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【読書記録】いのちの声に聴く ほんとうの自分になるために

今回は、2016年9月に出版されたパーカー・J・パーマー『いのちの声に聴く ほんとうの自分になるために』(いのちのことば社)の読書記録をまとめました。

パーカー・J・パーマー『いのちの声に聴く』(いのちのことば社)

『いのちの声に聴く ほんとうの自分になるために(原題:Let Your Life Speak: Listening for the Voice of Vocation)』は、教育者、作家であり社会活動家でもあるパーカー・J・パーマー氏(Parker J. Palmer)による著作です。

教育、ヘルスケア、宗教、ビジネス分野のリーダーたちと共同する非営利の教育団体である勇気と再生センター(Center for Courage & Renewalの創設者である彼の名前はフレデリック・ラルー『ティール組織』(英治出版)においても紹介されており、『ティール組織』内でも本書の一節やパーカー・J・パーマー氏の言葉が何ヵ所も引用されています。

フレデリック・ラルー『ティール組織』(英治出版)

私自身、2017年より場とつながりラボhome's viのメンバーとしてティール組織(Reinventing Organizations)についての探求をスタートさせ、現在はティール組織ラボという有志団体の研究パートナーとして、新しい組織やコラボレーションのあり方についての発信も行っています。

こうした経緯から今回の書籍『いのちの声に聴く』に出会ったわけですが、本書は自分自身が本当に望む生き方・あり方や、さながら季節のように移り変わっていく人生の旅路にどのように向き合い、歩んでいくか等について大きな影響をもたらしてくれた一冊です。

今回は本書について、『ティール組織』という時代の変化によって生まれてきた組織運営・経営のコンセプトとの関わりを深掘りしていく形でまとめていければと思います。

ティール組織(Reinventing Organizations)

『ティール組織』は原題を『Reinventing Organizatins(組織の再発明)』と言い、2014年にフレデリック・ラルー氏(Frederic Lalouxによって紹介された組織運営、経営に関する新たなコンセプトです。

書籍内においては、人類がこれまで辿ってきた進化の道筋とその過程で生まれてきた組織形態の説明と、現在、世界で現れつつある新しい組織形態『ティール組織』のエッセンスを紹介されています。

フレデリック・ラルー氏は世界中のユニークな企業の取り組みに関する調査を行うことよって、それらの組織に共通する先進的な企業のあり方・特徴を発見しました。それが、以下の3つです。

全体性(Wholeness)
自主経営(Self-management
存在目的(Evolutionary Purpose)

『ティール組織』及び『Reinventing Organizatins(組織の再発明)』を参照

この3つをラルー氏は、現在、世界に現れつつある新たな組織運営のあり方に至るブレイクスルーであり、『ティール組織』と見ることができる組織の特徴として紹介しました。

出版後、10万部を超えるベストセラーとなった『ティール組織』(英治出版)は日本の人事部「HRアワード2018では経営者賞を受賞し、2019年には著者来日イベントも開催されるなど、国内のビジネス界でムーブメントを巻き起こしました。

そして、昨年2024年には原著出版10周年を迎えました。

『いのちの声に聴く』と『ティール組織』

全体性(Wholeness)
自主経営(Self-management
存在目的(Evolutionary Purpose)

『ティール組織』及び『Reinventing Organizatins(組織の再発明)』を参照

この3つをラルー氏は、現在、世界に現れつつある新たな組織運営のあり方に至るブレイクスルーであり、『ティール組織』と見ることができる組織の特徴として紹介しましたが、日本国内において、全体性(Wholeness)存在目的(Evolutionary Purpose)については、多くの方が捉えどころがないように感じられるのか、まだまだ探求が進んでいません。

ティール組織ラボ編集長・嘉村賢州は、パーカー・J・パーマー氏の著作が全体性(Wholeness)存在目的(Evolutionary Purpose)について探求を深めるための素晴らしい資料であるとして、氏の書籍を扱ったブッククラブをこれまでに何度か開催しました。

ここからは特に、『いのちの声を聴く』の記述と『ティール組織』における記述がどのように重なっているのか?についてさらに詳しく見ていきたいと思います。

『人生は、自分の本当の姿を明らかにする旅』:「自分の人生」を生きる

『ティール組織』著者フレデリック・ラルー氏はパーカー・J・パーマー氏の著作に大きく影響を受けており、自身の書籍内でもパーカー・J・パーマー氏の立ち上げた組織である「勇気と再生センター」(Center for Courage & Renewalを事例として取り上げている他、氏の言葉や著書の一節が何ヵ所も引用されています。

ティール・パラダイムへと歩みを進める中で人が向き合うことになる、働き方と内面の旅路に関して、ラルー氏は以下のように表現しました。

人生は、自分の本当の姿を明らかにする旅
(中略)
「進化型(ティール)で行く」ことになると、人生の目標を設定して、どの方向に向かうべきかを決めるのではなく、人生を解放し、一体どのような人生を送りたいのかという内からの声に耳を傾けることを学ぶ。著作家であり、教育者、活動家でもあるパーカー・パーマーは、著書『いのちの声に聴く』 の中で、この見方が人生と職業に及ぼす影響について美しく説明している。

フレデリック・ラルー「ティール組織」p76-77

そして、パーカー・J・パーマー氏の書籍『いのちの声を聴く(原題:Let Your Life Speak)』から、ラルー氏は以下の一節を紹介しています。

Behind the understanding of vocation is a truth that the ego does not want to hear because it threatens the ego's turf: everyone has a life that is trying to live through the "I" who is its vessel. ...
It takes time and experience to sense the between the two - to sense that running beneath the surface of the experience I call my life, there is a deeper and truer life waiting to be acknowledged.

Frederic Laloux「Reinventing Organizations」p45
Parker J. Palmer「Let Your Life Speak」p5

該当箇所は『いのちの声に聴く』『ティール組織』それぞれ日本語訳されていますが、同じ英語の文章からまったく違った印象となる文章となっているので、読み比べてみるのもおすすめです。

天職を理解するために、その背後にある一つの真実を知る必要がある。天職は自我の領域を侵すため、自我は天職に対して聞く耳を持たない。すべての人は、日々意識している「私」とは違ういのち、「私」という外枠としての命を持っている。
この二つの違いに気づくには、長い時間と厄介な経験を必要とする。つまり、私が自分の人生と呼ぶ表面的な経験の下には流れがあって、そこには深淵で真実のいのちがある。

パーカー・J・パーマー「いのちの声に聴く」p17-18

職業とは何かを突き詰めていくと、「エゴ」の(本当は触れてほしくない)本音を覗くことになる。それは、誰もが日々意識している「自分」ではなく、器としての「自分」を通して人生を送ろうとしている、という真実である。
つまり私が「自分の人生」と呼ぶ、表面的な職業の型(器)にはまった経験の下には、実はもっと深い、もっと真実の、本来なりたい自分が送るべき人生がある。この違いを感じ取るには、時間と過酷な経験が必要だ。

フレデリック・ラルー「ティール組織」p77

『魂とは野生動物のようなものだ』:内面の恐れに向き合うこと

以上、職業生活における天職(vocation)や、「自分の人生」を生きることについてパーカー・J・パーマー氏、フレデリック・ラルー氏の考えの重なるポイントについて見てきました。

一方で、自分の望む人生を生きようとした場合、さまざまな制約や困難が現れると感じる方も多いのではないでしょうか?

私たち一人ひとりには家族、共同体、会社など所属している人間集団が存在し、そこでは必ずしも私たち一人ひとりが望む振る舞いができるとは限りません。

さまざまな規律やルール、良しとされる振る舞いや価値観、それらによって醸成される雰囲気、常識などが存在し、自分らしく生きることがそれらにそぐわない場合、私たちは「恐れ」を感じます。

こうした「恐れ」について、フレデリック・ラルー氏は書籍の中で以下のように述べています。

私たちは恐れの奥の奥、最も根本的なレベルでは全体性(ホールネス)を心から望んで止まない。バラバラになった自分自身を統合して自分らしさをすべて出し、魂の真実を尊びたいのだ。それではなぜ全体性(ホールネス)を実現するのがこれほどに難しく、逆にバラバラになることが実に容易なのだろう?それは、自分自身をすべてさらけ出して人前に出るのを危険に感じるからだ。(中略)教育者、作家、そして実践家でもあるパーカー・パーマーは、一生を通じてコミュニティーの中での全体性(ホールネス)を追求するために何が必要かを求め続けている。

フレデリック・ラルー『ティール組織』p244

そして、私たちの魂が望むもの、魂の本性について、パーカー・J・パーマー氏の言葉を引き、ラルー氏は以下のように紹介しています。

魂の真理を聞いてそれに従うにはどのような空間が最適だろうか?魂とは野生動物のようなものだ。魂は強靱で、粘り強く、抜け目なく、機知に富み、うぬぼれが強い。魂は厳しい場所でも生き抜く術を知っている。
(中略)
しかし魂は、その強さにもかかわらず引っ込み思案でもある。まさに野生動物と同じように、魂は茂ったやぶの下に逃げ込もうとする。周りにほかの人々がいるときはなおさらそうなる。私たちが野生動物を見たいと思ったときにしてはならないのは、森の中を突進して「出てこい!」と叫ぶことだ。けれども木々の間を静かに歩き、木の根元にじっと腰掛け、大地とともに呼吸し、周囲に溶け込むと、求めていた野生生物が現れるはずである。

残念なことに、私たちの文化に存在しているコミュニティーとは、森の中を全員で突進し、魂を怖がらせて追い払う人々の集団を意味することが多い。こういう環境では、知性や感情、意志、エゴは出現するが、魂は出てこない。私たちは尊敬に満ちた人間関係や、善意や希望といった魂のこもったものをすべて怖がらせて追い払ってしまうのだ。

フレデリック・ラルー『ティール組織』p245

私たちの社会や、そこで慣れ親しんできた文化は、魂という野生動物が表に出てくることを怖がらせてしまうことがしばしばあります。

そうなった時、乱暴に木々の中に分け入るのではなく、真の意味で開放的で安心できる環境を家庭や職場、仲間たちとの関係の中につくっていくことが、恐れに向き合う上で重要になるのではないかと感じました。

では、パーカー・J・パーマー氏は「恐れ」についてどのように述べているのでしょうか?

まず、氏は四季のメタファーを通じて、私たち一人ひとりの人生は浮き沈みや陰陽、移り変わりがあり、それらは直線的な見方では捉えられない、ということも述べています。

美しさと衰退、光と影、生と死のように両極にあるものが「隠された全体性」の中で一つになっているという秋。

人生においては失敗、裏切り、鬱状態などの形で現れ、死が絶大な勝利を誇っているように見える冬。

雪解けの泥や堆肥など醜いものの後、豊かな花を咲かせ、いのちのすべてを惜しみなく与える春。

コミュニティという複雑に絡み合い、与え合い、受け取り合う関係性が営まれる中で、安定した豊かさを謳歌する夏。

『いのちの声に聴く』の内容を基に作成

そして一見、人生の困難な局面のようにも見える冬について述べる際、パーカー・J・パーマー氏は以下のように「恐れ」について述べています。

私たちが最も避けようとする恐れの中に大胆に入ることができるまで、その恐れは私たちのいのちを支配する。しかし、私たちが恐れに向かってまっすぐに進んでいくと―友情、あるいは霊的訓練や導きと言う名の温かい衣装を身にまとって凍傷を避けながら―恐れが私たちに教えようとしていることを学ぶことができる。それができると、最も絶望的な季節の中にあっても、四季の移り変わりは信頼でき、いのちを与えるものであると再び認識することができる。

パーカー・J・パーマー「いのちの声に聴く」p145

パーカー・J・パーマー氏とフレデリック・ラルー氏はいずれも人の持つ「恐れ」と、「恐れを抱かざるを得ない社会や環境」について着目し、「コーリング(calling:「召命」などとも訳される)」や「いのち(魂)の声」に耳を澄ませる重要性を私たちに伝えてくれている、という点で共通しています。

終わりに

以上、なかなか質感として掴みづらい全体性(Wholeness)存在目的(Evolutionary Purpose)について著者らの言葉を引きながらまとめてみましたが、ここまでご覧いただいた皆さんは、2人の言葉からどのようなことが感じられたでしょうか?

個人的には、『いのちの声に聴く』に込められたパーカー・J・パーマー氏のメッセージと『ティール組織』で表現しようとしたフレデリック・ラルー氏のアイデアはもちろんその発端も起点も別々のものですが、その中でも共通する人間観や人間愛のようなものを2人からは感じます。

また、ビジネス領域で取り上げられる『ティール組織』は仕組みやフレームワークなどでも語られがちですが、今回は「人」にフォーカスしつつ触れることもできました。

加えて、今回の読書記録をまとめる中で、2人に共通する自然のメタファーの豊かさというものも改めて振り返ることができたように思います。

私自身、現在は企業・団体におけるワークショップの実施や組織運営の支援、複数の関係者が関わるプロジェクトにおけるファシリテーション、企業事例のケースライティングや海外文献の翻訳協力といった執筆などの活動の他、父から継いだ田んぼで米作りを行うなど、自然に向き合う生活を送っています。

収穫時の風景

そうした背景もあり、フレデリック・ラルー氏の「森の中に潜む野生動物のような魂」といった表現や、パーカー・J・パーマー氏の語る「人生の四季」のイメージは、体感を伴いながら身体に入ってくる感覚がありました。

パーカー・J・パーマー氏の書籍はまだまだ未邦訳のものが多く、英語の書籍がほとんどですが、それでも氏の語る言葉の明晰さと温かさ、人間の洞察の深さは群を抜いているように感じます。

今後も、氏の書籍を読み解く試みは継続していきたいですね。

さらなる探求のための参考リンク

あなたにとって全体性とは?(What does wholeness mean to you?)|ティール組織ラボ

ようこそ、「次世代組織マガジン 編集部」へ|次世代組織マガジン 編集部 ティール組織ラボ

レポート:ティール組織と識学はまったくの別物?水と油と思われがちな2つの理論を徹底検証!

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