見出し画像

【振り返り記事】1年間の書評連載|人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1134号〜第1145号

2024年4月から2025年3月までの間、ご縁あって産労総合研究所が発行している『企業と人材』にて書評コーナーを担当させていただきました。

2023年11月のある日、産労総合研究所『企業と人材』編集部よりご連絡いただいたことをきっかけに、新年度4月以降『人を活かす組織づくりのヒント』と題して毎月1冊、関連する書籍を紹介してきました。

『企業と人材』及び1年の連載の中で紹介した書籍

私自身、それ以前は主に企業・団体を対象としたファシリテーターとしての活動や、その一環としての組織の変革事例執筆、ケースライティングに取り組んできた他、読んでこなくても参加できる読書会を継続的に実施していました。このような背景から、編集部よりお声がかかったのかもしれません。

新連載にあたり、私自身がこれまで活動の中で探求・実践してきたティール組織(Reinventing Organizations)等の次世代型の組織運営、Self-Management等の知見に関連する書籍を紹介するべく、タイトルは『人を活かす組織づくりのヒント』としました。

今回の記事では、私自身の1年間の書評連載及び書籍の選書背景の振り返りをしていければと思います。


人材開発情報誌『企業と人材』とは?

『企業と人材』は、株式会社産労総合研究所が発行している『人と組織の力を高める人材開発情報誌』です。

出典:産労総合研究所ホームページ

発行元である産労総合研究所は、1938年(昭和13年)に創設された労働問題の民間調査機関『産業労働調査所』を前身とする出版社・民間シンクタンクです。

企業と人材』は1968年(昭和43年)に『社内報新聞』として創刊され、その後『社員教育』、『企業と人材』へと改題を重ねながら、2013年2月に第1000号が発行されました。

産労総合研究所は企業と人材の他、賃金事情』『労働判例』『労務事情』『人事の地図といった人事労務分野だけではなく、病院経営羅針盤』『医事業務など医療介護経営分野における出版を中心に、同分野での調査研究・提言を行っています。(『人事の地図については、『人事の地図』リニューアル発刊中止について(2025年2月7日更新)もご覧ください)

各誌の定期購読・試読・web見本誌の申し込み、見積書ダウンロード、バックナンバーの確認等は、各誌のリンク先のページをご覧ください。

書評を執筆・寄稿した書籍12冊

エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織―「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』

2024年4月号で選んだ書籍は、エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織―「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす(英治出版)です。

恐れのない組織―「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

変化の大きな環境への適応の要請、組織を取り巻く複雑性の増大に伴う1人のリーダーや一部のマネジメント層による意思決定の限界、行き過ぎた利益追求による自然環境破壊や人々の疲弊といったさまざまな要因から、世界中で新たなビジネス、経営、組織・事業運営のあり方が模索されるようになりました。

エイミー・C・エドモンドソンが提唱した心理的安全性(Psychological Safety)は上記のような潮流の中でもよく扱われるテーマである一方、その言葉だけが一人歩きしているような印象も見受けられました。

そのため、まず提唱者本人の研究及びその背景について最も信頼性のある書籍として、本書を第1回の書籍としました。

鈴木規夫『インテグラル・シンキング―統合的思考のためのフレームワーク』

2024年5月号で選んだ書籍は、鈴木規夫『インテグラル・シンキング―統合的思考のためのフレームワーク』です。

インテグラル・シンキング―統合的思考のためのフレームワーク

新たな組織づくりの潮流の中で2010年代後半から世界的に注目を集めたコンセプトが、ティール組織(Reinventing Organizations)です。

このコンセプトの提唱者であるフレデリック・ラルーは、アメリカの思想家ケン・ウィルバーの提唱したインテグラル理論および発達心理学に関する知見を組織論へ応用し、新たなモデルを構築しようとしました。

『インテグラル・シンキング』著者の鈴木規夫さんは国内におけるインテグラル理論および成人発達理論のパイオニアであり、本書はその思考法やそれが必要とされる社会的背景についても明快かつ簡潔に紹介されています。こうした背景から本書を取り上げました。

ブライアン・J・ロバートソン『[新訳]ホラクラシー―人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン』

2024年6月号で選んだ書籍は、ブライアン・J・ロバートソン『[新訳]ホラクラシー―人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン』(英治出版)です。

[新訳]ホラクラシー―人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン

私自身、オランダ・アムステルダムで開催されたトレーニングに参加したことがある組織運営法であると同時に、先述のティール組織(Reinventing Organizations)においても取り上げられた事例でもあります。このような背景から、本書を取り上げました。

また、2025年3月には国内の実践者の集いが開催され、その際のレポートをまとめています。国内におけるホラクラシー(Holacracy)の広がり及び世界における現在の潮流等も合わせてまとめています。

ウィリアム・ブリッジズ『トランジション マネジメント─組織の転機を活かすために』

2024年7月号で選んだ書籍は、ウィリアム・ブリッジズ、スーザン・ブリッジズ著『トランジション マネジメント─組織の転機を活かすために』(パンローリング)です。

トランジション マネジメント─組織の転機を活かすために

本書の著者であるウィリアム・ブリッジズは、人のライフサイクルの変化に伴う内面的な変容「トランジション」の概念を提唱した人物であり、『トランジション マネジメント』はこの概念及びモデルを組織の変容に応用し、具体的な実践法を紹介している一冊です。

引っ越しや転職、結婚、進学など、さまざまな場面で人は内面的な変容やそれによる戸惑い、葛藤が生じますが、その対処法についてはよく知られてはいません。

そのため、この「トランジション」の考え方を組織運営に活かした『トランジション マネジメント』をぜひ紹介したいと考え、選出しました。

なお、『トランジションマネジメント』とは別で『トランジション(パンローリング)の読書記録も書いておりますので、よろしければぜひこちらもご覧ください。

中田豊一『対話型ファシリテーションの手ほどき』

2024年8月号で選んだ書籍は、中田豊一『対話型ファシリテーションの手ほどき』(ムラのミライ)です。

対話型ファシリテーションの手ほどき

本書は私たちが普段、使っている言葉がいかにコミュニケーションの混乱をもたらしているかについてを解明しているとともに、国際協力の現場での実践から生まれたファシリテーション手法を紹介している一冊です。

ここまでやや概念的なものを扱った書籍も多かったため、より具体的な実践を提供してくれる本書をこのタイミングで選書しました。

池田めぐみ、安斎勇樹『チームレジリエンス―困難と不確実性に強いチームのつくり方』

2024年9月号で選んだ書籍は、池田めぐみ、安斎勇樹著『チームレジリエンス―困難と不確実性に強いチームのつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)です。

チームレジリエンス―困難と不確実性に強いチームのつくり方

本書は2024年5月に出版されたばかりの書籍であり、また、「レジリエンス(resilience)」という概念を組織に取り入れ、そのモデル及び実践について提案している一冊です。

本書に関しては著者お二人の出版記念イベントでご一緒していたことや、「レジリエンス(resilience)」の概念の紹介という意味も込めて、選出させていただきました。

宇田川元一『企業変革のジレンマ ―「構造的無能化」はなぜ起きるのか』

2024年10月号で選んだ書籍は、宇田川元一『企業変革のジレンマ ―「構造的無能化」はなぜ起きるのか』(日本経済新聞出版社)です。

『企業変革のジレンマ ―「構造的無能化」はなぜ起きるのか』

本書は日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞を受賞した『他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)の著者・宇田川元一さんの最新刊であり、経営や企業変革における対話(dialogue)の概念の捉え方を大きくアップデートさせてくれる一冊です。

私自身も企業・団体内で対話を生み出す活動に取り組むファシリテーターとして活動してきたという背景から、本書を選出しました。

枝廣淳子『答えを急がない勇気―ネガティブ・ケイパビリティのススメ』

2024年11月号で選んだ書籍は、枝廣淳子『答えを急がない勇気―ネガティブ・ケイパビリティのススメ』(イースト・プレス)です。

答えを急がない勇気―ネガティブ・ケイパビリティのススメ

組織の変化(それが内的な要因であれ外的な要因であれ)に対処すること、また、対話や内省による内面の変容を見つめる上で、ネガティブ・ケイパビリティ(Negative Capability)は欠かせません。

近年、注目されつつある「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」、「負の力」などと表されるネガティブ・ケイパビリティ(Negative Capability)について、広範な実践事例を扱っているという観点から本書を選出しました。

デビッド・アレン『全面改訂版 はじめてのGTD―ストレスフリーの整理術』

2024年12月号で選んだ書籍は、デビッド・アレン著『全面改訂版 はじめてのGTD―ストレスフリーの整理術』(二見書房)です。

全面改訂版 はじめてのGTD―ストレスフリーの整理術

本書で紹介されているGTD(Getting Things Done)というメソッドが実は先述のホラクラシー(Holacracy)においても取り入れられていること、また、GTD(Getting Things Done)というメソッド単体でも仕事の切り分け・効率化にとても効果的であるという実体験もあったため、本書を選出しました。

なお、2025年5月1日に本書の新装版が出版されています。ぜひこちらもご覧ください。

ステファン・メルケルバッハ『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』

2025年1月号で選んだ書籍は、ステファン・メルケルバッハ著、青野英明嘉村賢州翻訳・監修『『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』(英治出版)です。

ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す

本書の前に関連書籍としてトム・ニクソン著『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』(英治出版)日本の人事部「HRアワード2023」に入賞するなど、ソース原理(Source Principle)という創造性及びコラボレーションに関する実践法は国内で注目を集めていました。

また、ご縁あって私自身、上述の著者のお二人とはご縁があったことや『『ソース原理[入門+探求ガイド]』の謝辞に私も登場するなど、私自身もこのソース原理に関して国内へ広げる活動に取り組んでいたという背景から、本書を選出しました。

ソース原理に関してのまとめ記事も執筆しておりますので、よろしければこちらもご覧ください。

マーシャル・B・ローゼンバーグ 『「わかりあえない」を越える―目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC』

2025年2月号で選んだ書籍は、マーシャル・B・ローゼンバーグ著、今井麻希子・鈴木重子・安納献翻訳『「わかりあえない」を越える―目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC』(海士の風)です。

『「わかりあえない」を越える―目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC』

家族関係の改善や敵対する部族間のミディエーション(調停)、企業文化の変容、人の暴力性を掻き立てる社会構造やシステムの変革の現場など、様々な現場で活用される「NVC(Nonviolent Communication:非暴力コミュニケーション)」について幅広い実践事例も交えて紹介されている本書を、2月号にて取り上げることとしました。

なお、『企業と人材』2025年1月号〜2月号にかけて、『「わかりあえない」を越える』の出版元であり活動の仲間である株式会社風と土と(海士の風)が実施する次世代リーダー/経営者候補向け 研修プログラムSHIMA-NAGASHIが特集されており、個人的にとても嬉しいニュースとなりました。

斉藤徹 『だから僕たちは、組織を変えていける—やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』

2025年3月号で選んだ書籍は、斉藤徹 『だから僕たちは、組織を変えていける—やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』クロスメディア・パブリッシング)です。

だから僕たちは、組織を変えていける—やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた

本書は人の働き方・組織のあり方・求められるリーダーシップの変化について農業革命・産業革命・情報革命という人類の体験した社会革命から遡り、現代の私たちが置かれている社会環境を明らかにした上で、多岐にわたる経営理論を参照しながら新しいパラダイムの組織像を提案している一冊です。

ここまで述べてきた『人を活かす組織づくりのヒント』も、人類の組織づくりの発展によって生まれてきたものであり、時代によって、環境によって最も適切な組織論や方法論は異なります。

そのような大局観を持つことを助けてくれ、同時に明日からの実践の後追いをしてくれる本書を最終回に選出しました。

振り返りを終えて

以上、人材開発情報誌『企業と人材』における書評コーナー連載について振り返ってきました。

1年間の『企業と人材』及び扱った書籍を並べてみると、以下のようになりました。色とりどりの表紙デザインも反映され、なかなかに壮観です。

『企業と人材』及び1年の連載の中で紹介した書籍

今回、振り返り記事を書こうと思い立ったのは、2023年度に『企業と人材』書評コーナーを担当されていたマサさんの記事の存在がありました。

実際、私が書評の準備に取り掛かろうという時にたまたまこちらの記事を見つけられたおかげで、私なりのテーマ・選書を考えていくことができたように思います。

連載の最中は書評に取り上げることとなった書籍の著者・出版社・編集者の皆さんとの交流や新たな出会いも活発となり、また、私自身の探求のコンセプトも見直す機会にもなり、本当にありがたいご縁となりました。

『企業と人材編集部の皆様に改めて感謝申し上げます。

なお、連載テーマ『人を活かす組織づくりのヒント』の背景にある私自身の探求・実践に関しては、この振り返り記事を通してもなかなか十分にご紹介はできていないかもしれません。

関連リンク等は各書籍の章や以下にも準備しておりますが、もし何か「これについて深堀りしたい」「このテーマが気になる」などの疑問やメッセージがありましたら、ぜひこちらからや、こちらに記載している連絡先などからお気軽にメッセージいただけると嬉しいです。

本記事が皆さんの気になる本との出会いや、組織における実践の一助となれば幸いです。

さらなる探求のための参考リンク

【振り返り記録】今年2023年から開始した、毎月実施×少人数制の「この指止まれ」読書会を振り返る

一般社団法人BowLの歴史をつまびらくインタビューシリーズ

ジェネレーション・ファシリテーター考#0|世代間の葛藤・対立を越え、未来へ向かうファシリテーションの発案に至る探求の旅路


いいなと思ったら応援しよう!

大森 雄貴 / Yuki Omori サポート、コメント、リアクションその他様々な形の応援は、次の世代に豊かな生態系とコミュニティを遺す種々の活動に役立てていきたいと思います🌱