ライン随想録 ビジ・カジ
ライン随想録 1997.3.8 井浦幸雄
随想録
昨年96年暮れ一時東京へ帰ったとき、はきやすい靴を求めたいと思い、ある日本橋のデパートの靴売り場へ行った。
「ビシネスのときも、旅行などカジュアルの時にも履けるような軽くて履きやすい靴はありませんか」、「ビジカジですね」、 「エ??」、「お客さん、ご存知ないのですか、ビジカジはいまはやっているのですよ。」 そう言って店員はアシックス ペダラ 25.5cmEEを勧めてくれた。
足先もなめした皮で覆ってあり柔らかく足に楽で軽い。
黒なのでビジネスにもはけるし、旅行のときにも向いている。
柔らかい中敷きなどもいれて両用に使える。
飛行機のなかでも快適だ。
気にいったので二足買い今でも重宝している。
スーツ、 背広にも同様のものがある。
同じ日本橋のデパートで「ピエール・カルダン」の黒の上下のスーツを買った。
ボタンが金と黒のデザインのもので、これに濃いグレーおよび薄いグレーのズボンを合せて着ていると、ビジネスにもカジュアルにも併せて着ていける。
ビジネスのとき、下が薄いグレーのズボンでも、腰から上がダークのジャケットだと、もっともらしく見える。
ヨーロッパの場合きちんとしたレストランに行くときにはダークの上着とネクタイがないと居心地が悪い。
このため、カジュアルの時にもこうしたジャケットがあると都合が良い。
ビジネスでも最近では金曜日にはドレスダウンと称して、 カジュアル的な服装はどうか、などといって居る。
必ずしも、 上下そろっていない服装の人も増えてきた。
ス一ツの「ビジカジ」 化である。
とくに、 飛行機にのって、 短期のビジネスに行くときなど、一着のスーツで両方の場面に使えると荷物がすくなくて済み助かる。
もちろん、ワイシャツ、ネクタイ、スカーフは何枚か持っていって、状況に応じ組み合わせるようにしている。
最近の日本では、 阪神大震災以降、 トレーニングウェアーのようなパジャマが人気を呼んでいると聞いている。
たしかに、地震で寝床から外に飛び出るとき着替えている暇はあるまい。
寝ているときから外でも通用するようなジョッギング・ウエアーを着ていれば安心であろう。
うたた寝していてすぐにベッドにいくときなど便利に違いない。
いわば、 「ビジ・カジ」と同様の、発想だと思う。
こうしたものは、病院への入院時、 寝起きを繰り返しているときなど、パジャマよりもトレーニングウエーのほうが、何かと便利のようだ。
もっとも重症の患者で病院支給のウェアーを着ることが義務づけられている場合は仕方ないであろうが。
食事でも、「和食」、「洋食」 と判然としないものを、たべることが多くなってきている。
アスパラガス、ごぼう、にんじん、ほうれん草は、しょうゆをかければ、和食、マヨネーズをかけたり、 植物オイルでいためれば、 洋食になる。
鳥、ブタ、 牛肉も当然、 和洋両方に使える。
飲むものも、ワインで双方の食事に併せることが増えてきた。
しばらく前のことになるが、 アメリカ人のグレッグ (仮名) を連れて、日本にビジネスにやってきたことがある。
彼は日本訪問は始めてであったが、やはり日本では初対面では日本人と同様お辞儀をしなくてはならないか、と何度もわたしに聞く。
“When you are in Rome,do as Romans do. では、ないかというわけである。
わたしは、アメリカ人がぺこぺこ頭を下げるのはおかしいからワシントンDCに居たときと同じ行動様式でかまわない、 自分のコンボージャー、インテグレティー (**らしさ)を保っていていいのではないか、
その方が自然だと教えた。
かれは安心し、仕事も実にスムースに行った。
外国に日本のビジネスマンがくるときにも、英語とか現地語が十分でないときには、 日本人または外国人の通訳を連れてきたほうが、良いと思う。
自分のペースを保つことができるからである。
しかし、その通訳の選定で自分のビジネス感覚が鋭く試されていることも忘れてはならないだろう。
結局、わたしのように日本以外で長く住んでいる場合、現地に過剰に適応しようとすると疲れることがあり、長続きしなくなる。
自分のペースを保ち、 ちょうど、 水の中、 陸の上で生きることができる動物と同じように、日本でも外国でも、快適に生きていかれるように常に工夫をしようと思っている。
それには、 「ビジカジ」のように、二つの世界の共通項を探り、どちらの世界でも十分に通用するものは何かといつも考えることが近道のようである。
ひとそれぞれに違いはあるだろうが、 自分の場合、 「ひとの良い面は大きく評価してあげて賞賛し、良くない部分にはこれを直してあげようと肩に力を入れたりせず半分目をつぶる」といった、いわば明るくポジティブな生き方が、 共通項のような気がしはじめているのですが、みなさまはいかがでしょうか。
老齢プログラマの所感
ビジネスカジュアル、通称ビジカジがすっかり市民権を得てきたのですね。
超はずかしいのですが、言葉は後期高齢者になるまで知りませんでした。
幸いにも、恥ずかしながら、この年まで、必要と思う場面がなかった、いえ
気が付かなかいでいました。
この年で年金より少ないサラリーを稼ぐ立場だと、仕事もカジュアルです。
更にコロナでテレワーク主体の働き方になって、毎日がビジカジです。
歳だからどうでもいいやとか考えないで、ビジカジを気に掛けてサラリーマン生活をしようと思います。

補足
上の記事は1997年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の住職の遺作「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さり、今は住職の息子によって公開されています。
当時、このようにお世話になったことを思い出し、復刻していました。
ある日突然、「ライン随想録」の目次が検索で見つかるようになりました。
しかし、ここから記事へのリンクが途切れています。
これが理由で、今まで検索しても表示されなかったのかもしれません。
そのため、復刻作業は今までどおり続けることにします。

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