気・血・水 完全ガイド──漢方が体を見る、いちばん最初の枠組み
この記事の内容を、毎朝1分で復習したい方へ。
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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。
漢方を学ぼうとして、処方名の多さに圧倒されたことはありませんか。生薬の名前も同じくらいあって、どこから手をつければいいのかわからない。私自身も、同じところで立ち止まりました。
けれど漢方が体を見るときの枠組みは、実のところ多くありません。まず押さえるのは「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の三つです。
この記事は、その三つを一本にまとめた保存版です。手元に置いて、必要なときに開いていただければと思います。
三つが意味するもの
東洋医学では、体の中を三つのものが巡っていると考えます。
気とは、体を動かしている見えない力です。心臓が動くのも、食べたものが消化されるのも、傷が治っていくのも、体温が保たれるのも、気の働きだと捉えます。家でいえば電気に当たります。目には見えませんが、止まれば何ひとつ動かなくなります。
気には四つの役目があるとされます。体を温めること。外からの寒さや暑さ、病の元から守ること。血や水を押し流すこと。そして、内臓や血が本来の場所から落ちないよう支えることです。
血とは、栄養と潤いを体のすみずみに届ける流れです。西洋医学でいう血液と重なりますが、東洋医学ではもうひとつ、心を落ち着ける役目を持つと考えます。眠りの浅さや理由のない不安を血の不足として捉えるのは、このためです。血が届く先は皮膚、髪、爪、目、筋肉といった末端で、足りなくなるとそこから先に変化が出ます。
水とは、血以外の水分すべてです。汗も涙も、唾液も、関節を滑らかにする液も水に含まれます。体を潤し、熱を冷ます役目を担っています。

不調は「足りない」か「滞る」かで起きる
三つの要素は、それぞれ二通りの形で不調になります。足りないか、滞るか。この二つだけです。
家の電気が足りなければ照明は暗くなります。配線が詰まっていれば、電気は足りていてもその部屋だけ明かりがつきません。どちらも同じ結果に見えますが、原因も直し方も逆になります。
三つの要素に、二つの状態。これで六つ。漢方の入り口は、まずこの六つで足ります。

六つの状態と、そのサイン
気虚(ききょ)── 気が足りない
少し動いただけで疲れる。午後になると力が出ない。声が小さくなる。食が細く、食後に強く眠くなる。風邪をひきやすく、長引きやすい。夕方に胃が下がった感じがする。
見分けの手がかりは、休むと楽になることです。
気滞(きたい)── 気が滞る
喉やみぞおちに、つかえた感じがある。お腹が張る。ゲップやため息が多い。イライラとふさぎ込みが交互に来る。症状の出る場所が日によって変わる。緊張した後に強くなる。
見分けの手がかりは、動くと楽になることです。
血虚(けっきょ)── 血が足りない
立ちくらみ。顔色や唇の色が薄い。爪が割れやすい。髪が細くなった。目が乾く、かすむ。こむら返り。眠りが浅く、夢が多い。
見分けの手がかりは、色が薄くなることです。
瘀血(おけつ)── 血が滞る
肩こりや頭痛が、いつも同じ場所に出る。目の下のくま、肌のくすみ。あざができやすく消えにくい。手足は冷えるのに顔はのぼせる。唇の色が暗い。
見分けの手がかりは、色が暗くなること、そして場所が動かないことです。
陰虚(いんきょ)── 水が足りない
口や喉が渇きやすい。肌や髪が乾燥する。手のひらや足の裏がほてる。寝汗をかく。夕方になると顔がぽっぽと熱く感じられる。
見分けの手がかりは、乾きとほてりです。湿度の高い日本では水滞のほうが相談として多いですが、夏の冷房や加齢で体内の潤いが減る場面もあります。
水滞(すいたい)── 水が滞る
夕方に足がむくむ。体が重だるい。頭が重い。雨の前や低気圧で不調が出る。めまい、ふわふわとした浮遊感。吐き気。舌のふちに歯の跡がある。
見分けの手がかりは、天気で変わることです。

三つの問いで、方向を決める
迷ったときは、この三つを順に自分に聞いてみてください。
一つめ。休むと楽になりますか、動くと楽になりますか。休んで楽なら足りない側、動いて楽なら滞っている側です。
二つめ。鏡を見て、色は薄いですか、暗いですか。薄いなら血虚、暗いなら瘀血の方向です。
三つめ。天気で変わりますか。雨の前に不調が出るなら、水滞を考えます。

代表的な処方
それぞれの状態には、考え方の中心になる処方があります。名前を覚える必要はありません。「足りないなら補う、滞っているなら流す」という方向だけ、頭の隅に置いていただければ十分です。
気が足りない側では、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)がよく名前に挙がります。中心となる生薬は黄耆(おうぎ)と人参(にんじん)です。
気が滞っている側では、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)です。喉のつかえ感が相談の中心にあるときに登場します。
血が足りない側の土台が、四物湯(しもつとう)です。当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)の四つで組まれ、多くの処方の中に組み込まれています。
血虚と水滞が重なる場面では当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、血が滞っている側では桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が挙がります。
水が滞っている側では、五苓散(ごれいさん)です。冷えて水を動かす力そのものが落ちている場面では、真武湯(しんぶとう)が登場します。
※漢方薬は体質(証)や症状によって、合うものが一人ひとり異なります。ご自身に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断をなさらず、必ず漢方に詳しい薬剤師や医師にご相談ください。また、症状が強い場合や長く続く場合、急に変化した場合は、まず医療機関を受診してください。

方向別の養生
足りない側の方は、補う前に減らさないことです。夜更かしを一日やめる。予定を一つ減らす。冷たいものを一杯控える。気も血も食べたものから作られますから、極端に食事量を落とすことは材料を細らせることになります。血虚の方は、黒ごま、黒豆、ひじき、なつめといった色の濃い食材を一つ足してみてください。目を使いすぎないことも、血を守ることになります。陰虚の方は、体を潤す食材(白きくらげ、山苋、梨、白ごまなど)を意識し、辛いものやアルコールなど体の潤いを飛ばすものを控えめにしてみてください。
滞っている側の方は、動かすことと温めることです。長く息を吐く。歩く。肩を回す。湯船につかる。同じ姿勢を続けない。冷えはどの滞りも強くしますから、夏でも足首とお腹は冷やさないでください。水滞の方は、汗をかく機会を作ること、足首を回すことを試してみてください。

この記事の要点
保存用に、要点だけをまとめておきます。
漢方は体を「気・血・水」の三つで見る
不調は「足りない」か「滞る」かの二通りで起きる。三つ×二つで六つ
気は体を動かす見えない力。温め、守り、押し流し、支える
血は栄養と潤いを運び、心を落ち着ける。足りないと末端から変化が出る
水は血以外の水分。足りないと乾きとほてり(陰虚)、余ると重だるさとむくみ(水滞)
気虚は休むと楽、気滞は動くと楽
血虚は色が薄くなる、瘀血は色が暗くなり場所が動かない
水滞は天気で変わる。舌のふちの歯の跡が手がかり
二つ三つ重なるのが普通。一つに決めなくてよい
足りない側は減らさないこと、滞っている側は動かして温めること

明日は、この一週間の内容を確かめる練習問題をお届けします。読んで終わりにせず、一度手を動かしてみると、驚くほど定着が変わります。
あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。
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