【ちび創作大賞】午前0時、こころが帰ってくる
※本記事は、「#ちび創作大賞」への参加作品です。
カケルンさんのテーマ「#こころの在処」に
そっと想いを寄せて。ひとつの物語を紡ぎました。
午前0時、こころが帰ってくる
昼間のわたしは、よく「大丈夫です」と言う。
たぶん、一日に三回くらい。
ほんとうに大丈夫な日もあるし
そうでもない日もある。
午前0時。
部屋のあかりを消して、スマホの画面をひらく。
両手のなかに、ちいさな光が浮かぶ。
すぐそばのケージで
みーくんが起きだす気配がする。
チモシーをかじる音。
回し車が、ころころと回る音。
チンチラは夜明けと夕暮れに
目を覚ます生きものだという。
昼と夜のさかいめで、いちばん元気になる。
午前0時も、今日と明日のさかいめだ。
この子は、そんな時間を生きている。
そして、わたしの一日も
ほんとうはここからはじまる。
昼間、「大丈夫です」と言うたびに
こころは少しずつ、留守になっていく。
じゃあ、留守のあいだ
こころはどこにいるんだろう。
掌のなかの光を見つめていると
ふと、ひとつの記憶が重なる。
フォロワーがゼロだった、はじまりの夜。
ふるえる指で
はじめての「公開」を押した。
あのときも、起きていたのはこの子だけだった。
書かないわたしと、書くわたし。
あの夜、灯した小さな火は
消えないまま、いまもここにある。
こころの在処は、きっとここだ。
画面の光と、書きかけの物語と
チモシーをかじる音のあいだ。
文章に詰まって、指が止まる。
スマホを伏せると、部屋が少しだけ暗くなり
そのぶん、みーくんの音がよく聞こえる。
ケージに指を寄せれば
ひんやりした鼻先を、ちょんと当ててくる。
たったそれだけのことで
また指が動きだすから、ふしぎだ。
「ただいま」は、扉のさかいめで言う言葉だ。
……ただいま。
今夜も、こころはここにいます。
雪綴ゆき
わたしとnoteの物語は、こちらにも……✨

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