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2025年6月に観た映画の感想

あらすじ程度のネタバレがあります。特にオススメの映画にはタイトルのうしろに🌟つけてます。みた順で書いています。
以下のマガジンに他の月のぶんもあります。

スパイク・ブラント、ジェフ・セルゲイ『トムとジェリー シャーロック・ホームズ』

(C) Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

アマプラで字幕版をみました。覚えてないけど2回目らしいです。
トムとジェリーがホームズの助手としてヴィクトリア朝時代のロンドンを駆け巡るお話。結構王道なホームズ像の作品でした。
わかりやすくモリアーティ教授とのバトルなので内容はあんまり説明はいらない気がしますが、「SHERLOCKのモリアーティならこれくらいやりそうだが教授として名前出して生活してるタイプのモリアーティだとこの手の犯罪はやらない気もする」という中々絶妙なラインの教授造形でした。
よかったのはかなり真面目に執事やって「トーマス」と呼ばれていたりするトムと、ヴィクトリア朝における「夢のサイエンス感(観)」のイメージの腹落ち感です。ちゃんと「滝」もやってますよ。

スティーヴン・スピルバーグ『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』

TM & (C) 1984-2016 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. Used Under Authorization.

アマプラで字幕版をみました。
インディ・ジョーンズシリーズの2作目。

前作より1年前の1935年。上海のナイトクラブでマフィアとトラブルになったインディは、クラブの歌姫ウィリーと現地の少年ショーティを連れて逃亡するが、飛行機が墜落しインドの山奥に不時着してしまう。寂れた村に辿り着いた彼らは、この村の子どもたちが邪教集団にさらわれ、村の秘宝「サンカラストーン」も奪われたことを知る。奪還を依頼されたインディたちは、邪教集団の根城であるパンコット宮殿へと向かう。

https://eiga.com/movie/42518/

女でも容赦なくグーパンするインディを見直しました。が、前作に引き続き話が別におもしろくなくてすごいです。なんなんだこれ。
今回は全体的にグロテスクギャグテイストという感じで、あんまり役に立たないインディをみることができます。あとキー・ホイ・クァン。可愛いです。
異教に対するものすごい偏見とインド人に対するものすごい偏見が炸裂していて、厨二病的なカッコいい魔宮のデザインと相まって「あの頃のハリウッド映画」すぎました。それにしても、最後弓矢と銃で戦うのグロすぎませんかね…
アクション的な面ではシーのライドに近いかな?というところもありつつ、どちらかというとビッグサンダー・マウンテンおよび映画『センター・オブ・ジ・アース』でした。
これは映画の悪いところではないんですが、アマプラは本当に字幕の人を選ぶセンスがない…今回は誤訳とかではなく、普通に訳の雰囲気と内容が気に入らなかったです。古臭いしあんまり映画にあってない。
ただ良かったのはヒロインです。このタイプのアドベンチャー映画に出てくるヒロインの中でもダントツ好きでした。めっちゃムカつくけどおもしれ〜女だった…

李相日『国宝』

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会

映画館でみました。原作小説は未読です。

後に国の宝となる男は、任侠の一門に生まれた。
この世ならざる美しい顔をもつ喜久雄は、抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む。
そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と出会う。
正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる二人。
ライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていくのだが、多くの出会いと別れが、運命の歯車を大きく狂わせてゆく...。

https://kokuhou-movie.com/

体感絶賛に近いですが、つまらない映画でした。脚本にも映画そのものの演出にも問題があるかなと思いました。
まず見た目がかなりチェン・カイコーの『覇王別姫』で、あれを思い浮かべていったので炸裂しました(自分が)。実際中身としては引用ですらなく荒いコラージュといった感じで(『覇王別記』以外にもあからさまな『ジョーカー』とか)、家で覇王別記みるべきだったなあと思いました。ちなみに画面だけだなくお話自体の完成度も文句なしに『覇王別姫』の方がすぐれています。まあ全く同じ内容というわけではないのですが…
また、途中途中で挟まる「景色」の演出がめちゃくちゃダサくて震えました。間違いなく邦画のなかではお金がかかっているし俳優陣の気合はすばらしいのですが、端々で決まらない感じがもどかしいです。あとガキをああいう撮り方するのはどうなんですかね。
ここからは内容への文句です。
まず作中の女性描写について。あの時代にあの男の周りにいる女は作中描かれていた比ではないくらい酷い扱い受けていてもおかしくないので、その辺は気になりませんでした。ただ、最後にあやのにあの台詞を言わせたのは結構腹が立ちました。そのまま刺し殺してすべて終わらせてもよかったですよ。
また、喜久雄に全く挫折がないからか、ずっと文化教育の歌舞伎ビデオ見せられているような気持ちになりました。「悪魔に魂を売ったかのように、とにかく役者としてだけはうまくいく」という演出も、普通に芝居じたいが滅茶苦茶落ち目になったタイミングで差し込まないとなんの盛り上がりもなくないでしょうか…。「芝居の才能はずっとあったんだけど、なんか周りのあれこれがうまかいかなくていい役もらえなくてさ…」では、(現実に存在することかもしれないけど)お話としてはあまり盛り上がらないなと思いました。その周りのいざこざも結構喜久雄自身のせいだし(美しすぎてどうこうみたいな感じですらなく、シンプルに本人の人格の問題)。

ディーン・フライシャー・キャンプ『リロ&スティッチ(2025)』

© Disney

映画館で字幕版をみました。
タイトルは『リロ&スティッチ』ですが、内容的には「リロ&ナニ」でした。それぐらいスティッチの存在感が薄い。
現代でアニメをそのままやるにはナニのヤングケアラーとしての抑圧を見逃すわけにはいかず、そっちにちゃんと対処しないといけなかった結果スティッチの影がめちゃ薄くなってしまった感じがあります。寂しいけど仕方ないですね。エイリアンは親のいない家庭のデウス・エクス・マキナではない。
実写化するにあたってどこまでやるかは本当に人の好みによると思いますが、私にとってはこの映画は「見た目だけはアニメそのまま」でアイデンティ抽出はうまくいかなかった作品の範疇でしたし、やる意味はないなと思いました。アニメ版の「再生のない家の破壊を描いていた」という素晴らしい側面や、ハワイという舞台を効果的に使用した「眼差すこと/眼差されること」への問題意識もなくなっており(アイスクリームマン周りとか)、スティッチという破壊者の必要性がかなり排除されてしまったのだと思います。実写で削ったところは実はアニメスティッチのアイデンティティだったと思うので、今回の実写化はガワのアイデンティティだけを踏襲した軽薄な出来でした。あとこれはみんな言ってますがジャンバがああいう扱いになったのは悲しい。
ポジティブな見方をすれば、主人公がリロからナニにうつり、スティッチがナニにとって「私の人生を壊しにきた救世主」になった結果ともいえるかもしれません。

ポン・ジュノ『スノーピアサー』🌟

© 2013 SNOWPIERCER LTD.CO. ALL RIGHTS RESERVED

U-NEXTで字幕版をみました。ポン・ジュノのハリウッド映画はじめてみました。

2014年、地球温暖化を防止するため78カ国でCW-7と呼ばれる薬品が散布されるが、その結果、地球上は深い雪に覆われ、氷河期が再来してしまう。それから17年後、かろうじて生き延びた人々は「スノーピアサー」と呼ばれる列車の中で暮らし、地球上を移動し続けていた。列車の前方は一握りの上流階級が支配し、贅沢な生活を送る一方、後方車両には貧しい人々がひしめき、厳しい階層社会が形成されていた。そんな中、カーティスと名乗る男が自由を求めて反乱を起こし、前方車両を目指すが……。

https://eiga.com/movie/78218/

アクションのスピード感もスローの使い方も、まさに「あの頃のハリウッド映画」という感じでなんとも嬉しい映画でした。ただ「社会流動神話に挑んで破滅する人々」という、ポン・ジュノ監督がよく描く(気がする)テーマがこの映画にも息づいていてよかったです。もちろん『パラサイト』とかのほうがスマートで完成度が高いですが、通じるところのあるお話ではあると思いました。
「みんなが一番見たいと思うソン・ガンホ」が登場していたのもうれしかったです。めっちゃかっこよかった。翻訳機を通してもたもたする演出や良喫煙シーンもあり、大変満足です。『グエムル』でソン・ガンホの娘役だったコ・アソン含め俳優陣もめちゃくちゃ豪華ですし、ちょっと昔のアクション映画がみたいときにおすすめです。

パク・チャヌク『JSA🌟

©myungfilm2000

U-NEXTで字幕版をみました。

1999年10月28日深夜、JSAで北朝鮮の兵士2名が射殺される事件が発生した。容疑者である韓国軍兵士イ・スヒョクと現場に居合わせた北朝鮮兵士オ・ギョンピルの証言は大きく食い違い、捜査は中立国監視委員会に委ねられることに。捜査のため現地に派遣された韓国系スイス人の将校ソフィー・E・チャンは、事件の関係者たちと面会を重ねながら真相に迫るが、そこには思わぬ真実が隠されていた。

https://eiga.com/movie/1460/

やっとみました。パク・チャヌクおよびシン・ハギュン目当てです。シン・ハギュン可愛すぎる…(泣)
面白い作品(映画でも小説でも)は結末を最初にみせて軌跡を辿っていくパターンで物語が展開していくことが多いですが、この映画のように先に死人が出ることがわかっている作品ほどしんどいものはないです…。ただやはりシリアスとギャグの温度感も構図の決まり方もうますぎます。ここまでやってくれてないといい映画観たなと思えなくなってきており、パク・チャヌクには責任を取ってほしいです。
映画自体も俳優陣もかなり素晴らしかったのですが、一点ソフィの存在が結構ノイズだったところが気になりました。南北のあの4人の間に何があったのかを明らかにするためには、中間に立って事実を明らかにする役割を持つ人間があんなに目立つ必要はないのではないでしょうか。「真実を明るみに出さない者」への過程を見せたかったのかもしれませんが、にしても親父の話がいるか疑問でした。
ただ最後のカットがずる過ぎてもうあんまり文句も言えませんね。名作です。

ポン・ジュノ『殺人の追憶』

©2003 CJ Entertainment Inc

U-NEXTで字幕版をみました。最悪の警察が最悪の事件を最悪の態度で捜査するさまを見せられる映画です。

1986年、ソウル近郊の農村で若い女性が何者かに殺害される事件が発生。その後も同様の手口の殺人事件が相次いで発生し、地元警察の刑事パク・トゥマンとソウル市警から派遣された若手刑事ソ・テユンが捜査に乗り出す。性格も捜査方法も正反対の2人は衝突を繰り返しながらも執念で捜査を続け、ついに有力な容疑者が浮かび上がるが……。

https://eiga.com/movie/1533/

ポン・ジュノの出世作ゆえか韓国映画の名作としてもよく名前が挙がる映画ですが、不快度が高すぎたこともありあまり刺さりませんでした。
基本的に刑事たち目線の映画なのですが、こいつらがマジで最悪で見るに堪えない。映画としてはとてもかっこよかったですし、「何人も女が死んでからでないと太刀打ちできない」という無力感を描いていた部分もよかったですが、しんどすぎる…ラストも嫌すぎる…
一番はまらなかったのは、ソウルから来たソ刑事の狂いへの掘り下げがなく、彼のスタンスがいまいちわからなかったところです。田舎/都会のコテコテ対比とかもなかったですし、あのバディがどこに重きを設定された二人なのかがわかりませんでした。
ソン・ガンホ演じる刑事の最初の相棒が入院するくだりで、元相棒が「元気に市民を踏みつけていた靴」をみてしんみりするという凄まじおもしろシーンがあり、最悪すぎて好きでした。全然「もう見れないのか…」じゃないですよ!

ニック・ステイシー『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』

© Netflix

Netflixで字幕版をみました。ネトフリオリジナルのドキュメンタリー映画です。「我々の購買意欲がどのようにして作られているのか」を、「購買意欲を掻き立てたい側」向けに教育ビデオ的に描いています。
「ネトフリオリジナルドキュメンタリーの質感」かつ今どきのドキュメンタリーといった感じで完成度の高い映画でした。生成AIをうまく使っているのと、演出は第四の壁すれすれで画面はサイケデリック!みたいな感じが面白かったです。
明らかに人間が消費できない大量生産に加担している企業の元役員がSDGsバッジをつけて出てきて「反省してます」とか言っているの、皮肉が効きすぎていたしゼイリブみたいな演出もあり楽しめましたし身につまされました。Filmarksとかで感想を漁ると「Amazonで買い物する気が失せた」といった投稿が散見されたのもよかったです。まあ、下請けの下請けの下請けの…人々の健康が全く顧みられていない様や、投棄された服で地面が見えなくなり洋服で砂丘のようなものができている様を見せられるので、さもありなんという感じです。消費社会に疲れたあなたに、おすすめです。

ニコール・リトゥンマイヤー『ジョーンズタウン集団自殺事件-偽りの死の楽園-

©2021 A&E Television Networks. All Rights Reserved.

アマプラで字幕版をみました。
ジョーンズタウン集団自殺の顛末を、「人民寺院」指導者のジム・ジョーンズを取り巻いた女性たちから追っていくドキュメンタリー映画です。
人民寺院についての前知識がないと結構厳しい内容だったのと、直前にみたNetflixのドキュメンタリーのクオリティが高すぎたためいまいちでした。やはり何を作るにも明確なストーリーライン(ナラティブ)は必要だ…
このカルト集団の概説というよりは「使えない教祖ではなく幹部たちがいかに集団自殺を遂行したか」という話なので仕方ないのですが、どちらかというとNetflixオリジナルの『カルト教祖になる方法』内での紹介のほうがやはり映像作品としての構成がうまく、そちらのほうがおすすめです。

アレックス・ガーランド『シビル・ウォー アメリカ最期の日』🌟

© 2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund Ⅱ KY. All Rights Reserved.

アマプラで字幕版をみました。内戦の勃発したアメリカで、報道カメラマンとしてホワイトハウスを目指し、前線を目にしながら移動するジャーナリストたちを描く作品です。最高でした。

連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/

内容のリアリティや差別描写等触れたいことはたくさんありますが、何よりも映画としてめっちゃかっこよかったです。画面も音もかっこよくて痺れました。これは映画館で見るべき映画でしたね…
アメリカの地理がぱっとわからないのとアメリカのどの州でどの党が強いかが分からないのがネックでした。「あなたがアメリカ人ならわかるでしょ」という制作側の姿勢が伝わってくるほど内戦の状況説明がほぼ存在せず、ある意味での潔さを感じました。
戦争映画としては、兵士だけではなくそれを目にしただけの者ですらももはや「戦場でハイになるしかない」という状況がよく描写されていました。はじめはビビりながらの同行だった主人公が「カメラマン」になるまでのスピードが尋常でないのも、戦場ゆえでしょうね。
また公開当時かなり話題になっていた通称「赤サングラス」ですが、噂通り劇中屈指のしんどいシーンで精神が削られました。あそこまで実行しちゃうのは中々いない(戦争状態でもなければできない)ですが、似たようなこと言うやつは日本でもよく見るなあ…と暗澹たる気持ちになりました。集合体に「本物」を問い出したら終わりです。「本質」がないからこそ集団なので。香港出身のアメリカ人がいてこそアメリカなんじゃないんですか。
この映画内ではシャーロッツビルが前線なのも、かなり「アメリカを賭けた戦争」感が出ていて憎かったです。あそこは全人類の基本的人権を説きつつ黒人奴隷を所有する豊かな人々を輩出してきた土地なので、まさにこの映画を作った人々があらわしたい"アメリカ"ですってことなんでしょう。
ドラマとしては「(狂気と紙一重のプロフェッショナリズムの)継承」という側面がかなり強く押し出されている作品でした。「人生で一番怖かったけど、同じく一番生きている感じがした」と言い放つ主人公、かなりキマってる。最高でした。主人公がリーに褒められたシーン、ジョエルを車越しに見るシーンはまさに写真の深度で、戦争と取材の描写によって「カメラが彼らを狂わせた」と思わせる中こういう描写を差し込むことによって「彼らこそがカメラになっている」ことを気づかせてくる演出も素敵でした。
基本的にめっちゃよくできた映画だったのですが、プレス側がガチ丸腰なのは結構気になりました(防弾チョッキもメットもつけてない場面がいくつもある)。 あれだけ広大な国土だとどこに内戦に積極的に参加している人がいるかわからないのだから、車乗ってる間もつけとかないと…
でも本当に素晴らしい映画でした。トランプ大統領の任期中にみるのがおすすめです。

ダニー・ボイル『28日後🌟

© 2002 DNA Films Limited. All Rights Reserved.

アマプラで字幕版をみました。エゲレスのゾンビ映画。アメリカのゾンビ映画とはまた一線を画した作品でめちゃくちゃよかったです。

わずか1滴の血液で感染し、人間の精神を破壊し凶暴化させる新種のウイルスが発生した。28日後、昏睡状態から目覚めた青年ジムは病院の集中治療室にいた。あまりの静けさに不安になって外に出ると、そこには荒廃し無人となったロンドンの街が広がっていた。襲いくる感染者から逃れるなかで生存者たちと出会ったジムは、彼らと行動をともにすることになるが……。

https://eiga.com/movie/1228/

ゾンビ映画のゾンビといえば、ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』なので、そこに出てくるゾンビが基本形になるかと思います。比較すると本作のゾンビはかなり足が速いのと、「感染者の血液が粘膜に触れると感染する(感染が広がりやすい)」という特徴によりスピード感のあるゾンビに仕上がっています。演出もゾンビ映画ならぬ躍動感とおしゃれさがあってかっこいいです。
ほかにもイギリス本島が舞台ということで、アメリカなど大陸を舞台にする作品ではできない閉塞感が特徴的でした。作中に「感染は海を渡ったか?」という問いかけがありましたが、「われわれは島国にいるんだ」という、現代のグローバル社会ではなかなか目立ちにくくなっている事実を残酷に突きつけてくる形で、やはりこれはイギリスのゾンビ映画だなと思わされました。文字通り孤島。何かの侵入を防ぐにはいいのでしょうが、それが中で発生してしまうと詰むという…
かなり若いころのキリアン・マーフィーが主演でそこも見どころです。今年続編シリーズの最新作『28年後…』が公開されたこともあり、いまホットなおしゃれゾンビ映画です。おすすめです。

M・ナイト・シャマラン『トラップ』

© 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

U-NEXTで字幕版をみました。殺人鬼VSガンギマリ歌手のサスペンス映画。

溺愛する娘ライリーのために、彼女が今夢中の世界的アーティスト、レディ・レイブンが出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れたクーパー。父親と会場に到着したライリーは、最高の席に大感激。遂にライブが幕を開け、3 万人の観客が熱狂に包まれる中、彼は異変に気付く。異常な数の監視カメラ、会場内外に続々と集結する警察…普通ではない。口の軽いスタッフから「ここだけの秘密」を聞き出すクーパー。指名手配中の切り裂き魔についてタレコミがあり、警察がライブというトラップを仕組んだという。だが、その世間を騒がす残虐な殺人鬼こそ——優しい父親にしか見えないクーパーだった!

https://www.warnerbros.co.jp/home_entertainment/le8y49kd9gg/

というわけで、「猟奇的殺人鬼とかレイプ魔みたいな人間でも家族がいるし、はたから見てもちゃんと愛情がある関係性を築くことができ、社会に溶け込んでいる」という話を「コンサートで罠にかける」というアイデアのもと描いた作品です。そのレトリックももう古い気がしますが。
「コンサート会場での出し抜き合い」は映画の7割くらいなので、そのあともだれる感じはありましたが、サクッとサスペンス見たい時にちょうどいい映画でした。たぶんタイトルは「罠にかかる」のと「閉じ込められる」のをかけてるのかな?と思いますが、そのままカタカナにしちゃうとダブルミーニングが失われてしまってもったいないです。殺人鬼・ブッチャーだけではなく警察や被害者、巻き込まれた人々もその状態に陥っていたので、シンプルだけど粋なタイトルです。
殺人の被害を見せられるわけでもないのでスプラッタ的な怖さはない映画で、さらにブッチャーの過去の掘り下げ等もあまりなく、「それぞれの立場でどうこの場を切り抜けるか」に焦点を当てている作品でした。「そうやって出るのね!」という気持ち良さはありますが、話は別に面白くなかったです。ありていに言えば捕まったり逃げたりを繰り返すだけなので、少しモタモタ感がありました。

パブロ・ベルヘル『ロボット・ドリームズ』🌟

(C)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL

U-NEXTでみました。傑作です。イヌカスは反省しなさい。
孤独なイヌと、孤独に生きる者のためのロボットの生活を描いたアニメ映画。イヌと暮らしていたロボットは、とあるきっかけで動けなくなってしまいます。イヌはロボの救出を試み続け、錆びゆくロボットは助けを待つ中イヌのアパートに帰る夢を何度も見る。セリフのない映画です。
とにかく主人公のイヌがむかつく映画ですが、友情など人間関係の刹那性を肯定している名作でした。
お話も途中までふーんって感じなのですが(イヌが最悪なので)、ラストダンスで完全に持っていかれました。昔のパートナーも今のパートナーも同じくらい大事だけど片方とだけいよう、という選択をして良いんだ、その選択でももちろん幸せになれるんだというラスト。あの時のイヌカスのやらかしをちゃんと我々に思い出させると同時に、最後のロボットが今のパートナーの愛情をじんわり感じている一瞬のためらいを描写することで、ロボットももう救われていると教えてくれる暖かさ。
離別の苦しさではなく、離別の持つ美しさを讃える映画です。素敵でした。みてください。

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