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実験企画第2回レポート:パーカー・パーマー著『A Hidden Wholeness』を3ヶ月かけて読み解き・深めよう【ティール組織ラボブッククラブ】

今回の記事はティール組織ラボが主催した、パーカー・J・パーマー著 『A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life』を扱ったオンライン翻訳読書会の第2回をレポートしたものです。
第1回のレポートは以下からご覧ください。

現在未邦訳の書籍を翻訳しながらアクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD)という読書会手法を用いて、参加者全員で分担し、対話しながら読み進めるというチャレンジングな読書会シリーズである今回。

A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life

第1回に引き続き、第2回もまた、ABD認定ファシリテーターの長谷部可奈さん株式会社コパイロツトをファシリテーターとしてお招きし、『ティール組織ラボ』編集長・嘉村賢州さんからは今回の実験企画の位置付けや書籍に関しての紹介を、木戸伸幸さんティール組織ラボがファシリテーターのテクニカルサポートを担当される形で進められました。

ここからは、第2回の模様についてまとめていければと思います。


本企画に関する前提共有

ティール組織(Reinventing Organizations)

『ティール組織』は原題を『Reinventing Organizatins(組織の再発明)』と言い、2014年にフレデリック・ラルー氏(Frederic Laloux)によって紹介された組織運営、経営に関する新たなコンセプトです。

書籍内においては、人類がこれまで辿ってきた進化の道筋とその過程で生まれてきた組織形態の説明と、現在、世界で現れつつある新しい組織形態『ティール組織』のエッセンスを紹介されています。

フレデリック・ラルー氏は世界中のユニークな企業の取り組みに関する調査を行うことよって、それらの組織に共通する先進的な企業のあり方・特徴を発見しました。それが、以下の3つです。

全体性(Wholeness)
自主経営(Self-management
存在目的(Evolutionary Purpose)

『ティール組織』及び『Reinventing Organizatins(組織の再発明)』を参照

この3つをラルー氏は、現在、世界に現れつつある新たな組織運営のあり方に至るブレイクスルーであり、『ティール組織』と見ることができる組織の特徴として紹介しました。

出版後、10万部を超えるベストセラーとなった『ティール組織』(英治出版)は日本の人事部「HRアワード2018」では経営者賞を受賞し、2019年には著者来日イベントも開催されるなど、国内のビジネス界でムーブメントを巻き起こしました。

そして、昨年2024年には原著出版10周年を迎えました。

ティール組織ラボとは?

2023年12月、『ティール組織ラボ』というティール組織(Reinventng Organizations)をはじめとする進化型組織の情報ポータルサイトが公開されました。

2018年1月のフレデリック・ラルー著『ティール組織』出版以降、国内では新しい働き方・組織運営のあり方に関するムーブメントが巻き起こり、『ティール組織』をはじめとする様々な情報が積極的に発信されるようになると同時に、実際に書籍などの情報もとに実践する企業・団体が多く現れました。

そして、2024年現在。国内における『ティール組織』の概念の急速な広がりや実践の増加によって生じたさまざまな状況について、落ち着いて振り返る時期が訪れつつあります。

さまざまな状況の例としては、以下のようなものが挙げられます。

世に発信される多くの情報には『ティール組織』の中で取り上げられた3つのブレイクスルーや組織形態の発展の5段階などの概念的な部分だけを扱ったものが多く、具体的な実践例が乏しい。

フレデリック・ラルー氏に直接当たらず、書籍のみを断片的に、かつ独自解釈して実践した結果、組織内で大きな混乱が生じたといったケースが散見されるようになった。

一方で、海外に目を向けてみると、まだまだ日本では一般的になっていない『ティール組織』に関するウェブサイトや、企業における豊富な実践事例が多数存在しています。

このような背景のもと、国内の状況にもどかしさを感じていた嘉村賢州さんはフレデリック・ラルー氏に『ティール組織』に関する情報を統合して閲覧できるメディアづくりについて提案し、ラルー氏もこの提案に賛同されたことから、ポータルサイトづくりが始まったとのことです。

なお、『ティール組織ラボ』とは、情報ポータルサイトの名称でもあると同時に、ティール組織やソース原理(Source Principle)などの新しいパラダイムに基づいて運営される組織・コミュニティのあり方を研究する有志の研究団体の名称でもあります。

有志の研究団体としての『ティール組織ラボ』は、2020年頃からティール組織に関する講座作り・実施や、国内外の情報を集めるポータルサイトのオープン・情報発信を行ってきました。

今年3月からは『次世代組織マガジン』という動画シリーズも新しくスタートしています。

今回、実施されたアクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD)形式での読書会も、このような取り組みの1つです。

従来の延長線上にはない新たな組織運営のパラダイムの視座が得られ、解像度が高まるような本を選んでABDを行うことで、共通言語を作り、皆で学んでいこうという思いのもと、今回のブッククラブも企画されたとのことでした。

『A Hidden Wholeness』選書背景

今回のテーマ本である『A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life』は、教育者、作家であり社会活動家でもあるパーカー・J・パーマー氏(Parker J. Palmer)による著作です。

A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life

本書の著者であるパーカー・J・パーマー氏(Parker J. Palmer)を嘉村賢州さんが知ったきっかけは、ティール組織(Reinventing Organizations)という組織のコンセプトの探求を始めたことがきっかけでした。

『ティール組織』内では、世界に現れつつある新たな組織運営のあり方に見られる突破口(ブレイクスルー)として以下の3つが紹介されています。

全体性(Wholeness)
自主経営(Self-management
存在目的(Evolutionary Purpose)

『ティール組織』及び『Reinventing Organizatins(組織の再発明)』を参照

国内において、この全体性(Wholeness)というものの奥深さ、深淵な知恵についてはまだまだ探求が進んでいません。(一部、「心理的安全性」のような捉えられ方を除いて)

一方で、フレデリック・ラルー氏はパーカー・J・パーマー氏の著作に大きく影響を受けており、『ティール組織』内でもパーカー・J・パーマー氏の立ち上げた組織である「勇気と再生センター」(Center for Courage & Renewal)を事例として取り上げている他、氏の言葉や著書の一節が何ヵ所も引用されています。

ティール・パラダイムへと歩みを進める中で人が向き合うことになる、働き方と内面の旅路に関して、ラルー氏は以下のように表現しました。

人生は、自分の本当の姿を明らかにする旅
(中略)
「進化型(ティール)で行く」ことになると、人生の目標を設定して、どの方向に向かうべきかを決めるのではなく、人生を解放し、一体どのような人生を送りたいのかという内からの声に耳を傾けることを学ぶ。著作家であり、教育者、活動家でもあるパーカー・パーマーは、著書『いのちの声に聴く』 の中で、この見方が人生と職業に及ぼす影響について美しく説明している。

フレデリック・ラルー「ティール組織」p76-77

そして、パーカー・J・パーマー氏の書籍『いのちの声を聴く(原題:Let Your Life Speak)』から、ラルー氏は以下の一節を紹介しています。

『いのちの声に聴く ほんとうの自分になるために』

Behind the understanding of vocation is a truth that the ego does not want to hear because it threatens the ego's turf: everyone has a life that is trying to live through the "I" who is its vessel. ...
It takes time and experience to sense the between the two - to sense that running beneath the surface of the experience I call my life, there is a deeper and truer life waiting to be acknowledged.

Frederic Laloux「Reinventing Organizations」p45
フレデリック・ラルー「ティール組織」p77
Parker J. Palmer「Let Your Life Speak」p5
パーカー・J・パーマー「いのちの声に聴く」p17-18
日本語訳の表記揺れが大きいため、原文を基に該当箇所を参照

こうしたパーカー・J・パーマー氏の著作に触れる中で賢州さんが出会ったのが、今回の書籍『A Hidden Wholeness(隠れた全体性)』でした。

本書はラルー氏が語る『The purpose grabs you.(パーパスがあなたを掴まえる)』という感覚や、パーパスが自分を通して表現されたがっているもの・生まれようとしているものに耳を澄ませるということを理解する上でも、とても大切な本だと賢州さんは紹介されていました。

また、読書会実施後にはラルー氏の語る質感を感じる上で参考になるという以下の動画もご紹介いただきました。

アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD)とは?

アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎の概要

現在、Active Book Dialogueの頭文字を取ってABDの愛称で親しまれているアクティブ・ブック・ダイアローグ®︎は、ファシリテーションの技法・哲学を読書会に活かす形で生まれた新しい読書手法です。

対面で実施している際の開催風景

一冊の本を複数人の参加者同士で分担して読み、要約し、プレゼン発表を行なった後、パワフルな問いをもとに対話を進めるという、参加型ワークショップ的な進め方が特徴です。

現在のABDの原型は2013年、現・一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会代表の竹ノ内壮太郎さんがエドワード・デシ『人を伸ばす力―内発と自律のすすめ』の読書会を継続的に実施している際に、参加者の間でより生成的な学びを生み出していくためにさまざまな試行錯誤を続ける中で生まれたと言います。

一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会は、このABDという読書法を通じて『草の根の集合的な学びの広がり』と『書籍の叡智を誰もが分かち合い、対話し、繋がりあえる未来』を実現していくために設立されました。

現在は、今回実施する認定講座の実施の他、出版社や大学など様々なセクターとの協働、ABDに関する情報提供、書籍への寄稿などを行っています。

どのような場面で活用されているか?

2017年、アクティブ・ブック・ダイアローグ協会はABDの実施方法についてのマニュアルの無料公開を開始しました。以降、現在に至るまでさまざまな場所で実施事例が報告・紹介されています。

大学のゼミ活動・研修会、中学・高校の国語や総合学習の授業、まちづくり現場での勉強会、有志の読書会など、全国各地で新しい学びや読書の体験として受け入れられられている他、最近では企業内での研修・勉強会やグループ企業の経営会議の場に応用し、共通体験を通したチームビルディングや共通言語作りといった目的でも実施されています。

さらに、近年のコロナ禍においてオンラインでのコミュニケーションおよび学びの場づくり、ワークショップ実施の需要が高まったことから、対面だけではなく、オンライン上でABDを実施する事例も増えてきました。
ABDに関するお問合せ等は、こちらや以下の記事もご覧ください。

今回のABDのプログラム構成

ABDはその目的、選書、参加者の集まり方、活用できる時間などにより、さまざまなバリエーションの実施方法が存在しますが、今回は英語の書籍をその場で翻訳し、要約し、その後プレゼン、対話という盛りだくさんの内容となっていました。

そのプログラム詳細は、以下のように構成されていました。

  • チェックイン(小グループで3ラウンド)

  • 前回のサマリーを静かに見直す時間

  • ABDについての紹介

  • リレープレゼン

  • ギャラリーウォーク

  • ダイアログ(3人1組の小グループにて)

  • チェックアウト

今回、扱った範囲はCHAPTER IVのThe Soul Is Shy(魂は恥ずかしがり屋)からCHAPTER VIのThis Live Encounter(この、生きた出会い)まで。

書籍の購入は各自で行なった上で、事前に翻訳・サマリー作成を終えた段階でスタートしました。

以下、今回の読書会に参加しての印象的な気づき、学びについて抜粋して紹介できればと思います。

読書会の中で扱われたテーマや視点

信頼の輪(circle of trust)は何を信頼するか?

前回のABDでは「信頼の輪(“circle of trust”)」について扱いました。

著者はまず、『A Hidden Wholeness』の前半部で現代社会を支配する即効性重視の実利的・機械的な考え方は、「私たちが生涯をかけて全体性に向かう旅から目をそらすことにつながるだけです」と表現しています。

また、分裂された自己を統合していく上で「孤独(solitude)」は不可欠であるものの、魂を歓迎し、その声を聞く手助けをしてくれる「共同体(community)」である「信頼の輪(“circle of trust”)」もまた重要であると紹介しています。

この「信頼の輪(“circle of trust”)」の質感については、意訳もありつつ以下のような表現となります。

『そのような共同体、つまり魂を歓迎し、その声を聞く手助けをしてくれる共同体を、私は「信頼の輪(“circle of trust.”)」と呼んでいます。』
All of them have worthy purposes, but none of them has the singular intent of a circle of trust: to make it safe for the soul to show up and offer us its guidance.(CHAPTER II: Across the Great Divide/False Community)

「信頼の輪」には、ただ一つの目的しかない。それは、人々が自らの魂の声に耳を傾け、自分自身の真実を見極められるようにすることだ。』
A circle of trust, I said, has no agenda except to help people listen to their own souls and discern their own truth.(CHAPTER IV: Being Alone Together/On Letting Things Alone)

では、信頼の輪において、私たちは具体的に何を信頼するのでしょうか。少なくとも次の 4 つのことを信頼します。

私たちは魂を信頼します。魂の実在性と力、魂の自立性、真実を語る能力、私たちが耳を傾け、聞いたことに反応するのを助ける能力を信頼します。

We trust the soul, its reality and power, its self-sufficiency, its capacity to speak truth, its ability to help us to listen and respond to what we hear.

A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life

私たちは、魂を歓迎するのに十分安全な空間を作り、それを維持する意図、規律、善意を互いに信頼します。

We trust each other to have the intention, discipline, and goodwill to create and hold a space that is safe enough to welcome the soul.

A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life

私たちは、従来の文化の引力は持続的であり、内気な魂を怖がらせる行動に私たちを簡単に引き寄せる可能性があることを認識しながら、その中で関係を保護する原則と実践を信頼します。

We trust the principles and practices that create such a space and safeguard the relationships within it, aware that the pull of conventional culture is persistent and can easily tug us toward behaviors that will scare the shy soul away.

A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life

私たちは、「変革アジェンダ」を念頭に置くことなく魂を歓迎することで、個人と組織に変革をもたらすことができると信頼します。

We trust that welcoming the soul with no "change agenda" in mind can have transforming outcomes for individuals and institutions.

A Hidden Wholeness: The Journey Toward An Undivided Life

信頼の輪(circle of trust)の4つの条件

そして、この信頼の輪(circle of trust)が成立するには条件が必要であり、それは以下の4つであるとのことです。

  • 明確な境界(Clear Limits)

  • 熟練したリーダーシップ(Skilled Leadership)

  • 開かれた正体(Open Invitations)

  • 共通の基盤(Common Ground)

また、信頼の輪(circle of trust)を魂にとって魅力的なものにし、とらわれている人々にとって魅力的なものにするのに役立つもうひとつの条件として、優雅な雰囲気Graceful Ambiance)も挙げられていました。

「最近の学びには、2種類の学びがある」

最後、プレゼンリレーやギャラリーウォークを終えた後のグループ対話の時間では、「2種類の学び」について語り合うこととなりました。

たまたま同じグループに嘉村賢州さんがいたのですが、そこで賢州さんはパーカー・J・パーマー氏の言葉が「私たちが生まれてきたときに既に知っていて、成長する中で忘れてしまった真実や叡智を思い出すことを助けてくれる」ものであることに触れつつ、最近の学びには大きく2種類あるのではないか、という対話へ進んで行きました。

一つは、ある専門知識・専門領域について精通していく「ゼロから積み上げる学び」。

そしてもう一つが、先述のような「私たちが実は既に知っているはずの真実や叡智を思い出す学び」。

パーカー・J・パーマー氏の言葉や『A Hidden Wholeness』の記述は、いかに私たちが「野生動物のようで、恥ずかしがり屋の魂」の声を聴くことを難しくしてしまっているかに直面することを促すような、そんな優しくも力強い招待であるように感じられました。

今後の関連イベント情報

4/13(日)〜4/16(水)ホールシステムリーダーシップ探求ワークショップvol.2

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次世代組織マガジン#02【4/23(水)まで期間限定で公開中!】|ティール組織ラボ

4/21 (月)ティール組織ラボ主催「ティール組織」概論編講座

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5/8 (木)ティール組織ラボ主催「ソース原理」概論編講座

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