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【育児・子育て】癇癪・パニック中にやってはいけないこと【3つ】


スーパーの床に寝転がって泣き叫ぶ我が子。
家でおもちゃを投げて大暴れする我が子。

周りの冷たい視線。
何を言っても届かない絶望感。

「お願いだから静かにして」
「もう連れて帰るからね!」

そう叫びたくなる気持ち、 痛いほどわかります。

でも、その対応が
実は火に油を注いでいるかもしれません。

今日は、
元教員で、
発達凸凹児の父で、
福祉事業所を経営する私が、

「癇癪・パニックの真っ最中に
 親が絶対にやってはいけないこと」と、
「じゃあどうすればいいのか」を
についてです。



教員時代、自分の息子で完敗した話

特別支援学級の担任をしていた頃、
パニックを起こした子どもの前で
冷静に声をかけ、
安全な場所に誘導し、
クールダウンさせる。

何百回とその経験を積んできました。

でも、自分の息子の癇癪の前では、
そんなプライドは一瞬で砕かれました。

夕方の疲れたタイミングで、
本当に些細なこと
(お菓子の袋が開かない、とか、
 テレビのチャンネルが違う、とか)
をきっかけに、
床に寝転がって30分間泣き叫ぶ息子。

何を言っても届かない。
抱き上げようとすると暴れる。
放っておくと壁を蹴り始める。

教員としての知識も、
テクニックも、 何一つ通用しなかったのです。

「なんで自分の子には何もできないんだ」

あの無力感は、
今でも忘れられません。

なぜ学校ではできたのに、
家ではできなかったのか。

答えは簡単でした。

学校では「他人の子」だから冷静でいられた。
自分の子だから、感情が入って冷静になれなかった。

それだけのことでした。

その経験があるからこそ、
今日は「正論」ではなく、
同じ修羅場をくぐった親として
本当に伝えたいことだけを書きます。


まず知ってほしい。癇癪は「わがまま」ではない

対応策の前に、
一つだけ確認させてください。

癇癪やパニックを
「わがまま」や「しつけの問題」
だと思っていませんか。

もし周りからそう言われて、
自分を責めているなら、
今すぐその荷物を下ろしてください。

発達凸凹のある子の癇癪は、
脳が処理しきれない刺激や感情を
排出するための「緊急放出」です。

パソコンに例えるなら、
同時にアプリを100個起動して
フリーズした状態に近いです。

画面がぐるぐる回って、
どのボタンを押しても反応しない。

そして最終的に、
強制シャットダウン(=大爆発)が起きる。

これは本人の意思でコントロールできるものではありません。

以前の記事で
「ASDの世界は過剰に眩しすぎる(インテンス・ワールド理論)」
について書きましたが、

感覚過敏のある子にとっては、
私たちが「普通」だと思っている日常の刺激が、
すでに脳の処理能力ギリギリなのです。

そこに、
「思い通りにならない」
「予定が変わった」
「疲れた」
といった負荷が加わると、 一気にオーバーヒートする。

つまり、 癇癪は
「性格」ではなく「脳の仕組み」の問題です。

このことを理解しているかどうかで、
癇癪の最中にとる行動が まったく変わってきます。


NG①:大声で叱る・怒鳴る

癇癪の真っ最中に
「いいかげんにしなさい!」
「うるさい!」 と怒鳴ってしまう。

親だって人間ですから、
気持ちは分かります。 私も何度もやりました。

でも、これは
火事に向かってガソリンをかけるのと同じです。

癇癪中の子どもの脳は、
感情の嵐の真っ只中にあります。

理性をつかさどる前頭葉は
完全にシャットダウンしていて、
言葉はほぼ届いていません。

聞こえているのは 「言葉の意味」ではなく、
「大きな音」と「怒りの空気」だけです。

以前「感情のミラーリング」について
書きましたが、
親の怒りは子どもの感情に直接伝染します。

親が怒鳴れば、
子どもの脳は 「さらに危険な状況だ!」と判断し、
パニックは激化するだけです。

やるべきことは、
まず、親が黙ること。

これが一番難しくて、
一番大切なことです。

深呼吸して、
低い声で、短く、
「大丈夫だよ」とだけ伝えてください。

それすら届かなくても構いません。
「親が静かでいること」自体が、
嵐の風速を少しずつ弱めます。

私は癇癪が始まると、
心の中で
「これは脳のフリーズだ。
 わがままじゃない。脳のフリーズだ」
と何度も唱えるようにしています。

そうでもしないと、
自分の感情が先に爆発してしまうからです。


NG②:「なんで泣いてるの!」と理由を問い詰める

「なんでそんなことで泣くの!」
「何が嫌なの! ちゃんと言いなさい!」

以前の記事で
「『なんで?』は子どもに通じない」 と書きましたが、
癇癪中はなおさらです。

パニック状態の子どもは、
自分でもなぜ泣いているか 分かっていない
ことがほとんどです。

脳が処理能力の限界を超えて
オーバーヒートしている状態なので、
「なんで?」と問われても 答えようがないのです。

大人だって、
突然の大地震の最中に
「なぜ揺れているか説明してください」
と聞かれても答えられませんよね。

それと同じです。

子どもにとって癇癪の最中は、
心の中で大地震が起きているのと
変わりません。

そこに「理由を言え」という
さらなる負荷がかかれば、
脳はフリーズするか、
さらに激しく爆発するかのどちらかです。

やるべきことは、原因の振り返りは「後で」やる。

嵐の最中に
原因究明しようとしないでください。

完全に落ち着いた後、
できれば数時間後や翌日に、

「昨日のあれ、
 しんどかったね。
 何が嫌だったか教えてくれる?」

と穏やかに聞けば十分です。

落ち着いた状態であれば、
子どもなりに
「あのとき〇〇が嫌だった」と 言葉にできることもあります。

そして、 その原因が分かれば、
次回の「予防策」を一緒に考えることができます。

癇癪の最中は「消火活動」。
原因の分析は「火災調査」。
この2つは、絶対に同時にやらない。

これが鉄則です。


NG③:無理やり止めようとする

外出先で癇癪を起こされたとき、
一番辛いのが周囲の視線です。

「しつけがなってない」
「親は何やってるんだ」

声に出さなくても、
そういう空気を感じますよね。

その視線に耐えられず、
子どもを力ずくで抱え上げたり、
口を押さえたり、
「静かにしなさい!」と 無理やり押さえつけたくなります。

でも、力で押さえるほど
子どもは暴れます。

感覚過敏のある子は、
体を強く触られること自体が
さらなるパニックの引き金になることもあります。

以前の記事で
「『もう置いていくからね!』の危険性」
について書きましたが、
癇癪中の脅しも同様に逆効果です。

ASDの子は「本当に置いていかれる」と
文字通りに受け取ってパニックが悪化し、
ADHDの子は「どうせ置いていかない」と
学習して脅しが無効化されます。

どちらにしても、いいことはありません。

やるべきこと:は、「消火」ではなく「避難」する。

周りの目は、一旦あきらめてください。
(これが本当に辛いのは重々承知しています。)

子どもの安全だけ確保して、
車の中、トイレの個室、
建物の外の静かな場所など、
刺激の少ない場所に移動する。

それだけで十分です。

静かな環境に移れば、
脳への入力刺激が減り、
嵐は確実に収まっていきます。

私の場合、外出時は常に
「癇癪が起きたらどこに避難するか」を
無意識にチェックするクセがつきました。

駐車場に近い入口、
静かな通路、 多目的トイレの場所。

これは子どものためだけでなく、
親自身の精神的な安全網にもなります。

「最悪でも、あそこに逃げればいい」
と分かっているだけで、
外出のハードルがずいぶん下がりました。


嵐が過ぎた後にやること

癇癪が収まった直後、
やりがちなのが 「さっきのは何だったの!」と
すぐに振り返ろうとすること。

でも、 嵐の直後の子どもは
まだ心も体も消耗しきっています。

まずは何も言わずに、
ぎゅっと抱きしめてあげてください。

「大変だったね」

その一言だけで、
子どもは
「嵐の後も、 お父さん(お母さん)は ここにいてくれた」
と感じることができます。

そして、 完全に落ち着いてから
(早くても数時間後、 できれば翌日がベスト)、

「昨日の〇〇、しんどかったね。
 何が嫌だったか、教えてくれる?」

と聞いてみてください。

振り返りの中で
「こうすればよかったね」が見えたら、
それが次回の予防策になります。

癇癪は
「繰り返しながら、
 少しずつパターンが見えてくるもの」です。

1回で解決しようとしなくていい。
少しずつ、 「この場面でこうなりやすい」が
分かってくれば、
事前に回避できる場面も増えていきます。


最後に

癇癪は、
「わがまま」でも 「しつけの失敗」でもありません。

脳が処理しきれない世界に対する、
子どもなりの悲鳴です。

だから、 親にできるのは
「嵐を止める」ことではなく、
「嵐の中で子どもを守る」ことなのです。

消火しようとしなくていい。
延焼を防げばそれでいい。

そして嵐が過ぎたら、
抱きしめてあげてください。

毎日、癇癪と戦っている親御さん。

「またうまく対応できなかった…」と
自分を責める夜もあるかもしれません。

でも、あなたがそこにいること。
逃げずに、 その嵐の中に一緒に立っていること。

それだけで、 お子さんにとっては
世界で一番の安全基地なのです。


参考文献

この記事は私自身の教員経験と
子育ての実体験をベースに書いていますが、
以下の書籍・研究からも多くの示唆を得ています。
より深く知りたい方はぜひ手に取ってみてください。

・ダニエル・J・シーゲル、ティナ・ペイン・ブライソン著『子どもの脳を伸ばす「しつけ」 ― 叱るより科学的に正しい子育て法がすべてわかる』(大和書房) ― 癇癪中の脳の状態(前頭葉のシャットダウン)、感情のミラーリング、「嵐が過ぎてから振り返る」アプローチの科学的根拠が詳しく解説されています。

・Henry Markram, Kamila Markram "The Intense World Theory" (Frontiers in Human Neuroscience, 2010) ― ASDの子どもが世界を「過剰に」知覚しているというインテンス・ワールド理論。感覚過敏からオーバーヒートに至るメカニズムを理解するのに役立ちます。


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