オムライス誕生物語4【カフェ「Branch tip」】
カフェ「Branch tip」の閉店後、今日も早速、試作品の準備に取り掛かったタケシとミドリだった。
「ねぇタケシ君、昨日の試作で話した原点回帰...。カフェ「Branch tip」の始まりの商品。それしか無いと思わない?」
「うん。そう思うよミドリ。オレも。
カフェ「Branch tip」の原点、それは、当たり前だが、コーヒー...。
これしかない。
そうだよねミドリ?」
「そうよ。コーヒーよ。
そして、このカフェ「Branch tip」を始める時も美味しく、こだわりの商品を見つけるためにタケシ君はブラジルまで行ったじゃない。
その時の事を少し聞いた事があったけど詳しくは聞いていなかったからもう一度教えてくれる?」
「そうだね。
行ったよブラジル。そして、『エメラルダ農園との出会い』の話だよね。」
「そうよタケシ君。
その話を聞かせて、今日は私がコーヒー淹れるからカウンターに座って話してよ。」
「あぁ、わかったよミドリ、エメラルダ農園で井上さんとの出会いの話をするよ。ちょっと長くなるけどね。まぁ~ゆっくり聞いてね。」
ミドリは、こくりとうなずきコーヒーをドリップしている。
タケシはゆっくりと情景を交えながら話し出した。
「あれさぁ、このお店カフェ「Branch tip」をオープンする前の話だけどね。ミドリも知っている通りこのお店カフェ「Branch tip」は、前にオレが働いていた会社から譲り受けた店なんだよ。
その時の社長はとてもワンマンで横暴で今なら完全にコンプラ違反だけどね。昔は有りだったんだろうね。
当時その社長から『新しく新規事業でカフェをやるからブラジルに行ってこいって!』言われてさぁ。
へぇ~!?ブラジル?と思ったよ。
それも当てもなく現地まで赴いてコーヒーを勉強だからね。
正直ビックリしたけど、いい経験を当時の社長からさせてもらったと今は感謝してるけどね。
そんな事がありブラジルに行ったわけさ。」
「タケシ君。頑張ってたもんね。私もその社長さんにはお世話になったから今では感謝しているけどね。それで、単身ブラジルに着いたときはどうだったの?」
「あぁ、日本からアメリカを経由してブラジルに到着して空港を出ると、むせかえるような熱気があったよ。
でも、どこか懐かしい土の匂いがした気もしたしね。
コーヒーの勉強に来たからさ『心に響く一杯のコーヒー』をテーマに探しだしたんだよ。
ブラジルのコーヒー農園はミナスジェライス州が有名だと聞いたからそこ向かったんだよ。
こっちでも少しはコーヒーの勉強をしたからある程度はコーヒーについて知っているし自分のコーヒーを淹れる腕も磨いていたからね。
でも、自分でどれだけ工夫しても『本物のコーヒー』を淹れたと思えなかったし。
オレが思う本物の豆に出会えた気がしなかったんだよね。
ミナスジェライス州の現地についてからさぁ、通訳を介して、どこのコーヒー農園が素晴らしいか、おすすめか、こだわりがあるかなどを聞きまわったんだよ。
そしたらさぁ、運がよかったんだろうね。
ある一人のブラジル人の方からおしえてもらった“幻の農園”の話だったんだよ。」
「すごいわね。タケシ君。幻の農園かぁ~ワクワクが止まらないね。」
「うん。止まらないよ。そして幻の農園だよミドリ?ワクワクするよね。それが…エメラルダ農園(Fazenda Esmeralda)とだったんだね。
意味は、緑の宝石・エメラルドの名を冠した、日本人が営む小さな農園なんだってさ。
その人にはコーヒー豆に対する想いがあってさぁ『宝石のように輝く豆を育てている』という気持ちが込められているみたいなんだ。
もう、そこに行きたくて仕方なくて、その情報をくれたブラジル人の方からもっと詳しい人を紹介してもらい会いに行ってその農園の場所を聞いたんだよ。
そして、行くことが出来た。
その農園はさぁブラジルの小さな村のさらに奥にあってね。
丘の上に広がる農園だったんだよ。
道中の道は舗装されてないから穴があったり、大きな水たまりがあったりと日本では考えられない悪路だったよ。
でも、なんとかその農園にたどり着いたわけさ。
そこでさ、泥だらけのシャツを着た小柄な男性に出会ったんだよね。」
「エメラルダ農園にたどり着いたのね。本当の山奥にあるんだね。それで、その方は農園主さんだったの?」
「そうだよ。農園主さんだったんだよ。名前を井上さんと言うんだけどね。井上さんは、服は泥だらけのシャツを着ていたけど表情がなんというかな、とても充実している顔をしていてさぁ。
気さくにオレに話してくれるんだよね。
そこから、井上さんにこのエメラルダ農園の話を色々と聞いたんだよね。
井上さんは、もう40年ここのエメラルダ農園のコーヒー作りをしていてね。コーヒー豆へのこだわりも物凄く持っていて想いも強いんだよ。
そのこだわりが言葉でうまく伝えられるか不安だからさ、話しながらメモに書くね。」
「うん。メモを見ながらタケシ君の話を聞くね。」と言いミドリはコーヒーを一口飲み、タケシのメモに目をやった。
そして、タケシはメモをとりだしながらメモに井上さんのこだわりを書き出しながら話し出した。
■標高1,200m以上の高地で栽培している。
…気温差が甘みと酸味を引き出すという。
■朝露が乾く前に手摘みで収穫している。
…夜露で引き締まった実だけを選んでいる。
■豆ごとに発酵時間を変えている。
…ミクロバッチ製法だね。
…収穫日や品種、発酵槽ごとに個別管理しながら最適な風味を井上さんの感覚で狙ている。
■天日と木陰を組み合わせた自然乾燥をしている。
…時間をかけて風味を閉じ込めている。
「そんなところかな、すべて効率は悪いと言っていたね。
でもさぁ、『手をかけるほど豆が答えてくれるんだ』って、熱く想いを込めて井上さんは言いながら笑っていたね。
想いをいっぱい聞いて、井上さんにこだわりのエメラルダ農園のコーヒーを淹れてもらったんだよ。
焙煎所で飲んだんだけどさぁ、香りだけで胸がいっぱいになったよ。
口に含めば感じる華やかな酸味があってさぁ。
そして、ふくよかな甘さが後からくるんだよ。
飲み干した時の最後に心を包むような余韻も感じたしね。
気付いたら井上さんに大声で『あぁ~うまい!!これがオレの探してた味だ!』言ってたしね。
そしたら井上さんが少しだけ目を細めながらさ『豆は宝石と同じだから。豆も想いも磨かないと光らないんだよ。』と言ってたんだよね。
それから、たくさん井上さんと話してコーヒーを飲んで、エメラルダ農園を手伝ったり、ご飯を食べたりしながら人となりをお互いに見合い信頼関係が気付けて今のうちの店で使っている豆はすべて井上さんの所のエメラルダ農園のコーヒーになったというわけさ。」
「壮大だね。これほど想いのこもった物は無いね。タケシ君。」
「あぁ、そうなんだよねミドリ。よし!早速、エメラルダ農園の豆を使って作ってみよう。」
つづく。
いいなと思ったら応援しよう!
こんにちは。ぱぽこめです。最後まで読んでくれて本当にありがとうございます!頂ける「スキ」や「コメント」が、私の書く力になっています。また「面白かったよ!」「また読みたいよ~!」と少し期待して頂ければチップでちょこっと応援してもらえると感謝感激雨霰ぱぽこめです!