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そのみかんの皮、ください。【総校②#17】/校長の挑戦―総合の力を信じて 第2章

2021年秋。
前回紹介した3年生は、地域の方々とともに歌をつくり、本物のレコーディングスタジオでCD制作に挑戦しました。
子どもマルシェへ向けた各学年の取組は、まだまだ続きます。
今回は4年生の総合的な学習の時間です。
地域や専門家から学びながら、自分たちらしい形を探していった歩みを紹介します。


1.人から学び、地域を見つめる

4年生の担任は、私と同い年の先生でした。
以前、同じ学校で勤務したこともあり、長年の経験に裏打ちされた確かな指導力を持つ先生です。
子どもたちの考えを大切にしながら、一歩一歩積み重ねていく授業づくりには、私も信頼を寄せていました。

4年生は、社会科とも関連させながら、ごみや水質など環境をテーマに総合的な学習の時間を進めていました。
町の担当の方からは、自分たちの町のごみの現状や課題について話を聞き、学校の近くを流れる川では、水生生物を探したり水質調査を行ったりしました。
図書やインターネットで調べることももちろん大切です。
しかし、それだけではなく、地域で働く人や専門家から直接話を聞き、その思いや経験に触れることを、ここでは大切にしていました。

10月19日には、環境教育NPO法人の方を講師に迎え、SDGsについて学んだ後、パックテストを使った水質調査に挑戦しました。
近くの川でくんできた水と、米のとぎ汁を入れた水を比べてみると、子どもたちの表情が変わります。

「えっ、こんなに違うの?」

予想以上にはっきりと現れた結果に、教室は小さなどよめきに包まれました。
毎日何気なく流している米のとぎ汁が水を汚す原因になること、そして自分たちの身近な川がとてもきれいだということを、数字だけではなく、自分たちの目で確かめることができたのです。


2.伝えるだけでは終わらない

学習が進むにつれて、各班は調べたことや体験したことをプレゼンテーションにまとめ始めました。
ただ調べて終わるのではなく、「誰に伝えるのか」を考えることも、この学習では大切にしていました。

まずは授業参観で家族へ環境について呼びかけます。
そしてもう一つは、町の人や町外から訪れる人たちへ、自分たちの学びを伝えることでした。
その舞台として考えていたのが、12月に予定している販売学習「子どもマルシェ」です。

しかし、このマルシェには学校全体で決めた約束があります。
どの学年も、自分たちが総合的な学習の時間で学んだことを生かした商品を販売することです。

「環境について学んだ4年生なら、どんな商品がいいだろう。」

担任の先生は、子どもたちと何度も話し合いを重ねていました。
環境を学んだからエコバッグというだけでは、少し安直です。
そこに4年生らしい学びをどう表すかが、大切なポイントでした。


3.みかんの皮は、ごみじゃない

ある日、担任の先生から相談を受けました。

「エコバッグを染めてみようと思うんです。」

話を聞いて、なるほどと思いました。
ただ販売するためのバッグではなく、自分たちの学びを形にしたバッグにしたいという考えだったのです。

染料に選んだのは、地域特産のみかんの皮でした。
給食で出た皮や地域の方からいただいた皮を集め、本来なら捨てられてしまうものを染料として生かそうという発想です。
環境について学んできた4年生だからこそ生まれたアイデアでした。

もっとも、この発想は突然生まれたわけではありません。
少し前、学校で育てていた藍を使って、生葉染めに挑戦していたのです。
本格的な藍染めのように「すくも」を使う方法ではありませんが、生葉なら学校でも挑戦できます。
その経験が、「みかんでも染められるかもしれない」という新しい挑戦につながっていきました。

「先生、本当にみかんで染まるんですか。」

子どもたちも半信半疑だったそうです。

「やってみないと分からんな。」

担任の先生は笑いながら答えたといいます。

ボウルからバッグを取り出し、水で洗い、そっと広げます。

「あっ、色が付いとる!」

「ほんまや。みかん色や。」

教室から歓声が上がりました。
鮮やかなオレンジではありませんが、やさしく温かみのある色が布いっぱいに広がっています。
本来なら捨てられるはずだったみかんの皮が、子どもたちの手で新しい命を吹き込まれた瞬間でした。


4.学びを持ち帰ってもらうために

みかん染めだけではありません。
藍の生葉染めにも取り組み、やさしい空色に染まったエコバッグも出来上がりました。
机の上に並べてみると、一つとして同じ色合いのバッグはありません。

「こっちは藍や。」
「こっちはみかん。」
「どっちもいいなあ。」

出来上がったバッグを見比べながら、子どもたちは自然と笑顔になります。
仕上げには、小さく町のゆるキャラ「カイくん」のワンポイントも入りました。

こうして完成したエコバッグは、環境について学んできた4年生の思いそのものになりました。
子どもマルシェでは、このエコバッグを販売しながら、自分たちが調べ、考え、学んできた環境のことも来場者へ伝えていきます。

買ってもらうことだけが目的ではありません。

エコバッグを手にした人が、
「みかんの皮で染めたんです。」
という子どもたちの話に耳を傾け、
「そんな使い方があるんだ」
と少しでも環境について考えてもらえたら、それが4年生にとって一番うれしいことでした。

子どもマルシェまで、あと少し。
4年生もまた、自分たちの学びを地域へ届ける準備を着々と進めていました。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回へ続く・・・👇

前回の話👇

◆本シリーズについて(初めて読まれる方へ)👇👇

2020年度、私は中山間地にある小学校へ校長として赴任しました。
その直後から、コロナ禍という正解の見えない状況の中で学校運営が始まりました。

行事は止まり、人との距離が求められる中で、何を優先し、何をあきらめ、何を工夫すればよいのか。
日々、判断を迫られる学校経営が続きました。
▶第1章は、こちら👇
マガジン 校長の挑戦—総合の力を信じて 第1章」**

本シリーズは、そうした試行錯誤の中で、子どもたちの自己肯定感を育てることを軸に、総合的な学習の時間を学校経営の中心に据えて進めてきた、小学校校長としての実践記録です。

シリーズ第2章(校長2年目)では、全校での総合的な学習の時間への取組を綴っています。

※本文中の一部地名や商品名等は、必要に応じて仮名またはイニシャルを用いています。

これまでの経過は「校長の挑戦 総合の力を信じて 第2章 マガジン」で👇👇


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