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メルク社(MSD)のHPVワクチン、売り上げ大幅減!

アメリカの地方日刊紙に2026年2月27日付で、「メルク社、ダーラムでのHPVワクチン生産を終了、154人を解雇へ」という記事がありました。記事には、ノース・ダーラム工場でのHPVワクチンの生産を中止する理由として、同社で2番目に売れている医薬品(ガーダシル/ガーダシル9)に対する世界的な需要の低下が挙げられています。これについて、年次報告書などを掘り起こしました。

1年前に増築したばかりの工場

The News & Observer」によると、メルク社(MSD)はノースカロライナ州のダーラムでのHPVワクチンの生産を終了し、154人の人員削減を5月1日から開始する予定とのことです。

Merck to end HPV vaccine production in Durham, laying off 154 workers

下記のサイトで調べると、確かに人員削減の予定が書かれていました。

https://www.commerce.nc.gov/data-tools-reports/labor-market-data-tools/workforce-warn-reports/report-workforce-warn-listings-2026/open

メルク社は北米以外では、MSD (Merck Sharp and Dohme) という社名でビジネスを行っています。

メルク社は2025年3月に、ダーラムの敷地内に10億ドル規模のワクチン製造施設を増築したと発表しています。そしてその新工場では、HPVワクチンのガーダシルとガーダシル9(日本ではシルガード9)が製造される予定であると語っていました(下記参照)。

Merck opens $1 billion addition in north Durham to boost production of popular vaccine

ダーラムはガーダシル/ガーダシル9を生産するメルク社の3番目の拠点であり、ガーダシル/ガーダシル9は2024年に86億ドル弱の収益を生み出していました。

それなのに、1年後にはここでのHPVワクチンの生産を終了させるということです。

メルク社が発表した最新の年次報告書では、依然として第2位の製品であるガーダシル/ガーダシル9の売上高が、2024年と比較して約40%減少し、86億ドルから52億ドルに減少したと書かれています。

年次報告書については、後述します。

その理由として、メルク社は2月初旬の投資家向け電話会議で、この減少は中国と日本での需要低迷によるものだと述べたそうです。

他の媒体でも同様の記事がありました。

こちらの記事では、「中国の競合他社がより低価格のHPVワクチンを発売したため、中国への売上は2024年の35億ドルから2025年にはわずか1億9300万ドルに減少した」と書かれていました。

つまり、86億から52億に減った主な原因は、中国での売り上げが減ったことだと読み取れます。中国でそんなに需要があったことが意外でしたが、昨年、国産の9価ワクチンが承認されたとのことで、低価格の国産に流れていったということでしょうか。

中国では昨年まで国産は2価だけだったようですが、2007年から開発を始めて18年かかって実用化されたそうです。

前述の記事には、「1月に米国食品医薬品局(FDA)は、従来の推奨である2回接種と3回接種ではなく、HPVワクチンの1回接種を推奨した」ことも書かれているので、それが今後の需要に影響する可能性もあるようです。

FDAのサイトでは1回接種推奨のお知らせが見当たらなかったのですが、FDAと同じく米国保健福祉省(HHS)傘下の機関CDC(疾病対策予防センター)が推奨していることは確認できました。

Fact Sheet: CDC Childhood Immunization Recommendations

Recent scientific studies have shown that one dose of the HPV vaccine is as effective as two doses. The CDC is following the lead of several peer nation by recommending one instead of two doses of this vaccine.

https://www.hhs.gov/press-room/fact-sheet-cdc-childhood-immunization-recommendations.html

「最近の科学的研究では、HPVワクチンは1回接種でも2回接種と同等の効果があることが示されています。1回接種を推奨しているいくつかの国に続いて、CDCはこのワクチンの1回接種を推奨します」と書かれています。

日本の厚労省は、2回、または3回接種を推奨していますが、今後変わるのでしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_9-valentHPVvaccine.html


メルク社の年次報告書

ガーダシルの減収について、メルク社が公開している年次報告書を確認しました。

TOP→Investor→Investor relations→Financial information→SEC filings

February 24, 2026 10-K Annual Report

PART I Item 1. Business. 1ページより

確かに、ガーダシル、ガーダシル9(シルガード9)は減っています。

第4四半期に関するニュースリリースも公開されていますが、下記のように書かれています。


https://www.merck.com/news/merck-highlights-progress-advancing-broad-diverse-pipeline/

「この減少は主に中国での需要減と、キャッチアッププログラムに伴う日本での売上減によるもの」とあります。

中国での需要が減っただけでなく、日本での売上減はキャッチアッププログラムが2025年3月で終了したことが関係しているようです。
※現在は1年間の経過措置期間。

現在は、下記の人がキャッチアップ接種の対象です。

平成9年度生まれ~平成20年度生まれの女性で、2022年4月~2025年3月末までにHPVワクチンを1回以上接種した方が、公費による接種を希望する場合は、2026年3月末までに2回目・3回目のワクチンを接種することをご検討ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html


2024年第4四半期に関するニュースリリースで、同じ部分を確認しました。


https://www.merck.com/news/merck-announces-fourth-quarter-and-full-year-2024-financial-results/

「主に中国での需要減少により売上高が減少したが、ほとんどの国際地域(特に日本)での需要の高さで一部が相殺された」と書かれています。


メルク社の減収について、Yahoo!ファイナンスにも記事がありました。

・ガーダシルの売上は2022年まで着実に増加していたが、2024年以降は低迷し始めた。
・ワクチンの売上は、中国での業績低迷により減少。メルクの中国における販売パートナーZhifeiの在庫が通常より多くなってしまったため、在庫を消化できるように中国への出荷を一時停止した。
・日本におけるガーダシルの需要低下も予測しており、この傾向は2026年も続くと予想している。
・経営陣によると、ガーダシルの売上は2026年に改善するとは予想されていない。

日本での推進派の勢いから考えると、「日本におけるガーダシルの需要低下」という予測は意外でした。

逆に、需要が低下してきたからあれほど必死にアピールしているのでしょうか。

2024年以降低迷とのことなので、2024年に誤情報を流してまでキャッチアップ接種を促していたのも、関係があるようにも思えます。

最近は男性へのアピールがすごいのも、無関係とは思えません(下記参照)。


06資料2HPVワクチンの男性への接種について  

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001569904.pdf

2026年度も売上が回復することはなさそうだから、日本でなんとかもっと接種させたいと思っているのでしょうか。


2026年度から定期接種は9価(シルガード9)のみ

2026年4月1日から、HPVワクチンの定期接種から2価と4価は除かれるようです。

05資料1-3 2価及び4価HPVワクチンについて

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001654125.pdf

2026年2月12日に開催された会議ですが、下記の部分は2025年11月のものなので、接種回数に関してアメリカの情報はまだ反映されていないようです。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001654125.pdf

イギリスやカナダ、オーストラリアでは9価のワクチンは1回接種となっています。アメリカは、これらの国に「続いた」ということでしょうか。

公費で接種できるのが9価のみになっても、日本では2回または3回接種とするのでしょうか。

メルク社(MSD)は、日本での積極的勧奨再開に対して圧力とも思える文書を送ってきました。

薬害オンブズパースン会議の情報公開請求によって開示を受けた文書は、下記から見ることができます。

HPV ワクチンの積極的接種勧奨再開に関するMSD 株式会社との交渉経過の公表に関する要望書(2025年3月27日)

この文書については、下記の記事でも取り上げました。

そのことを踏まえると、メルク社(MSD)が接種回数を減らさないように何か圧力をかけてくることもあるかもしれません。

あるいは、すでに新たな商品の広報活動に力を入れているのかもしれません。

メルク社は過去に、日本では承認されていなかった鎮痛剤「バイオックス(Vioxx)」の副作用に関する訴訟で、和解金48億5000万ドルを支払うことで原告側の大半と和解の合意に至ったことがありました。そしてその和解について、責任を認めるものではないとの見解も同時に示しています(下記参照)。

詳細は、『子宮頸がんワクチン問題』(みすず書房)に書かれています。

メルク社は多額の和解金を支払うことになりましたが、Vioxxが市場から撤退してから2年も経たないうちに、HPVワクチン「ガーダシル」がFDAに承認されました。しかも、承認される7か月前から、消費者向けのプロモーションを開始していました。「良い母親はワクチンを接種させる」というメッセージを伝えたり、ワクチンを接種しなければと思わせる恐怖感を作り上げていったのです。

Vioxxの責任を取らずに新たな商品を売り出し、そしてそのHPVワクチンでもまた同じような問題が起きています。アメリカでも「ワクチン裁判所」への請願が増加していることは、下記の記事で取り上げました。

メルク社(MSD)は、また責任を認めずに和解金だけ支払うかもしれません。その準備とも思える動きが、日本でも進んでいるように思えます。

MSD社は2025年7月に、生後初めてRSウイルス感染流行期を迎える新生児・乳児におけるRSウイルス感染症の予防薬として、抗RSウイルスヒトモノクローナル抗体製剤「クレスロビマブ」の承認申請を行ったと発表しています。

アメリカでは2025年6月に承認されたとのことで、「CDCの予防接種諮問委員会は同月、生後初回のRSウイルス感染流行期の新生児・乳児(生後8カ月未満)におけるRSウイルスによる下気道疾患の予防薬としてクレスロビマブを推奨している」と書かれています。

抗体製剤とワクチンの違いについては、下記の資料が公開されています。

03資料1 抗体製剤を予防接種法上の予防接種に用いる医薬品の一つに位置づけることについて


https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001638064.pdf


https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001638064.pdf

日本では2026年度から、妊婦へのRSウイルスワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました。

使用されるのは、組換えRSウイルスワクチン「アブリスボ」(ファイザー社)です。

審査報告書

定期接種A類の対象となりますが、努力義務なので義務ではありません。努力義務に対する誤解については、下記の記事でも取り上げました。

再度、議事録を掘り起こしておきます。


○坂元委員
この妊婦用のRSウイルスワクチンを実施することには私は賛成いたします。市町村としてこれがA類となると努力義務、まあ、努力義務といっても、市町村が接種を受ける方に強制するということは全くないので、コロナのときにもこれがけんけんがくがくの議論になったのですが、そういうことは決してありません。

○坂元委員 
コロナのときに予防接種法の中に努力義務という言葉があって、これに対して市町村が相当攻撃を受けたこともありました。この努力義務という言葉ははっきり言えば本人の意思で、強制されるものではないと幾ら説明しても、この義務という言葉が出てくるのに対して非常に反発があったということは事実であります。
(中略)
 予防接種全体に強制というイメージとか、みんながやっているから自分もやらなくてはいけないという雰囲気を醸し出されるというものがあるのではという中で、我々市町村としては、市町村の事務をやる上において、この努力義務や勧奨接種という言葉があるから、対象の住民の方に、もしよろしかったら受けてくださいとお勧めできます。市町村も、もし受ける意思があるならばいろいろな場の提供とかいろいろな方法で自己負担を軽減する政策を提供しますという努力の中において、やはりある程度そういう規定は必要なことだと思います。

「もしよろしかったら受けてくださいとお勧めできる」、という程度だと言っています。

もし不安があって接種したくないのに接種を勧められたら、この議事録を見せたらよいかもしれません。

一方で、日本小児科学会は2024年に下記の要望書を出していました。

すべての新生児・乳児に対しても抗 RS ウイルスヒトモノクローナル抗体製剤を広く提供するための体制整備に関する要望書 
(令和 6 年 11 月 21 日)

MSD社は抗体製剤「クレスロビマブ」で、HPVワクチンの売上減や裁判による損失を回収できるような根回しをすでにしているのではないでしょうか。

HPVワクチンの問題は、メルク社がVioxxでどんなことをしたのか知ることによって見えてくることがあります。そして、同じことを繰り返させないためにも、HPVワクチン薬害訴訟で製薬会社にきちんと責任を取らせることが重要です。責任を認めなくてもお金さえ払えば許されてしまうようでは、医薬品を安心して使うことができなくなってしまうでしょう。

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