2025年にみてよかった映画
2025年にみてよかった映画です。新作旧作その他でわけています。
順不同です。
各作品の下に月別の感想もぶら下げています。
新作(2025年日本公開)
教皇選挙
近年では珍しく日本でもヒットした(ミニシアター系の)洋画でした。
内容含め完璧な作品だったとは思いませんが、不足含めていい映画だったなと思いました。
疑念と確信のあいだを行き来するときの揺らぎのなかにのみ、我々がなにかを打開する機会が潜んでいる…。
blur: To The End
イギリスのロックバンド、ブラーの2023年のリユニオンを追ったドキュメンタリー映画。
私は高校生くらいの頃からブラーが好きでしたが、あまりバンドとしてのいざこざを追ったりはしていませんでした(ティーンエイジャーだったので、Radioheadの方が好きだったのもあります)。年数も経って英語もそこそこ理解できるようになってきたので、ここ数年少しずつインタビューや昔の動画をあさっている中で2025年初旬にこちらのドキュメンタリーが公開されました。
もうメンバーは全員初老で、我々が輝きを受けていた頃の彼らとは良くも悪くも違います。ですが、それでもずっとバンドでいる彼らを見ることができたのが嬉しかった。20代というまだ人格形成を行う時期にスターという過酷すぎる環境に身を置いていた過去の傷を負いながら、何とかバンドメンバーとして、仕事仲間として、友人として、家族としての距離感を人生をかけて模索し続ける人間関係教本映画です。同年公開のウェンブリーでのライブ映画と共にお楽しみいただき、oasisだけでなくこちらもぜひよろしくお願いします。
ノー・アザー・ランド 故郷は他にない
イスラエルから侵略され続けているヨルダン西岸に生きる若き活動家のパレスチナ人と、彼に賛同するイスラエル人青年の交流と抵抗を描いたドキュメンタリー映画です。
ドキュメンタリー映画を見ると、「映画の終わりで終わりではない」ことを鑑賞者は簡単に忘れてしまうことから発生する罪悪感を感じます。この映画の公開後に本作の監督の1人がイスラエル人に襲撃される事件もありましたし、つぶさにニュースを追っていれば忘却からも脱することは可能なのですが、ドキュメンタリーで見て辛いねしんどいね可哀想だねでは、何も知らない人間よりよほど罪深いでしょう。我々は日本に住んで生活しているだけでガザでの虐殺に加担しているので、関連企業のボイコットなど、せめて小さな抵抗でもしていきたいです。もちろんイスラエル問題だけじゃなくてね。
罪人たち
先日アカデミー賞に最多ノミネートとなったヴァンパイアホラー映画です。
エンタメホラーとしてのクオリティは文句なしな上、どう考えても抑圧されない人生の方が絶対にいいのに、肉体や尊厳が死んでも守り続けている魂があるアフリカン・アメリカンたちへの羨望と嫉妬を惹起するものすごい映画でした。これは私が「日本のなかでも圧倒的マジョリティ属性の日本人」だからこそ感じたことなので、あんまり大きい声で言うべきことではないと思いますが。
数年前にジョーダン・ピール監督の『NOPE』がアカデミー賞にガン無視食らってたのが記憶に新しいですが、抑圧への抵抗を描いてきたジャンルでもあるエンタメホラーが大きい賞に取り上げれるのはめっちゃいいことだなと思いました。もちろん米国アカデミー賞がすべてってことは絶対にないです!
爆弾
日本のクライムサスペンスです。
取調室での言葉の応酬中心として物語が進行していく形式ながら、全く飽きさせない映像と脚本が素晴らしかったです。福田監督作品のせいで佐藤二朗に苦手意識があったのですが、マジで素晴らしい俳優でした。
「綺麗ごとVS現実」的な世界冷笑系の映画かと思いきや、普通に生活している我々ひとりひとりの秘めた仄暗い衝動をそれぞれの目の前に提示してくるようなお話でびっくりしました。
旧作
ソーシャル・ネットワーク
Facebook創始者のマーク・ザッカーバーグの伝記映画。主演のジェシー・アイゼンバーグの代表作ともいえる作品です。
会話成分大めの映画ではあるのですが飽きさせませんし、ラストシーンの美しさが素晴らしいです。
審判
『サイコ』で有名なアンソニー・パーキンスの主演映画です。原作はカフカの同名小説。
気味悪いくらい美しい映画です。内容はまっすぐ気味悪いです。キモい映画大好きなので最高でした。ありがとう!!!
博士の異常な愛情
人間たちが社会や政府、企業といったシステムに組み込まれた現代社会で、駒でもある人間が突如狂ってしまったらどうなるのか?を、冷戦時代のアメリカを舞台に描いた傑作反戦コメディ映画。ポスト・アポカリプスジャンルを含め、後続の作品に多大な影響を与えていることが分かります。今のアメリカや日本の状況を鑑みるとちょっと笑えなくもなってきていますが…。
あの夏のルカ
ピクサー制作。人間と他種族の確執、誤解、すれ違い、絆を描いたジュブナイルです。「海/陸」の対立と共存描くという意味で、『リトル・マーメイド』のその先の話といえるかもしれません。内容としては社会派のディズニー映画で、『トイ・ストーリー3』までの「ハズレなし」ピクサー時代を思い出させる名作です。
「美しい」現実というある意味でのフィクションを駆け巡ったのち、最後に純度の高い欺瞞によって我々の目線を逸らすことによって夢を見せてくれるディズニー。特にラストシーンのカタルシスは「ピクサーの凄み」そのものです。
シビル・ウォー アメリカ最後の日
これ見た時点で「アメリカってシビルウォー直前すぎるな」と思っていたんですが、ここ数ヶ月くらいで「マジ」になってきてて想像を超えてきてますね。
映像も音もめっちゃ良くて、映画館でみなかったことを後悔しています。すげーかっこいい映画だった。ただ映画館でみたらよりしんどいでしょうね。一度みたからこそ、もしリバイバルがあっても劇場に足を運ぶのには躊躇してしまいます。
内容としては、ジャーナリスト(カメラマン)としての「(狂気と紙一重のプロフェッショナリズムの)継承」のお話です。トランプが大統領じゃなくなったらアメリカがましな国になるだろうという前提ですが、トランプが在任中にみるといいですよ。
28日後…
ハイスピードおしゃれゾンビ映画。韓国の『新感染』シリーズをはじめ速いゾンビを描くゾンビ映画はちらほらありますが、これはその先駆けなのかな。ゾンビ映画に詳しい人教えてください。
ゾンビ映画におけるゾンビは作品により何のメタファーとして描かれているかがまちまちですが、コロナ禍を経験してからみるとパンデミックのメタファーにしか見えなくなっちゃいますね。本作はパンデミックでもあり、状況は内戦っぽくもあるなと思いました。かっこいい映画だった。
ロボット・ドリームズ
離別の持つ美しさを讃えるアニメ映画。
我々が他者と関係性を構築しては離れていく中で、誰かとの思い出だったものが自分の身体に染み付いた一部となり、また別の他者との思い出になってゆくさまを往年の名曲「September」で彩る名作です。あんなにこすられまくってドポピュラーになっている曲をこんなふうに使えるのかっこいいです。
サンセット大通り
スーパー不気味大怪作。キモすぎ映画で最高でした。ホラー映画とするならヒトコワ系かな?そもそも何ジャンルか謎です。
人間がキモくなる時ってじつは当人たちがかなり切実だからだなと思っており、そういう部分もよく描かれていてよかったですね。切実だからキモくなっちゃうけど、その切実さを認識した瞬間によりキモく見える。おすすめです。
その他
ライブ映画や舞台映画などです。
blur: Live At Wembley Stadium
文句なしに人生の救い!!!!!!!還暦記念にもう一回やろう!!!仕事辞めてでもロンドンまで行くから、私の現実として拝ませてください。体大事にしてね。
ナショナル・シアター・ライブ2025 真面目が肝心
オスカー・ワイルドの大人気喜劇を今風にアレンジした舞台です。
作品そのものだけでなく、ワイルドのバックグラウンドまですくいあげて昇華する姿勢に感服しました。超絶ハッピーな舞台なので、NTLを上映している劇場がお近くにある方はぜひ!損しません。
ナショナル・シアター・ライブ2025 博士の異常な愛情
同名映画の舞台化です。映画版では主演が1人3役を務めていましたが、こちらは1人4役です。どうなっている?
舞台のほうが所要時間が長くなる分、映画版では触れることのできなかった差別や不均衡にも言及していこうという意欲の感じられる作品でした。映画版をみたことがないとしんどいかもと思わせる場面はありつつ、全体的にボリュームもあってよかったと思います。装置としてテクノロジーを駆使した舞台だったのも新鮮でした。
ナショナル・シアター・ライブ2025 インター・エイリア
男社会で生き抜く母親が、あるきっかけで分裂してしまいそうになった自己をどうにか持ちこたえさせようとする舞台。
基本的に主人公の一人称視点で語られるので男性は居心地の悪い思いをする場面も多そうですが、それを補って余りある作品なので(というかたぶんそれ込みなので)、見て損はないと思います。
