【北アルプス】常念岳東尾根|厳冬期23kmの持久戦、その先に見えた槍ヶ岳
はじめに
厳冬期の東尾根から、常念岳へ。
冬季限定でしか歩けない、距離23km・累積2,300m超のロングルートです。
2年前に歩いた爺ヶ岳東尾根の記憶がずっと残っていて、「次はここ」と決めていました。
常念岳東尾根は、派手なナイフリッジはありません。
けれど、長い。とにかく長い。
テクニカルというより、静かに削られていく持久戦ルートです。
その先に見えた槍ヶ岳は
条件がすべて揃った日だけ許される景色でした。
この記事では、
冬季東尾根の実際のコンディション
装備判断のタイミング
前常念岳〜山頂の核心ポイント
を実体験ベースでまとめます。
ちなみに、同じく冬季限定の東尾根ルートとして、
爺ヶ岳東尾根も歩いています。
急登特化型のルートで、性格はかなり違います。
→ 爺ヶ岳東尾根の詳細はこちら
山行概要
山名:常念岳
山域:北アルプス
日付:2026年2月22日(日)
天候:快晴(稜線やや強風)
コース:冬季ゲート → 東尾根 → 前常念岳 → 常念岳(ピストン)
距離:23.0km
累積標高:+2,309m/−2,309m
行動時間:11時間21分
コース全体図

冬季ゲートから常念岳東尾根を往復。
直登主体で距離・標高差ともに大きいロングルート。
この山を選んだ理由
以前から歩きたかった常念岳東尾根ルート
好天予報
前日も好天でトレースが期待できた
冬の北アルプスで槍ヶ岳を間近に見たかった
東尾根は、
天候・トレース・体力
この三つが揃ってこそ成立するルート。
今回は、その条件が噛み合う予報でした。
コースの様子と感想
▸ 冬季ゲート〜登山口
深夜スタート。凍りついた林道を進みます。
一部は“スケートリンク状態”。ここが地味に危険。
暗闇の直登が続きます。
九十九折は少なく、ひたすら登る。
▸ 登山口〜森林限界
標高約1,000mの鉄塔付近で12本爪アイゼン装着。
トレースは終始明瞭で、今回はワカン不要でした。
急登と緩斜面を繰り返しながら標高を稼ぎます。
登りは暗くて気づかなかったけれど、振り返ると“ずっと急登”。
森林限界でハードシェル着用、ポールからピッケルへ。
森林限界を越えたところで日の出。
ここから空気が一変します。

▸ 前常念岳(第一核心)
前常念岳直下は斜度が上がり、標高差が一気にのしかかる。
ここで脚が削られる。
ここまででも、一般的な山一つ分ほどの標高差。
それでもまだ本峰は遠い。
山頂はまだ遠く見えていたが、時間は想定の範囲内だった。
今回は「常念岳10時」をタイムリミットに決めていた。
それを過ぎるなら、無条件で撤退するつもりだった。
山頂に立つことより、戻れることを優先した。

到着すると、視界が一気に開ける。
穂高連峰
蝶ヶ岳
大天井岳
そして遠くに乗鞍岳。
ここからが、本当の東尾根のご褒美でした。
爺ヶ岳東尾根が“急登特化型”だとすれば、
常念岳東尾根は“持久戦型”。
性格はまったく違います。

▸ 前常念岳〜常念岳
白く締まった尾根を進む。
風はある。
けれど空は、抜けるように青い。
常念小屋分岐付近で、ふと視界の奥に鋭い影が浮かんだ。
槍ヶ岳。
その瞬間、疲労が一気に抜けた。

常念岳山頂はほぼ無風。
穂高〜大キレット〜槍ヶ岳が一直線に並ぶ大展望。
▶ この展望を“縦走で繋いだ”記録はこちら
パノラマ銀座|燕岳〜大天井岳〜常念岳〜蝶ヶ岳 1泊2日
まさに“槍ヶ岳ビューの特等席”。
冬の澄んだ空気が、すべてをくっきりと浮かび上がらせていました。

蝶ヶ岳の稜線、遠くには御嶽山。
表銀座と裏銀座、その奥に立山と劔岳、さらに白馬方面まで。
この景色は、
条件が揃った日だけ見ることができる景色でした。


※この日の展望は本当に素晴らしく、
常念岳から見えた槍穂高のパノラマを
写真中心で別記事にまとめました。
▶︎ 【北アルプス絶景】常念岳から望む槍穂高のパノラマ
▸ 下山
下山も長い。
森林限界でピッケルからポールへ戻します。
直登斜面の下りは慎重に。
最後の林道歩きまで気を抜けません。
距離が長いぶん、下山時の体力配分が本当に重要。

コース状況・注意点
✔ 林道凍結箇所あり
✔ 直登主体で脚力消耗大
✔ 前常念岳までが第一核心
✔ 森林限界以降は風の影響大
✔ トレース状況で難易度激変
※東尾根は
距離 × 直登 × 風 × 条件
で難易度が決まります。
装備判断(今回)
つぼ足+ポールでスタート
標高1,000m付近で12本爪
森林限界でハードシェル
ピッケル使用
ワカン未使用(トレース明瞭のため)
※降雪直後・トレース無しの場合は難易度が大きく上がります。
向いている人
10時間以上の雪山行動経験あり
直登に耐えられる脚力
冬季装備判断ができる人
向かない人
雪山初心者
体力に不安がある状態での挑戦
振り返り
厳冬期の東尾根。
テクニカルな難所は少ない。
けれど距離も標高差も容赦がない。
体力・天候・トレース。
どれか一つでも欠けていれば、成立しなかった一日。
そして、そのすべてが揃ったからこそ――
あの槍ヶ岳があった。
体力だけでもだめ。
天候だけでもだめ。
その日、その瞬間が噛み合ってこそ歩けるのが、
常念岳東尾根でした。
この体力を1年間維持して、また来年も歩きたい。
山は、継続の積み重ね。
これからも一歩ずつ、確実に。
▶ 同じ常念岳を、縦走で歩いた記録もあります
パノラマ銀座|槍ヶ岳を眺め続ける王道ルート
参考リンク
常念岳山頂から見えた
槍穂高の大展望を写真中心でまとめました。
▶︎ 【北アルプス絶景】常念岳から望む槍穂高のパノラマ
東尾根は、それぞれ個性があります。
急登とナイフリッジが印象的だった
爺ヶ岳東尾根については、こちらでまとめています。
▶︎ 爺ヶ岳東尾根の詳細はこちら
静岡の山を中心に歩いています。
▶︎ 厳冬期の深南部ロングはこちら|バラ谷ノ頭 30kmピストン
▶ 今月のまとめはこちら
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