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認定証は、紙切れだった。認定褥瘡薬剤師が「だから何?」と言われた日のこと。

「何か変わるの?」

認定を取ったと報告した日、看護師からでそういわれた。

うわー…言わなきゃよかった

正直、失敗したと思いました。

これは、頑張った先で
「だから何?」
という現実にぶつかった薬剤師が、
それでもやめなかった理由を書いた話です。

今、努力が空回りしている気がしているあなたに、
読んでほしいと思って書きました。



第1章 「薬剤師って、なにしに来てるの?」

褥瘡チームへ参加することになったのは、
上司から命令されたのと、
「処置を見てみたい」という単純な動機からでした。

薬剤師として、医師から聞かれれば
外用薬の提案をしていました(ほとんど聞かれなかったけど)

「創の状態に合わせて薬を選ぶ。」

そりゃそうだ。理屈は知ってる。
でも回診以外で、実際の処置を見たことはありませんでした。
「ここにいるの、本当に自分でいいのか?」
という感覚がずっとありました。

だから、回診以外の処置にも同行させてほしいとお願いしたんです。
もちろん、最初は面倒だと断られました。
「薬剤師さん忙しいでしょ~?」という優しいセリフ付きで…。

その言葉に乗せられて諦めるのが悔しくて、
看護師さんの機嫌のいい時をみはからって何度か打診して、
ようやく同行できるようになりました。

でも、病棟の雰囲気はずっとこうでした。

(…なんで来てるの、この人。)

言葉にされたわけじゃない。
でも、わかる。
歓迎されていない空気というのは、ちゃんと伝わってくるものです
ものすごく悔しかった。

でも同時に、「そうだよね」とも思っていたんです。

実際、わたしは何もできていませんでした。
処置をするのは看護師、創を診るのは医師。
お願いしてまでそこに薬剤師がいる意義を、
わたし自身がうまく説明できていなかったんです。

「外用薬の選択に貢献できます」
——そんなことを言える空気でもなかったし、
言ったところで何かが変わるとも思えなかった。

この空気感に悪意があったのかどうか、それすらもわからない。
ただ、本当にあの時は居場所がなかった


第2章 それでも勉強して、認定を取った

悔しさというのは、わりと使えるエネルギーだと思います。

居場所がないなら、居場所を作るしかない。
作れないなら、少なくとも「なぜいるのか」
自分の中で答えられるようにならないといけない

そう思って、褥瘡に関する勉強を本格的に始めました。
・学会のガイドライン。
・創傷治癒のメカニズム。
・栄養管理との関係。
・外用薬の薬理。
・スキンケアの根拠。

わたしは、
薬剤師として何ができるかを、言葉にできるようになりたかった
そんなある日、チームの中に話を聞いてくれる看護師が現れました。
本当に一人だけだったけど。

「薬剤師さんって、こういうことも知ってるんですね」

たったそれだけの言葉が、すごく嬉しかった
大げさじゃなく、その人のことをマジで神かと思った。
……と、間もなくその人が職場を辞めた。

神、退場。

笑えない。
いや、笑うしかない。
あの時ほど
誰かに「辞めないでくれ」と思ったことはありません。

でも不思議なことに、それで終わりにはならなかった。
一人いたということは、二人目もいるものです
少しずつ、話を聞いてくれる人が増えていきました。
会話が生まれて、相談してもらえることが少しずつ出てきたんです。

そのころです。
本格的に日本褥瘡学会認定褥瘡薬剤師の資格取得を目指すことにしたのは。


第3章 「認定取ったよ」—「何か変わるの?」

認定を取ろうと思ったタイミングで、職場に報告しました。
反応は、こうでした。

「よくやるねー(あきれた感じで)」
「がんばれー(どうでもいい感じで)」

そういうもんか、と思いましたよ。
まあ、そうだよね。忙しい人たちだし。自分の仕事じゃないし。

なんだかんだで、それでも認定は取れました。
で、改めて報告したんです。
「認定、取れました」と。

そしたら、なんて言われたと思います?

「そう。それで?何か変わるの?」

直球でした
悪気があったのか、なかったのか。
単純に疑問だったかもしれません。
でも、「おめでとう!」と言ってもらえると思っていた
わたしにはグッサリと刺さりました

心の底から、「言わなきゃよかった」と思いました。


第4章 認定証は、紙切れだった

家に帰って、改めて認定証を眺めてみました。

きれいな紙。
書いてあるのはわたしの名前。
日本褥瘡学会、という文字もありました。

そりゃそうだよね

という気持ちが、静かに広がりました。

この紙は、何も証明していない。
「あなたが患者さんの役に立った」という証明じゃない。
「あなたがいたから治った」という証明でもない。
勉強した、試験を受けた、基準をクリアした——ただそれだけの紙。

認定証なんて、所詮紙切れだ。

「実績がないとダメなんだ」

その言葉が、自然と頭の中に浮かびました。
褥瘡薬剤師として認めてもらうには、
「薬剤師のおかげで治った」と誰かに思わせないといけない

知識があるとか、認定を持っているとか、そういうことじゃない

実際に、目の前の患者さんに使って、
結果を出して、はじめて意味を持つ。

そんな当たり前のことを、
認定証を手にしたこの日に、初めて本当に理解した気がしました。


第5章 仲のいい看護師が、びっくりした顔で言ったこと

しばらくして、仲のいい看護師に正直な気持ちを話しました。

「認定取ったって報告したら、
何か変わるの?って言われて、ちょっと凹んでる」

その人は、びっくりしたような顔でこう言ったんです。

「そんなの、実際に『あいつ役に立った』って思わせなきゃ
ダメに決まってんじゃん」

本当に当たり前のことでした。
なんでこんな当たり前のことで凹んでたんだろうと思うくらいに、
当然のことでした。

でも、なぜかこの言葉で、気持ちが変わったんです。
わたしには、「認めてもらいたい」
という気持ちがずっとありました。
それだけが動機じゃないけど、確実にその気持ちはありました。

でもその一言で、こんなふうに切り替えられました。

認めてもらうんじゃない。
わたしが治すんだ。

誰かに認めてもらうための資格じゃない
患者さんの前で使うための資格だ。
私が『治す』だなんておこがましいにもほどがあるのは分かってる。
でもその瞬間、認定証の意味が少しだけ変わった気がしました。


おわりに

資格は、入場券だと思っていました

でも本当は、入場券ですらなかったことに気が付きました。

実績を積んで、
目の前の患者さんに使って、
「あの薬剤師がいてよかった」と誰かに思ってもらえて
はじめて意味を持つものだったんです。

認定証は、紙切れだ
こんなことを言うと、ものすごく怒られるのはわかっています。
決して軽んじているわけではありません。
でも、この気持ちは紛れもなくわたしが感じたことなんです。

だけど、その紙切れを持っていたから、
「わたしが治すんだ」と思えました。

努力が空回りしている気がするあなたへ。
資格の価値は、誰かに認めてもらった瞬間じゃなく、
患者さんの前で使った瞬間に生まれるのかもしれない。
わたしはそう思います。


読んでくれてありがとうございました。

▶ この話の前日談(認定を取るまでの話はこちら)

▶ 吹っ切れた私が、日々褥瘡現場で考えながらやっていること

▶ 現場ですぐに使える実践編はこちら

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同じような経験をした方のコメントも、首を長くして待っています。


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