#605 「規模の拡大」ではない「自社の成長」とは?林裕也のスモールジャイアント戦略
木下斉さんの2025年7月の「ジブン株式会社ビジネススクール」での課題について考えます。今月のテーマは「スモールジャイアント戦略」です。
「スモールジャイアント戦略」とは、「規模の拡大より、意味・意義を選ぶ」経営方針です。売上や店舗数ではなく、価値観・顧客体験・社員幸福度などの「質」を求めること。
私は、大企業に勤めているので実感がありますが、毎年昨年を超える売上・利益目標が会社から与えられ、P/Lへの貢献が求められます。私が入社してから、昨年比を下回る目標が設定されたことは一度もなく、常に規模の拡大を遂げてきました。
業界全体の成長率なども考慮した数字ではある一方で、数字目標ばかりが目に付き、組織が「売上・利益を拡大することで、何を目指すのか?」という意味や社会的意義が見えにくくなることもあります。
私は、人生のポートフォリオ戦略の一環として、規模の拡大を続ける「大企業でのキャリア」と並行して、自分なりに考えている社会的意味や意義を実現するための箱として、「探究的な学び」や「キャリア教育支援」、「イノベーションプロジェクトの伴走」を行うための自分の会社を作りました。
自分で作った会社の目的等はまた別途まとめようと思いますが、今日は、自分の会社の事業を題材にして、スモールジャイアント戦略を考えます。
小さいからこそ届けられる深い価値を追求したい
現状の大企業は、「規模拡大をしなければならない」というループからは当面抜けられないでしょう。もちろん、規模の拡大は手段です。成長することで、従業員の成長のための投資に回せる原資が生まれますし、世の中に提供している価値の対価として売上があるという前提であれば、規模の拡大=世の中への価値の提供量が大きくなっているということなので、私は規模の成長を否定しません。
一方で、売上規模が○○億円、○○兆円となってくると、自分の動きがどの程度の価値を生み出しているのか?ということが手触り感を持って理解しにくくなることも事実です。ただ、生き方としては、自分が社会に必要と考えていることを、信念持って貫いていたい。
私が作った会社は、資本金300万円、売上規模も全く大きくない「超零細企業」なわけですが、「小さい=弱い」ではなく、小さいからこそ深い価値を届け、大企業では出せない機動力・文化・顧客密着型を武器にした経営戦略を取っていきたいと考えています。
「成長=拡大」ではありません。「規模の拡大」には際限がなく、売上目標3,000万円を掲げたとしても、じゃあ次は5,000万円、次は1億円・・・というように永遠に満たされることはなく、売上目標だけが掲げられていても本質的に意味はありません。
大企業でも自営でも規模を求める。。これでは「一人両利きの経営」の意味がありません。自分が全てを決めることができる会社だからこそ、「量の成長」ではなく「質の成長」に全振りしたい。「質を伴った量の成長」ではなく、「質の成長」に全振りすると何が起こるのか、実験したい気持ちもあります。
戦略的に「小さくある」ことで、大企業にはできないスピード・独自性・コミュニティ力を最大化したい。重要になってくるのは、私の事業で目指す「質の成長=意味や意義の追求」とは何か?を定義することです。
「越境学習」の推進
意図的に「小さくある」からこそ、機動力高く、1つの事業により深く入りやすいと考えていることが、「越境学習」の推進です。
これは、私の人生にとっての重要テーマの一つです。他分野の価値観を知り、業界の垣根を超えて溶け込んで物事に取り組んでいくことは、私の幸福度を決める要素でもあります。
私は、これまでのキャリアの中で、デジタルやグローバルというキーワードの中に身を置き、考え方やスキルを身につけてきました。これらが本当に真価を発揮するのは、デジタルやグローバルな世界の中ではありません。他分野に応用し、つなげていくことで、これまでになかった流れや価値の創造につながります。
大企業でも、業界横断型の取り組みを加速させる動きは進み、連携が上手くできると大きな価値を生み出します。一方で、同業界の競合企業との共創型プロジェクトは、双方にメリットを生み出すためのスキーム作りや、信頼関係を構築しながら最後までやり遂げる難易度も高く、時間もかかります。短期的に合理的な判断にバイアスがかかりやすい組織では、短期的な成果が説明仕切れないと、必ずしも全てのチャレンジができるわけでもない。
このあたりを乗り越えるヒントが、スモールジャイアント戦略です。
先日、富山県内の学校の先生方向けの教員研修の講演を行い、50名を超える先生方に対して「AI活用探究ラボ」を開催しました。
もともとは、企業の中で生成AIに関する講演などを行っていましたが、これをどのように学校教育の中の学びに活用するか。AI時代において人が学んでいくことは何か。米国大学院での学びや日々の自身のAI活用実践を取り込んでコンテンツにして、教育分野に展開したものです。
AIのような社会の前提を変える技術には、なかなか抵抗感も大きい学校の先生たち向けに私の考えを伝え、世の中の流れに対応していこうとしている先生たちのチャレンジを後押しする。「量」や「売上」の追求だけでは、何百校に対してアプローチできないと成立できない取り組みです。しかし、教育分野の仲間を作り、未来を変えるきっかけになるはずと考えているので、意義の大きい取り組みだと捉えています。
「付き合う人」や組織の広がり
そんな「元気な」先生たちと話していて面白かったのは、「自分たちの仕事にとてもやりがいを感じている」ということでした。
印象的だったのは、「卒業式の次の日の空っぽになった教室を見たときの寂しさは何とも言えない」、「卒業しても、たまに飲みに行こうと声をかけてくれる生徒がいるだけで、教師という仕事は辞められない」というような話を、本当に生き生きした目で話してくれることです。
「やった感」出すための仕事が大量生産され、社会を語らず会社の中のことばかり語っている「ワクワク総量不足社会」は、現代社会の課題だと考えています。そんな中、こんなに自分たちの仕事のことを熱く語れる人たちもなかなかいないなと。また、新しいものに対する現場の抵抗感の強さに対して、大きな危機感を抱いていることも印象に残っています。
私が目指す「質の成長」は、そんな現状への正しい危機感を持ち、実際に行動されている人と一生に行動を起こしていくことです。
いい事業をするには、いい仲間と組むこと。
スモールでも意義ある活動を選択していますから、必ずしも大きな収入につながる取り組みに飛びつかなくても、活動をじっくり進めていくことができます。
私が磨いてきた「デジタル」、「グローバル」、「プロジェクトマネジメント」の専門性を他分野にかけ算する。そして、大企業では手が出にくい小型案件やステークホルダーネットワークが大きすぎて難しい提案にこだわり、「これは価値がある」と信じられる取り組みを「元気な」仲間と続けたい。
これからも、色んな場所に出て行って、世界を広げていくこと。これが、「量」ではなく「質」を求める私の事業の成長の形です。
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