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【発達障害】うつ、不登校、引きこもり。「二次障害」の正体。

「最近、なんだか元気がない」
「朝、起きられなくなった」
「急に『死にたい』と言い出した」

お子さんが突然、
別人のように変わってしまった。

反抗期かな。
思春期だから仕方ないかな。
疲れてるだけかな。

もしお子さんに 発達障害があるなら、
それは「思春期」や
「怠け」ではなく、

「二次障害」かもしれません。

そして、これだけは
最初にはっきりお伝えしておきます。

うつ病は、大人だけの病気ではありません。
子どもにも起きます。

「まさかうちの子が」と思うかもしれません。
でも、起きるのです。



教員時代、私はそのサインを見逃した

特別支援学級の担任をしていた頃、
クラスに明るくて元気な男の子がいました。

ADHDの特性があって、
いつも教室の中を動き回っていたけれど、
友達も多くて、 笑顔が絶えない子でした。

ある時期から、
その子の様子が変わりました。

教室に来ても、
机に突っ伏したまま動かない。

話しかけても、
「別に」「うるさい」としか返ってこない。

当時の私は、
「思春期に入ったのかな」
「反抗期だな」 と思いました。

そのまま、半年が過ぎました。

ある日、
その子が学校に来なくなりました。

後から知ったのは、
その子が児童精神科で 「うつ状態」と診断されていたこと。

あの「別に」「うるさい」は、
反抗期のサインではなかった。

助けを求める声だったのです。

半年もの間、
毎日そばにいたのに 気づけなかった。

あの後悔が、 今この記事を書いている理由です。


「二次障害」とは何か

少し専門的な話をさせてください。

発達障害(ASD、ADHD、LDなど)は、
生まれ持った脳の特性です。
これを「一次障害」と呼びます。

一次障害そのものは、
病気ではありません。
脳のタイプが多数派と違う、
というだけの話です。

では「二次障害」とは何か。

一次障害(発達特性)に対して、
周囲の環境や対応が 不適切であったときに、
後から生じる心の傷や症状のことです。

具体的には、
うつ病、不安障害、 適応障害、
不登校、 自傷行為、引きこもりなど。

ここが最も大事なポイントです。

うつは、発達障害の「症状」ではありません。
発達障害があるから
自動的にうつになるわけではないのです。

「周囲の対応」と
「環境」の結果として 起きるもの。

つまり、二次障害は防げます。

逆に言えば、
環境が変わらなければ、
どんな子でもうつになり得るということです。

発達凸凹の子がうつに至る3つのルート

私がこれまで教員として、
福祉事業所の経営者として、
そして父親として見てきた中で、

発達の障害の子
がうつに至るルートは、
大きく3つあると言われています。

ルート①:「叱られ続ける」ルート

多動で叱られる。
忘れ物で叱られる。
空気が読めなくて怒られる。

本人は頑張っているのに、
毎日毎日、叱られ続ける。

以前、多動の記事で
「パンツの中のアリ」のたとえを紹介しました。

アリと必死に戦いながら5分座ったのに、
「5分しか座れないの!」と叱られる。

この繰り返しが、
「どうせ自分なんか」
「何をやってもダメなんだ」
という思考パターンを作ります。

これを「学習性無力感」と呼びます。

「何をしても結果は同じ」と
脳が学習してしまう状態です。

ここからうつへの距離は、
我々が思っているよりずっと短いそうです。

ルート②:「頑張りすぎる」ルート(過剰適応)

学校では「いい子」。
先生の言うことをよく聞く。
友達ともうまくやれているように見える。

でも家に帰ると、大爆発する。
癇癪を起こす。 何時間も泣く。
「もう学校行きたくない」と叫ぶ。

特にASDの女の子に多いパターンです。

学校という環境で
「普通」に振る舞うために、
脳のリソースを全て使い果たしている。

周囲の大人は 「この子は大丈夫」と思っている。
通知表にも「よくできる」と書かれている。

でも本人の内側では、
毎日が綱渡りの状態。

ある日突然、糸が切れます。

朝、起きられなくなる。
体が動かなくなる。
それがうつの始まりだったりするのです。

ルート③:「孤立する」ルート

友達との会話がうまくいかない。
冗談が通じない。
一方的に話してしまう。
暗黙のルールが分からない。

グループに入れない。
休み時間、一人で過ごす。
ひどい場合はいじめに発展する。

「自分はみんなと違う」
「自分はどこにも居場所がない」

この孤独感が、
じわじわと子どもの心を蝕みます。

大人のうつにも「孤独」は大きなリスク要因ですが、
子どもにとっての学校は、 世界のほぼ全てです。

その世界に居場所がないと感じることの絶望感は、
大人の想像をはるかに超えています。

親が見落としやすいサイン

子どものうつが見落とされやすいのには
理由があります。

大人のうつは 「落ち込み」「意欲の低下」として
現れることが多いですが、

子どものうつは、
全く違う形で出ることがあるのです。

「怠け」に見える
 → 朝起きられない、学校に行けない

「反抗期」に見える
 → 無気力、イライラ、暴言

「わがまま」に見える
 → 腹痛、頭痛、吐き気(身体症状として出る)

「甘え」に見える
 → 急に赤ちゃん返りする、べったりくっついてくる

子どもは「つらい」を
言葉にする力がまだ十分に育っていません。

特に発達凸凹のある子は、
自分の感情を認識すること自体が
苦手な場合も多い。

だから「つらい」の代わりに、
体が先にSOSを出すのです。

「最近お腹が痛いって言うことが増えた」
「急に甘えてくるようになった」

そういう小さな変化の裏に、
うつが隠れていることがあります。

じゃあ、親はどうすればいいのか

ここからが一番伝えたいことです。

①「頑張れ」を封印する

うつ状態の子どもに 「頑張れ」は禁句です。

頑張れないから苦しんでいるのに、
「頑張れ」は 「今のあなたでは足りない」という
メッセージとして届きます。

代わりに、
「しんどかったんだね」
「よく教えてくれたね」 と受け止めるだけで十分です。

②家を「何も求められない場所」にする

学校で戦い続けた子どもにとって、
家は唯一の充電場所です。

家でも「宿題は」「明日の準備は」と 求め続けると、
充電する場所がなくなります。

一時的に、 勉強も、お手伝いも、
何も求めない時間を作ってください。

「何もしなくていい」が、
子どもにとっての最高の治療になることがあります。

③専門機関を受診する

「うちの子、もしかして…」と思ったら、
児童精神科や 発達支援センターに相談してください。

「大げさかな」
「病院に連れて行くほどじゃないかな」

子どものうつは
放っておいて自然に治るものではありません。

適切な診断を受けること。
必要であれば、薬と向き合うこと。

「子どもに薬を飲ませるなんて…」
と抵抗を感じる親御さんも多いと思います。

この「薬との向き合い方」については、
別の記事で詳しく書かせてください。

発達障害の薬も、うつの薬も、
正しく知れば「敵」ではなく「味方」になります。

今日はまず、
「受診をためらわないでほしい」
ということだけ、伝えさせてください。

④一人で抱えない

子どものうつに気づいたとき、
親もまた追い詰められます。

「私の育て方が悪かったんじゃないか」
「もっと早く気づいていれば」

その自責の念が、
親自身のメンタルも蝕みます。

一人で抱え込まないでください。

スクールカウンセラー、
発達支援センター、
相談支援専門員、
同じ経験を持つ親の会。

頼れる場所は必ずあります。

子どもを守るためには、
まず親が倒れないことが最優先です。

最後に

二次障害は、
発達障害の「宿命」ではありません。

発達特性を持っているから
必ずうつになるわけではない。

環境が変われば防げるし、
気づけば回復できます。

だからこそ、 「知ること」に意味があるのです。

知る → 気づく → 受診する

このたった3ステップが、
お子さんの人生を守ります。

教員時代の私は、
あの子のサインに気づけなかった。

「反抗期だろう」と
見て見ぬふりをしてしまった。

あの後悔があるからこそ、
今日この記事を書いています。

この記事を読んでいるあなたが、
「もしかして」と思った時点で、
もう一歩は踏み出せています。

どうか、その一歩を止めないでください。

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参考文献

この記事は私自身の
教員経験・福祉事業での相談経験と子育ての実体験を
ベースに書いていますが、
以下の書籍・資料からも多くの示唆を得ています。

・杉山登志郎著『発達障害の子どもたち』(講談社現代新書)
― 「一次障害」と「二次障害」の区別、環境要因によるうつ・不登校への移行メカニズムについて、日本の児童精神科の第一人者による体系的な解説書です。

・齊藤万比古編著『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス)
― 叱責の蓄積から学習性無力感、うつ・不登校に至るルートや、過剰適応の危険性について実践的にまとめられています。

・マーティン・セリグマン著『学習性無力感 ― パーソナル・コントロールの時代をひらく理論』(二瓶社)
― 記事中の「叱られ続けるルート」で触れた「学習性無力感」の概念を提唱した原著。なぜ「何をやっても無駄」と脳が学習してしまうのか、その仕組みが解説されています。

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