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「病院事務のAI副業」 - AIにできないことは現場に残っていた【実録vol.18】

元病院事務のAI副業実録 — 第二部・経験の再定義



vol.17で、病院事務20年の経験が武器だと言えた。

でもわかっただけでは、何も変わらなかった。

経験とAIを両方持っている人間だけが、たどり着ける場所がある。そう書いた。


本当にそうなのか。病院事務の経験が、AIには出せないものなのか。

試してみようと思った。


「病院の現場を動かすには、どうすればいいか」


AIの答えはすぐに出てきた。

・ステークホルダーの特定と信頼関係の構築
・段階的な変革プロセスの設計
・抵抗勢力へのアプローチと合意形成
・成果の可視化による組織への浸透


反論の余地がなかった。全部正しかった。教科書通りだった。


でも何かが違った。




任せっきりにされた現場


フロント業務は全て委託していた。受付も、会計も、患者案内も、レセプトも。病院の事務職員は執務室内で、増収・経営改善・収納業務・診療報酬改定対応・統計業務・システム設定などを担っていた。専門知識がないからという理由で、委託業者に任せっきりだった。管理する立場にありながら、業務の実態を誰も把握していなかった。


だから口出しできない。口出しされないから、何十年もやり方が更新されない。


経営層がやっと危機感を覚えた。赤字経営の立て直しが必要だった。その一つとして、医事の専門知識と経験を持つ職員が必要だということになった。そこに自分がいた。




都合が悪い存在


最初から、両方に警戒された。


病院職員には、今までやってこなかったことが明るみになる。委託事業者には、わかる人間が入ってきてやりにくくなる。どちらにとっても、都合が悪い存在だった。


だからまず観察した。


誰が現場を動かしているか。誰が空気を作っているか。どこに問題があって、誰がそれを知っているか。綺麗ごとやデータだけでは見えないものが、現場にはあった。

委託事業者の責任者は、声をかけるたびに肩をすくめていた。また怒られると思っていたはずだ。無理もない。周りの職員の扱いは、なかなかのものだった。




声をかけ続けた


自分は声をかけた。困っていることはないか。世間話をした。敬語で話した。感謝した。

最初は怪訝な顔をされた。この人、何がしたいんだろう、という顔だった。

冷たかった。試されているような目だった。


それでも声をかけ続けた。


何度か話すうちに、表情が変わってきた。肩のすくめ方が、少しずつなくなっていった。あるとき、目が変わった。信頼というか、安心というか。暖かい目になった。

自分たちの業務をわかってくれる職員が、今まで一人もいなかった。それだけで、距離は縮まった。困ったことがあれば声をかけてくれるようになった。相談が来るようになった。


各セクションのリーダーから順番に、同じように関係を作っていった。




面白くなかった


そのやりとりを、職員側は面白くなかった。

一緒に入ってきた職員たちは、旧体制の職員からこう教わっていた。差し入れをしろ。お菓子を持って現場に顔を出して、ご機嫌を取れ。言うことを聞く人間は可愛がってもらえた。そうやって旧体制に染められていった。

知らないところでご飯に誘われていた。お土産が渡されていた。自分には声がかからなかった。お土産も来なかった。

差し入れもしない奴がどんどん信用を得ていく。面白くなかったはずだ。


別の反応もあった。


委託は委託の仕事、自分たちは自分たちの仕事。そう割り切っていた人たちがいた。なのに委託の現場に入っていって問題を持ち帰ってくる。委託の人たちが相談までしてくる。余計な仕事を増やすなという空気だった。




大きな輪


それでも動き続けた。


気づいたら、大きな輪になっていた。


委託業者の現場責任者から現場の一人ひとりまで。立場も年齢も関係なかった。

時間外に仕事以外の話で盛り上がることもあった。他の職員の名前は把握していなかった。でも委託の現場では、新人の子にまで名前を覚えられていた。

ただ、馴れ合いにはならなかった。向こうも立場をわきまえていた。敬意を払い続けた。不必要な距離は取らなかった。それだけだった。

自分の動き方を見て、変わっていく職員も現れた。ついてくる後輩や部下も出てきた。目の前の人の仕事を理解しようとした。敬意を持って接した。一つずつ問題を解決していった。


それだけで、人は動いた。




動き始めた現場


委託会社の責任者に話をしに行った。

何が問題で、どう変えるべきか。レセコンの会計画面を見せた。レセプトを見せた。査定や返戻の状況を説明した。ここがこうなっているから、ここが損になっている。

責任者の気持ちはわかっていた。怒られ続けてきた人間に、数字を突きつけてお前のやり方が悪いと責め立てたら、心を閉ざしてしまう。だから柔らかく、楽しげに話しに行った。


また喋ってるよ、という声がコソコソと聞こえてきた。


職員が呼び戻しに来ることもあった。上司ですら、あいつはいつも何をしているんだという目で見ていた。報告はしていた。でも理解できないから、評価されなかった。


それでも足を運び続けた。


言っていることがなかなか通じなかった。キャリアの長いベテランほど、今までのやり方に固まっていた。何度も角度を変えて説明した。とりあえずやってみようか、というところから始めた。


成果が出た。数字が動いた。

算定マニュアルが見直されていった。
ずっと更新されなかったマスターが見直された。算定漏れがなくなった。

その数字を見て、初めて上司の目が変わった。なんかよくわからんけど、ちゃんとやってるんだな。そういう目になった。

誰にも理解されない中で動き続けた。正論だけでは動かなかった。データだけでも動かなかった。現場の空気を読んで、信頼を積み上げて、足を運び続けたから動いた。


それだけだった。


その記憶が、スマホの画面を眺めている自分に戻ってきた。




正論には入っていなかった


AIが出した答えをもう一度読んだ。

信頼関係を築くこと。相手の立場を理解すること。段階的に進めること。


正しかった。全部正しかった。


でもその答えには、あの現場のドロドロした空気が入っていなかった。職員のプライドと妬みが入っていなかった。声をかけるたびに肩をすくめていた人間が目を変えるまでの時間が入っていなかった。また喋ってるよ、という声がコソコソと聞こえてきた、あの日々が入っていなかった。誰にも理解されないまま足を運び続けた時間が入っていなかった。上司の目が変わるまでの、あの長さが入っていなかった。


言葉にならない領域があった。


空気を読む。感情を見る。どこから手をつけるか判断する。どのタイミングで動くか決める。ドロドロした現実に合わせて、やり方を間引いて調整する。


それはマニュアルにも書けない。AIにも出せない。


現場にいた時間だけが、作っていたものだった。それはAIには渡せないものだった。

AIを使えば誰でも100点の正論が手に入る時代になった。でも正論を現実に落とし込む判断は、現場にいた人間にしか出せない。

現場に残っていた。
でも、残っているだけでは何も変わらなかった。

現場に残っているものを、価値に変えられるか。


それが、次の問いだった。




正直な現在地


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収益:1,700円
クラウドワークス:登録完了・案件待ち
ココナラ:ページ改善済み・問い合わせ待ち
X:フォロワー380人・広告ツールとして運用中
note:フォロワー900人・主戦場
有料記事:公開済み・全面アップデート済み
AIとのやり取り:工程ごとに分けて管理中
noteシリーズ:vol.18まで公開完了

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ではそれを、どう価値に変えるか。

次回、その話を書く。



(vol.19に続きます。)

👉シリーズ記事はマガジンにまとめてあります。



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