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#10 借上社宅の家賃設定、その決め方で本当に大丈夫ですか?

― 税務と社会保険のズレを理解しないと影響が生じる可能性があります ―


※本記事は借上社宅制度シリーズの一部です。

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【ご留意事項】
本記事は、借上社宅制度に関する一般的な情報提供および制度理解を目的として作成しています。記載内容は、一般的な制度上の考え方や実務上の整理を説明するものであり、特定の状況に対する税務・法務・労務上の判断、助言または保証を行うものではありません。

実際の運用にあたっては、会社ごとの制度設計・契約内容・運用実態等によって取扱いが異なる場合があります。個別案件については、必ず税理士、社会保険労務士、弁護士、または管轄の行政機関等へご確認・ご相談ください。

また、制度改正や行政解釈等により、将来的に取扱いが変更される可能性があります。最新情報については、国税庁・厚生労働省等の公表情報をご確認ください。
内容の正確性には十分配慮しておりますが、本記事に基づいて生じたいかなる損害等についても責任を負いかねます。


借上社宅の従業員負担額について、
 
「実際の家賃の30%を社員負担にしている」
「会社と社員で半分ずつ負担している」
「周囲の会社と同じ割合にしている」
という会社も少なくありません。
 
実際の家賃に一定割合を掛ける方法は、
計算しやすく、従業員にも説明しやすいという特徴があります。

しかし、借上社宅の家賃設定では、
市場家賃の何%を従業員に負担させるかだけで判断することはできません。
 
なぜなら、借上社宅には、
 ・所得税上の「賃貸料相当額」
 ・社会保険上の「現物給与」
 ・会社独自の社宅規程や費用負担ルール
 ・制度目的や対象者の範囲
など、複数の基準が関係するためです。
 
例えば、所得税上は一定の要件を満たしているように見えても、
社会保険上は現物給与額が発生する場合があります。
 
反対に、社会保険上の現物給与を抑えることだけを重視すると、会社が本来実現したかった福利厚生制度としての魅力が弱くなることも考えられます。
 
つまり、借上社宅の家賃設定は、単なる金額計算ではありません。
税務・社会保険・社宅規程・制度目的を踏まえて、従業員負担額を
どのように設計するかという問題です。

 
今回は、借上社宅における従業員負担額の決め方について、基本的な考え方と実務上の確認ポイントを整理します。



1.■ 借上社宅の「家賃設定」とは何を決めることなのか?

借上社宅では、
会社が貸主との間で賃貸借契約を締結し、その住宅を従業員へ貸与します。

このとき、実務上は複数の金額が登場します。
 例えば、
 ・会社が貸主へ支払う実際の家賃
 ・会社が負担する金額
 ・従業員が負担する社宅使用料
 ・家賃上限を超えた場合の自己負担額
などです。
 
このうち、「借上社宅の家賃設定」として特に問題になるのが、
従業員からいくら徴収するかという点です。
 
従業員が会社へ支払う金額は、一般に、
 ・社宅使用料
 ・従業員負担家賃
 ・自己負担額
などと呼ばれます。
 
ただし、会社によっては、社宅使用料とは別に、
 ・家賃上限の超過分
 ・共益費
 ・駐車場代
 ・水道光熱費
 ・更新料や各種サービス料
などを従業員負担としている場合があります。
 
そのため、家賃設定を考える際には、
単に「社宅使用料を何円にするか」だけではなく、
会社と従業員がそれぞれ何を、どこまで負担するのかを整理すること
が重要です。
 
 
[参考]従業員負担額の基本的な決め方については、こちらの記事で詳しく整理しています。
【第2回|借上社宅の従業員負担家賃の決め方】
🛠 制度設計を学びたい方


2.■ なぜ「市場家賃の○%」だけでは不十分なのか?

実務では、
 ・会社負担70%、従業員負担30%
 ・会社と従業員が50%ずつ負担
 ・市場家賃の20%を社宅使用料とする
といった設定が見られます。
 
この方法自体が直ちに問題になるということではありません。

 一定割合で設定する方法は、
・計算が簡単
・物件家賃に応じて負担額が変わる
・従業員に説明しやすい
・制度を統一的に運用しやすい
といった利点があります。
 
一方で、注意したいのは、
市場家賃に対する負担割合と、税務・社会保険上の基準は別のもの
だという点です。
 
例えば、
市場家賃が15万円で、従業員負担を30%の4万5,000円に設定したとします。
この4万5,000円が税務上十分な金額かどうかは、
市場家賃15万円との割合だけではなく、税務上算定される賃貸料相当額との関係によって考えられます。
 
また、社会保険上は、都道府県ごとの価額と住宅の広さなどをもとに算定
される住宅現物給与価格と、従業員負担額との関係が問題になります。
 
したがって、
「市場家賃の30%を徴収しているから問題ない」
「50%を徴収しているから税務・社会保険の両方で問題ない」
と一律に考えることはできません。
 
 
[参考]「何%負担なら安全か」という考え方については、こちらの記事で詳しく整理しています。
【Q&A|社宅の家賃は何%負担(社宅使用料)なら妥当ですか?】
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方


3.■ 所得税上の基準となる「賃貸料相当額」

従業員へ社宅を貸与する場合の所得税上の取扱いでは、一般に
「賃貸料相当額」という基準が用いられます。
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
 
賃貸料相当額は、実際の市場家賃そのものではありません。
固定資産税の課税標準額や住宅の床面積などをもとに、一定の算式によって計算される税務上の金額です。
 
一般的な従業員向け社宅では、
従業員から受け取っている社宅使用料が、賃貸料相当額の50%以上である
場合、会社が負担している部分について給与課税されない取扱いとなることがあります。
 
一方で、従業員負担額が賃貸料相当額の50%未満の場合には、
賃貸料相当額と従業員負担額との差額が給与として取り扱われることが
あります。
 
ここで重要なのは、
判定の基準が、実際の家賃に対する50%ではないという点です。
 
例えば、
会社が貸主へ支払う実際の家賃が15万円であっても、
税務上の賃貸料相当額が6万円であれば、
一般的な従業員向け社宅における50%の目安は3万円です。

実際の家賃15万円の50%である7万5,000円を徴収しなければならない、
という意味ではありません。
 
ただし、実際の税務上の取扱いは、
対象者が役員か従業員か、住宅の規模、契約内容、会社の制度や
運用状況などによって異なる場合があります。
 
そのため、個別の取扱いについては、会社の状況や関係資料を確認した
うえで、税理士や所轄税務署等へ相談することが重要です。


4.■ 賃貸料相当額はどのように計算するのか?

一般的な従業員向け社宅における賃貸料相当額は、基本的に次の①から③
までの合計額として計算されます。
 
賃貸料相当額=①+②+③
① その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
② 12円 ×(その建物の総床面積〔㎡〕÷3.3)
③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%
 
例えば、
 ・建物の固定資産税課税標準額:1,000万円
 ・敷地の固定資産税課税標準額:2,000万円
 ・建物の総床面積:60㎡
とすると、単純な計算例は次のようになります。
 
① 1,000万円 × 0.2% = 2万円
② 12円 ×(60㎡ ÷ 3.3)≒ 218円
③ 2,000万円 × 0.22% = 4万4,000円
 
合計すると、賃貸料相当額は月額約6万4,200円となります。
一般的な従業員向け社宅における50%の目安は、約3万2,100円です。
 
ただし、これは計算方法を理解するための単純な例です。
実際には、
 ・固定資産税課税標準額を確認できる資料
 ・土地や建物の持分
 ・区分所有マンションの敷地部分
 ・居住用以外の部分の有無
 ・役員社宅に該当するか
 ・住宅の規模
などを確認する必要が生じる場合があります。
 
特に借上物件では、会社が固定資産税課税標準額を直接把握していない
こともあります。
資料の入手方法や計算対象に迷う場合には、貸主や管理会社への確認に
加え、税理士や所轄税務署等へ相談することが考えられます。
 
 
[参考]賃貸料相当額の仕組みや計算方法については、
               こちらの記事で詳しく解説しています。
【第13回|借上社宅の賃貸料相当額とは?】
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方


5.■ 市場家賃と賃貸料相当額は同じではない

家賃設定を考えるうえで、特に区別したいのが、
 ・市場家賃
 ・賃貸料相当額
の違いです。
 
市場家賃は、実際の賃貸市場で決まる金額です。
 
一般に、
 ・立地
 ・駅からの距離
 ・築年数
 ・住宅設備
 ・間取り
 ・周辺の需要
 ・建物の人気
などが影響します。
 
一方、賃貸料相当額は、固定資産税課税標準額や床面積などをもとに
計算される税務上の基準です。
そのため、
市場家賃と賃貸料相当額は、計算の目的も決まり方も異なります。
 
例えば、都心の利便性が高い物件では、市場家賃が高額であっても、
賃貸料相当額は市場家賃より低くなることがあります。
 
反対に、物件の条件や固定資産税評価額等によっては、
単純に「賃貸料相当額は必ず市場家賃より低い」と言い切れないケースも
考えられます。
 
したがって、会社が貸主へ支払っている実際の家賃だけを見て、
所得税上の取扱いを判断することはできません。
 
市場家賃は会社と貸主との契約上の金額、賃貸料相当額は税務上の判断に
用いられる金額
として、分けて考えることが重要です。


6.■ 社会保険では「現物給与」という別の基準が使われる

借上社宅では、
所得税だけではなく、社会保険上の取扱いも確認する必要があります。
 
社会保険では、従業員が労働の対償として金銭以外の利益を受ける場合、
その利益が現物給与として取り扱われることがあります。
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
 
住宅を会社から低い負担額で貸与されることによる利益も、社会保険上の
現物給与に該当する場合があります。
 
住宅の現物給与は、会社が貸主へ支払っている実際の家賃をそのまま用いて評価するものではありません。

社会保険では、厚生労働大臣が定める現物給与の価額をもとに、
住宅現物給与価格を算定します。
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
 
そのうえで、一般的には、
住宅現物給与価格-従業員負担額=現物給与額
という関係で整理されます。
 
例えば、
社会保険上の住宅現物給与価格が月額3万円で、
従業員負担額が2万円であれば、
差額の1万円が現物給与額として報酬に含まれる場合があります。
 
一方で、
従業員負担額が住宅現物給与価格以上であれば、住宅部分の現物給与額は
生じないという整理になります。
 
このように、社会保険では、所得税上の賃貸料相当額とは異なる評価基準が使用されます。
所得税上の要件を満たしているからといって、
社会保険上も現物給与額が発生しないとは限りません。

 
 
📢 2026年10月改正について
社会保険上の住宅の現物給与評価については、2026年10月から評価方法の
見直しが予定されています。
改正後は、住宅の総面積を基礎として評価する方法へ見直されるため、
物件の広さや都道府県単価、従業員負担額によっては、
従来より現物給与額が増えるケースも想定されます。
 
そのため、現在の社宅使用料を継続した場合に、
 ・誰に影響が出るのか
 ・現物給与額がどの程度変わるのか
 ・標準報酬月額へ影響する可能性があるか
 ・給与システムの設定変更が必要か
などを、事前に確認することが重要です。
 
 
[参考]社会保険上の現物給与の仕組みと2026年10月改正については、こちらで詳しく整理しています。
現物給与評価改正シリーズ(noteマガジン)
📅 制度改正


7.■ 所得税と社会保険で結果が異なることがある

借上社宅の家賃設定が難しい理由は、所得税と社会保険で異なる基準が
使われていることです。
 
所得税では、一般的な従業員向け社宅の場合、
 ・固定資産税課税標準額
 ・建物の床面積
 ・敷地の固定資産税課税標準額
などをもとに計算した賃貸料相当額との関係が問題になります。
 
一方、社会保険では、
 ・都道府県ごとの住宅に関する現物給与価額
 ・住宅の広さ
 ・従業員負担額
などをもとに、現物給与額が算定されます。
 
そのため、同じ従業員負担額であっても、
 ・所得税上は給与課税が生じない取扱いとなる
 ・社会保険上は一定額が報酬に含まれる
という結果になる場合があります。
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
 
例えば、
従業員負担額が3万5,000円で、税務上の賃貸料相当額が6万円、
社会保険上の住宅現物給与価格が4万円だったとします。
 
この場合、単純な金額関係だけを確認すると、
 ・賃貸料相当額6万円の50%は3万円
 ・従業員負担額3万5,000円はその金額以上
 ・住宅現物給与価格4万円に対しては5,000円不足
となります。
 
この例では、所得税上と社会保険上で異なる結果になる可能性があります。
もっとも、実際の取扱いは、
対象者、住宅の状況、会社の制度、給与処理、その他の事実関係によって異
なることがあります。
 
ここで重要なのは、個別の結論そのものではなく、
所得税と社会保険は別々に確認しなければならないという点です。


8.■ 実務ではどのように家賃を設定するのか?

借上社宅の従業員負担額には、
すべての会社に共通する一律の正解があるわけではありません。
 
会社によって、
 ・制度を設ける目的
 ・対象となる従業員
 ・会社が負担できる費用
 ・地域ごとの家賃相場
 ・採用や転勤支援の必要性
 ・税務・社会保険上の影響
 ・既存の社宅規程や給与制度
などが異なるためです。
 
そのため、実務では、次のような流れで検討することが考えられます。
① 制度目的を確認する

② 会社負担の対象範囲を整理する

③ 従業員負担の対象範囲を整理する

④ 所得税上の賃貸料相当額との関係を確認する

⑤ 社会保険上の住宅現物給与価格との関係を確認する

⑥ 家賃上限や超過分の取扱いを決める

⑦ 社宅規程へ反映する

⑧ 給与控除や現物給与の処理方法を整える

⑨ 従業員へ説明・周知する

例えば、従業員負担額を市場家賃の30%とする場合でも、その割合だけを
決めて終わりにするのではなく、
 ・賃貸料相当額の50%以上となるか
 ・社会保険上の現物給与額が発生するか
 ・家賃上限を超えた部分は誰が負担するか
 ・共益費や駐車場代を含めるか
 ・給与から控除する金額と規程が一致しているか
などを確認することが重要です。
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
 
また、従業員負担額を高く設定すれば、税務・社会保険上の差額を
抑えやすくなる可能性があります。
 
しかし、負担額を高くしすぎると、
 ・福利厚生としての魅力が弱くなる
 ・従業員の生活負担が大きくなる
 ・採用や定着への効果が低下する
 ・制度の利用者が減少する
ことも考えられます。
 
一方で、従業員負担額を低く設定すれば、福利厚生としての魅力は高まり
やすくなりますが、税務・社会保険上の影響や会社負担の増加を確認する
必要があります。
 
したがって、税務・社会保険上の影響を抑えることだけが、
家賃設定の唯一の目的ではありません。

制度目的、会社負担、従業員負担、採用力、運用のしやすさなどを含めて、総合的に検討することが大切です。
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方


9.■ 主なチェック項目

借上社宅の家賃設定を検討・見直しする際には、次のような項目を確認することが考えられます。
 
制度設計に関する項目
借上社宅制度の目的が明確か
対象者の範囲が明確か
会社負担の範囲が決まっているか
従業員負担の範囲が決まっているか
家賃上限が設定されているか
上限超過分の取扱いが決まっているか
共益費、駐車場代、更新料等の取扱いが明確か
 
所得税に関する項目
賃貸料相当額の考え方を確認しているか
従業員負担額との関係を確認しているか
役員社宅と従業員社宅を区別しているか
計算に必要な資料を確認できるか
固定資産税課税標準額等の更新状況を確認しているか
 
社会保険に関する項目
住宅現物給与価格を確認しているか
従業員負担額との差額を確認しているか
都道府県単価の更新を反映しているか
住宅の面積情報を確認できるか
 
規程・運用に関する項目
社宅規程に負担額の決め方が記載されているか
規程と実際の給与控除額が一致しているか
従業員ごとの差異に説明可能な理由があるか
例外運用が常態化していないか
 
借上社宅の家賃設定では、金額そのものだけではなく、
なぜその金額にしているのかを制度として説明できる状態にすること
重要です。


10.■ よくある誤解

「市場家賃の50%を徴収すれば問題ない」
市場家賃の50%を徴収しているからといって、所得税と社会保険のすべての問題が解消されるとは限りません。
所得税では賃貸料相当額、社会保険では住宅現物給与価格という別の基準が使用されます。
 

「賃貸料相当額以上を徴収しなければならない」
一般的な従業員向け社宅では、従業員負担額が賃貸料相当額の50%以上で
ある場合、給与課税されない取扱いとなることがあります。
必ず賃貸料相当額の全額以上を徴収しなければならない、という意味では
ありません。
ただし、役員社宅や特殊なケースでは取扱いが異なる場合があります。
 

「所得税上問題がなければ、社会保険も問題ない」
所得税と社会保険では、住宅を評価する基準が異なります。
所得税上は給与課税が生じない場合でも、社会保険上は現物給与額が発生
することがあります。
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方
 

「従業員負担額を高くすれば、それが最もよい制度になる」
従業員負担額を高くすると、税務・社会保険上の差額を抑えやすくなる
可能性があります。
一方で、福利厚生としての魅力や従業員の生活負担にも影響します。
家賃設定は、制度目的や採用・定着への効果も含めて考えることが重要
です。
 

「社宅規程に金額を書いておけば十分」
社宅規程に金額や算定方法を定めることは重要です。
ただし、規程が存在するだけで、税務・社会保険上の取扱いが自動的に
決まるわけではありません。
🏢 会社目線で知りたい方
 
規程の内容、実際の運用、給与控除、対象者、契約関係などが一致しているかを確認する必要があります。


11.■ まとめ

借上社宅の家賃設定は、単に市場家賃の何%を従業員へ負担させるかという問題ではありません。
 
家賃設定には、
 ・所得税上の賃貸料相当額
 ・社会保険上の住宅現物給与価格
 ・会社負担と従業員負担の範囲
 ・家賃上限や上限超過分の取扱い
 ・社宅規程
 ・給与控除の方法
 ・福利厚生としての魅力
など、複数の要素が関係します。
 
特に重要なのは、
所得税と社会保険では異なる基準が使用されていることです。
 
一般的な従業員向け社宅の所得税上の取扱いでは、
賃貸料相当額と従業員負担額との関係が確認されます。
 
一方、
社会保険では、住宅現物給与価格と従業員負担額との差額が
現物給与額として取り扱われる場合があります。
 
そのため、同じ従業員負担額であっても、
所得税上と社会保険上で異なる結果になることがあります。
 
また、家賃設定を考える際には、税務・社会保険上の影響を抑えることだけを目的にするのではなく、
 ・なぜ借上社宅制度を設けるのか
 ・会社はどこまで負担するのか
 ・従業員にどの程度の負担を求めるのか
 ・福利厚生としてどのような価値を提供するのか
という制度目的を整理することが大切です。
 
そして、決定した内容については、社宅規程や給与処理へ反映し、
実際の運用と一致させる必要があります。
 
「何%なら安全か」ではなく、「税務・社会保険・制度目的との関係を
踏まえて、なぜこの金額にしているのかを説明できるか」

これが、借上社宅の家賃設定を考えるうえで重要な視点です。
 
さらに、2026年10月には、社会保険上の住宅現物給与評価方法の見直しが
予定されています。
 
現在の従業員負担額を変更する必要があるかどうかは会社ごとに
異なりますが、少なくとも、
 ・改正後の住宅現物給与価格
 ・現在の従業員負担額
 ・影響を受ける従業員
 ・給与システムや運用方法
 ・社宅規程との整合性
を確認しておくことが重要です。
 
借上社宅の家賃設定は、一度決めれば終わりではありません。
 
制度改正、家賃相場、会社の人事方針、従業員構成などの変化を踏まえ、
制度目的に沿った設定となっているかを継続的に確認することが、
安定した制度運用につながります。
 
 
[参考]借上社宅制度の税務上の課税リスクを確認したい方は、こちらの記事もおすすめです。
【第7回:借上社宅で課税されるケースとは?】
⚖ 税務・社会保険を詳しく知りたい方


次回予告
次回は
「借上社宅は社会保険料に影響するのか?」
について整理していきたいと思います。


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■ 本シリーズについて
借上社宅制度は、税務・社会保険・規程設計など、
複数の論点が関係する制度です。
そのため、同じように見えるケースでも、
前提条件や制度設計によって整理の方向性が変わることがあります。

本シリーズでは、
制度理解や実務整理の参考となるよう、
全体像をできるだけ分かりやすく整理して発信しています。

現在は情報発信を中心としていますが、
今後は制度運用に関する実務上のコミュニケーションの場も
広げていければと考えています。

なお、記事テーマに関するご質問やご感想があれば、
コメント等でお寄せいただけますと、
今後の発信の参考にさせていただきます。


著者
Yoshihiko Tagawa|借上社宅制度の研究家

借上社宅制度について、制度運用や社宅管理の観点から
情報整理・発信を行っています。

毎月3000戸超の社宅運営に携わる中で、
借上社宅制度の運用面・管理面に関する情報整理を行ってきました。

本noteでは、借上社宅制度に関する一般的な仕組みや運用上の考え方を
情報整理を目的としてまとめています。
借上社宅制度にはメリットがある一方で、
運用方法や会社ごとの事情によって、税務・労務上の取り扱いが異なる場合があります。

中小企業の制度理解や運用整理に役立つ視点で発信しています。


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