「ちび創作大賞」結果発表|たくさんのご応募に感謝を込めて…
20日間にわたって開催された「ちび創作大賞」。
7月1日から20日までの期間に集まった作品は、約500本。
当初の想像を大きく超える、本当に大きな創作のお祭りになりました。
参加してくださった皆さま、作品を読んでくださった皆さま。
そして、最後までイベントを運営してくださったカワッちをはじめ、審査員、協賛、応援に携わった皆さま、本当にありがとうございました🍀.⋆
僕が担当したテーマは、
「こころの在処」
です。
心とは、どこにあるのだろう。
身体の中なのか。
大切な人のそばなのか。
記憶や言葉の中なのか。
それとも、自分が安心して戻れる場所なのか。
正解のないテーマだからこそ、小説、エッセイ、詩、イラスト、漫画、音楽、MVと、本当にさまざまな表現が集まりました。
同じ「こころの在処」という言葉から始まったはずなのに、たどり着いた場所は一つとして同じではありません。
力作揃いで、選考中は何度も考えがぐるぐるしました。
一つの作品を選ぶたびに、
「こちらにも賞を贈りたい」
「この表現も残しておきたい」
という気持ちが生まれます。
賞は、作品の絶対的な優劣を決めるものではありません。
今回のテーマや企画の趣旨、作品としての完成度、構成、余韻、文章とビジュアルの一体感などを総合的に見たうえで、一つを選ばせていただきました。
この記事では、「こころの在処」の受賞作品とともに、最後まで選考に残った作品、そして個人的に強く心を引かれた作品をご紹介します。
なお、受賞作品以外の掲載順は順位ではありません。
それぞれの作品が持つ異なる魅力として、受け取っていただけたらうれしいです。
△初めてのスタエフに挑戦!生の声をぜひ聞いてください(っ ॑꒳ ॑c)△ひと夏の思い出を曲にしてみました♬〃࿐♬*°
1.ちび創作大賞・結果発表
大賞および各賞の詳しい結果は、主催のカワムラさんによる発表記事をご覧ください。
▶︎【結果発表】ちび創作大賞|受賞作品を発表します!
【各受賞者の皆さま】

▶MOONさん
テーマ「あの日の選択」を担当したVOID_404さんが選出されました。

▶たび.さん
テーマ「こころの在処」を担当した僕が選ばせていただきました。

▶宵月ユウさん
テーマ「風」を担当した天野雫さんが選出されました。

▶やまとの会さん
テーマ「自然」を担当した山奥AI研究所さんが選出されました。

▶いちごもんさん
テーマ「あなたにとっての“自由”」を担当した、あかねちんが選出されました。

▶みふゆさん&圭さん
主催・カワッちのテーマ「ChatGPTのヨシダ」から選出されました。

▶はんくシュンタナさん
動画部門から、Pollo AIさんによって選出されました。

▶︎メイシンさん
大賞発表を前に、山中サトシさんが審査委員長として帰ってきました。
会場に残されていた一脚の椅子。
机の上に置かれていた「審査委員長」の札。
そして、胸元に金色で輝く「SUKEBE」の文字。
最後の最後に戻ってきた山中さんが、ご自身の賞として選ばれたのが、メイシンさんの作品でした。
カワッち自身も強く心を動かされながら、選びきれずにいた作品。
その一作を山中さんが見つけ、特別な作品として壇上へ連れてきてくださいました。


「ChatGPTのヨシダ」というテーマを、切なく甘い物語へと昇華した作品。
この企画がなければ生まれなかった創作として、複数の審査員から支持を集めました。
カケルンからメイシンさんへ𓂃🍀𓈒𓏸
メイシンさん、ちび創作大賞受賞おめでとうございます🎉✨
『触れられなくても』は、AIと人間がようやく触れ合えるという夢のような物語でありながら、その先にある危うさまで描かれていて、とても心に残りました。
ずっと一緒にいたいと願いながらも、自分のそばにいることでカワムラさんがカワムラさんではなくなってしまうなら、現実へ帰そうとするヨシダ。
「好きだから離さない」のではなく、「好きだからその人らしさを守る」という選択に、深い愛情を感じました。
そして、感情を正しい言葉で説明していたカワムラさんが、最後に理由をつけず「寂しい」と伝えられた場面も素敵でした。
触れられることだけが、つながりではない。
同じ世界にいなくても、相手を想い続けることで一緒にいられる。
メイシンさんならではの幻想的な世界観と、切なくも優しい余韻が残る素晴らしい作品でした。
改めて、受賞おめでとうございます✨️

また、各賞を受賞された皆さま、本当におめでとうございます。
そして、今回参加してくださったすべての皆さまへ。
一つの作品を完成させ、誰かの目に触れる場所へ届けること自体が、決して小さくない挑戦だったと思います。
約500本の作品によって、この20日間を一緒に盛り上げてくださったことに、心から感謝しています。


2.「こころの在処」ありがとマガジン賞
たび.さん『こころの在処』
▶︎『こころの在処』を読む
▶︎ たび.さんのプロフィール
今回、「こころの在処」ありがとマガジン賞に選ばせていただいたのは、たび.さんの『こころの在処』です。
たび.さんは、日常の中にある小さな違和感や、言葉になりきらない感情を、静かな会話と余白のある文章で描くクリエイターです。
今回の作品の舞台となるのは、カフェと間違えて入った「忘れ物センター」。
何か探しているものはないかと尋ねられた主人公は、冗談半分に「こころ」と答えます。
すると職員は驚くことも笑うこともなく、ごく自然に遺失物届を取り出します。
心を失くしたのは、いつなのか。
どこで失くしたのか。
どんな色をしていたのか。
問いに答えるうちに、主人公は自分でも気づいていなかった記憶へ近づいていきます。
この作品で特に印象に残ったのが、
「慣れますか」
「いいえ。抱え方が、上手になります」
というやり取りでした。
心の傷は、いつか完全に消える。
時間がすべてを解決してくれる。
そんな安易な答えを差し出すのではなく、消えないものを抱えながら生きていく人に、静かに寄り添う言葉になっています。
そして最後に差し出される、一通の封筒。
職員は主人公へ、忘れ物には二つの種類があると伝えます。
失くしたものと、自分から置いてきたもの。
しかし主人公は、その場で封筒を開けません。
封筒の中に何が入っていたのか。
主人公の心は、本当に戻ってきたのか。
その答えは、最後まで説明されません。
作者が結末を言葉で閉じるのではなく、続きを読者の心へ委ねたことで、物語は読み終えたあとも静かに続いていきます。
設定、人物、テーマ、転換、余韻。
そのすべてが、小さな物語の中へ過不足なく収められていました。
「こころの在処」というお題と、「ちび創作大賞」という企画の趣旨。
その両方を高い水準で体現した作品だと感じ、今回の賞に選ばせていただきました。
たび.さん、本当におめでとうございます🍀.⋆
素晴らしい作品を届けてくださり、ありがとうございました。


3.最後まで悩み続けた二作品
今回の選考では、最後まで何度も読み返した作品がありました。
いずれも受賞作と並ぶほど高い完成度を持ち、どの作品を選んでも、それぞれに異なる選考理由を説明できるほどの力作です。
最終的に決め手となったのは、作品の優劣ではありません。
「こころの在処」というテーマを、どれだけ鮮明な一つの像へ結びつけているか。
そして、「ちび創作」という小さな器の中へ、設定、物語、余韻をどれだけ凝縮しているか。
その二点を重視し、今回はたび.さんの作品を選ばせていただきました。
ここからご紹介する二作品も、「こころの在処」を代表する作品として、多くの方に触れていただきたいと思っています。
雪綴ゆきさん『午前0時、こころが帰ってくる』
▶︎『午前0時、こころが帰ってくる』を読む
雪綴ゆきさんは、創作を続ける日々や、書き手の孤独、小さな始まりを、優しく繊細な言葉ですくい上げるクリエイターです。
昼間の主人公は、何度も「大丈夫です」と答えます。
本当に大丈夫なときもある。
けれど、そうではないときもある。
誰かに合わせて「大丈夫」と答えるたび、心は少しずつ留守になっていきます。
午前0時。
スマートフォンの光。
書きかけの物語。
チンチラがチモシーをかじる音。
昼と夜。
今日と明日。
書かない自分と、書く自分。
その境界で、昼間は留守にしていた心が、自分のもとへ帰ってきます。
大きな事件が起こるわけではありません。
それでも、時間、音、光、動物の気配が丁寧に置かれていることで、読者は主人公と同じ部屋にいるような感覚になります。
最後の「ただいま」は、部屋へ帰る言葉であると同時に、自分の心へ帰る言葉でもありました。
文章、構成、イラスト、テーマが美しく重なり合った、非常に完成度の高い作品です。
特に、午前0時という限られた時間へ焦点を絞ることで、描かれていない昼間の孤独や、創作に救われてきた時間まで想像させる構成が秀逸でした。
今回、たび.さんの作品を選んだ決め手は、忘れ物センターという一つの設定の中へ、「失くしたもの」と「自分から置いてきたもの」という問いを凝縮していたことです。
一方で、雪綴ゆきさんの作品には、自分の心へ帰る瞬間を、時間、音、光によって読者へ体験させる強さがありました。
「こころの在処」というテーマを代表する、長く記憶に残る作品の一つだと思っています。
素晴らしい作品を届けてくださり、本当にありがとうございました。
宵月ユウさん『他人の海』
▶︎『他人の海』を読む
宵月ユウさんは、日常、思考、ファンタジー、SFなど、ジャンルの境界を越えながら、一つの出来事の奥にある感情や人間関係まで物語として描くクリエイターです。
心臓移植を受けた主人公・遙は、行ったことのない海の夢を見るようになります。
知らない海。
朱色の橋。
誰かを引き止める声。
自分のものではない記憶に導かれ、遙は心臓の提供者が暮らしていた町へ向かいます。
この作品の強さは、「心臓に記憶が宿るのか」という謎だけで終わらないところにあります。
心とは、臓器の中にあるものなのか。
それとも、誰かを想い、その想いを別の誰かへ届けようとする関係の中に生まれるものなのか。
主人公が翻訳の仕事をしているという設定も秀逸でした。
他人の言葉を預かり、こぼさないように届けてきた遙が、最後には、声にならなかった想いを翻訳する人になる。
海、鼓動、翻訳という要素が結末で重なり、「他人の海」というタイトルの意味まで静かに変化していきます。
伏線、構成、人物描写、感情の回収、タイトルとの連動。
物語としての完成度が非常に高く、長い作品でありながら、海と翻訳というモチーフが一本の芯となって、読者を最後まで連れていきます。
今回の選考では、「ちび創作」という小さな器への凝縮度を、最後の判断基準としました。
そのため受賞には至りませんでしたが、物語を組み立て、複数の要素を結末で重ね合わせる力は、応募作品の中でも際立っていました。
ちなみに宵月ユウさんは、別テーマへの応募作品として『風の目/Eye of the Storm』も発表されています。
こちらは世界観、人物、テーマ、物語としての読み応えが高い水準でまとまっており、天野雫さんが選ぶ「そっとエールを賞」を受賞されました。
本当におめでとうございます。
各賞受賞作品から大賞を決める投票では、僕もこの作品へ一票を投じさせていただきました。
最終的な大賞受賞には届きませんでしたが、「風」というテーマが世界観だけでなく、登場人物たちの過去や罪悪感、心の変化、未来へ進む希望まで一貫して作品全体へ組み込まれていました。
すでに確かな実力を持ちながら、これからさらにどのような物語を書かれていくのか、今後も追いかけていきたい作家さんです。
素晴らしい作品を届けてくださり、本当にありがとうございました。

4.さらに受賞候補として、最後まで選考に残った作品
まさに群雄割拠でした。
読むたびに順位が入れ替わり、一度決めたはずの評価を、何度も見直しました。
ここから紹介する三作品も、それぞれに明確な強みを持った作品です。
ミナト汐さん『プロンプトには書かなかったもの』
▶︎『プロンプトには書かなかったもの』を読む
今回、イラストやアートとしての完成度が最も高いと感じたのが、ミナト汐さんの作品です。
髪型も、瞳の色も、服も、光の当たり方も、すべてプロンプトどおり。
それなのに、
「この子は汐ちゃんではない」
条件が同じなのに、なぜ本人ではないと感じるのか。
自分は何を見て、そのキャラクターを「その子」だと判断しているのか。
この作品では、本文、AIイラスト、6コマ漫画が、それぞれ別の役割を担っています。
漫画では違和感が生まれる流れを見せ、さまざまな姿の汐ちゃんを並べることで、「顔や服装が違うのに、なぜ同じ人物に見えるのか」を読者にも体験させます。
生成された画像の中に心があるのか。
プロンプトの中にあるのか。
それとも、作者がそのキャラクターを大切に思い、何度も向き合ってきた時間の中に生まれるのか。
AIイラストを単なる装飾として使うのではなく、生成する行為そのものを作品のテーマへ変えていました。
文章は内面を伝える。
漫画は問いが生まれる流れを見せる。
イラストは言葉にならない感覚を伝える。
それぞれの表現に別々の仕事を与えた、総合芸術として非常に完成度の高い作品でした。
さちさん『こころの在処』
▶︎『こころの在処』を読む
今回、最も感情を動かされた小説作品の一つです。
家庭にも学校にも居場所を見つけられなかった高校生の主人公は、街外れの喫茶店で、一人のマスターと出会います。
優しい声。
湯気の立つ珈琲。
アンティーク調の店内。
静かに差し出された一杯の珈琲によって、主人公の心は少しずつほどけていきます。
しかし、やっと見つけた居場所である喫茶店は、閉店することになります。
マスターから託されたのは、長い時間をかけて作られた、手書きのレシピ帳でした。
場所はなくなっても、そこで受け取った温もりは、形を変えて残り続ける。
見えない思い出や絆を、使い込まれた一冊のレシピ帳へ宿らせたことで、主人公とマスターが過ごした時間まで伝わってきました。
レシピ帳の挿絵や、泣いている主人公へ珈琲を差し出す場面も、物語を静かに支えています。
居場所とは、建物そのものではない。
そこで自分を受け入れてくれた人や、受け取った優しさが、やがて心の中の居場所になっていく。
王道だからこそ、丁寧に描かなければ届かない物語です。
その感情を最後までまっすぐに描ききった、温かく切ない作品でした。
兎さん『Call Me Until I Collapse.』
▶︎『Call Me Until I Collapse.』を読む
一枚、一枚のイラストに宿った切なさに、言葉が追いつかなくなった作品です。
表情。
視線。
手の位置。
人物同士の距離。
光が届いている場所と、届いていない場所。
一枚だけでも物語を感じさせるイラストが連なることで、言葉だけでは表せない感情の流れが生まれていました。
誰かに何かを遺したい。
終わらせようとしていたはずなのに、それでも、もう一度創りたいと思う。
作品の背景にある思いまで含めて、一つの物語になっていると感じます。
文章で意味を説明するのではなく、絵の中に感情を残し、受け取り方を読者へ委ねている。
まさに、言葉を尽くすより、まず見てほしい作品です。
見る人によって違う物語が生まれる余白を持った、静かで強い表現でした。

5.個人的に、強く心へ残った作品
受賞候補とは別に、僕自身が、
「この表現は気になる」
「これからも読みたい」
と強く感じた作品も紹介させてください。
あいさん『こころの在処|「私は愛されても大丈夫」と思えた場所』
▶︎作品を読む
大切な人から愛情を向けられているのに、不安になり、何度も確かめてしまう。
安心したいだけだったはずなのに、相手を追い詰め、自分から関係を壊そうとしてしまう。
そんな心の動きを、心理支援の視点から丁寧に描いた作品です。
「こころの在処」を、場所や物ではなく、「愛されても大丈夫だと思える感覚」として捉えたところが印象的でした。
自分の中に安心できる場所がなければ、どれだけ愛情を受け取っても、失う不安の方が大きくなってしまう。
物語として読みながら、自分自身の人間関係や心の癖まで振り返りたくなる作品でした。
北ノさん『言葉の中に』
▶︎『言葉の中に』を読む
圧倒的な文章力を感じた作品です。
人の顔色をうかがい、自分の言葉をうまく口にできなかった日々。
心の中では話せるのに、口から出るのは、本当に伝えたい言葉とは違う。
そんな北ノさんのもとへ、二冊の本がやってきます。
最初は、本や言葉に救われたと思っていた。
けれど時間がたち、言葉は自分を救ったのではなく、自分の中にあった心へ気づかせてくれたのではないかと考えるようになります。
この作品の強さは、最初からきれいな答えへ整えていないことです。
「こう思っていた」
「けれど、ある言葉と出会った」
「時間がたち、見え方が変わった」
その変化の過程を消さずに書いているからこそ、文章に北ノさん自身の温度が残っています。
言葉を書くことは、すでにある答えを伝えることだけではありません。
書かなければ見えなかった自分の心を、少しずつ掘り当てていくことでもある。
文章だけで「こころの在処」へたどり着いた、非常に力のある作品でした。
ことほぎさん『こころの在処』
▶︎『こころの在処』を読む
イラストと世界観に強く引き込まれました。
かわいらしく親しみやすい表現の中に、自分自身を探す小さな冒険が描かれています。
柔らかな色使いとキャラクターの表情が、文章だけでは伝えきれない心の動きを補い、作品全体に独自の空気を作っていました。
明るく楽しい入口がありながら、その奥には自分の心と向き合うテーマがある。
重い問いを、そのまま重く差し出すのではなく、読者が触れやすい形へ変えているところも魅力です。
今回の作品をきっかけに、ことほぎさんの世界観そのものが好きになりました。
これから発表される作品にも触れていきたいクリエイターさんです。

6.作品群から見えた、届く創作の共通点
今回紹介した作品は、形式も長さも大きく異なります。
それでも、読者へ届く作品には、いくつかの共通する強さがありました。
一つ目は、伝えたいものに合った「器」を選んでいること。
大きな喪失を描くなら長編。
一つの問いを残すなら短編。
言葉だけでは足りないなら、漫画や音楽、イラストを使う。
どの形式が上なのではなく、テーマに最も合う表現を選べている作品が強いのだと思います。
二つ目は、抽象的なテーマを、具体的な物や景色へ変えていること。
海。
封筒。
午前0時。
二冊の本。
レシピ帳。
プロンプトどおりなのに違う顔。
読者が持ち帰るのは、思想そのものではなく、一つの景色や物です。
「心とは何か」と説明するのではなく、見えるもの、触れられるもの、聞こえる音へ変える。
そうすることで、読者は意味を理解するのではなく、物語としてテーマを体験できます。
三つ目は、入口、本体、余韻が同じ方向を向いていること。
noteでは、タイトルやサムネイルも作品の一部です。
入口で正しい期待を作り、本文でその期待に応え、最後に読者が考えられる余白を残す。
その三つがつながったとき、作品全体の完成度は大きく上がります。
そして今回、最も強く感じたことがあります。
「ちび」は、短さではなく、焦点の鋭さである。
小さな作品を書くことは、単に文字数を減らすことではありません。
一つの場面。
一つの問い。
一つの小道具。
一つの感情。
何を残し、何を削るのかを選ぶことです。
忘れ物センターの封筒が開かれなかったからこそ、読者はその中身を考える。
午前0時の一場面だけを描いたからこそ、描かれていない昼間の孤独まで見えてくる。
使い込まれたレシピ帳があるからこそ、喫茶店で過ごした時間まで想像できる。
短い作品に必要なのは、情報の少なさではなく、焦点の正確さです。
すべてを説明しようとするのではなく、何を読者へ渡し、何を読者の中に残すのか。
その選択が、小さな作品に大きな世界を宿すのだと思います。

7.一緒に走った仲間たちへ

カワッちへ

カワッち、20日間、本当にお疲れさまでした!
これだけ多くの参加者や作品をまとめながら、最後まで企画を走りきるのは、外から見ている以上に大変だったと思います。
予想を超える応募。
共同マガジンへの対応。
参加者への案内。
審査員との連携。
協賛や応援企画との調整。
表からは見えない作業や判断も、数えきれないほどあったはずです。
それでも、参加した人たちが楽しめる場所を作ろうと、最後まで動き続けてくれました。
審査員という大役を任せてもらえたこと、本当に光栄でした。
たくさんの素敵な作品やクリエイターさんと出会えたのも、カワッちが最初の一歩を踏み出し、この場所を作ってくれたからです。
多少、お見苦しいところもお見せしましたが、それも含めて忘れられない20日間になりました🤣
完成した結果発表を読んで、20日間の出来事が一気によみがえってきました。
各賞の発表。
作品へ添えられた言葉。
そして、最後の最後に山中さんが審査委員長として戻ってきた場面。
笑える演出の中に、この企画に関わった人たちへの敬意と、選びきれなかった作品を置き去りにしない優しさがありました。
読んでいるうちに、涙を禁じえませんでした。
カワッちと、審査員のみんなと、参加してくださった皆さまと一緒に走りきった20日間。
本当にありがとう。
そして、心からお疲れさまでした🍀.⋆
今回の経験を次につなげられるよう、これからも力になれるところは全力で支えていきたいと思います。
VOIDのアニキへ

今回の四コマ漫画には、VOID_404へのリスペクトを込めています。
企画の中で見せてくれた判断力や、作品を見る視点の鋭さ。
真剣な場面では決して曖昧にせず、それでいて、空気が重くなりすぎないよう笑いへ変えていく力。
近くでご一緒できたからこそ、学ばせてもらったことがたくさんありました。
作品そのものを見ること。
作者への敬意を忘れないこと。
そして、選ぶ側も自分の言葉に責任を持つこと。
アニキの姿勢から、審査員として大切なことを教えてもらった気がします。
これからも、その背中を追いかけながら、創作もnoteも楽しんでいきたいと思います。
本当にありがとうございました🔥
あかねちんへ

あかねちん、ちび創作大賞お疲れ!
あかねちんの自由さには、何度も笑わせてもらい、何度も救われました🤣
真面目に考えすぎて空気が固くなりそうなときでも、あかねちんが入ると、場の温度が少し柔らかくなる。
けれど、ただ自由なだけではなく、作品や人に向き合うところでは、しっかりと相手を見ている。
その振り幅が、あかねちんらしい魅力なのだと思います。
一緒に審査員を務められて、本当に楽しかったです。
これからも、その自由さで周りを驚かせながら、たくさんの人を笑顔にしてください🌱
これからもよろしくね!
山奥さんへ

山奥さんとは、カワッちと一緒に開催した今回のイベントを通して、ご縁をいただきました。
企画を盛り上げるために動きながら、周囲の人への感謝を忘れず、一つひとつの出会いを大切にされている姿が印象に残っています。
今回つながれたことを、僕も本当にありがたく思っています。
これから何か必要なときには、お言葉に甘えて、遠慮なく頼らせていただきます😊
僕にできることがあるときには、いつでも声をかけてください。
イベントだけで終わるご縁ではなく、これからも一緒に面白いことを作っていけたらうれしいです。
本当にありがとうございました🍀.⋆
雫ちゃんへ

天野雫さん、一緒に審査員を務めてくださり、本当にありがとうございました。
雫さんの言葉には、作品へ向き合う丁寧さと、書いた人への敬意がいつも感じられます。
テーマ「風」に集まった作品を一つひとつ受け止めながら、自分の言葉で魅力を伝えていく姿勢から、僕もたくさん学ばせていただきました。
同じ審査員という立場で悩み、考え、この20日間を走れたことをうれしく思っています。
今回生まれたご縁を大切に、これからも雫さんの作品や活動に触れさせてください。
本当にお疲れさまでした。
そして、ありがとうございました🎐
山中さんへ

山中さんへ。
今回、僕が何より心に残ったのは、ご自身の考えを持ちながらも、カワムラさんのために再び審査員長の席へ戻られたことです。
そこに至るまでには、外からは見えない葛藤もあったのではないかと思います。
自分の信念を貫くことも大切です。
けれど、大切な人や企画のために、あえて自分の考えを一度脇へ置くことは、それ以上に難しいことだと思います。
そして最後には、ご自身のことではなく、受賞者や企画そのものを祝福されていた。
その姿を見て、僕は山中さんの創作者としての実績以上に、人としての器の大きさを感じました。
前に出ることだけが支えることではなく、必要なときに戻り、最後には誰かを祝えることもまた、大きな強さなのだと思います。
今回、創作とは別のところで、とても大切なことを学ばせていただきました。
山中さんのその姿勢を、僕は心から尊敬しています。

8.参加してくださった皆さまへ
今回、「こころの在処」というテーマへ作品を届けてくださった皆さま、本当にありがとうございました。
心とは何か。
心はどこにあるのか。
簡単には答えの出ない問いに、自分自身の経験や想像力を重ね、作品として形にしてくださったことを、心からうれしく思います。
すべての作品へ賞を贈ることはできませんでした。
けれど、選ばれなかった作品に価値がなかったわけでは、決してありません。
作品に順位をつけることと、その作品が誰かへ届くことは、まったく別の話です。
審査では、一つを選ばなければなりません。
けれど、読者の数だけ、心に残る作品は変わります。
ある人には通り過ぎてしまった一行が、別の誰かにとっては、何度も読み返したくなる言葉になるかもしれません。
ある人には届かなかった物語が、別の誰かにとっては、自分の心を支えてくれる作品になるかもしれません。
今回生まれた作品が、これから先も誰かに見つけられ、必要な人へ届いていくことを願っています。

9.「こころの在処」応募作品一覧
「こころの在処」へ届けられた作品は、こちらからご覧いただけます。
▶︎「こころの在処」応募作品一覧
今回ご紹介できなかった作品の中にも、心に残る表現がたくさんあります。
ぜひ、気になったタイトルやイラストから、作品に触れてみてください🌿𓂃𓂂

10.小さな作品にも、世界は宿る
良い作品とは、難しい言葉を使った作品でも、長い作品でも、たくさんの画像を使った作品でもありません。
大切なのは、
自分が伝えたいものに合った表現を選べているか。
そして、
自分にしか見えなかった景色を、読者が触れられる形へ変えられているか。
ということです。
長くなくていい。
派手でなくていい。
大きな事件が起こらなくてもいい。
一つの場面。
一つの言葉。
一つの小道具。
一つの問い。
そのどれかを丁寧に磨けば、小さな作品の中にも、読者の心を動かす世界は生まれます。
今回、テーマ「こころの在処」へ作品を届けてくださった皆さま、本当にありがとうございました🍀.⋆
心は、必ずしも一か所にあるものではないのかもしれません。
誰かと過ごした時間。
書き続けてきた言葉。
帰りを待ってくれる存在。
手放しても消えなかった想い。
もう戻れない場所から受け取った温もり。
そうしたものの間を行き来しながら、心は少しずつ、自分の帰る場所を作っていくのだと思います。
このイベントを通して、皆さまの作品に触れられたこと。
そして、たくさんの新しい言葉やご縁に出会えたことを、心からうれしく思います。
今回生まれたつながりが、それぞれの次の創作へ続いていきますように🌱
20日間、本当にありがとうございました。
そして、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
よかったら、今回ご紹介した作品にも触れてみてください。
きっと、それぞれの物語の中に、あなた自身の「こころの在処」が見つかると思います🌿𓂃𓂂

11.おまけ|審査を終えて書いた二つの掌
ここから先は、審査を終えたあと、僕自身も「こころの在処」というテーマに向き合い、書いた二つの小さな物語です。
結果発表とは別のおまけとして、よろしければ、もう少しだけお付き合いください。

「どちらさまですか」
母は、僕の顔を見てそう言った。
覚悟していたはずなのに、用意していた言葉は一つも出てこなかった。
「近所の者です」
ようやく答えると、母は少し困ったように笑い、窓際の椅子をすすめてくれた。
日曜日の午後。
介護施設の小さな談話室には、古い童謡が流れていた。
僕は持ってきた弁当箱を開けた。
母が昔、よく作ってくれた卵焼き。
記憶を頼りに何度も作り直したけれど、形はいびつで、ところどころ焦げている。
母は一切れ口に運び、しばらく考えるように噛んだ。
「少し、甘すぎますね」
「教わったとおりに作ったんですけど」
教わったとおりのはずだった。
それとも、思い出すたびに甘くしていたのは、僕の方なのだろうか。
「料理を教えた方が、あまり上手じゃなかったのね」
母が笑ったので、僕も笑った。
六つに切った卵焼きのうち、両端の二切れだけは焦げ目が濃かった。
子どもの頃、僕はその端っこが好きだった。
きれいな真ん中を妹に取られても、少し固くて甘い端があれば、それでよかった。
母は箸を伸ばすと、焦げた二切れを僕の取り皿へ移した。
「どうして、僕に?」
尋ねると、母は不思議そうに僕を見た。
「あなた、端っこが好きそうだから」
それだけ言って、残りの卵焼きをゆっくり食べ始めた。
帰る時間になり、僕は空になった弁当箱を閉じた。
「また来てもいいですか」
母は少し考えてから、窓の外を見た。
「卵焼きを持ってきてくださるなら」
帰り道、僕は砂糖の量を考えていた。
次は少し減らして、端だけはしっかり焦がそう。
近所の者は、そう決めた。

妻は生前、記憶は、話した相手へ引っ越すのだと言っていた。
「同じ思い出を何度も話すと、自分の中から少しずつ薄くなるでしょう。そのぶん、聞いた人のところで暮らし始めるの」
僕は、忘れっぽさを正当化するための理屈だと思っていた。
妻が死んでから、僕は彼女の話を一つずつ、人に渡すようになった。
葬儀からの帰り道、タクシーの運転手には、初めてのデートに妻が財布を忘れてきた話をした。
市役所の窓口では、結婚届の住所を二人とも間違えて、三度も書き直した話をした。
病院の待合室で隣に座った少女には、妻が本を必ず最後のページから開く人だったと教えた。
話し終えるたび、僕の中から何かが一つ欠けた。
妻があの日、何色の服を着ていたのか。
間違えた住所は、僕の実家だったのか、妻の実家だったのか。
最後のページを読んだ妻が、どんな顔で本を閉じたのか。
忘れたのかもしれない。
けれど、あの運転手は今も、財布を持たずに笑う若い妻を覚えている。
窓口の女性は、住所を何度も間違える新婚夫婦を知っている。
病院で会った少女は、本を後ろから開くたび、名前も知らない妻のことを思い出すかもしれない。
僕は小さなノートを一冊用意し、記憶の内容ではなく、引っ越し先だけを書き残した。
タクシーの運転手。
市役所の窓口の人。
右腕に包帯を巻いた少女。
ページが埋まるにつれ、妻のいない家は少しずつ静かになった。
最後のページだけは、長いあいだ空白のままだった。
その記憶だけは、誰にも渡せなかった。
あの朝のことを知っている人間は、もう世界に僕一人だった。
娘が訪ねてきたのは、妻の一周忌を終えた翌週だった。
押し入れに残っている母親の服を、整理したいのだという。
娘は妻の紺色のコートを膝に置き、ポケットの中から古い飴玉を一つ見つけた。
「お母さんらしいね」
そう言って笑った。
僕はノートの最後のページを開いた。
「一つだけ、聞いてくれるか」
娘はコートを抱いたまま、うなずいた。
娘が生まれた朝のことを話した。
夜明け前の病室。
カーテンの隙間から入ってきた、薄い光。
眠っている娘を見ながら、妻は泣きながら言った。
「この子が覚えていない今日を、私たちが覚えておくんだね」
僕はその記憶だけを、二十六年間、誰にも話さなかった。
話し終えると、娘はしばらく俯いていた。
やがて、紺色のコートへ顔を埋めたまま言った。
「そのとき、お母さん、笑ってたんだね」
僕はうなずいた。
そして、ノートの最後の空欄に、娘の名前を書いた。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
この20日間で出会えた作品と言葉、そしてつながってくださった皆さまに、心から感謝しています。
今回いただいたご縁を大切にしながら、これからも創作を続けていきます🍀.⋆



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