【大阪 北浜・カシミール】ほぼ!完全再現レシピ②
2026/3/11更新:レシピについて以下の改訂を行いました。①「炒め玉ねぎ」ではなく生の玉ねぎから調理する手順に変更、②マトンを骨付きにして圧力鍋でブロードを抽出してから骨を除く手順に変更。これにより、時間と手間はほぼ変えずに、再現度が98%から99.5%にアップしました(個人の感想です)。変更理由等は記事本文に記していますので、既に購読いただいている方もぜひご覧ください。
2025/3/10更新:調理中の動画を追加しました。
「カシミール」と聞くと、東京のカレーファンの方々は、上野デリーの黒くて辛いカレーを思い浮かべるかもしれません。
でも、我々大阪のカレー民が「カシミール」と聞けば、やっぱり北浜のあそこですよね。
どこのカレーにも似ていない、独創的な味と強烈な見た目の一皿。
ひそかに宇宙で一番うまいと思っています。
ちなみに、私がカレーにハマり始めたのは15年ほど前。
当時の職場の近くにあった、名もなき喫茶店の激辛カレーを食べて以来、とにかく辛いカレーを求めて、らくしゅみ、ゴヤクラ、スホベイ、森元、スズメバチ、肥後橋南蛮亭、辛激屋、マジックスパイスなどを巡るうちに、自然とカシミール、バンブルビー、アララギ、ラヴィリンス、シンズ、シナジー、SIMBA、Ghar、カレーちゃん家、白銀亭、コロンビア8、ボタニ、SOMA、カルータラ、虹の仏、デッカオ、宝石、辛来飯、ゼロワン、アリーズ、ナーガ、アアベルなどなど、当時の大阪カレーシーンを彩る名店にも足を運び始め、ピーク時には年間延べ280店ほど訪れていました。あの頃は一瞬でも雑誌に載った店はほぼ全部行ってたと思います。
どこもめちゃくちゃ美味しいし、それなりに何回か通ってるのですが、15年以上経った今でも繰り返し足を運ぶお店は、結局5軒ほどになりました。その中でも「カシミール」は特別です。火水木金の昼間のみの営業で、12時に開くのか14時半に開くのか行ってみないとわからないお店って、有給取ってなおかつ他に何も予定を入れない「カシミールの日」を作らないと行けないですから。それでも100回は行ってますから。

ここでは、そんな「カシミール」のカレーを、ほぼ完全に再現しようという試みを載せています。
※カシミールで使われている材料や調理手順を完全に解き明かしたものではありません。慎重な考察と試行錯誤に基づいているつもりですが、お店では使ってない材料を使ってるかもしれないし、その逆もあり得ます。あくまで、「出来上がるまでのプロセスの一致」ではなく、目を瞑って食べたらどちらが本物かわからない、「出来上がったカレーの化学的な成分の一致(ジェネリック)」を目指してます。
そもそも大阪・北浜の「カシミール」って?

そこかしこで紹介されている通り、「カシミール」は大阪カレームーブメントの原点であり、創業30年以上の歴史があります。店主の後藤先生にLINEで「何時に開けて」と連絡できるレベルの常連さんから聞いた話では、北浜の前はアメ村の超ディープスポット・三ツ寺会館で営業されていたらしいので、それも含めるとさらに長いですね。
よっておそらく、出汁や魚醤、ヨーロピアンハーブなど最近の「ちょっとひねった」材料を用いるのではなく、あの個性的な見た目とは裏腹に、意外にもインドのレガシーな手法に則っているに違いない、と仮説を立てました。あと、看板に「curry & rice」とある通り、当初から米と一緒に食べる前提で作られているので、南インドのカレーがベースになっているのではないか、と推測しています。
素人による、お店カレー再現のスタンス
とは言え、私にはカレーを食べただけでそこで使われている材料やスパイス、それぞれの分量や調理手順を見抜く能力はありません。
なので、まずはインド料理に精通した有識者による由緒正しいレシピを漁り、近いと思われるものからエッセンスを抜き出して、論理的に破綻しない範囲で組み替えてひたすら試行錯誤する、という愚直な方法をとってます。
ちなみに、自宅に置いてある、十数人の記された延べ数十冊のカレーレシピ本で11年以上練習を繰り返している中で、私が特に傾倒しているのは、現在のところ香取薫先生、ナイル善己先生、渡辺玲先生です。それぞれの先生方の魅力を語りだすと、それだけで別の記事がもう三本書けるくらいのボリュームになると思いますので、ここではお名前に触れるだけにしておきます。
あの「ザラザラしたの」は何?

さて、カシミールの料理にはいろんなユニークポイントがありすぎてアプローチに迷いますが、私が最初に気になったのが「具材にまとわりつくザラザラしたなにか」です。最初はチェッティナードゥ式コランブのように玉ねぎなどをすりおろしたものかな?と思って試しましたが、味も食感も見た目もどうやら違いました。
そこで、自宅にある国内外数十冊のレシピ本を片っ端から読み漁り、これかな?と思ったのが、ナイル善己先生の「南インド料理とミールス」に載っている「バルタラッチャチキン」でした。あのザラザラって、ココナッツのペーストじゃない?と当たりをつけました。刻んだココナッツをローストしてスパイスと一緒にミキサーにかけてペーストにし、具材に加えるのは南インドでは一般的な調理方法のようです。

(ローリエではなく)生のカレーリーフもしっかりと入れました。自宅で育て始めて7年くらいですが、年を重ねるにつれて香りがかなり濃くなってきました。ドライのものとは全く別物です。これぞ南インド料理のフレーバーですよね。インド行ったことないけど。

「お茶漬けみたいなもんなんで」
ただ、カシミール店主の後藤先生が「お茶漬けみたいなもんなんで」とおっしゃるとおり、カシミールの料理はシャバシャバなんですよねー。なので、どろっとしたバルタラッチャにノーマルなカレーを合わせて薄めたらいいのかな、と試してみたら、シャバシャバではあるのですが、お皿のエッジが変に水っぽい。なんか米がカレーを濾過して、水分をエッジに、その他の残留物を米の上に残したような、妙なカレーになってしまいました。悲しみ。

米がフィルターの役割をしてしまわないように、水やオイルを塗ったしゃもじで米をお皿に強く押さえつけてコーティングしたりするとある程度は改善したのですが、そもそも後藤先生は普通にお米をお皿にふんわりと盛っていますので、こんな邪道なことはしたくない。ちゃんと原因と解決策があるはず。
お茶漬けくらいシャバいのに薄くない、お店のグレイビーの見た目を再現するためにいろいろと試してみた結果、最後にマサラを液体で溶いて煮るときに、南インドの「ケララチキン」と同じようにココナッツミルクをわずかに加えてみたところ、お店と同じシャバ度と見た目を再現できました。味もかなり近づきました。

みんなが驚く「酸味」の正体

さらに掘り下げると、食べログをはじめとしたネットでのカシミール評で目立つのが「酸味」です。
私としては、そもそもカシミールの料理は割とぶれ幅が大きくて、味も見た目も具材も毎回結構違っているので、まあトマトの品種や季節や後藤先生の気分によっては酸味が強く感じられるときもあるよね、くらいに思っていたのですが、某SNSでお店カレーの再現についてやり取りさせていただいている某氏も「カシミールの特徴は酸味」とおっしゃっていたので、そんなにか、と思って確認しに行きました。
「酸味」に意識を集中させて食べると、確かにしっかりと感じます。ただ、家でラッサムとかサンバルとかを割としょっちゅう作ってるからか、自分の中で「南インド料理」と認識してるカシミールを食べてても「あ!この酸味は再現の重要ポイント!要チェックや!」とは気づけませんでした。なんたる不覚。
胡椒系の辛味と融合して喉奥に来るこの感じ、ヴィネガーじゃなくてタマリンドな気がします。マラバール風のサンバルやティーエルなんかでも、ココナッツペーストとタマリンドを合わせることはあるようなので、南インドの伝統的な手法からも離れていないし、味もぐっと近づいたし、これでいきます。某氏ありがとう。
マスタードシードはどうする?
その他、見た目から得られる情報として、マスタードシードがありますね。お店では油で弾けさせて加える工程は見かけられませんが、南インド料理ならマスタードシードをそのまま使うことは考えにくいので、ペーストを仕込む過程のどこかでテンパリングして加えてるか、ダールカレーのように玉ねぎを炒める前の油で弾けさせてるのかもしれません。
ちなみに、このレシピを公開した当初は、汎用性の高い香取薫先生推奨の炒め玉ねぎを使っていました。
しかし、公開後に「炒め玉ねぎを使わない方法はないか」というお問い合わせをいただくことも多く、その都度代替の手順をご案内していましたが、自分もそれで練習してるうちに「南インド料理がベースならやっぱり玉ねぎは炒めすぎないほうが正統だな」と思い直し、今回、生の玉ねぎを炒めるところから始める手順に改訂しました。
なので、当初のレシピでは最初に玉ねぎを炒める工程がなく、仕上げの段階でマスタードシードをテンパリングする手順を採用していましたが、レシピ改訂に伴い、最初にマスタードシードを弾けさせてみたものの、仕上げに入れるほうがお店の香りに近かったので、テンパリングについてはもとの手順のままにしています。詳しくは後半の記事をご参照ください。
「カシミール」を南インド料理の文脈で解釈
バルタラッチャとケララとラッサムのハイブリッド。
ここまで見てきたように、「カシミール」のカレーを既存の南インド料理の枠組みで捉え直すとこういうことでしょうか。
ナイル善己先生の著書「南インド料理とミールス」で南インド料理の三種の神器として紹介されている、
①マスタードシード ②カレーリーフ ③タマリンド
も全て網羅しています。冒頭で立てた「個性的な見た目とは裏腹に、あくまでインドのレガシーな手法に則っているはず」という仮説にもマッチしていると思います。正解かどうかは置いといて。
ひとまずこれで、試行錯誤の道筋が見えました。ここから、素材と分量と手順を細かく組み替えてオリジナルに近づける長い道程が始まります。
謎ペースト
後藤先生は、惜しげもなく眼の前で調理してくださります。調理風景をこんなにまじまじと見られるカレー専門店って、他にはゴヤクラくらいではないでしょうか。

まず冷蔵庫からでっかい寸胴を取り出し、真剣な眼差しでそこからペースト状の何かをレードルで掬い、フライパンに投入します。鍋の種類はいくつかあって、それぞれから慎重に掬って、3人分のフライパンに少しずつ分配していってます。調理中の素早い動きとは違い、かなり時間をかけてそれぞれのカレーのベースを調合してるので、非常に重要なパートなのだと思います。
そこから、ゆるい粘度のペーストが加わるときもあります。調理の途中でも、おもむろに右の棚から別のペーストを追加されたりもします。マトンの場合、ブロードも加えられているようです。
このレシピを公開した当初、タマリンドウォーターでマトンを煮ることで旨味を染み出させる手法をとっていましたが、公開後もお店に足を運んで答え合わせと検証・練習を繰り返すうちに、やはりマトンのブロードをしっかりと抽出するのが重要だと思い、今回、骨付きマトンを圧力鍋で煮込み、ブロードをしっかり取り出す手順に改訂しました。(もちろん骨はちゃんと取り除きます)
これにより、時間と手間はほぼ変えずに、再現度が98%から99.5%にアップしました(個人の感想です)。詳しくは後半の記事をご参照ください。
ミックスB
ちなみに、カシミールを覚えたての頃はいろんなメニューを注文し、さらには4辛とか5辛とか調子に乗ったオーダーなんかもしてましたが、ここ10年ほどはお店ではほぼ「ミックスBマトン玄米」を注文します(辛さは何も言わなければノーマルの3辛で出てきます。結局これがベスト)。マトンがラムになってる日もありますし、マトンもラムもない日はキーマにしてます(結局は羊)。
ミックスは「野菜とかの具材を増やすよ」、Bは「玉子入ってるよ」の意味です。
この具材が結構毎回違います。季節的なものもあるのかもしれません。ここ1,2ヶ月のラインナップは、しめじ・茄子・じゃがいも・さつまいも・冬瓜・大豆・サラダほうれん草・トマト・豆腐、でした。葉っぱは水菜のときもあります。トマト・豆腐はたぶんレギュラーです。
これらの入れる順番・タイミング・入れ方は、お店に行ったら必ず瞬きせずに凝視して頭に叩き込んでます。
ちなみに豆腐とか野菜とかって、お店ではフライパンに入れる直前に切ってるんですよね。茄子とかさつまいもって切り口の色変わっちゃうからかな。こういうところに、後藤先生の仕事の繊細さが垣間見えて素敵です。
いよいよ、ほぼ!完全再現

前置きが長くなりましたが、上記を踏まえて家で作ってみたのがこちら。
ミックスBマトン玄米、3辛(ノーマル)。
お皿は、サイズはもちろん、お店でこっそり皿の裏側を見てメーカーまで特定してます。「ほぼ同じ」ではなく「同じ」皿です。直径も持ち上げた重さの感覚も手触りも同じでしたので間違いないと思います。普通にアマゾンで買えるやつでよかった。ただ、お店のお皿は何種類かありそうなので、入店のタイミングによっては違う皿に当たるかもしれません。
カシミールに通い始めて15年。自分でカレーを作るようになって11年。カシミールの再現レシピに手を出して2年半。宇宙一うまいカレーを再現すべく、お店に行くときは11時に家を出てチャリで15分ほどかけて電柱横の先頭に並び、開店時間の貼紙が13時より遅ければ近くのライフの2階で時間を潰し、必ず先頭に並ぶようにしてカウンターの一番奥の席で後藤先生の一挙手一投足を見逃さないよう凝視し続けた結果、味・食感・香り・汗の出るタイミング・食後の満足感に至るまで、ほぼほぼ再現できたのかな、と思っています。
ただ、ここ10年ほどは他のメニューをほとんど食べたことがないので、次からは「ほうれん草とチーズ」あたりを食べまくって、再現に挑戦してみたいなと思います。
まだまだ「カシミール道」は続きます。
南インド料理を何度か作ったことがあり、カシミールにも足繁く通っている方なら、ここまでの内容を見ていただければ、再現に向かってほぼ最短距離で試行錯誤できるように情報提供させていただいたつもりです。
ただ、今すぐゼロ距離で答えが欲しいという方に向けて、ここから先は、材料・分量・手順を細かく記しています。私が使ってる調理器具やお皿(お店で実際に使われてるもの)も紹介しています。調理中の動画と写真も載せています。
根拠のない材料は使わず、できるだけ時間と手間をかけず、味も香りも汗の出るタイミングもお店とほぼ変わらない、ぴったり一人分のミックスBマトン玄米を作れるように考え抜いた成果です。
もしご興味があれば、こちらのダイジェスト版動画をご覧ください。この先に、レシピの全工程を説明した完全版動画を掲載しています。
※ちなみに、大阪「インデアンカレー」、大阪・難波「自由軒」、東京・上野「デリー」、大阪「肥後橋南蛮亭」の再現レシピも投稿しています。もしご興味があれば,、こちらからどうぞ。
★ほぼ完全!「カシミール」再現レシピ
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