「血」は、量だけの話ではありません──血虚と瘀血の見分け方
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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。
昨日は「気(き)」の話をしました。今日は二つめの「血(けつ)」です。
血と聞くと、健康診断の貧血の項目を思い浮かべる方が多いと思います。実際、重なる部分はあります。けれど東洋医学でいう血は、それよりも少し広い範囲を指しています。「貧血ではないと言われたのに、めまいが続く」という方に、漢方の側から見えてくるものがある。今日はそのあたりをお話しします。
血は、運びながら、心を落ち着ける
東洋医学における血は、体のすみずみに栄養と潤いを届ける流れです。ここまでは、西洋医学の血液と大きく変わりません。
違うのは、もうひとつの役目です。血は「心を落ち着ける」ものだと考えられています。
眠りが浅い、夢をよく見る、理由もなく不安になる。こうした訴えを、漢方では血の不足として捉えることがあります。血が足りていれば心は落ち着いた場所にいられるけれど、足りなくなると落ち着き先を失ってしまう、という考え方です。
心のありようを、体の状態として見る。この見方が、東洋医学が心身を分けずに扱ってきた理由のひとつだと思います。
血が届く先は、皮膚、髪、爪、目、そして筋肉です。これらは体の中でも末端にあたるため、血が足りなくなると真っ先に変化が現れます。爪が割れる、髪がぱさつく、目が乾く、こむら返りが起きる。どれも、末端まで潤いが届いていない合図と読みます。

足りない血虚と、滞る瘀血
血もまた、二通りの形で不調を起こします。
血虚は、末端から乾いていきます
血虚(けっきょ)は、血の量そのものが足りない状態です。
立ちくらみがする。顔色が優れず、唇や爪の色が薄い。髪が細くなり、抜けやすくなった。爪が割れやすい。目が乾く、かすむ。手足がこむら返りを起こす。眠りが浅く、夢が多い。
女性は月経で毎月血を失うため、血虚に傾きやすいと考えられています。また、血は食べたものから作られますから、胃腸の働きが落ちていると、そもそも材料が足りません。昨日お話しした気虚(ききょ)と血虚が重なりやすいのは、このためです。
瘀血は、同じ場所に、決まった形で出ます
瘀血(おけつ)は、血が滞っている状態です。
肩こりや頭痛が、いつも同じ場所に出る。刺すような、あるいは重く固まったような痛み。目の下のくま、肌のくすみ、唇の色が暗い。あざができやすく、消えにくい。手足の先は冷えるのに、顔はのぼせる。舌の裏の血管が太く浮いて見える。
瘀血の特徴は、痛みや不調の場所が動かないことです。昨日の気滞(きたい)が「日によって場所が変わる」のと、ちょうど対になっています。
見分けるための、ひとつの問い
血虚と瘀血を分ける手がかりは、色です。
血虚は「薄くなる」方向に出ます。顔色、唇、爪、まぶたの裏。全体に色が抜けていきます。
瘀血は「暗くなる」方向に出ます。くま、くすみ、唇の暗さ、あざ。色が濃く沈んでいきます。
薄いのか、暗いのか。鏡の前で一度、確かめてみてください。

漢方の知恵:補うのか、動かすのか
血の考え方も、気と同じく二方向です。
血が足りない側の土台となるのが、四物湯(しもつとう)です。名前のとおり四つの生薬で組まれています。当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)の四つです。
この四つの組み合わせは、血を補う処方の基本形として、後の時代の多くの処方の中に組み込まれていきました。漢方を学んでいると、この四つが揃って出てくる場面に何度も出会います。名前を覚えるなら、まずここからでもよいかもしれません。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、血を補いながら、余っている水も一緒に捌くという考え方をします。血虚と、明日お話しする水滞(すいたい)が重なっている場面で名前の挙がることが多い処方です。
血が滞っている側では、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がよく登場します。滞っている血を動かすという方向で組まれた処方です。
ここでも、方向の取り違えは起こります。足りないところから無理に動かせば、さらに乏しくなる。滞っているところに足し続ければ、詰まりは深くなる。薄いのか暗いのかを見るのは、そのためです。
※漢方薬は体質(証)や症状によって、合うものが一人ひとり異なります。ご自身に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断をなさらず、必ず漢方に詳しい薬剤師や医師にご相談ください。また、症状が強い場合や長く続く場合は、まず医療機関を受診してください。

今日の小さな養生:血虚には材料を、瘀血には温度を
血虚に近かった方へ。血は食べたものから作られます。ですから、量を減らす方向のダイエットは、血を細らせることがあります。
色の濃い食材が昔から血を養うとされてきました。黒ごま、黒豆、ひじき、なつめ、レバー、赤身の魚。どれか一つを、今日の食事に足してみてください。それから、目を使いすぎないこと。東洋医学では、目を酷使すると血を消耗すると考えます。画面を見続けた日は、少し早めに休むだけでも違います。
瘀血に近かった方へ。滞っている血を動かす近道は、温めることと動かすことです。
湯船につかる。歩く。肩を回す。特別なことは要りません。同じ姿勢を続けないというだけでも十分です。冷えは血を滞らせますから、夏でも足首とお腹を冷やさないようにしてください。

明日は三つめの「水」です。むくみ、体の重さ、雨の日の頭痛。この季節にいちばん心当たりのある方が多いテーマかもしれません。
あなたの毎日が、少しでも元気で快適なものになりますように。
悠々漢方
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