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【書評掲載】マーシャル・B・ローゼンバーグ 『「わかりあえない」を越える―目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1144号

今年度4月より産労総合研究所が発行している専門誌『企業と人材』の書評コーナーの連載を毎月1回担当することとなり、早くも今回で11回目となりました。

これまで10ヶ月にわたり、『人と組織の力を高める人材開発情報誌』である本誌にて『人を活かす組織づくりのヒント』と題した書評コーナーにて関連する書籍を紹介してきましたが、今回の書籍は私のご縁のある多くの方が邦訳出版に携わり、世に送り出された一冊です。

人を活かす組織づくりのヒント』を提供する書籍として今回、取り上げたのはマーシャル・B・ローゼンバーグ著、今井麻希子・鈴木重子・安納献翻訳『「わかりあえない」を越える―目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC』(海士の風)です。

書評コーナー『人を活かす組織づくりのヒント』

本書は原題を『Speak Peace』と言い、家族関係の改善や敵対する部族間のミディエーション(調停)、企業文化の変容、人の暴力性を掻き立てる社会構造やシステムの変革の現場など、様々な現場で活用される「NVC(Nonviolent Communication:非暴力コミュニケーション)」について、提唱者であるローゼンバーグ氏が著した一冊です。

『企業と人材』と『「わかりあえない」を越える』

企業と人材』は毎月5日に発行予定ですので、書評コーナー以外もぜひ手に取ってご覧ください。

以下、今回取り上げた『「わかりあえない」を越える』の書評記事を読み進める上での補足情報として、「NVC(Nonviolent Communication:非暴力コミュニケーション)」について簡単に紹介できればと思います。


NVCとは?

NVC(Nonviolent Communication)」はアメリカの心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ氏(Marshall B. Rosenberg)が提唱したコミュニケーション法です。

国内では「非暴力コミュニケーション」や「共感コミュニケーション」という名称で紹介されることもあるNVCは、ローゼンバーグ氏自身の「私たちに本来備わっている人を思いやろうとする気持ちを引き出し、心の底から与え、自分自身と相手と理解し合うためのコミュニケーション」についての探求の末に生み出されました。

ローゼンバーグ氏の原体験については、ご自身の書籍内で以下のように述べられています。

人は生まれながらにして自分以外の人を思いやり、与えたり与えられたりすることを楽しむ。そう信じるわたしにとって、長年、頭から離れないふたつの疑問があった。人を思いやろうとする気持ちがいったいどういうわけでかみあわなくなってしまうのか、そしてそのあげく、暴力的になったり相手から搾取したりするようなふるまいに出てしまうのか。逆に、どれほど過酷な状況に置かれてもなお、人を思いやる気持ちを失わずにいられるのは、なぜなのだろうか。わたしは子どものときからずっと、この疑問について考え続けてきた。

p17-18『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版』

わたしは子どものときからずっと、この疑問について考え続けてきた。1943年の夏、家族でミシガン州のデトロイトに引っ越したころから。引っ越しから2週間後、公立の公園での出来事をめぐって人種間の争いが起きた。それから数日のあいだに40人以上の死者が出た。暴動の現場がちょうどわたしの家の界隈だったので、家族はみな3日間、家から出られなかった。

人種間をめぐる暴動がおさまり学校が再開すると、肌の色と同じく名前も危険を招くと知った。教師が出席をとる際にわたしの名前を呼ぶと、ふたりの男の子がわたしをじっとにらみつけ、押し殺した声で言った。「カイクか?」。初めて聞いた言葉だった。ユダヤ人を見下すときに使われる言葉だということすら知らなかった。放課後、そのふたりがわたしを待ち構えていた。彼らはわたしを地面に投げ飛ばし、蹴り、殴った。

1943年のその夏以来、前述したふたつの疑問についてわたしは考え続けてきた。最悪の状況にあってもなお人を思いやる気持ちを失わずにいられるとしたら、何がそうさせるのか?

p18『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版』

幸いにもわたしは、人間の別の側面にふれる機会がありました。祖母は全身が麻痺していたのですが、母はその祖母をいつも世話していました。そして、毎晩のように手伝いに来ていた叔父は、祖母の体をきれいにするときも食事の介助をするときも、いつも最も美しい笑みを浮かべていたのです。

少年のわたしには、不思議でしかたありませんでした。この世には、叔父みたいに、他者の幸福に貢献することを心から楽しんでいるように見える人もいれば、互いに暴力をふるいたくてしかたがない人たちもいる。それは、いったいなぜなんだろう。やがて、将来の進路を決める時期になると、わたしは、これらの重要な疑問に向き合う勉強がしたいと思いようになりました。

p34-35『「わかりあえない」を越える』

NVCの特徴的な点として、人と人とのコミュニケーションにおいて観察(observations)、感情(feelings)、ニーズ(needs)、リクエスト(requests)の4つの要素を意識することの重要性が挙げられます。

そして、観察・感情・ニーズ・リクエストの4つの要素に対する自覚を高め、「4つの要素を自身が率直に表現する」・「4つの要素を相手から共感を持って受け止める」ことを通じて、人を思いやる気持ちを引き出し、喜びを持って、心から互いに与え合うコミュニケーションの実現をめざします。

「わかりあえない」を越える』の詳細については、以前まとめた読書記録もありますので、そちらも参考までにご覧ください。

『「わかりあえない」を越える』(海士の風)

さらなる探求のための参考リンク

『「わかりあえない」を越える』訳者メッセージ|海士の風

NVCミディエーション:修復的な対話の世界観|NewsPicks Education

無意識の「思い込みや偏見」にどう気づく?相手を傷つけないために私ができること|Panasonic MakeNewMagazine

「分かり合えない」は、どうしたら越えられますか?勇気あるリーダーシップで、学校を「もしかしたら」の想像力を柔らかく持てる空間に。|先生の学校

人材開発情報誌『企業と人材』とは?

『企業と人材』は、株式会社産労総合研究所が発行している『人と組織の力を高める人材開発情報誌』です。

『企業と人材』第1144号(2025年2月5日発行)

発行元である産労総合研究所は、1938年(昭和13年)に創設された労働問題の民間調査機関『産業労働調査所』を前身とする出版社・民間シンクタンクです。

企業と人材』は1968年(昭和43年)に『社内報新聞』として創刊され、その後『社員教育』、『企業と人材』へと改題を重ねながら、2013年2月に第1000号が発行されました。

産労総合研究所は企業と人材の他、賃金事情』『労働判例』『労務事情』『人事の地図といった人事労務分野だけではなく、病院経営羅針盤』『医事業務など医療介護経営分野における出版を中心に、同分野での調査研究・提言を行っています。

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書評掲載バックナンバー

エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1134号

鈴木規夫『インテグラル・シンキング―統合的思考のためのフレームワーク』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1135号

ブライアン・J・ロバートソン『[新訳]ホラクラシー―人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1136号

ウィリアム・ブリッジズ『トランジション マネジメント─組織の転機を活かすために』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1138号

中田豊一『対話型ファシリテーションの手ほどき』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1138号

池田めぐみ、安斎勇樹『チームレジリエンス―困難と不確実性に強いチームのつくり方』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1139号

宇田川元一『企業変革のジレンマ ―「構造的無能化」はなぜ起きるのか』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1140号

枝廣淳子『答えを急がない勇気―ネガティブ・ケイパビリティのススメ』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1141号

デビッド・アレン『全面改訂版 はじめてのGTD―ストレスフリーの整理術』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1142号

ステファン・メルケルバッハ『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1143号

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大森 雄貴 / Yuki Omori サポート、コメント、リアクションその他様々な形の応援は、次の世代に豊かな生態系とコミュニティを遺す種々の活動に役立てていきたいと思います🌱