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【発達障害 支援】「構造化」をゼロから解説|ASD・ADHDの子が安心して動ける環境の作り方

「構造化してください」

支援会議や面談で、
こう言われたことはありませんか。

先生、保護者、放デイのスタッフ。
立場を問わず、
発達支援の現場では
「構造化」という言葉がよく飛び交います。

でも、
「具体的にどうすればいいの?」と聞かれると、
答えに詰まる人が多いのではないでしょうか。

「時間割を貼ればいい?」
「絵カードを使えばいい?」
「なんとなく"整理する"ことでしょ?」

そのくらいの認識で止まっている方、
少なくないと思います。

私自身がそうでした。

今日は、
元教員で、
発達凸凹の息子を持つ父で、
福祉事業所を経営する立場から、

「構造化」とは何か、
なぜ必要なのか、
どう使えばいいのかを
ゼロから翻訳します。

先生にも、保護者にも、支援者にも。
全ての方に読んでいただきたい記事です。



教員時代、私の「構造化」は見せかけだった

特別支援学級の担任をしていた頃、
「構造化」という言葉は知っていました。

研修でも聞いたし、
本にも書いてありました。

で、何をしていたかというと、

教室に時間割を貼った。
持ち物リストを壁に掲示した。

それだけです。

「構造化やってます」
と、胸を張っていました。

でも今振り返ると、
あれは「構造化」ではなく、
ただの「掲示物」でした。

子どもが実際に
それを見て動けるようになっていたか。
不安が減っていたか。
見通しが持てるようになっていたか。

全く検証していなかった。

福祉事業所を経営する今になって、
構造化の本質がようやく分かりました。

構造化は「掲示物を貼ること」ではない。
「目に見えないものを、
目に見える形にして、
その人が安心して動ける環境を作ること」
なのです。


「構造化」とは何か

構造化を一言で言えば、

「目に見えないものを、
 目に見える形にすること
」です。

もう少し丁寧に説明します。

私たちは日常生活の中で、
たくさんの「目に見えない情報」を
無意識に処理しています。

「この場面ではこうするものだ」
「空気を読めばこうすべきだ」
「なんとなく分かるだろう」

これらは、
定型発達の人にとっては
意識しなくても処理できる情報です。

でも、
特にASDの特性がある子にとっては、
この「暗黙の了解」が
極めて分かりにくいのです。

「次に何が起きるか分からない」
「ここで何をすればいいか分からない」
「いつ終わるのか分からない」

この「分からない」が、
不安やパニックの大きな原因になります。

構造化とは、
この「分からない」を減らすために、
情報を「目に見える形」にして渡すこと
です。

ここで一つ、
大事なことをお伝えしておきます。

構造化は「制限」ではありません。
「ここから出るな」
「これしかやるな」
という意味ではなく、

「あなたが安心して動けるように、
 環境を整えましたよ」

という意味です。

構造化がしっかりしている環境では、
子どもは自分から動き始めます。

「次に何をすればいいか」が分かるから、
指示を待たなくても動ける。

つまり構造化は、
子どもの自立を「制限する」ものではなく、
自立を「助ける」ものなのです。


TEACCHプログラムと構造化

「構造化」の話をするとき、
TEACCHプログラムを避けて通ることはできません。

TEACCH(ティーチ)は、
アメリカ・ノースカロライナ大学で
1960年代に開発された、
ASD(自閉スペクトラム症)の人を
生涯にわたって支援するプログラムです。

構造化は、
このTEACCHの中心的な考え方の一つです。

TEACCHの理念で
私が最も大事だと思っているのは、

「ASDの人を"普通"に近づけるのではなく、
 環境を本人に合わせて整える」

という発想です。

「この子が変わるべき」ではなく、
「環境が変わるべき」。

この考え方が、
構造化の本質です。

子どもに「ちゃんとしなさい」と求めるのではなく、
「ちゃんとできる環境を作る」。

それが構造化であり、
TEACCHが教えてくれた
支援の根本的な姿勢です。


構造化の4つの種類

構造化には大きく4つの種類があります。
一つずつ解説します。

①物理的構造化(場所の構造化)

「ここは何をする場所か」を
環境そのもので伝える方法です。

例えば教室であれば、
「勉強するエリア」
「遊ぶエリア」
「休むエリア」を
物理的に分ける。

パーテーションで区切ったり、
カーペットの色を変えたり、
机の配置を変えたりするだけで、

子どもは
「この場所に来たら勉強だ」
「ここに行けば休んでいい」
と、視覚的に理解できます。

これがなぜ大切かというと、
ASDの子どもは
「場所と行動の結びつき」で
動きやすいからです。

「勉強しなさい」と
言葉で10回言うよりも、
「勉強エリア」に座らせた方が
すっと切り替わることがある。

家庭なら、
リビングの一角に
「宿題コーナー」を作るだけでも
効果があります。

放デイの事業所なら、
活動ごとにエリアを分けることで、
子どもが自分で移動して
次の活動に入れるようになります。

②時間の構造化(スケジュールの構造化)

「次に何が起きるか」を見える化する方法です。

ASDの子どもが最も不安を感じるのは、
「この先どうなるか分からない」ときです。

以前の記事で
「見通しを渡す」ことの大切さを
何度も書いてきましたが、
これはまさに時間の構造化です。

具体的には、
1日の流れを写真やイラストで
上から下に並べた
「視覚的スケジュール表」を使います。

終わった活動は
カードをめくったり外したりして、
「今どこにいるか」が
一目で分かるようにする。

タイムタイマー
(残り時間が目で見えるタイマー)を
使うのも効果的です。

「あと何分で終わるか」が
目に見えるだけで、
子どもの不安は大幅に減ります。

「見通しが立つ」ということは、
ASDの子どもにとって
「安心できる」とほぼ同義なのです。

③活動の構造化(ワークシステム)

「何を、どれだけ、どの順番で、
 終わったらどうするか」を
明示する方法です。

例えば、
課題のプリントを3枚やる場合。

左側に「やるもの」を3枚置く。
終わったら右側の
「おしまいボックス」に入れる。

3枚全部が右に移ったら、
「全部終わった」ことが目で分かる。

左☞右 または、
 
 ☟
 下  
がポイントです!

これだけのことですが、
効果は絶大です。

「あとどれくらいやればいいの?」
「いつ終わるの?」
という不安がなくなるからです。

学校の授業でも、
家の宿題でも、
放デイの活動でも使えます。

「今日やることは3つです。
1番、2番、3番。
3番が終わったら自由時間です」

これを口頭だけでなく、
ホワイトボードや紙に書いて
見せるだけで、
子どもの動き方が変わります。

④視覚的構造化

情報を「見て分かる」形にする方法です。

言葉を理解するよりも、
視覚的な情報の方が
処理しやすい子どもは多い。

具体的には、

手順をイラスト付きカードにする。
持ち物を写真つきのラベルで示す。
「OK」「NG」を色分けで伝える。
文字よりも絵や写真を使う。

例えば、
手洗いの手順を
 ①水を出す
 ②石鹸をつける
 ③ゴシゴシする
 ④水で流す
 ⑤拭く
とイラスト付きで貼っておく。

言葉で「ちゃんと手を洗いなさい」と
10回言うよりも、
絵カード1枚の方が確実に伝わります。

視覚的構造化のポイントは、
「言葉を減らして、見せる情報を増やす」
ということです。


学校・家庭・事業所ですぐ使えるノウハウ

4つの構造化を踏まえて、
明日からすぐ使える
具体例をいくつか紹介します。

家庭で使える例

朝の支度の手順を
イラスト付きチェックリストにする。
(着替え→朝ごはん→歯磨き→持ち物チェック)

カバンの中に入れるものを
写真で示す。

「宿題コーナー」を決めて、
そこに座ったら宿題モード、
という切り替えを作る。

「あと5分で終わり」を
タイムタイマーで見せる。

学校で使える例

授業の流れを
ホワイトボードに書いて見せる。
(①めあて ②説明 ③プリント ④まとめ)

「今日やること」を
朝の会で視覚的に提示する。

給食の配膳手順を
写真カードで掲示する。

掃除の手順と担当を
チェックリスト化する。

事業所で使える例

活動ごとにエリアを分ける。
(学習エリア・運動エリア・休憩エリア)

「おしまいボックス」を導入して、
終わりを視覚化する。

1日のスケジュールを
カード式にして見える場所に掲示する。

活動の切り替え時に
タイマーや音で合図を出す。

共通して言えるのは、

「言葉で伝える」前に
「見せる」を意識するだけで変わる、

ということです。

特別な道具や教材がなくても、
紙とペンがあれば
構造化は始められます。


「構造化しすぎたら自立できなくならない?」

この質問、本当によく聞かれます。

「こんなに手をかけたら、
 一人で何もできなくならない?」

気持ちは分かります。

でも、答えは逆です。

構造化があるからこそ、
子どもは安心して自分から動けるようになり、
結果として自立が進みます。

自転車の補助輪を思い浮かべてください。

補助輪があるから
安心してペダルを漕ぐ練習ができる。

補助輪を最初からつけなかったら、
転ぶのが怖くて
ペダルを漕ぐことすらできない。

構造化は、
子どもにとっての補助輪です。

最初はしっかりつけておく。
慣れてきたら、少しずつ外していく。

構造化を減らしても
自分で動けるようになったとき、
それが本当の「自立」です。

最初から構造化なしで
「自分でやりなさい」と放り出すのは、
補助輪なしでいきなり坂道を走らせるようなもの。

転んで、怖くなって、
もう二度と自転車に乗りたくなくなる。

それでは、
自立を促すどころか、
自立を遠ざけてしまいます。


最後に

構造化は
「特別な支援技術」ではありません。

「分かりやすさ」の設計です。

実は、
私たちの日常にも
構造化はあふれています。

駅の案内表示。
コンビニの棚の配置。
信号機の色分け。
料理のレシピ。

全部、構造化です。

「次に何をすればいいか」を
見える形で示している。

私たちは、
それを「便利だな」と感じています。

発達凸凹のある子に必要な構造化は、
それと同じことです。

「この子だけ特別扱い」ではなく、
「この子にも分かるように伝える工夫」。

そしてその工夫は、
結果として
すべての子どもにとって
分かりやすい環境を作ります。

構造化は、
誰かのためだけのものではない。

みんなにとって優しい環境を作る、
「ユニバーサルデザイン」の第一歩なのです。

先生も、保護者も、支援者も。

まずは一つだけ、
「言葉で伝えていたこと」を
「目で見えるようにする」ことから
始めてみてください。

それだけで、
子どもの動き方が変わるはずです。


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参考文献

この記事は私自身の教員経験・福祉事業経営と
子育ての実体験をベースに書いていますが、
以下の書籍・資料からも多くの示唆を得ています。

・佐々木正美著『自閉症のすべてがわかる本』

・梅永雄二編著『よくわかる自閉症スペクトラムのための環境づくり ― 事例から学ぶ「構造化」ガイドブック』

・厚生労働省『放課後等デイサービスガイドライン』(令和6年7月改訂版)

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