アゲハ幼稚園🦋越冬から覚めるオーロラ姫たち✨越冬4号、5号、6号!
去年の夏のことである。
ナミアゲハがすべて巣立ってしまい、胸にぽっかり穴が空いたような気持ちの母は、レモンの木にふわりふわりと降り立つクロアゲハを見かけた。
買い物から戻ってみると、葉っぱに「とびっこ」みたいに小さい、黄色い卵がいくつか産み付けられてた。
母はレモンの木をサンルームに取り込んだ。
卵から小っちゃい虫が生まれて、レモンの葉をモリモリ食べて、何度か脱皮を繰り返して大きくなっていった。
そのうち、レモンの葉が足りなくなって、山椒の葉やキンカンの葉っぱを補充した。
それでも足りないというので、レモンの木を買ってきた。
アゲハの幼虫は、モリモリたべて、もりもりフンをする。
そのフンが通り道に落ちていると、口で咥えてぽいっと遠くに捨てて掃除をする。
葉っぱを食べているうちに、アオムシ同士で頭がごっつんこすると、角を出してお互いを怒る。アゲハ幼稚園は、個性的なアオムシたちで大賑わいだった。
そのうち、レモンの葉っぱが足りなくなって、レモンの実をかじり始めた。それで、母はミカンの木を買いに行った。
なんとか柑橘系の葉をよせあつめた。
アオムシたちはすくすくと大きくなり、そのうち13匹のサナギになった。
時期はもう10月に入っていた。
「このまま越冬するのかな?」と母が言った。
10月と言っても暑い日がまだ続いていたので、「まだ大丈夫じゃない?」と私は答えた。
でも母の勘が正しかった。
サナギたちは、そのまま冬を越すために深い眠りに入ったのであった。
年が明け、寒い冬が終わり、桜が散り、カエルの卵からオタマジャクシがたくさん孵る頃、サンルームにナミアゲハが優雅に飛んでいた。
サンルームでこっそりサナギになって羽化したのだ。
それからほどなくして、前蛹の時に下に落ちてしまっていたサナギを箸袋に入れて保護していた、その箸袋ちゃんが羽化をした。
箸袋ちゃんに続くように羽化をしたアゲハは少し大きかった。
飛ぶ気満々で羽ばたいていた。
飛行訓練をした後、元気に空に飛んで行ったそうである。
そして、越冬4号君が羽化した。

越冬4号くんも、サンルームでしばらく休んだ後、まっすぐ竹やぶに飛んでいった。

これは毎日羽化するぞ、と楽しみにしていたが、その後全然羽化しない。
まだ夜は寒い時もあるから、もう少し先なのかな、と思っていた。
前回の羽化から5日後、何気なく虫かごを見ると、なんと2匹羽化していた。


さっきまで羽化する気配もなかったのに、びっくりである。
サナギから出て羽を伸ばすまでの時間はあっという間である。
早く出て羽を伸ばさないと羽が固まってしまうのだ。
だから、サナギから出た蝶は真っ先に脚を四方八方に伸ばして足場を探し、天井から逆さまになれる場所を探すのだ。逆さまになるのは、自重で羽を伸ばすためだと思う。

そのうちかごの中で飛び始まったので、かごの蓋を開けると網戸まで飛んでいって止まった。

一回目の飛行訓練のあとはしばらくじっとしている。
羽に血が巡るのに時間がかかるのかな。ジーっと力を蓄えているようである。
せっかく仲間と旅立てるのだから、もう一匹も同時に放蝶したい。
蓋を開けて母が指を近づけると乗ってきた。形のきれいなクロアゲハである。
この形は珍しい。



越冬サナギはほとんど茶色をしていたが、一匹だけ緑色のサナギがいた。
この形の美しいクロアゲハは、その緑色のサナギから羽化した。
他のアゲハは丸いなで肩のシルエットだった。丸いなで肩のアゲハたちは、去年旅立ったオリジン君の子孫なのではなかろうか
6号ちゃんは少し羽ばたいてから網戸に捕まった。
また羽に力が満ちるまでしばらく様子をみた。

そのうち、5号君が羽ばたき始まり、開け放した網戸から飛び立っていった。初めて飛び立っていく瞬間を撮影できた。外に出た瞬間あっという間に林に消えていった。
6号ちゃんは、午後3時近くになっても飛び立たない。日が暮れてしまうのではないかな?と心配になった。
6号ちゃんの近くの網戸をあけると、びっくりしたようにポト、と落ちてから羽ばたいて飛び上がって、まっすぐ林の方に飛んで行った。
力がついていないと途中で落ちてしまう蝶々もいるようだが、6号ちゃんは飛んだらあっという間に見えなくなった。
飛び立つまで心配。でも飛び立った後もずっと心配である。
「いっちゃったね。」
「寂しいね」
達成感と、心にぽっかり穴が開いたみたいな寂しさを、母とわかちあったのであった。
その夜は日中のポカポカ陽気が嘘みたいに大雨が降った。
ああ、飛び立ったクロアゲハたちは大丈夫だろうか、と夜の間ずっと心配だった

長い眠りから覚めたオーロラ姫たち。
温かい安全な家から巣立った瞬間から、天敵に囲まれ、厳しい自然の中で仲間を見つけなくてはいけない。
小さい卵だった頃から見てるから、巣立ってしまうと心配で、大丈夫かな、とずっと姿を探してしまう
ナミアゲハは里帰りをしているようだが、クロアゲハはまだ来ていない。
どうぞ遥か大空を越え、仲間にめぐりあえますように。
そして、またうちのレモンの木に帰ってきてね。
