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異端のRPGザ・スクリーマー、風になった東本昌平先生に捧ぐ

僕が何時ものように仕事をするふりをしながらteamsのチャットで悪友たちと駄弁っていると、バイク狂のX1くんが「大変だ、東本昌平先生がお亡くなりになった…」と飛び込んできました。僕は不覚にも先生が闘病中であることを知らず、連載も継続されていたと思い込んでいたのでこの報告はショックでした。
東本先生は言うまでもなくバイク漫画の第一人者で、緻密な機械作画や詩的なセリフ回しなど、独創的で惹きこまれる作品を創り続けてくれました。
今回は僕が先生と出会う切っ掛けになったイカレRPGの最高峰、ザ・スクリーマーの伝説について語ります。


このロゴがカッコよすぎました。


このOPにはゾクゾクしましたね!

❶1985年の異端児RPG

1985年はパソコンRPGの勃興期でした。前回紹介したザ・ブラックオニキスのヒットによってRPGと言うものがようやく認知されてきた頃です。しかしまだ大ヒット作ザナドゥや日本語版ウイザードリーは発売されず、パソコンゲームの主力は依然AVGでした。実はまだパソコンでもアクションゲームの人気は根強く、それ故RPGとアクションゲームを融合させたハイドライドが空前のヒットとなっている時期でした。


ザ・スクリーマー発売時期の1985年10月のランキング。
アクションRPGという革命的作品ハイドライドが市場を席巻していました。MSX版も発売されてこれまた大人気に。この画像では発売直後のMSX版が使われてます。


意外にも野球狂とかザ・キャッスルなど、パソコンでもアクションゲームがまだ根強い人気を維持していました

ザ・スクリーマーはとにかく「まとも」じゃないのが魅力でした。出てくるモンスターはホラー映画から脱走してきたような奴らばかり。武器はメリケンサックに鉄の鞭・ランボーばりのジェット弓ですよ。極め付きはライバルハンターの連中で、アウトレイジ真っ青の「全員悪党」っぷりを見せつけてくれます。このOPにはゾクゾクしましたね!登場人物は全員イカレているのですが、それに輪をかけて主人公のアナーキーぶりが際立っていました。


1985年5月号の予告広告。東本昌平先生の描く主人公が誌面を飾りました。
「いま、戦慄の遊戯がはじまる。」のキャッチコピーがカッコいい!


しかし開発が難航したため、発売は1985年の10月16日までずれ込んだようです。

この時期のRPGと言えばファンタジー世界が当たり前だったにも関わらず、世紀末感あふれるサイバーパンク&バイオホラーという異色作品として登場したのがこのザ・スクリーマーでした。僕が初めて見たのはパソコンショップの売り場なのですが、パッケージ自体が普通の化粧箱ではなく、コミックスのような装丁になっていたことが印象に残っています。


PC-8801版のTHE SCREAMERパッケージ。 東本昌平先生の新作コミックのようです。


前半は東本先生による漫画。終末戦争後の退廃的な雰囲気を見事に描き切っています。


内容は主人公がBIASに辿り着く前のエピソードを綴った物。賞金稼ぎをしつつもBIASへ向かっていた主人公。そこに一帯を仕切る暴走族、ガイアブラザーズに親兄弟を殺された謎の少女セイヤが協力を求めてきます。二人でガイア兄弟を倒す事になるのですが……。結構悲惨な結末で、本作の無慈悲な世界に無理なく導入させてくれます。またこの話の中に、密かにBIAS内のパスワードの一つが隠されている点も秀逸でした。

この「外箱兼パッケージ」のコミックスの部分は東本昌平先生自ら担当しており、さらに本の中央部分に切り抜きがあり、その中にゲームディスクが入っていると言う凝った装丁になっていました。このPCショップでは有り難いことにコミックス部分を宣伝用に立ち読みできるようにしていたので、貪るように一気読みしたことを覚えています。

本の中にディスクが収まっているという凝った装丁。

物語は当時のパソコンゲームとしてはかなり複雑なプロットで、漫画に落とし込んだ演出は極めて秀逸でした。もう少し後になれば同じサイバーパンクの世界観を持つスナッチャーのような豪華なオープニングを作成できたでしょうが、この時期はキャラクターのCGを表示するぐらいで精いっぱいだったのです。何しろこの頃のパソコンはまだロクに漢字も表示できなかったのですから。


東本先生らしくバイクが沢山出てきます。


先生がノッている雰囲気が伝わってきますね。


この漫画は「初期傑作集」のようなものにも掲載されておらず、一切復刻されていません。東本先生のファンには是非読んで頂きたいので何とか復刻して欲しい所ですが…

このマンガはマジカルズゥの長谷川良樹氏が作製したシナリオを、東本先生に依頼して劇画化したそうです。当初30ページの予定が東本先生がノリにのってしまい、話が膨らんで53ページもの大作になってしまったのだそうですね。東本先生はキャラクターデザインにも参加されていて、これがザ・スクリーマーの唯一無二な世界観を決定づける大きな要因になりました。少し長いですがプロローグを抜粋します。

プロローグ

199X年。世界は地球規模の異常気象にみまわれ、空前の食糧危機が全人類を襲った。

そんな中、日本政府は総力を結集し、富士山麓に「遺伝子工学研究所BIAS」を設立。
遺伝子工学によって、従来の農業に頼らない、人工的な食料の増産を行おうとしたのである。

だが、そのようなテクノロジーを持ってしても、世界的な食料争いを止める術はなく、遂に食料を巡って第3次世界大戦が勃発した……

世界が滅びるかと思われた大戦だったが、意外な事に約二年で大戦は終結。
皮肉な事に、戦争で多数の人間が死んでくれたお陰で、食糧問題も解決したのである。
しかし、戦争によって地球上の多くの都市が破壊され、無惨な傷跡を残した。

特に問題となったのは、遺伝子工学研究所であったBIASだ。
大戦の影響で、この施設は破棄されていたのだが、敵国の爆撃により、システムが故障。
BIAS内部では、勝手に中枢システムが起動し、意図しない実験が延々と行われ続けていた……
結果、漏れだした放射能や、狂った遺伝子操作により、得体の知れない化け物が増殖。
人類の力と科学の象徴であったBIASが、大戦の影響によって悪魔の住む塔と化していたのである。

かつて、日本の希望として設立されたBIASが、今や復興のガン細胞として、日本を蝕んでいるのは皮肉としか言いようがない。

BIASに対する外部からの物理的な攻撃は不可能である。
何故なら、現在BIAS内部にどのような物質や細菌・ウィルス、生物が存在しているか不明であり、外部からの攻撃で、それらが漏れだす事だけは避けねばならない為である。
その上、BIAS内部では、狂ったセキュリティシステムが、侵入者を見境無しに排除しようとしている。
外部からの破壊は不可能。さりとて、内部は狂ったガードシステムと、未知の化け物が侵入者を狙っている。
……打つ手がなかった。

復興に忙しい現在の政府には、BIASの機能を停止させ、全施設を安全に解体する金も人手もない。
そこで、政府は一つのプロジェクトを計画する。
差し当たって、BIASを外部から「封印」してしまい、外部へ生物が漏れ出さぬよう監視。
その上で、BIAS内部の化け物共に賞金をかけたのだ。
しかも、「BIAS再深部に進入し、見事BIASの機能を停止させた者には、一生かかっても使い切れない程の報奨金を出す」と確約した。

こうやってお膳立てをしておけば、あとは勝手に、賞金稼ぎどもがBIASに進入し、化け物共を掃討してくれるだろう。
……そう言う思惑だった。仮に失敗しても、政府は何も損はしない。まさに妙案だった。

そして程なく、政府の思惑通り、復員してきた元軍人や、戦争で職にあぶれたならず者共が富士山麓に集まった。
かつて「富士山麓科学都市」と呼ばれた街は、かくして、命知らずの賞金稼ぎのたまり場、「ビーストシティ」として生まれ変わり、
彼ら、賞金稼ぎ達は金のために、あるいは己の力を試すために、今日も今日とて、BIASの闇へ挑んで行く……

モンスターの餌食となる者。防御システムに阻まれる者。
得体の知れない生物を目の当たりにして発狂する者……闇の中で彼らの絶叫が木霊する。

BIASへと挑む世紀末のハンター達……彼らはいつしかこう呼ばれた。
ザ・スクリーマー …… 叫ぶ者共、と。


1985年8月号の特集記事。後にスクウェアのクルーズチェイサー・ブラスティーのアニメ部分や、ウィルのプログラマーを担当した吉田昭弘氏がレビューしています。なんと当時現役高校生の16歳で、データーの圧縮職人として有名でした。


1985年7月号の特集記事。未使用画像や設定の変更などが見られます。


発売直後1986年1月の特集記事。東本先生のイラストが満載!


イカレたモンスターたちが勢ぞろいです。

❷ハードコア過ぎる世紀末


颯爽と登場する主人公。身震いするほどカッコよかった!

BIASの噂を聞きつけた主人公が、お決まりのバイクでビーストシティにたどり着いたところからゲームが始まります。システム自体は戦闘方法がアクションである以外は基本的に「ウィザードリィ」を踏襲していますが、本家が裸足が逃げ出すほどの過酷さでした。モンスターが激強だけでなく、主人公が賞金稼ぎであるバウンティハンターと言う設定が徹底されていているんですね。敵を倒すと記録装置で戦闘を記録し、そのデータを政府機関に見せることで賞金を得ると言う方式になっているんです。一見面倒くさそうに見えますが、この演出が最後の最後で生きてくるんですよ。


このシステムは後年の傑作RPG「ラプラスの魔」の怪物撮影の写真売却で賞金を得る設定などに引き継がれています。

つまり生きて迷宮から生還しないとお金も成長も一切出来ない鬼仕様なんです。「え?じゃあ途中でセーブすればいいじゃん」と思いますよね?ところがX1くん曰く

😁「カーカッカッカ、甘い。スクリーマーの世界では死んだキャラクターは文字通り抹殺されるんや」

つまり主人公が死んだ瞬間、キャラクターデータが完全に削除されてしまうのでした。


朽ち果てる主人公。この画面を見てしまった時点で問答無用でキャラクターデータが削除されます。救済措置など一切無し。

解りやすく説明するならドラクエⅢでパーティが全滅した瞬間、強制的に冒険の書が消えてしまうと言えばいいでしょうか。これを回避する方法はただ一つ、キャラクターを削除できないように、データディスクを書き込み禁止状態にしておく必要がありました。当時フロッピーディスクを持っていなかった僕は、始めX1くんの言っている意味が解りませんでしたよ。


山下章さんのインタビュー記事でも制作者側がこの方法を推奨していたりします。

こういった拘りは作品のあちこちに散見されていて、「世界観の確立」が徹底されたゲームでした。ファミコンでスーパーマリオが発売された直後あたりに、この家庭用ゲーム機では到底不可能な演出に猛烈に憧れた記憶を改めて思い出しました。


BIASのゲートを守る守衛達。迷宮に入ろうとすると、
「ところでお前、許可証は持ってるか?DATA DISK 2っていうんだがな・・・持っていたら、ドライブ2に入れてくれ。入れたらスペースバーを押すんだ。」
と、心憎い演出でディスク交換を要求してきます。その後は
「ようボーイ、今日もお勤めかい?ま、しっかり稼いで来るんだな。」
と軽口を叩いてきたり。こういった独特のセリフも印象的でした。


ここら辺のキャラクター造形は1980年の究極のカルト映画『狂い咲きサンダーロード』などから来ているかもしれませ ん。「バイク……バイク持ってきてくれよ…」

❸鬼の哭く街ビーストシティ

鬼の哭く街、ビーストシティも世紀末臭漂う強烈なインパクトがありました。かつては「富士山麓科学都市」という日本の将来を担う研究都市だったそうですが、静岡県(多分💦)の雰囲気からかけ離れています。


漫画を読むまで日本が舞台とは思えませんでした。

『武器屋』 

高いからと言って高性能とは限らず、ぼったくられる事も多いボルタック商店顔負けの店。商品説明すらないので武器に詳しくない素人を騙して売るのが当たり前な悪徳商人です。武器について買う前に酒場でライバル達に質問し、彼らの率直な評価から参考にして購入しなければなりません。こういった演出も没入感をひきたてていました。

『首屋』


他のRPGにはない施設で、正式名称は「政令特別二七三八号指定地区内特殊有機廃材買い取り所」という怪しいですが、れっきとした政府の出先機関です。
スクリーマーはFRD(FIGHTING RECORDER DEVICE)とよばれる機械をもらい、肩に付けることが義務づけられています。モンスターを倒すと記録され、そのレベルに応じてBP(ビースト・ポイント)が蓄積されていき、クレジットに換金してくれるというゲームシステム。作中の「賞金稼ぎ」の雰囲気が集約された施設です。

『病院』


いかにも東本昌平先生の作品に登場する闇医者ぽくて笑ってしまいました。

『酒場』


主人公を「ハンサムボーイ」とあだ名するバーのママ。料金は意外と良心的で50クレジットで呑み放題。ぼったくられる心配はありません(ゲームブック版はそうでもないですが💦)


黎明期のRPGとしてNPCが多数登場するシステムも秀逸でした。ここはコマンド入力式AVGに近いシステムで情報収集していきます。ちなみにプレイヤーのIQ値が低いとバカすぎると判断され無視される鬼仕様。
ベーマガライター山下章氏の「酒場内部である事をすると超過激なマル秘映像が!!」というスクープで有名なのですが、実は未使用グラフィックがデータとしてディスク内に眠っているんです。


使用されなったのが残念

割れた酒瓶片手に暴れる酒場内での乱闘シーンの画像です。金が払えなかった場合や、ライバルハンター達との会話で相手を怒らせてしまった時のイベントが予定されていたのかもしれません。


ちなみにもう一つの未使用画像は破壊された都市の画像で、恐らくは戦争で破壊された都市としてオープニングで使用される予定だったのかも。
元々ザ・スクリーマーはアドベンチャーゲームとして制作する予定だったらしく、タイトルも正式決定前の仮題は「バイオソルジャー」だったそうです。確かに、ビーストシティの施設や、酒場での会話システムなどはコマンド入力式のアドベンチャーゲームの雰囲気を残していますね。スクリーマーは制作期間2年と言う難産のゲームだったそうなので、もう少し製作が順調ならもっと多くのイベントが挿入されていたかもしれません。

❹アウトレイジ真っ青の「全員悪党」


オープニング画像から抜粋。この荒くれ者たちと競い合うという設定に痺れました。


酒場の他、BIASの中で他のスクリーマーに出会う演出も。これはウィザードリーなどと比べても進んだ演出でした。

ザ・スクリーマーの世界観を決定づけたのが強烈なライバルスクリーマー達。アウトレイジ真っ青の「全員悪党」ぷりで、こいつらだけでバイオレンス映画が一本撮れてしまいそうです。ビジュアルも東本昌平先生の個性が存分に発揮されていて、当時のパソコンゲームの中でも際立っていました。


『ジパング』

日本刀で武装した過激な国粋主義者。それなのにパンクスで麻薬ジャンキーと言うのが時代を先取りしていますね。外国人が統治している臨時政府を憎悪し、日本人による統治国家再建を目指していると言う生々しい設定。ゲームブックではハンターとしてより個人で反政府活動に勤しんでいます。ちなみに所持品は大日本帝国憲法と軍歌の豆本。
無論、他の外国人ハンターとは犬猿の仲なのですが、最強のスクリーマーであるサムライだけには畏敬の念を抱いている模様です。そのためか唯一サムライの居場所を知っている役所。ゲームブックではBIASのカラクリにも薄々気づいている描写があり、だとすると彼が荒れ狂うのも無理はない気がします。


『セコンドキラー』

勝手に「秒の殺し屋」という通り名を自称しているハッタリ野郎。かつては、大富豪の跡取りだったと本人は語っていますが、親兄弟を殺して乗っ取っただけというのがもっぱらの噂です。虚栄心が強く、大法螺を吹くタイプとバカにされたりもしています。
他のスクリーマーに聞くと「弱いくせに大口叩く」とか「あんなの気にすること無い」だの散々の言われ様。ゲーム中でも陰口は面白いので爆笑してしまいました。ただハンターと言うより「情報屋」として重宝がられており、そう言った意味ではBIASの名物男としてキャラが立っていました。


『ジャンクス』

最高齢のスクリーマー。「実力はあるが、お人好しすぎる」と言うのが周囲の評価。東本先生の作品によく登場する「寡黙なメカニック」を色濃く引き継いだキャラクターだったので、もっと活躍して欲しかったです。


『チーフ』

ネイティヴ・アメリカンの誇り高きスクリーマー。イカレ野郎の多いハンターの中では最も信頼が置ける人物で、一旦心を開いた相手には誠意をもって接してくれます。ゲームブックでは頼れる相棒になる展開も…
「スクリーマーのブッチャー(屠殺人)」と陰口をたたかれるほどの実力者で、ゲームブック版では「かつては、サムライとコンビを組んでいたのだが、今ではあまり口にしたがらない」と言う描写があります。この伏線は最終盤で明らかにされることに…実はファイナルドアに関する重要な情報も持っており、物語の重要人物であることが伺えます。


『ラット』

北斗の拳の世界からFA移籍してきたような雑魚臭漂うキャラクター。しかし何と12歳でマスタースクリーマーというのだから驚きです。ただし戦闘よりも、情報や貴重品の売買で名をあげていると言う設定で、ケチな事でも有名。この世界が闘うだけでは生き残れないことを体現するキャラとも言えます。相棒がドーベルマンと言うのが唯一子供らしいですね。


『モンスターマーダー』

性格はいたってクールで紳士的だが、キザな貴族的振る舞いが特徴のキャラクター。ゲームブックでは酒場で「サムライ」と名付けたカクテルを振る舞ってくれたりします。
元は伯爵の位を持っていたそうですが、「先の大戦時に民間人の虐殺を行った罪で爵位を剥奪された」と自ら語っています。この時「女子供も生きたまま切り刻んだ」とドヤ顔で語る真正のサイコパス野郎。恐らく奢って貰った酒は世界一不味かったでしょう。



女王様曰く「わたしに へんな かんじょうもつのはおよし。 やけどするよ。」

『ナチ』

現在なら一発退場確定なキャラクター。鉄の鞭を愛用する、作中唯一の女性スクリーマーです。あまりの強さからオカマ説も流れていますが、女王様の前でそれを言った奴は居ないとのこと。
大戦時には空軍に所属していたらしく、ごく稀にバーのカウンターで涙ぐんでいる姿を見かける事があるそう。ゲームブック版ではちゃんと恋人がいて、危うく主人公が間男にされそうな展開になったりします。


『サムライ』

ビーストシティー最強、そして伝説のスクリーマー。彼がBIASの中に消えてから半年以上が経つという設定で、最終盤にならないと会うことすら出来ません。ゲーム上では彼の愛刀「サムライソード」を譲ってもらうイベントが主な役回りですが、ゲームブック版ではサイボーグ化された最強の敵として主人公に立ちふさがります。
恐らくパソコン版でも最強のライバルとして設定されたのでしょうが、容量や制作の遅れなどで単なるアイテムの譲渡役になってしまった気がします。ゲームブック版やその他の資料などで多くの伏線を感じることが出来ます。



1988年に封切られた『AKIRA』の映画には度肝を抜かれました。徹底的に権力を憎悪する金田正太郎の生きざまに、スクリーマーの主人公の姿を思い出しました。

『主人公』

所謂品行方正な「ゆうしゃ」ではないとは感じていましたが、恐らく本作で最もイカレているのは間違いなくこの主人公でしょう。肩パットに革ジャンと言う「世紀末覇者」を露骨にイメージしたキャラ造詣でしたが、性格的には北斗の拳やマッドマックスに登場するどのキャラクターからもかけ離れています。それ故にスクリーマーが、これらの模倣として埋没しなかったのではないでしょうか。
むしろ東本先生が初期に影響を受けたと思われる大友克洋先生のAKIRAに登場する金田正太郎を彷彿とさせます。「さんをつけろよデコ助野郎!」とか叫びそうですよ。言葉使いも極めて悪く、権力に命令されることを生理的に受け付けない性格も金田と同類みたいですね。エンディングでのやり取りではダークヒーロとしての魅力が爆発します。恐らくパソコンゲーム史上、最もアナーキーな主人公だと思います。


『アーマードポリス』

主人公と対をなす存在。権力者特有のいやらしいキャラクターとして確立されており、考え方によってはザ・スクリーマーの世界を最も体現したキャラクターとも言えます。初期広告などでは病院の医者だったのですが、悪党ズラが評価されてか官憲の長に出世したという経緯があったりします。

『イカレ過ぎたモンスターたち』

モンスターはバイオ工学によって生れた生物兵器というバックストーリーのため、それぞれに詳細な特徴が設定されて いました。
こんな奴らに囲まれたら、気がおかしくなるハンターがいるのも納得。ちなみに罠の一種にバイアスララバイという、死んだスクリーマーの叫び声が迷宮内に響くという設定があります。ライバルも「あれは聞きたくない音だよ。」とボヤいたりしていますね。この世界観は徹底されていました。

またモンスターの造詣も際立っていました。これは東本先生が担当されたか不明ですが、どれも8色とは思えない素晴らしいCGです。ホラー映画好きの人ならば、『ヴィデオドローム』『死霊のはらわた』『遊星からの物体X』などをモチーフにしたことにニヤリとさせられるかも。パソコンのロールプレイングゲーム史上でも、ここまで個性的で恐ろしいモンスター群は存在しないでしょう。その中でも特にイカレた奴を紹介します。


『ファットマン』

2Fに通じる階段への途中に陣取っている、ウィザードリーにおけるマーフィーズゴースト的存在。他のハンターからは「見かけほど強くないよ。ぶよぶよの肉の塊みたいなやっちゃ。」と言われるように、経験値稼ぎ用のキャラですが、初めて見た時はムチャクチャ恐ろしかったです。


『ダークドッグ』

直立歩行する三首の大型犬。明らかに「遊星からの物体X」をモチーフにしたキャラクターで、当時この映画のトラウマが蘇りました。


『ベビーシッター』

通称は「子持ちのドラゴン」名前の理由は見ての通り。よくこんな気持ち悪い造形を考えつくなあ。


『ノーヘッドドラゴン』

トカゲとコウモリの合成獣。弱点を無くすため、頭部は胴体に埋め込まれており、頭部があるべき部分には捕食用の口しかない。頭部と言う主要器官が無いので、致命傷を受けることが無く、いくら切り刻まれても行動が止まらないし、トカゲの様に再生可能。また、目はなくともコウモリの様に超音波で敵を察知するので問題ない。まさに理想的な生物であり、最も完成された生物兵器。
これは視覚インパクトより、ここまでイカレた設定に気持ち悪くなった記憶があります。

❺ネタバレ!そして、新たなる伝説が生まれた……

僕はMSXユーザーだったので、X1くんの攻略を眺めて楽しんでいました。X1くんはプログラムに精通していたのでキャラ改造してインチキしていましたが…😁詳しくは割愛しますが戦闘シーンが厳しすぎましたよ。そんな折BIASの最終盤の6f、最終ボスと思われる『ガーディアン』が突然語り掛けてきます。

以後ネタバレ注意です!内容はYOUTUBEのスクリーマー攻略動画を見て文字起こししました。オリジナルのかな文字文体を漢字入り表記にした他、ゲームブック版のセリフなども混ぜたりしています。そのため一部間違いなどがあるかもしれないのでご了承ください🙇


「まさか、ここまでたどり着く奴がいるとはな……しかし、ここまでだ。死ね! 小僧!!」

しかし何か違和感がありました。BIAS内で喋れるビーストはこの『ガーディアン』だけだったのです。勝負が決すると意外な展開が待ち構えていたのでした。


こいつが、化け物の親玉か……どんな奴かと思えば、まさか言葉を喋れるとはな。

!? まだ生きていやがったか!


ま、待ってくれ……今でこそ、こんな姿になり果てたが、
私は元々人間だったのだ!私はもうすぐ死ぬが、最後の頼みだ。
話だけでも聞いて欲しい……


……良いだろう、話してみな。

有り難い!
この話を誰かに伝えられなければ、私は死んでも死にきれん!
こんな姿にはなってしまったが、実は私はBIASの所長だったのだ……

私は純粋に人を救いたいと思い、食糧危機を乗り越えるためのバイオテクノロジーをBIASで研究していたが、その研究の副産物で、アレが生まれてしまったのだ……


てめぇがBIASの所長だと!?

で、アレってのは何なんだ?BIASの化け物共のことか?


半分は当たりだ……正確には「人間を化け物に変える薬」さ。
研究の副産物で、あの悪魔の薬が誕生してしまった……
そして、あの薬の効用を知った政府は、BIASのプロジェクトを変更したのさ。
バイオ工学による食料の生産ではなく、生物兵器の生産にな。

人を救うためのBIASが、生体兵器の実験施設に変貌してしまったのだ……
私は何とか阻止しようとしたが、遅かった。
捕らえられた私は、薬の実験体にされ、この様な姿に……


・・・・・・・


だが、私は化け物にされても心までは失わなかった。
最後の力を振り絞って、政府の奴らを倒し、
この薬のサンプルと生成法だけは奴らに奪われぬように守ったのだ。
BIASのセキュリティをコントロールし、政府の連中が作り出した化け物を開放して、
BIAS内へ奴らが入り込むのを防いでいたが、それもこれまで……

た、頼む、この薬が最後のサンプルだ。
これを奴らの手の届かない場所へ……二度と世に現れないように処分してくれ!


……解った、引き受けてやろう。

まさか、最後の最後でこんな物騒な物が手に入るとはな……


た、頼んだ、ぞ……



やっと来たか……待ちくたびれたぞ。
さぁ、その薬を渡して貰おうか。


アーマードポリスだと!?

てめぇ、なんでオレが薬を持っていることを知っていやがる?


今まで気付かなかったのか?
貴様らハンター共は、最初から最後まで完全に監視されているんだよ。

貴様らが、金のためにと後生大事に取っつけてる、そのファイティング・レコーダー・デバイスは、戦闘記録装置であると同時に、発信器も兼ねていてな。
そのF.R.Dのお陰で、貴様らハンター共の行動は、何もかも我々に筒抜けってことさ。
ご苦労だったな。


なんだと!?


薬を手に入れた褒美に教えてやろう。
いいか、ここのハンター制度はな、貴様らのような、バカなならず者共を使って、暴走したBIASから、労せずにその薬を奪還するために仕組まれたものなのさ。

ま、このカラクリに気付いた所で、金に目の眩んだハンター共が自主的にF.R.Dを外す事はあり得んがな。
この計画は、金に釣られる貴様らならず者どもの性格も、全て計算に入れてあるプロジェクトなんだよ。


な~るほどな、全部てめぇらが仕組んだことだったって訳かい。
あの化け物どもと俺達を戦わせて、漁夫の利を得ようって事だったのか。

オレ達が勝てば、てめぇらが造った化け物の処分が出来て、戦闘データが集められるし、上手く行きゃあ薬も手に入る。そしてオレ達が負ければ、賞金を払わずに済む。
どう転んでもてめぇらは全く損をしねぇ。


そうだ。生体兵器は死んでもまた造れば良い。
戦闘のデータを取るだけでも十分価値があるからな。
そして、ハンター共がくたばれば、政府としては貴様らに金を払う必要もなくなる。
我々アーマードポリスとしても、貴様らのような社会のゴミが勝手にBIASで死んでくれれば、街の治安も良くなり万々歳って訳よ。
そもそも、ここの施設は全て政府の息がかかっているからな。
貴様らが賞金を得ても、このビーストシティで金を使えば元に戻るのさ。
所詮、貴様らは政府の手のひらの上で踊っているだけなんだよ。


クックック……
そうかいそうかい、そういうことだったのかい。


ま、無駄な抵抗は止めることだ。
お前は、いい腕をしているし、他のバカなハンター共より頭も切れる。このまま殺すにゃ惜しい。
素直に我々の言う通りにすれば、悪いようにはせん。
薬が手に入れば、BIASは生物兵器実験場として今以上に重要になる。
だから、BIAS維持の為のポリスの人員も増えるって訳よ。
どうだ? BIASを守るアーマードポリスになりたくはないか?
薄汚いハンターなんぞよりは遙かに良い待遇だろうが?

……それとも、ここで犬死にしたいのか?


……答えが知りてぇか?

良いか、良く見てろよ、今から面白ぇ見せ物を見せてやるからよ!


「きみは手にしていた薬を自分に打ち込んだ!」



な!? バ、バカな!! 貴重な最後のサンプルを……

かまわん、撃て、撃ち殺せ!!!



       そして、新たなる伝説が生まれた……


このエンディングを見た直後、あまりのショックで暫く頭がクラクラしたことを覚えています。あまりにも救いのない展開と、主人公の凄まじい無頼ぶりに、小学生の僕には刺激が強すぎました。ちょうどそのころデビルマンの漫画版の衝撃的なエンディングをMSXの師匠に見せて貰った直後で、そのシーンがフラッシュバックしましたよ。
結局「ザ・スクリーマー」はMSXに移植されることは無かったので殆どプレイすることは出来なかったのですが、 ファミコンでは絶対に遊べないパソコンゲームの沼にハマっていく大きな切っ掛けになったのでした。

❻製作は何と教育ソフトメーカー?


マジカルズゥのゲームにはお世話になりました。ほかにもアウトロイドも持ってます。

製作したマジカルズゥの本体はストラットフォード(STRATFORD SOFT)という会社で、もともと家庭教師派遣会社「学習館」をその前身にしていました。当初は教育用ソフトを専門としていたのですが赤字が続き、1983年にホビー事業部を発足させ、「マジカルズゥ」(Magical Zoo)ブランドでゲームソフトに進出。アドベンチャーゲームの名作『黄金の墓』などで注目されていました。
ザ・スクリーマーはホビー事業部新設の為の新人たちが制作したため、紆余曲折あり製作は難航したそうです。しかしそれ故に、これ以上ないほどの独創的な作品が完成したのだと思います。この世紀末的で虚無感のある独創的な世界は、MSXでの名作アクションRPG『アウトロイド』などにも引き継がれました。


1985年7月号のマジカルズゥ特集


個性的なメンバーが集結しています


アクションRPGアウトロイドも名作でした。どっかで見た様なロボットですが…


プログラマーの金子泰士さんのインタビュー記事。


製作が半年伸びた苦労を語っています。


発売前のマイクロコンピュータショウ85にてザ・スクリーマーのプロモーションが行われていたそうです。それだけ注目度が高かったことが伺えますね。

緊急追加資料

1986年1月マジカルズゥのロングインタビュー記事


東本昌平先生の漫画が特別に掲載されています


作者の長谷川良樹氏がザ・スクリーマーの世界設定について、映画『世界が燃えつきる日』の原作となった小説『地獄の ハイウェイ』からの影響を述べています。また伝説のカルト映画『爆裂都市 BURST CITY』からもインスパイアされたそうですね。だとすると本当はBGMをバリバリの80年代ロックンロールにしたかったのかもしれません。


実はザ・スクリーマーの現代版の計画もあったそうですね。コルトガバメントやユージン・ストーナーが設計したアーマライトAR-16といった実在の兵器が登場するジャングルを舞台にした作品になったそう。これもやってみたかったなあ。

今回の投稿は東本昌平先生にテーマを絞っているのですが、SFや映画などに造詣の深い長谷川良樹氏のシナリオや、美しいグラフィックを高速で展開させることを可能にしたプログラマーの金子泰士氏あっての作品であることは間違いありません。その後マジカルズゥはヒット作を産み出すことが出来ず、ゲーム製作から撤退してしまうのですが、この点は非常に残念でした。

❼スクリーマー、ゲームブックの世界


実は僕が夢中になってプレイしたのはゲームブック版のザ・スクリーマーでした。 JICC出版局はアドベンチャーノベルスというブランドで、多数パソコンゲームのゲームブックを発行していたんです。こちらの方はかなりやり込んだので、ざっとストーリーを説明しますね。


アドベンチャーノベルスには魅力的な作品が多かったです。

退役軍人の主人公が、戦友だったライマーからBIAS探索の話を持ちかけられるものの、眼前でライマーは何者かの手によって暗殺されてしまう所から物語が始まります。ライマーの仇討ちとBIASでの賞金獲得も兼ねて主人公はBIASを目指すものの、中途で親の敵を付け狙う謎の少女、セイヤと出会うまでが序盤の展開です。


中身は極めてオーソドックスなタイプのゲームブックです。

パソコン版の漫画ではセイヤはガイアブラザーズと相打ちで命を落としてしまうのですが、ゲームブック版では魅力的な相棒として最後まで物語を盛り上げてくれます。その為バディ物の展開となり、パソコン版とはかなり雰囲気が違っていますね。
セイヤはガイア兄弟が彼女の妹を慰み者にし、家族をも惨殺したのだと訴えます。半信半疑ながらも彼女と組んでBIASのビーストシティへ向かう主人公でしたが……ガイア兄弟が作中敵役になるのもパソコン版とは異なる展開です。


MIA版 THE SCREAMER 魔塔バイアスの謎は手元にないんです。相当レアな一品。

ライバルスクリーマーもパソコン版と違って大きく物語に関わってきます。頭のネジが外れてる国粋主義者ジパングや、気まぐれなナチ、サディストのモンスターマーダーなども生き生きと描かれています。特に誇り高きインディアンの勇者、チーフと組み、ガイアブラザーズを撃退するシーンは中盤の見せ場ですね。他にも信用できない暴力バーのバーテンやオカマの技術者など、世紀末感満載の脇役が多数登場します。


挿し絵は残念ながら東本先生ではなく、3DCG作製の第一人者であり、美大の講師をも務められているダバカンこと駄場寛先生。現在では駄馬先生のCGでない手書きのイラストは貴重かも知れません。


僕の手持ちのアドベンチャーノベルスです。何時か特集したいですね。

最終局面ではサムライがサイボーグに改造されており、政府側の最終ボスとして立ちふさがるのですが、やはり救い様がないエンディングになっています。ただパソコンゲーム本編と異なり、伝説的な無法者、サンダンス・キッドとエッダ・プレースのような「明日に向って撃て!」を彷彿とさせる展開で幕を閉じます。孤独な最後でない分マシかもしれませんが…
このようにゲームブック版は物語としてザ・スクリーマーの世界をより深く掘り下げてくれました。パソコン版と合わせてプレイするとより楽しめるのではないかと思います。

❽風になった東本昌平先生に捧ぐ


『バイクだよ。バイクじゃなきゃダメなんだ!』漫画「キリン」で一番好きなセリフ。 趣味というものをどこまで愛せるのかという命題を、先生から問われたような気がしました。

チャット先で嗚咽を堪えながらX1君は語るのでした。

「面白いバイク漫画を描く人は沢山いるんよ。だけど『バイクに乗りたくなる漫画』が描けるのは東本先生しかおらへん。」


東本先生の作品は全てのバイクシーンに愛情が込められていました。それは全てのバイク乗りへの限りないメッセージだったように思うのです。「すべてのバイク乗り すべてのエンブレムに祝福を!」という先生の最後の言葉に、X1君はこらえきれずに泣き崩れていました。

東本先生の「キリン」「CB感。reborn」などを僕はX1君の家で読み漁っていました。僕はバイク乗りではないのですが、1999年から体を壊して仕事を辞めた2018年まで、ほぼ毎日原付に乗っていました。大型バイクにも興味があったのですが、長く格闘技をやっていたため、事故の心配から踏み切れずにいたのです。それ故バイクには強い憧れがあるのですが、その大きな部分を東本先生の漫画が占めていたように思います。


東本先生は1993年発売の「ウィザードリィコミックスvol.1」に読み切り短編を書かれています。ザ・スクリーマーのキャラデザを担当されたこともあり、僕は勝手に東本先生はパソコンユーザーだと思っていました。


友達の家で読んだので手元にはないのですが、東本先生のバイク漫画と同じように「ウィズをプレイした人にしか解らない臭い」のようなものを感じたのでした。

東本先生の作品にはその道に殉じた人にしか解らない「何か」が吹きこまれていたように思うのです。訃報が伝えられた直後、SNSにはバイク乗り達の追悼で埋め尽くされました。僕も何か先生にお返し出来ることはないかと思案し、何かに付かれたように1985年の記憶を引きずり出し、この投稿を綴っています。
東本昌平先生、本当に素晴らしい作品達をありがとうございました。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

                       サイボーグMSX

いつもスキ💛やXでの紹介ポスト、暖かいコメント感謝です🙇皆さんとの繋がりが次の投稿への励みになるんです🥹 
いつの間にか1985年の回想シリーズも増えてきてしまいました。宜しければこちらもどうぞ😁


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