文科省の認可基準と高校生が入りたい大学のズレ
募集を停止する短大や大学が増えている中で、2026年4月の開学に向けて準備を進めている大学がありました。まだ認可されていないのに2024年11月に着工していたことは、以前の記事で取り上げています。その大学が4月に開学することになりましたが、入学予定者は定員の3割にも満たないそうです。
予想できた結果
設置認可の申請中なのにすでに着工していた「武雄アジア大学」(佐賀県)については、下記の記事で取り上げました。
その後、2025年8月に文科省から設置許可を受けたようです。
【重要なお知らせ】武雄アジア大学が設置認可を受けました
このたび、2026年4月の開学を目指して設置認可を申請しておりました武雄アジア大学が、2025年8月29日付で文部科学大臣より設置の認可を受けました。
本学の設立にご尽力いただいたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。
地域の皆様、教育関係者の皆様、そして開学を心待ちにしてくださった方々のご支援なくして、この日を迎えることはできませんでした。
武雄アジア大学は、国際的な視野と地域の課題解決能力を兼ね備えた人材の育成を目指します。今後は、認可を受けた設置計画に基づき、開学に向けた準備を本格的に進めてまいります。
武雄(たけお)という地に根ざしながらも、アジアの多様な文化や社会を深く理解し、未来を創造するグローバルな地域人材を育む教育環境を整えていきます。
2026年4月の開学に向け、いよいよ準備が本格化します。詳細については、今後、公式サイトにて随時お知らせいたします。
そして2026年2月26日に、キャンパスが完成。


1期生に対して、特待生制度の拡充なども行っていたようです。

けれども、入学予定者は定員140人のところ39人であることが報じられました。
以下、朝日新聞(2026年3月26日付)の記事から一部引用です。
4月に開学する私立大学、武雄アジア大(佐賀県武雄市武雄町)の入学予定者数が定員140人に対し、3割を下回る39人にとどまることがわかった。26日、学長に就任予定の小長谷有紀・国立民族学博物館名誉教授が市議会に対し説明し、「学生募集の取り組みが、まだまだ足りなかったと大いに反省している」と述べた。
県内三つ目の4年制大学となる同大は佐賀女子短大などを運営する旭学園が設置。東アジア地域共創学部東アジア地域共創学科のみで開学を予定している。
この日は市議会全員協議会が開催された。小長谷氏の説明によると、入学予定者のうち出身高校別では、佐賀県内からが最も多く22人、福岡5人、長崎3人、和歌山・鳥取各1人で、留学生が7人(ミャンマー4人、タイ2人、中国1人)という。
学生を集められなかった要因として、学長に就任予定の小長谷氏は「設置認可が昨年8月となり、集めにくいスケジュールになったことや募集段階ではキャンパスが未完成で見せられなかったこと」を挙げています。
そんなこと、誰もがわかっていたことだと思います。2024年10月に設置認可の申請をしたので、設置可否の答申は2025年8月頃だということは決まっていました。はじめから、2026年度の開学は無理なスケジュールのはずです。
大学設置認可について、文科省のサイトには下記のスケジュールが書かれています。

武雄アジア大学は2024年10月に設置認可を申請し、2025年の8月ごろに設置の可否が答申される予定でした。それを待たずに、2024年11月にはすでに着工していたのです。絶対に認可されるという自信は、どこから湧いてきたのでしょうか。
認可を受ける前から着工して、無理なスケジュールで学生募集をした結果、入学予定者が定員の3割にも満たなかったのに、集めにくいスケジュールやキャンパスを見せられなかったことを言い訳にするのはおかしな話です。キャンパスを見せられるスケジュールで募集すれば集まったなら、なぜそうしなかったのでしょうか。見せられないスケジュールにしたのは大学側ですし、学食もないキャンパスを見せて今より集まったかも疑問です。
前述の記事には、補助金について下記のように書かれていました。
開学にあたっては、市が13億円、県が6.5億円の補助金支出を決めている。小松市長は「市民に負担をかけないことが前提」として、旭学園が大学運営から撤退する事態となれば、補助金返還を求めると説明した。
補助金については、以前の記事で取り上げました。

佐賀県には、下記のような声が寄せられていました。

このような意見もあり、多くの人が疑問を持っていたのに、なぜ立ち止まろうとしなかったのでしょうか。
令和8年3月26日に行われた「武雄アジア大学の学生確保の状況に関する記者会見」で、武雄市の小松市長は下記のように語っていました。
最悪のケースとし て、旭学園が大学運営から撤退されるとなった場合には、補助金の返還、用地については現状回復しての返却といった対応を原則進めていく ことになります。
ここからどれだけ増やせるのかわかりませんが、撤退する可能性はあると思います。日本の高校生が希望しないなら、また留学生に頼るのでしょうか(下記参照)。
アンケートに関する疑問
多くの人が予想していたことなのに、なぜ認可されたのでしょうか。市長の会見では、認可の判断の1つに、高校生のアンケートがあったと語っています。
高校生のアンケート結果が、定員をかなり上回っている希望者 がいるということでした。それも 認可の判断材料の1つとなって 認可が取れたということでしたので、定員を満たすことを期待していました。
けれども、このアンケートにも疑問が残ります。
上記の記事には、「旭学園側はアンケート結果を公表していない」と書かれています。2025年6月14日の武雄市議会で小松政市長は「アンケート結果を集計中であり、武雄アジア大を第一志望として受験する、かつ、合格したら入学するという回答数が、入学定員(140人)を超えたとの連絡を(旭学園から)受けている」と答弁しているが、翌週の20日議会でもアンケートは公表されなかったとのこと。
本当に第一志望で入学したいという生徒が定員を大きく超えていたなら、なぜ公開されなかったのでしょうか。アンケートについては、大学側からの誘導があったという情報もあり、前武雄市長がその情報の真偽を含めた調査を要請したとのことでしたが武雄市と文科省は調査をしたのでしょうか。
文科省は、アンケートも含めて、何を根拠に学生が集まると判断したのでしょうか。高校生へのアンケートなんて、そのときは入りたいと思ったとしても、後になって気持ちが変わる可能性だってあるでしょう。質問の仕方や処理の仕方によっては、印象操作も可能です。
文科省では、審査の過程で認可に反対する人はいなかったのでしょうか。市民や県民の声には、丁寧に耳を傾けたのでしょうか。
文科省が人材育成の目標として掲げていることの矛盾については、下記の記事で取り上げました。
文科省も佐賀県も武雄市も、反対意見に耳を貸さずに強引に開学に向けて進んでいったことからも、探究で育てたいとしている力を持つ人材が活躍できる場があるとは思えません。
なぜこんなことになったのか、中学生や高校生の皆さんにぜひ考えていただきたいです。皆さんが学びたいと思う大学は、どんな大学ですか? この問題は中高校生にとって自分ごとであり、探究としても様々な視点で深められるテーマだと思います。
今年度は他にも新たな大学が開学し、来年度以降も予定されています。
これから新たに設置される大学は、必要だと思いますか? そこで学びたいと思いますか?
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