「病院事務のAI副業」 - 経験は、設計し直すと価値になる【実録vol.19】
現場に残っているものを、価値に変えられるか。
vol.18を出した夜、ベッドの中で目が冴えていた。
その問いだけが、ぐるぐると頭の中で繰り返されていた。
ココナラの画面を開いた。出品ページがある。でも問い合わせはない。収益は1,700円のままだ。
経験が武器だとわかった。AIには出せないものが現場に残っていた。
でも、残っているだけでは何も変わらなかった。
経験の再設計
自分の20年を、ただの病院事務の経験だと思っていた。
でも違った。
ある病院で、全員を敵に回した。旧体制が作り上げた楽園を壊す存在だった。
一緒に入ってきた人材は、旧体制に染められていった。差し入れをしろ。ご機嫌を取れ。言うことを聞け。そうやって取り込まれていった。
自分は染まらなかった。
なぜか。
ただ、本当に無駄が多いと思っていたからだ。みんな忙しいと言っている。でも業務を整理すれば負担が減る。誰もそこに疑問を持っていない。ただずっとこのやり方でやってきたからというだけだった。
掃除と同じような感覚だった。散らかっているから、片付ける。それだけだった。
だから染まれなかった。楽園に入る気がなかった。
経営層からの評価は低かった。
旧体制の人たちは経営層へのアプローチが上手かった。パフォーマンスも上手かった。自分はそんなことをしている場合じゃなかった。現場レベルから何とかしないと本当にヤバいと思っていたから。
だから経営層から見ると、旧体制に染まった人たちはすごく頑張っているように見えた。自分はいつも何をしているんだという評価だった。
やっていることを評価できる人間が、いなかった。
それでも動き続けた。
誰にも理解されない中で動いていた経験。染まらなかった経験。楽園を壊そうとした経験。評価されなかった経験。
それは全部、テキストとして存在しない。
AIには学習できない。再現できない。誰にも真似できない。
病院事務20年の経験を、AIと組み合わせられる時代になった。
自分にしか作れない、完全なオーダーメイドだった。
AIにできないことの正体
AIは膨大なテキストから、次に来る言葉を予測する仕組みで動いている。
だから何でも知っているように見える。でも実際には、テキストとして存在するものしか学べない。
知らないことを、知っているかのように自信満々に嘘をつくこともある。会話が長くなれば、前の方で言ったことを綺麗さっぱり忘れることもある。仕組み上、起きて当然のことだった。
現場の空気。人の感情の揺れ。その場の判断。それは誰も書き残していない。だからAIも知らない。言葉にできないものは、そもそも渡せない。
どれだけ精巧に指示を組み立てても、そこには届かない。手順を分けて教えても、例を見せても、役割を与えても。書き残されていないものは、どんな手を使っても出てこない。
AIがどんなに発達しても、その人の経験を全て読み込んだその人自身にはなれない。
プロンプトもAIが教えてくれる。手順もAIが教えてくれる。出力もAIがする。全てをAIに任せているなら、そこに「その人」はいない。AIという別の誰かが作ったものを、代わりに公開しているだけだ。
書き直した
思い切ってベッドから抜け出し、パソコンの電源を入れた。
ココナラの出品ページを開いた。
vol.1で書いた文言が、そのまま残っていた。
「元病院事務×AIで医療機関の業務マニュアルを作成します」
機能の説明だった。何ができるか。それだけだった。
vol.1で作ったマニュアルも見返した。
STEP 5、「紙運用への切り替え指示」。担当者の欄には「医事課リーダー」とだけ書かれていた。
何をするかは書いてあった。でも、誰が指揮を取るか。誰から、どの順番で動かすか。委託業者とどう関係を作っておくか。そこまでは書いていなかった。
vol.17で書いた。経験は武器だった。vol.18で書いた。AIには出せないものが現場に残っていた。
その経験を、マニュアルに戻した。
マニュアルに「指揮者の指定と権限」という章を新しく作った。
《書き加えたもの↓》


優先順位を決めた。誰が指揮者になるか。指揮者が現場に来るまでは、発見者が暫定的に動く。
指揮者が行うことも書いた。各部署への個別指示。一つの部署の対応が他部署にどう波及するかを踏まえた先回りの指示。
vol.17で実際にやったことだった。外来医師の責任者に指示を出した。看護師の責任者に指示を出した。検査部・放射線部・薬剤部にも。事務の中でも部署ごとに別々の指示を飛ばした。
あのとき体が勝手に動いていた判断を、初めて文字にした。
委託業者との連携も、新しい章を作った。
平時に困っていることを聞く。感謝を伝える。現場を理解しようとする。それが障害時の連携速度を決める。
vol.18で実際にやったことだった。声をかけるたびに肩をすくめていた人間。何度も足を運んで、距離を縮めた時間。あの経験を、誰でも実践できる形に書き直した。
出品ページの文言も書き直した。
ビフォー。
「元病院事務×AIで医療機関の業務マニュアルを作成します」
アフター。
「電子カルテが止まった瞬間、受付に数百人が押し寄せたことがあります。マニュアルがなかった現場で、指示を出せる人間がいませんでした」
《ココナラサービスページへのリンク↓》
機能の説明から、体験の一文に変わった。
vol.1で作ったものと、今作ったもの。同じ「マニュアル作成代行」という商品だった。
でも内容は別物になっていた。
経験を先に言葉にしてから、AIに組み立てさせた。同じAIを使って、同じ「マニュアル作成」という作業をして、出来上がったものが全く違った。
あなたの経験も、同じだ
誰でも持っている。
うまくいかなかった経験。理不尽な環境で動き続けた経験。誰にも理解されなかった経験。染まらなかった経験。
それはテキストにならない。AIには学習できない。どんなに発達しても、再現できない。
一般化できるものはAIで代替できる。でもその人が生きてきた道、積み重ねてきた経験、その瞬間の感情は、その人にしか持っていない。
それをAIと組み合わせたとき、初めて本物になる。
本物と偽物
AIに丸投げして作ったマニュアルは、一見きれいだ。でも、現場でトラブルが起きた瞬間に、1ミリも役に立たない。
経験を混ぜて作ったマニュアルは、荒削りでも、その瞬間に現場を救う。
AIに全て任せれば、誰でも同じものが作れる。それも一つの楽しみ方だ。でも、それは自分の力ではなく、AIの力だ。自分にしか作れないものを目指すなら、そこに自分の経験や技術がいる。
その人しか持っていないものを持ってAIを使う。そのときAIは初めて道具になる。その人が培ってきた経験や技術が、AIを本物にする。
ココナラの画面を閉じた。
最初に書いたvol.1の記事を読み返した。
「辞めて初めて、価値の出し方が違うと気づいた」
そう書いていた。
あのときは正しかった。でも、足りなかった。気づいただけでは、価値にならなかった。その経験を、AIより先に言葉にする必要があった。
vol.1のマニュアルと、書き直したマニュアル。違いは、それだけだった。
正直な現在地
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収益:1,700円
クラウドワークス:登録完了・案件待ち
ココナラ:ページ改善済み・問い合わせ待ち
X:フォロワー380人・広告ツールとして運用中
note:フォロワー950人・主戦場
有料記事:公開済み・全面アップデート済み
AIとのやり取り:工程ごとに分けて管理中
noteシリーズ:vol.19まで公開完了
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数字はまだ1,700円だ。外から見れば小さな一歩かもしれない。
でも、本物と偽物の差がわかった。
19回分、動き続けてきた。気づいて、直して、また動いた。その繰り返しだった。
たどり着いたのは、収益じゃなかった。自分の経験が、AIを本物にする材料だとわかったことだった。
ベッドの中でスマホの画面を眺めながら、ふと思った。 まだ道の途中だ。でも、もう迷わなくなった。
それだけは、確かだった。
(vol.20に続きます。)
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