の結果(β=−3.225)

  • 抗コリン負荷(ARS)が高いほど、認知FIM利得が有意に低下

3つの情報をまとめると、こんな感じです。

要するに、多くの薬を飲んでいる患者さんほど、リハの効果が出にくい
これは現場で「なんとなくそう思う」ではなく、
データで裏付けられている話なんです。

(参考文献は記事末にまとめています)


■ 回復期でよく見るリハ阻害薬6選

ここからが本題です。
私が病棟で実際に「これは外せないか」と
医師に相談する機会が多い、
6つの薬効群を紹介します。

回復期でよく見る薬たち。

各セクションの最後に、詳細記事へのリンクを貼っています。
気になるものから深掘りしてください。


① 睡眠薬・ベンゾジアゼピン系薬

代表薬:ハルシオン、デパス、レンドルミン、マイスリー

現場のサイン

  • 午前のリハで「受け答えがはっきりしない」

  • 「体に力が入らない」と本人が訴える

  • 転倒リスクが上がる

  • 食事中の傾眠

FIMへの影響:移動FIM・セルフケアFIM・認知FIM、すべてに影響しうる最大級の阻害因子。


② 抗コリン薬(隠れ抗コリン薬に注意)

代表薬:ベシケア、トビエース、第一世代抗ヒスタミン薬、一部の抗精神病薬、H2ブロッカー(ガスター)、三環系抗うつ薬

現場のサイン

  • 「名前が出てこない」

  • 「今日の日付がわからない」

  • 「トイレの場所を間違える」

  • STやOTから「最近、指示が入らないんだよね」

FIMへの影響認知FIM(記憶・理解・問題解決)を確実に下げる。「認知症が進んだのかも」と片付けられがちな最大の罠。


③ 降圧薬(特にα遮断薬)

代表薬:ドキサゾシン、テラゾシン

現場のサイン

  • 立ち上がり時のふらつき

  • 起立性低血圧

  • 「移動訓練がなかなか進まない」とPTから

FIMへの影響移動FIM・歩行FIMを直撃。転倒リスクと表裏一体。


④ PPI・H2ブロッカー

代表薬:タケキャブ、ネキシウム、ガスター

現場のサイン

  • 看護師から「下痢が続いてリハどころじゃない」

  • 「トイレが間に合わなくて移動訓練が進まない」

  • 腸内環境変化によるClostridioides difficile感染リスク

FIMへの影響トイレ動作FIM・移動FIMを物理的に止める。


⑤ 抑肝散・利尿薬(低カリウム血症)

代表薬:抑肝散(甘草含有)、フロセミド、トリクロルメチアジド

現場のサイン

  • 「足に力が入らない」

  • 足のむくみ・倦怠感

  • 看護師から「最近〇〇さん元気がない、お薬かな?」

FIMへの影響:偽アルドステロン症→低K血症→筋力低下による移動FIMの停滞。「歳のせい」と見過ごされる典型例。


⑥ オピオイド・強鎮痛薬

代表薬:トラマドール、コデイン、ブプレノルフィン貼付剤

現場のサイン

  • 過鎮静、めまい

  • 食欲低下→栄養不足→筋力低下の悪循環

  • 便秘併発でさらにリハに影響

FIMへの影響:複合的にFIMを下げる「見つけにくい阻害薬」。術後・がん性疼痛の名残で漫然投与されているケースが多い。


■ 薬剤師はどう動くか──3つのステップ

リハ阻害薬を見つけたら、薬剤師が動く順番はこうです。

ステップ①:入棟時の持参薬確認で"阻害薬リスト"を作る

転院前医療機関から引き継いだ薬の中に、
上記6カテゴリの薬が入っていないか、
入棟初日にチェック。

ステップ②:多職種から「現場のサイン」を集める

「最近〇〇さんどうですか?」を、
看護師・PT・OT・STに必ず聞く。
現場のサインは、検査値よりも早く出ることがほとんどです。

薬剤師20年やっても、初見の患者さんだと一発で『何が問題か』は出てきません。
だからこそ、看護師さんやリハスタッフからの「気になる一言」が、最大のヒントになります。

ステップ③:医師への提案は「リハの言語」で行う

ここが一番大事。

❌「副作用の可能性があります」
✅「FIMの改善につながる可能性があります

医師は「副作用の話」より
患者さんがよくなる話」のほうが、はるかに動いてくれます。

▼ 減薬の実務ステップを詳しく知りたい方へ
回復期リハ病棟で実際に減薬を進めるときの具体的な手順は、
こちらの記事で解説しています。


■ まとめ

  • FIMが伸びない患者さんの背後に、薬が原因のリハ阻害が隠れていることが本当に多い

  • ポリファーマシーとFIM利得の負の関連は、データでも裏付けられている

  • 特に注意したいのが、睡眠薬・抗コリン薬・α遮断薬・PPI・抑肝散/利尿薬・オピオイドの6カテゴリ

  • 薬剤師は「副作用」ではなく「FIMの改善」という言語で医師に届ける

6つ全部を一度に覚える必要なありません。
まずは①睡眠薬と②抗コリン薬の2つから、
患者さんの持参薬リストを見直してみてください。
それだけでも、FIMの動き方が変わる患者さんが必ずいます。


■ 最後に──PT・OT・ST・看護師のみなさんへ

この記事は、薬剤師だけに向けたものではありません。

毎日患者さんのそばにいるリハスタッフ・看護師のみなさんに、
「こういう視点の人間が薬剤師の中にいる」
と知ってもらえたら、
それだけでチーム連携は変わると信じています。

「最近この患者さん、リハで気になることがある」
そう感じたら、ぜひ薬剤師に声をかけてください。

そして読んでくださったみなさんへ──

みなさんの病棟では、どの薬が一番"リハの邪魔"をしていますか?

「これも入れてほしい」
「うちはこんなケースで困った」など、
ぜひコメントで教えてください。

一緒に現場のリアルを持ち寄れたら嬉しいです。


🔗 シリーズ記事一覧(深掘り編)


あわせて読みたい
▶ 減薬の具体的な実務ステップを知りたい方へ

▶ リハを止める薬をもっと広く知りたいPT・OT・STへ


📌 参考文献

★回復期リハ病棟に入院した廃用症候群患者264名を対象にした研究では、退院時のポリファーマシー(6剤以上)はFIM利得と有意な負の関連を示した(β=-5.462、p=0.031)。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsptsuppl/46/0/46_330/_pdf/-char/ja


★脳血管疾患患者を対象にした別の研究でも、ポリファーマシーはFIM利得の有意な低下と関連していた(β=-3.225、p=0.029)。

★回復期リハ病棟の研究では、抗コリン負荷(ARS)が増加するほど認知FIM利得が小さくなる、すなわち認知機能に関するADL改善が抑えられることが有意に示されています。 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/45/7/45_365/_pdf



いいなと思ったら応援しよう!

ママ薬剤師HONO よろしければ応援お願いします!いただいたチップはオロナミンCの購入費としてモチベーションと活力アップに使わせていただきます✨