ネット小説大賞「グランプリ該当なし」。書き手はいま何を変えるべきなのか──衝撃の結果が示した創作市場の転換点|書籍化ログ(#創作論 #Web小説 #note #カクヨムイ#なろう #アルファポリス)
こんにちは。こんばんは。
普段はラノベを書いている「うら表紙」と申します。
SNSを覗くと「カクヨムがいいか、なろうがいいか」
そういう投稿が目に入ります。
「読まれない」が当たり前になった今、
少しでも反応の良いプラットフォームはどこなのか
そんな議論が書き手の間では絶えません。
SNSの声を追ってみると、
PVは「なろう」、
読者さんからのフィードバックは
「カクヨム」に軍配が上がる、
という意見が多いようです。
ここでいうフィードバックとは、
「♡」「☆」「コメント」「レビュー」
といった読者さんからのリアクション全般を指します。
つまり、
読まれやすいのは「なろう」
読者との接点が多いのは「カクヨム」
そんな特徴が、
最近はかなり可視化されてきたように感じます。
ちなみに、
SNSではあまり話題にならないアルファポリスですが、
個人的には書籍化への導線の強さが最大の魅力だと思っています。
●ネット小説大賞の結果から見えた評価軸の変化
さて、今月の創作界隈最大の話題といえば、
「第14回ネット小説大賞」の選考結果ではないでしょうか。
特に衝撃だったのは、「グランプリ・金賞該当なし」という異例の結果です。
最高賞が一作も選ばれなかったことに驚いた方も多かったと思います。
一方で、優秀賞などに目を向けると、
異世界転生、ざまぁ、溺愛、現代ダンジョンなど、
プラットフォームで盤石の人気を誇る定番ジャンルが並んでいました。
この、
最高賞の不在と定番ジャンルの盛況
という強いコントラストに
多くの書き手が戸惑ったのではないでしょうか。
「定番ジャンルが受賞しているのに最高賞は出ないなら、一体何を書けばいいんだ。」
「異世界テンプレはもう出尽くしているのに、これ以上何を求められているんだ。」
そう感じた人も少なくなかったはずです。
私も最初は同じことを思いました。
「結局テンプレを選ぶなら、最高賞もテンプレ作品でいいじゃないか」と。
そこで、選評を読んでみることにしました。
内容を要約すると、次のようなものでした。
1. 応募作品全体の傾向
全体のレベルは向上しており、序盤のスピード感やジャンルの多様性は高く評価された。一方で、物語そのものではなく、小手先のテクニックに頼った作品も目立った。
2. 評価・選考の基準
王道と独自性の両立が必須。さらに、タイトル・あらすじの訴求力、漫画化を意識した画面映え、各話のテンポなど、コミカライズ適性も重視されている。
3. 今後の課題
テンプレ展開から一歩踏み込み、キャラクターの内面を深く描くこと。タイトルと内容を一致させ、作品の魅力を冒頭で伝えること。そして書籍化を前提とした長編作品であること。
4. 今後期待されるジャンル・作品
骨太な男性向けハイファンタジー大作、1話目から見せ場のある展開の早い現代ラブコメ、謎解きや深い人間ドラマを含むファンタジーなど。
どうやら、
作品全体のレベルが上がったことで、
コンテスト側が求める基準も自然と引き上げられた、
ということのようです。
そこに加えて、異世界テンプレが長年にわたり
大量供給され続けた結果、
「おもしろい異世界テンプレ」だけでは
もはや「差別化」にならない状況がうまれている。
だから、異世界テンプレであっても、
訴求力の強さ、
物語の厚み、
人物描写の濃さ、
フックの鮮烈さ、
テンポの良さ
といった、いわば“テンプレの上位互換”
とでも言うべき要素が必須になりつつある。
供給過多による競争激化。
そして、要求水準の高騰。
この二つが、今の書き手に重くのしかかっています。
●アルゴリズムが生み出した分断
しかし、本当の問題はここからです。
私たちが主戦場としている
Web小説プラットフォームのアルゴリズムは、
コンテストが重視する
「物語の厚み」や「人物描写」を評価していません。
アルゴリズムが見ているのは、
「どれだけ人が集まったか」
「どれだけ最後まで読まれたか」
といった数字です。
これはSNSでも同じです。
投稿の中身が有益かどうかではなく、
多くの人が集まり、
議論し、
拡散されたものほど高く評価されます。
たとえ芸能ゴシップのような内容であっても、
人が集まり続ければアルゴリズムは「良い投稿」と判断します。
Web小説も構造は変わりません。
アルゴリズムは表現力も構成力も独自性も見ていません。
見ているのは、「人が反応したかどうか」だけです。
だからこそ、
手軽で、予測可能で、気持ちいい作品
が評価されやすくなります。
私はここに、
現在のWeb小説市場が抱える構造的な歪みがあると考えています。
アルゴリズムが求める「手軽な心地よさ」。
出版社が求める「IPとしての爆発力」。
この二つの評価軸が、
いま完全に分断されてしまっているのではないでしょうか。
2022年本屋大賞を受賞した
『同志少女よ、敵を撃て』は、
公募前にカクヨムで公開されていたことでも知られています。
しかし、
カクヨムはこの作品をプラットフォーム上で発掘できませんでした。
この事実は、
IPになり得るほど厚みのある作品であっても、
アルゴリズムの壁によって埋もれ、
選考者の目に届かない実情があることを示しています。
●転換点を越えるために
だから、これからの創作市場で書き続けていくには
アルゴリズムが生み出した歪みの中で、
削られていくメンタルをどう守るかが重要になります。
ランキングを追い続けるのではなく、
自分が積み重ねてきた創作の軸を持ち続けること。
それが今の書き手にとって、
最も有効な自衛策なのだと思います。
何かが変わるときには、必ず痛みがあります。
先が見えない状況では、
不安から創作をやめてしまう人も少なくないでしょう。
私もこういうことを書いておきながら、
その環境の中で強い意志で書き続けられるのか、
とても不安で仕方ありません。
それでも、
この苦しさを「市場が変化している証拠」だと考えるなら、
見え方は少し変わります。
今感じている摩擦は、
評価軸そのものが大きく揺れ動いているからこそ
生まれているのかもしれません。
だからこそ、
ここで創作まで手放してしまうのは、
あまりにも惜しい。
時代が切り替わる瞬間は、
いつだって先が見えません。
それでも、
自分の作品を信じて書き続けた人だけが、
その先の景色を見ることができます。
私も同じ書き手として、
この変化を見届けながら踏ん張ります。
だから、一緒にこの転換点を越えていきましょう。
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